年の瀬恒例、一年間の映画の振り返り。今年はマイホーム計画に奔走したこともあり、近年でも最低クラスの鑑賞本数になってしまった。うーん、まあ、こればっかりはしょうがない。休日はそのほとんどをメーカーや工務店と打ち合わせをしていた気がする。
とはいえ、割と「観たいと思っていた映画」は観られたんですよ。「これは外せない!」は、およそ外さなかった。ただ、本数が少なくなると自ずと「予期せぬ出会い」が減ってしまう。あんまり期待していなかったり、あるいは、たまたま時間が空いたから観るような映画に、気持ちよく殴られるあの体験。ダークホースとの出会い。これがまた良い訳ですよ。だから、やはり私はある程度の「数」の目標は定めておきたいなあ、と。
そんなこんなで、2019年に劇場で鑑賞した映画から選ぶ、個人的ベスト10です。
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10位『ゴジラ / キング・オブ・モンスターズ』監督:マイケル・ドハティ
ゴジラというコンテンツは、時代やクリエイターによって明確に性格が異なる。恐ろしいゴジラもいれば、お茶目なゴジラも、勇敢なゴジラも、異質なゴジラもいる。そういった幅の広さ、つまるところの多様性を、マイケル・ドハティは欲張りにも一本の映画にぎゅうぎゅうに詰め込んだ。だからこそ本作は、ゴジラファンそれぞれに多くの発見があるだろう。
キングギドラやラドン、モスラといった東宝有名怪獣が、ハリウッドの最新技術で何の照れもなく暴れ回る。それはもう、豪快に。こんなにも熱い「俺の愛を喰らえ!」を提示されては、同じく怪獣王を愛好してきたオタクのひとりとして、首を垂れない訳にはいかない。
9位『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』監督:田崎竜太
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これは非常に個人的な話なのだけど、過去のブログ記事でも、5月に開催したトークショーにおいても、私は平成ライダーのことを「不揃いで」「混沌とした」「統一感が無いという統一感」のシリーズだと語り続けてきて。だからこそ、平成ライダー最後の劇場版『Over Quartzer』で、それそのものが強烈なメッセージとして打ち出された時、心中でガッツポーズを決めた訳です。いわゆる「解釈一致」というやつ。
まあ、今になって考えれば、そうしてある種開き直ってしまわないと「平成ライダー」という枠組み語ることはできないんですけどね。でも、まさかそれを平成という一時代と重ね合わせ、その30年間を生きてきた人達にまで語りかける内容にしてしまうとは・・・。良くも悪くも、平成ライダーにしか作れない作品として、ひどく奇天烈な体験でした。
8位『コンフィデンスマンJP ロマンス編』監督:田中亮
テレビシリーズの大ファンだったこともあって、心底楽しめた作品。いわゆる「テレビ的」な演出やキャラクター造形で塗り固められた作品なので、駄目な人はとことん駄目かもしれないけど。ただ、本作がしっかりしているのは、テレビシリーズからそこそこ間が空いた続編だということ。つまり、多くの観客は「色々あってピンチに陥るけど」「騙し騙されが飛び交うけど」「結局主人公たちが勝って終わる」というパターンがかなり身に染みている。重々承知している。
そんな観客相手にきっちりと「面白い」を提供するのは、生半可じゃないと思うのです。もちろん、途中でそこそこネタが割れてしまうけれど、演者のエネルギッシュな魅力でそこを気にさせる前にぐいぐい引っ張っていく。長澤まさみの過剰な演技が、最高の煙幕になっている。そういうのを分かって作っているであろう脚本も、クレバーだなあ、と。
7位『スパイダーマン / ファー・フロム・ホーム』監督:ジョン・ワッツ
普通に映画としての出来も良いのだけど、それより何より、あの『エンドゲーム』の直後にこれを繰り出せるマーベルスタジオに感嘆。映画のユニバース構想を追随する例も少なくないけれど、やはり本家本元であるマーベルが頭一つ抜けているのは、このタイミングで『ファー・フロム・ホーム』を出せるハンドリングにある。ヒーロー大集合映画、その功罪・余韻・余熱に、世界中の観客誰よりも作り手が自覚的。それがなんと恐ろしく、頼もしいことか。
また、巨大プールを囲うヴェネツィアのセットや、相変わらず驚異の身体能力を発揮するトム・ホランドなど、映像面もアベレージが高い。ラストのサプライズは超ド級だが、もはや普通に本編そのものの出来が良すぎるので、あまり驚けなかった思い出。感情のリソースが上手く割けなかった。
6位『ミスター・ガラス』監督:M・ナイト・シャマラン
シャラマンユニバースの完結編。Amazonプライムビデオの『ザ・ボーイズ』もそうだけど、これが『エンドゲーム』と同じ2019年に公開されたのが実に良い。「スーパーヒーローは存在するのか?」。その実在性を問いながら、ヒーローというアイコンに何度も何度もメタ解釈を重ねる。どこからがヒーローで、どこまでが人間なのか。そういった禅問答を繰り返しながら、物語は「ヒーロー映画らしい大舞台」に向かっていく。
最終的に提示される「フィクションやワンダーを愛そう」というシンプルかつ力強いメッセージは、『エンドゲーム』や他ヒーロー映画に熱中する観客に、今一度足元を見つめ直させる。この熱狂や興奮、その根っこには、ひどくシンプルな「フィクションへの憧れ」があったはずなのだ。複雑な計算式に頭をグルグルさせるタイミングで、ふと教科書の最初に載っている「はじめに」を読んだような、そんな感覚。愛すべき一作。
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5位『きみと、波にのれたら』監督:湯浅政明
もっと上位でも良かったかもしれない、そんな一作。とにかく泣いた。ボロッボロに泣いた。「音楽と人生」についてこういう掘り下げ方をされると実に弱いのだ。今でも、聴くだけで人生を思い出す音楽が沢山ある。景色も、人も、その時の感情も。そういった誰もが抱く普遍的な体験を通して、青春ラブストーリーから少しのホラーへ、そしてフィクションを膨らませた大きなオチにまで持っていく。
興行収入的に振るわなかったらしく、作品のファンとして残念。『君の名は。』の大ヒット以降アニメーション映画が増えたと聞いているけども、その類型に数えられてしまったのだろうか。ぜひ、沢山の人に、恋人同士や夫婦で観て欲しいと願う。
4位『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』監督:武居正能
これはもう、映像の勝利。クライマックスに現れるウルトラマングルーブ、それがフルCGで描かれている。ストーリーやその他のシーンも勿論大好きなのだけど(本編では兄妹を引っ張る役回りだったカツミにスポットが当てられている)、そのフルCGの一点突破でこの順位。とにかく感涙してしまった。こんなに胸が高まって、良い意味でざわついたウルトラ映画も、久々だったかもしれない。
ウルトラマンのCG描写でいえば、平成三部作を経て、『ネクサス』の板野サーカスや坂本浩一監督によるアクロバティックなアクションなど、その歴史は着実に重ねられてきた。その流れの最新作として本作が挑戦したのは、従来の特撮であるSFXとの完全融合。スーツのウルトラマンとCGのウルトラマンが共に並び、CGのウルトラマンが吹っ飛ぶとミニチュアのビルが崩壊する。まさに、こんなハイブリッドが長年観たかったのである。歴史的な一歩ですよ、これは。
3位『アルキメデスの大戦』監督:山崎貴
菅田将暉主演というだけで加点が大きいのだけど、これはもうラストの展開が全てを持っていってくれた。まず前提として、「お偉いさん」たちの惨めな足の引っ張り合いとプライドの張り合いに、数学という合理的な拳で殴りに行く構造が痛快。そして、本当にその数学が得意な菅田将暉が、お得意のまくし立てる演技で数式を書き殴るシーンの迫力も良い。「変人天才もの」「バディもの」としても観たいものを観せてくれる。
そんな積み上げの果てに訪れるクライマックスの「決断」。これがまあ、実に良かった。数学という合理性を信奉してきた主人公、だからこその判断。悪魔と相乗りする勇気。「結局、戦艦大和は建造されて沈没してしまう」という、日本人なら誰もが知っている結末の手前に置かれたどんでん返し。この原作からの脚色に、見事に一本を取られた。
2位『ジョン・ウィック / パラベラム』監督:チャド・スタエルスキ
John Wick: Chapter 3--Parabellum (Original Motion Picture Soundtrack)
- アーティスト:Joel J. Richard
- 出版社/メーカー: Varese Sarabande
- 発売日: 2019/06/07
- メディア: CD
期待していた続編が期待通りに、いや、期待以上に面白い。それほど幸せなことはない。同シリーズのポイントは、回を増すごとに色んな意味でアップデートが重ねられていること。一作目より二作目が、二作目より三作目が。それはアクションの凝りようやバリエーションに限らず、世界観の広がり、設定の深化においても同様。一作目の頃は、まさかここまで最高に馬鹿馬鹿しい世界になるとは思ってもみなかった。
復讐中毒に陥った主人公は、より一層、世界への怒りを加速させる。何かと「落とし所」を求められる日常において、スクリーンの中でひたすらに突き進むキアヌは、ある意味で眩しい。もちろん、あんな狂人じみたアクションも立ち回りもできないけれど、我々が実社会で抱く小さな破壊衝動を何倍にも増幅して代行してくれているような、そんな爽快感があるのだ。爽快、痛快、大喝采。
1位『アベンジャーズ / エンドゲーム』監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ
いや、まあ、これはもうしょうがないですよ・・・。もはや不可抗力。色々と悩んだというか、皆が大好きなこれをわざわざ1位にしなくても、もっと自分らしいセレクトがあるんじゃないか、とか、とか、とか。でも、考えれば考えるほど、これを今年の首位にしないのは自分への嘘に他ならないと、そういう結論が台頭してくる訳です。うん、そうだよね。やはり2019年は、「アベンジャーズが完結した年」ですよ。間違いない。
前世界中のファンが無意識に設定していたハードル。「結局全員が復活してアッセンブルするんでしょ?」。それを叶えつつ、予想していたファンまでもをまんまと感涙させる構成の確かさ。前作の絶望的なエンディングから一転、割と軽快なテンポでの幕開け。タイムスリップという形で、ユニバースそのものを本家本元が同人ノリで扱う懐の大きさ。「面白い」というシンプルな答えに向けて、妥協せず、挑戦しつつ、ひたすらに突き詰めたであろうことが全編を通して伝わってくる。
ここまでのシリーズ、連作を、見事にコントロールしてみせたその手腕に感服。「挑戦」と「王道」のバランス、オタク心をくすぐる描写の数々、愛すべきキャラクターの創造、ユニバースだからこその流れを意識した展開。ケヴィン・ファイギ、宗教法人を立ち上げてくれ。入ります。
- 10位『ゴジラ / キング・オブ・モンスターズ』監督:マイケル・ドハティ
- 9位『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』監督:田崎竜太
- 8位『コンフィデンスマンJP ロマンス編』監督:田中亮
- 7位『スパイダーマン / ファー・フロム・ホーム』監督:ジョン・ワッツ
- 6位『ミスター・ガラス』監督:M・ナイト・シャマラン
- 5位『きみと、波にのれたら』監督:湯浅政明
- 4位『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』監督:武居正能
- 3位『アルキメデスの大戦』監督:山崎貴
- 2位『ジョン・ウィック / パラベラム』監督:チャド・スタエルスキ
- 1位『アベンジャーズ / エンドゲーム』監督:アンソニー・ルッソ ジョー・ルッソ
・・・といった感じで、2019年の個人的ベスト10でした。やっぱりこうして並べてみると、ベスト10に選ぶような作品はほとんど感想記事を書いてますね。観た映画の全ての感想を残している訳ではないのですが、やはり記憶に残る・強い感銘を受けた作品は、いても立ってもいられずに打鍵している、ということか。
今年は、アベンジャーズもX-MENもスター・ウォーズもそれぞれ一旦の「終わり」を迎えるということで、エンタメ映画好きには何かと忙しい一年でした。来年も、良い映画と出会えますように。
ブログも年末進行ということで、色々と振り返り系の記事も書かねば・・・!