ジゴワットレポート

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『エンドゲーム』におけるトニー・スタークへの納得感と、観客を退屈させない「3時間」の作り方

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『アベンジャーズ / エンドゲーム』、ものすごい勢いで興行成績を伸ばしているとのこと。もはや半年ほどロングラン上映をしているような風格だが、まだ公開から10日そこらしか経っていない。それほど、今年の10連休はずっと『エンドゲーム』のことを考えていたような気がする。

 

作品の大枠については、公開日に下記の記事を更新した。約10年間を追い続けたファンへの感謝と、「不可逆」を魅せ付ける物語。

 

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この記事では、上の記事では書き切れなかった、細かな感想について記録として残しておきたい。基本的には、Twitterにおいてふせったーで投稿した内容。それらを加筆修正したものである。以下、最初から最後までネタバレ満載なので、言うまでもなく未見の方はご注意を。

 

 

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「トニーを救わない」という判断と理屈

 

『エンドゲーム』終盤、トニーの絶命をタイムストーン等で救わないからこそ、本作は綺麗に終わっていったのだろう。


今回のアベンジャーズは、あくまで「ストーンの特殊効果で消された人々を助ける」に目的を絞っており、特殊効果に対してタイムトラベルという(同じく特殊な)方法を打ち出したにすぎない。むしろそうでないと、事故・病気・寿命等、5年後の世界の今も人々が絶え間なく死んでいく現実において、「それらも全員救わないといけないのか?」という発想になってしまう。

 

あくまで、ストーンに対抗してのタイムトラベル。命を救うのではなく、特殊効果を特殊効果で元に戻す。復活というよりは、復帰のための戦い。だからこそ、クライマックスで、彼らはトニーを救わない。彼をタイムストーンやその他の方法で救ってしまうと、「復帰のための戦い」で線を引いたアベンジャーズの判断が一気にエゴに傾いてしまう。

 

同時に、ストレンジから託された「たった1つの勝利ルート」において、トニーの死は必要条件だった。ストレンジとのギリギリの状況でのアイコンタクトの末に、それをトニー自身が受け入れ、ガントレットを発動させる。彼が全てを飲み込んだ上でそれを行ったのだから、周囲もそれを尊重してあげたい。そして理屈の意味でも、トニーの死でもって勝利ルートを確定させる必要がある。

 

また、トニーことアイアンマンの存在は、11年間を記録したMCUの象徴でもあるので、彼への花道として、ゆっくりと眠らせてあげたいという(制作側の)想いもあったのかもしれない。愛する妻に看取られながら、ゆっくりと目を閉じる。彼は、運命を受け入れた結果、安らかに逝ったのだと思う。

 

彼を救わないことこそが、「アベンジャーズなりの正義」「この戦いにおける大義名分と線引き」「勝利のためのロジック」「トニーというキャラクターの行く末」等々、多重の意味で、美しかった。

 

 

タイムトラベルの描写バランス

 

『エンドゲーム』で流石だなと感じたのはタイムトラベルの理論説明について、作品なりの見解を示しつつも説明ばかりにならない、そんなギリギリのバランスに留めてあること。


タイムトラベル理論について、説明しすぎるとそれが野暮になって物語のテンポを崩してしまう。逆に説明を省いてしまうと、理屈が伴っているか否かが気になってしまい、エンターテイメントに集中できない可能性も出てくる。

 

本作は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を始めとするタイムトラベルあるあるを持ち出しながら、シリーズお得意ののコメディなテンポで理論を語っていくスタイル。かといって、説明ばかりにならないように、かなり気を遣っていると感じた。エンシェント・ワンが魔法で図解し始めるのも気が利いている。「理屈」と「エンタメ」の、両者が共に成立するギリギリのバランスを狙っている印象。

 

 

だから、観ている間、パズルのピースが端まで隙間なくハマるほどじゃなくとも、なんとなく言わんとすることは分かるし、その程度の理解でも最後まで付き合えるように調整されている。反面、観終わった後に細かなロジックが多少気になるものの、あくまで「観終わった後」なのが大きい。観ている最中は、スクリーンから放たれる「エンタメ」の圧がすごすぎて、実は意外と気にならない。(自分比)

 

「観終わった後」に、ファンが「あーでもない・こーでもない」と感想や考察を交わすフェイズまで含めた、中々に巧妙なバランス設定だと思う。これ以上説明するとおそらく野暮ったいし、かといって、これ以上説明を省くと気持ちのノリが削がれていたかもしれない。

 

 

最も泣いたシーン

 

後半は特に何度も涙が出たんだけど、多分一番泣いたシーンが、トニーが帰ってきたピーター・パーカーを抱擁で迎えたシーン。


トニーにとってピーターは、「思っていたよりも愛弟子として愛着がわいていた存在」だと感じた。失って初めて「自分はこんなにもアイツのことを大切に感じていたのか」な状態になっていたと思うんだよね。結婚し、娘が生まれ、アベンジャーズとしての大事な後輩もできて。トニーの「次世代」が積み重なっていく中で、得たものもあれば、失ったものもある。ピーターという次世代を失ったからこそ、娘という「次世代」こそは守り通したかった。それが、本作序盤のトニーだったと思う。

 

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それから色々あって、「次世代」を救う覚悟を決めたトニー。クライマックスにて、遂に愛弟子・ピーターと再会する。ここでピーターを抱きしめる様子にグッとくるんですよね。しかも、ピーター得意の早口な状況説明で舞台裏(消えていたメンバーは5年間をどのように認識して具体的にどう戻ってきたのか)をサクッと説明するのも、構成としてめちゃくちゃ上手い。壮大なアクションシーンのテンポ感を損なわせずに、でも必要最低限のポイントだけは説明しておく、というやり方。説明を説明だけで行わず、キャラクター描写と兼ねてしまうのがすごくスマート。

 

エンドゲームは、トニーと「次世代」お話なんだよね。MCUを始めた男が、「次世代」にバトンを渡した物語。

 

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『シビル・ウォー』から始まった決裂の着地点

 

本作のトニーとキャップについて。『シビル・ウォー』で勃発した両者の確執は『インフィニティ・ウォー』でも保留状態だったんだけど、まさかその流れをちゃんと汲んでくれるとは思ってもいなかった。内心、このままなし崩しに共通の敵相手に共闘するのかな、と思いきや、最悪の形で溝が深まる序盤。トニーの罵倒と、それに面と向かって言い返せないキャップ。非常に胸が痛い幕開けだった。

 

そこからの、トニーがアベンジャーズ基地に戻る流れ。人によっては「あの程度で仲直りなんて」「明確に互いに謝ってない」「キャップはトニーの歩み寄りに迎合しただけ」という意見もあるかもしれないが、自分としては、5年という月日を設けたからこそ、妙に説得力があった。

 

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サノスのガントレット発動と、それによって変わった世界。5年という長い年月。お互いに信頼関係だけは底に生きてるけど、決定的にやり合ってしまった過去。しかも、トニーは子供ができている。実際に自分も子供を持って痛感したけど、独身時代の自分って恥ずかしいくらいに視野が狭いし(あくまで相対的に。今もまだ狭いと思うけど..・・・)、血を分けた子供が出来たことで、人生を色々と思い返したり、緩やかに将来に向けて清算していこうという心持ちになる。トニーも遠からず、そんな感覚を持ちながらの5年間だったんじゃないかと。

 

そして、大前提として、トニーとキャップが協力しなければ、失ったものは取り返せない。両者ともその答えが分かっている。だからこそ、キャップはタイムトラベルの希望が見えてすぐにトニーを誘いに行ったし、それを一度断ってしまったトニーは、自らアベンジャーズ基地に戻る。ふたりとも、歯がゆいくらいに不器用に歩み寄る。


盾を返して、ペラペラと得意のべしゃりを並び立てるトニーが、どうしようもなく可愛く見えてくる。でもその健気な決心を感じ取ったからこそ、キャップは、後にトニーを信じてふたりで更なる過去へ飛ぶ。ふたりの和解は、明確に交わされたと感じている。『シビル・ウォー』で勃発した確執の着地点として、「共通の敵」だけでなく、「様変わりした世界での5年間」という要素を入れてきたのは、すごく良かったと思うんですよ。「時が解決する」って、こういうことなんだよな。妙にリアル。

 

 

「トニーの死」が意味するもの

 

本作のトニーについては、むしろ命を落としたことが彼にとっての最大の救済だったと感じている。


トニーという男は、例え戦いで腕を失おうとも、足がちぎれようとも、最悪、脳みそだけが残ろうとも、その諦めの悪さと技術力で、アイアンマンを続けたのだろう。アーマーに脳をAI化して移植するとか、そんなトンデモまでやってしまうキャラクターだし、だからこそ、そんなめげないスタイルが根強い魅力でもある。

 

悪夢を見て以降、彼は未だ見ぬサノスに怯え、恐怖に追い立てられるようにアーマーを量産し、アイアンマンをアップグレードしてきた。アイアンマンであるからこそ、彼はずっと生き急いでいたし、焦燥に駆られていた。アイアンマンであるというアイデンティティが彼を生かし、同時に、そのアイデンティティにいつも押しつぶされそうになっていた。

 

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そうであるならば、トニーに「もうアイアンマンじゃなくてもいいよ」というゴールを与えるには、「死」しかなかったのだろう。彼が「私はアイアンマン」であり続けるからこその、「死」。それをもって、やっと、やっとこさ、彼はアイアンマンという第2の人生を終えることが出来たのだと思う。だから自分は、トニーが死んだというよりも、彼がやっと楽になれたという印象が強い。本当にお疲れ様、ありがとう、と。

 

つまりは、「エンドゲームのトニーをなんで死なせたんだ!」という意見に対しては、「彼は死にでもしないとずっとアイアンマンというアイデンティティに生き急がされていくんだよ」と返したい。

 

 

観客を退屈させない「3時間」の作り方

 

『エンドゲーム』、2回目の鑑賞は腕時計を気にしながらだったんだけど、この映画、おそろしく時間配分が上手い。


簡単にまとめると、以下の配分になってる。


【起】(約30分)サノス惨殺、そして5年後、アントマンがアベンジャーズ基地にやってきて逆転の可能性が生まれるまで

【承】(約30分)トニーやソー、ホークアイなど、散り散りになったメンバーが基地に再集結するまで

【転】(約60分)タイム泥棒計画が始動。度重なるミーティングからの実行、そしてナターシャ以外の帰還まで

【結1】(約30分)ハルクによる指パッチン、サノス襲来、BIG3奮闘、アベンジャーズアッセンブル、トニーの指パッチンまで

【結2】(約30分)トニーの死、エピローグ、エンドロールまで


3時間の長尺を飽きさせないためか、すごく丁寧に時間配分されている。【起】【承】と【結1】【結2】をそれぞれ約60分と捉えれば、約60分×3の綺麗な三幕構成でもある。特に【結1】、ハルク指パッチンからトニー指パッチンまでの、あの怒涛の展開が約30分なのには驚いた。

 

混沌とした物量をさばくためか、実にロジカルな作りである。

 

 

字幕と吹替、ニュアンスの違い

 

待ちに待ったキャップの「アベンジャーズ、アッセンブル」。吹替だと決起を込めた堂々のアッセンブルで(言い放つ感じ)、字幕だと万感の到達点として絞り出すようなアッセンブルで(吐き出す感じ)、ニュアンスの違いが見られて面白かった。

 

また、キャップがハンマーを持って、それにソーが反応するシーン。吹替の「持てると思った」の方が、原語のそれより好きかもしれない。『エイジ・オブ・ウルトロン』でキャップが微妙に持ち上げたのを踏まえた上で、ソーがちょっとだけ悔しい感情を込めてこぼすのが良い。腹の底でキャップを認めていて、でも同時に「ちくしょう」ってのもあって。

 

・・・以上、取り急ぎのまとめとして。最低でももう一度くらいは観ておきたいので、その際はまた追加で感想をまとめたいところ。んー、でも時間作れるかなあ。要検討。

 

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