ジゴワットレポート

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最終回感想『SSSS.GRIDMAN』 ラストの実写パートと「作りもの」の世界が持つ意味

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とにかく、感無量である。予想だにしていなかった最終回(12話)ラストの実写パートの意味を悟った瞬間、あまりの制作スタッフの「電光超人愛」に鳥肌が立ってしまった。あの実写パートが挟まってはじめて、『SSSS.GRIDMAN』は『電光超人グリッドマン』の系譜に名を連ねたのだと。私は、そう理解している。

 

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本作のSNSを中心としたムーブメントを体感していると、あたかも原典の『電光超人グリッドマン』が当時大ヒットした伝説の名作のように錯覚してしまう。

 

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しかし、そんなことは全くなかった。私もご多分に漏れず『グリッドマン』世代だが、特撮好きが集まる場に足を運ぶまでは、『グリッドマン』をまともに知っている人と会ったことはなかった。コンピューター・ワールドで戦うというテーマ設定には確かに先駆的なものがあるが、全体のクオリティが客観的に高かったかと問われると、素直には頷けないのが本音である。

 

しかし、いつの時代も「好き」と「完成度が高い」はイコールではない。TVでの新作ウルトラマンが途絶えていた「ウルトラ谷の世代」において、『電光超人グリッドマン』は貴重な「ナウい」ヒーローだったのだ。正確には、「好き」というより、「思い入れ」と表現するべきか。おそらく同世代のオタクたちは、良くも悪くも「俺たちのグリッドマン」といった囲い込む感覚を抱いてしまっているのではないか。それほどに、人気も知名度も、一線を走ってきたヒーローではなかった。

 

そんな番組が、まさかのアニメーションで蘇る。アニメーター見本市の短編でも狂喜乱舞したが、今度はしっかりとTVシリーズとして放映されると言うではないか。いやいや、本当か。マジかよ。あの『グリッドマン』が!?

 

・・・という驚きからの感想は以前にも記事にした。「アニメで特撮をやる」。制作陣のびっくりするくらいのこだわりのカットの数々に、目を丸くして、思わずニヤけながら、鑑賞していた。

 

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上の記事から引用するが、私が特に感銘を受けたのが、「怪獣出現とグリッドマンの戦いが歴史もしくは記憶改竄で無かったことになる」という序盤の設定。

 

原典の『グリッドマン』はご存知コンピーター・ワールドでの戦いがメインで、敵が送り込むコンピーターウイルスをワクチン的なグリッドマンが討伐する、それを特撮ヒーローとして整えた作品。当然、コンピーターの中でのみ行われるからして、その戦いを知るのは基本的に関係者のみである。この「誰も知らない電脳空間で戦うヒーロー」という設定が、もしかしたら現実にも行われているのかもしれない、という儚い妄想を誘発するのだ。

 

『SSSS.GRIDMAN』は、「戦いの一切がリセットされる」という展開を用いることで、この「誰も知らない世界で戦うヒーロー」という『グリッドマン』の肝である設定を踏襲している。その戦いを知るのは、主人公とそれをサポートする学友、そして怪獣を送り込む敵キャラクター。基本的にはこの面々に限られていく。もしかしたら我々の日常もリセットされているだけでグリッドマンが戦ったあとかもしれない、なんて。

 

感想『SSSS.GRIDMAN』 「ぼくたちのヒーロー」がテレビに帰ってきたぞ! - ジゴワットレポート

 

私はこういう、「もしかしたら現実にもヒーローがいるかもしれない」という余韻を持たせてくれる描写が好きだ。それが嘘っぱちだと分かっていても、毎日がちょっとだけワクワクする。『電光超人グリッドマン』はコンピューター・ワールドで戦うので、もしかしたら親父の部屋にあるパソコンの中で戦ってるかもしれないし、リビングにある電話機の中に居るのかもしれない。そういう、ほのかな妄想がはかどる描写に、どうしようもなく心を奪われてしまう。

 

奇しくも、先日公開された仮面ライダーの映画も、そういう「ヒーローのいない現実」と「虚構のヒーロー」との距離を描いた作品だったので、私の好みにクリティカルヒットしてしまった。

 

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閑話休題。『SSSS.GRIDMAN』は前述の引用のように、「世界がリセットされる」という設定を用いることで、原典『グリッドマン』の「誰も知らない電脳世界」をリファインしてみせた。もしかしたら我々の生活のすぐ隣で、グリッドマンが戦っているのかもしれない。そういう、その昔覚えたワクワクを、しっかり蘇らせてくれたのが嬉しかった。

 

しかし、そんな私の理解はまだまだ浅かったことを思い知る。最終回のラストカット、布団の中から体を起こす実写のアカネ。全ては彼女の「夢の中」の話だったのだ。そして、その「夢」こそがアニメーション、対する「現実」が実写パートというオチである。(厳密には彼女のスマホないしそれに類するものの電脳世界の話だと思われるが、特撮版主題歌『夢のヒーロー』になぞらえて、あえてここは「夢」と表現したい)

 

要するに、「リセットされる世界」で『グリッドマン』の構造を踏襲したかと思えば、更にそのもう一段階上の、「ひとりの少女の夢の中」という構造があった訳である。二重にも、「人知れず戦う電光超人」を描く、入れ子の図式。内なる夢の中で好き勝手に世界(アニメーション)を創造し、そこに引きこもり外(現実)を向けない少女。そんな彼女の世界にやってきたのが、力の一部と記憶を失ったグリッドマンだった。

 

そして、そんなハイパーエージェントがひとりの少女の夢の中に彼女を救いに来たことで、「ああ、『電光超人グリッドマン』の後も、彼はこうして色んな世界や人間を救い続けてきたんだな」という余韻を感じさせてくれる。なんてにくいんだ。僕たちのグリッドマンは、おそらくずっと戦ってきたのだ。

 

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また、『電光超人グリッドマン』に限らず、特撮番組には「ドラマパート」と「特撮パート」という区分けがある。前者は言わずもがなの実写ドラマで、後者は、ミニチュアセットと着ぐるみとスーツ、操演に火薬が用いられる、至高の「作りもの」の世界だ。

 

この「作りもの」、つまり特撮というジャンルが持つ醍醐味を抽出し、新条アカネの「作りもの」の世界に符合させる。更には、最後に実写パートを挟むことで、今回の「作りもの」の世界こそが、今まで観てきたアニメーションという技法なんだと、そういう区分けを成立させる。

 

「ドラマパート」に対する「特撮パート」を、「実写パート」に対する「アニメーション」に読み替える。最後の最後にその種明かしをする。だから、目が覚めたら(「覚醒」したら)、そこは三次元の世界。そう、グリッドマンは次元を超えて世界を救いに来るのだ。例え、誰もそれも知らなくても、それでもハイパーエージェントは駆けつける。「アニメでグリッドマンをやる」「アニメで特撮をやる」という前提に対し、ここまで誠実な回答を示してくれるとは。天晴れである。

 

 

語り出せばきりが無いが、そういった、「グリッドマンの魅力」「グリッドマンの思い出」「今一度グリッドマンを、それをアニメでやるとはどういうことか」という諸課題に対し、ひとつひとつじっくりと検証し、分解・再構築し、今風にリファインし、最後にその全てを上回る「電光超人愛」でコーティングする。

 

そんな、制作スタッフの飽くなき挑戦をひしひしと感じた『SSSS.GRIDMAN』。あの頃『電光超人グリッドマン』を応援していた自分にとって、こんなに嬉しいことはない。

 

(そして、実写のアカネがおっさんじゃなくて本当に良かった。あり得たかもしれなかった。とはいえ、きっとグリッドマンなら、おっさんでも何の問題もなく救いに来てくれるだろう。なんたって、ハイパーエージェントなのだから。)

 

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TVアニメ「SSSS.GRIDMAN」オリジナルサウンドトラック

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