ジゴワットレポート

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感想『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』 私が長年観たかった「特撮」がそこにあった

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公開から一週遅れで、『劇場版ルーブ』、鑑賞してきました。本編の前半までの感想については、以前『特撮秘宝』に作品紹介として寄稿させていただいたので、そちらをご参照いただくとして。後半とクライマックスに関してはブログに書くタイミングを逃してしまっていたので、その辺りも含めて劇場版の感想としたいな、と。

 

TVシリーズでの戦いから一年後を舞台に、湊家の最後の戦いを描いた映画、『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』。「絆」あたりの単語は近年のウルトラマンでは多用されすぎてていて、実はちょっと食傷気味でもあるのですが、家族がメインテーマである本作としては、やはりこういうテーマに着地していくのかな、と。

 

 

『ウルトラマンR/B』自体は、色々と意見が割れる作品だったのかな、というのが本音。リアリティラインの置き方や、設定の明かし方、ウルトラマンという像の描き方として、不満を抱いてしまう人がいたのも分かる気がします。『オーブ』では特に平成ウルトラマンから扱われてきた光と闇というテーマをファンタジー路線で扱い、『ジード』ではゼロやベリアルという新時代のメイン級ウルトラマンを軸に継承の物語を展開した。どちらも、「ウルトラマン」という偉大なコンテンツの背中と、それに向けられたパブリックイメージに、様々な角度からアプローチした作品だったなあ、と。

 

続く『R/B』は、コメディかつホームドラマということで、『オーブ』『ジード』と比較すると作風がガラッと変わって。転じて、「ウルトラマンの描き方として軽い」という意見が出るのも分かるんですけど、とはいえ、変身した姿で饒舌なウルトラマンは過去にも何度も描かれていたり、コメディ追求なら『マックス』のエピソードにもいくつか振り切ったものがあったりで、実のところ、『R/B』は新機軸っぽく見えて、平成後期のウルトラマンがやってきた「陽」の部分の集大成だったと思うんですね。「ウルトラマンでここまでやれるぞ」、という挑戦も込めて。

 

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その結果として、確かに敵サイドのドラマが割を食っていたり、家族の物語を描くためか兄弟が何度も喧嘩してしまうなど、キレイでない側面もあったかもしれない。でも、明るく前向きに、兄弟が力を合わせて戦う、子供たちに向けたエンタメ特撮として、とても素直な作品だったと思うんですよ。もっと言えば、無邪気というか。家族の物語、兄弟から兄妹への流れ、子を守りたい母と送り出す父など、フォーカスして描きたいポイントはひしひしと伝わってきて。「陽」の側面に振り切ったウルトラ作品として、むしろ後年に向けた試金石というか、「ここ」に線を引いてみせたことに意義がある作品だったのでは、と。

 

といった感想を持っている訳ですが、そんな『R/B』の完結編として、今回の劇場版へと続いていく。家族がそれぞれの道へ歩み出す中、長男であるカツミは自分の夢に迷っていた。謎次元から干渉してくるトレギアは、カツミと、その友人との夢を問いかけ、そこにある絆を壊そうとする。湊家は、そして前作主人公であるリクは、そんな魔の存在にいかに立ち向かうのか。

 

ヒカリノキズナ

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まずシナリオとして、『R/B』の「家族の物語」と、『ジード』の「親子の物語」が、しっかり融合しているのが素晴らしくて。作風というか、作品テンション的には水と油な両作ですが、この一点についてはやっていることが非常に近い。そこをしっかり汲み取って、共存させる。当たり前といえば当たり前かもしれないですが、ここがしっかり整備されていたのはとてもポイントが高いんですよ。新旧共演は、共通するテーマ性の魅せ方が大事な訳です。

 

そして、リクですよね。何より彼の成長というか、その堂々した立ち振る舞い。観ているこっちは親戚のおじさんと化す!「リク、立派になって・・・」。屈託のない笑顔から、キリっとした表情、そして声の通る発声。先輩でありながら、親戚の甥っ子みたいなポジション。全てにおいてリクの旨味がちゃんと出ていて、『ジード』を観ていた人の多くは大満足だったのではないでしょうか。「たったひとりの母親だろ!」のシーンは、もう泣いたよね。ぐっときた。

 

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上で「『R/B』は陽ウルトラマンの集大成」と書いたけれど、まさにそれを象徴するように、基本は毒っけのあったジードがルーブのコメディワールドに取り込まれていく様子はとても面白く、リクもその中で伸び伸びとキャラクターを発揮させてたなあ、と。変身動作が被るカットもそうだし、決めセリフが混ざるとか、変身状態でのコントとか。でも、あの地を這うような低姿勢の構えがちゃんとそこにあるので、ジードらしさも損なわず。良い塩梅だったと思います。

 

などと色々と語ってきましたが、私が一番感動したのは、クライマックスの映像。VFXで描かれるウルトラマングルーブ。これがもう本当に素晴らしかった。

 

もう周回遅れの議論だと承知で書きますが、未だにネットには「特撮とCG」を対立項で語る意見が多くて。私は常々、それは違うんじゃ、と思ってきたのですよ。CGは、特撮の表現技術のひとつであって、むしろ内包されるものなんだと。せめて「SFXとVFX」と言ってくれ、と(我ながら面倒くさい上にこの区分けにも色々と注釈がつくのは承知ですが・・・)。要は、「特殊撮影」という意味でいくと、CGも立派な特撮な訳ですよ。どっちもあっていいじゃん、と。自分はこの立場の人間で。まあ、「特撮」を言葉・文化・技術・ジャンルのどれで語るかで前提が異なってくる話ではあるのですが。

 

とはいえ、だからこそ、『シン・ゴジラ』におけるVFXで描かれたゴジラや戦車、ミニチュアワークで破壊される街並みなどの共存には、最高にアガった訳です。この境目が分からないくらいの映像の精度。なんて素晴らしいんだ、と。「今やなんでもCGで出来る」なんて言われて久しいですが、直近の洋画では例えば『ファースト・マン』では新時代のリアプロジェクションのような撮影模様があったりで、従来のSFXと、その後年で発達してきたVFXを、随所で使い分けつつ共存させるのが近年のトレンドな訳ですよ。特撮好きとしては、これぞ「特殊撮影」なんだと、そういうアガりポイントを感じることが最近は多くて。

 

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

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特撮TVシリーズでいくと、平成仮面ライダーでは『クウガ』のゴウラムや『龍騎』のミラーモンスターでCGが意欲的に使用され、戦隊シリーズでは、『ガオレンジャー』のガオアニマルや『アバレンジャー』の爆竜、そして、『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』では遂にフルCGのロボがグリグリと動き回る映像が出てきた。国産TVシリーズ特撮でも、VFXがどんどん馴染み深く、そして着実に根付いてきた訳です。

 

そんな土壌でウルトラシリーズはどうだったかというと、まず平成三部作を経て、『ネクサス』での板野サーカスには当時夢中になりましたし、その前日譚である映画『ULTRAMAN』の空中戦にも目を丸くしたんですよね。ウルトラマンゼロが活躍するグリーンバックの背景に、『ウルトラマンサーガ』ではCGでミニチュアの街並みを広域に展開させていたり。その後も、『ギンガ』以降のニュージェネレーションな作品群でもCGは多用され、坂本監督によるスピーディーでアニメチックな使い方で印象的なカットが生まれるなど、振り返ると色々と語りたいポイントは多い。また、結局続報が無いので何とも語り辛いのですが、突如公開されたフルCGの『ウルトラマンn/a』なんてのもありましたね。

 

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主にSFXの意味での、文化しての「トクサツ」を色濃く受け継いできたウルトラシリーズにおいて、CGの本格導入というのは、ひとつの課題としてずっとあったと思うんです。そんな中で、前述のように、この平成後期の直近十数年、様々なアプローチがなされてきた。そんな積み重ねの結果か、今回の劇場版ルーブでは遂にフルCGのウルトラマンが活躍する。それもワンカットや要所での緩急づけではなく、正真正銘の本格使用。空中戦はもちろんのこと、実際のスーツであるジードと並び立ったり、スーツの造形を見せつけるかのような接写もあったりで、かなり攻めた映像に仕上がってるんですね。

 

これがもう本当に感動モノで。「特撮かCGか」なんて、そんな対立項で語ってる場合じゃないんですよ、と。CGという「特殊撮影」のニュージェネレーションですよ、これは。CGモリモリな映像としては『牙狼』なんかも大好きなんですが(シーズン2のクライマックスが最高でしたね)、今回の劇場版ルーブは、そのCGを使ったSFXとVFXの共存が丹念に模索されていて、そこが本当に素晴らしかったと思うんです。『シン・ゴジラ』でやっていたバランスを、もっとエンタメ的に色濃くやってみせる。その前向きな姿勢こそが、『R/B』の作風にもマッチしているな、と。

 

空中戦はもちろんのこと、同時に、俯瞰したフィールドで戦うジードやスネークダースネスをワンカットに納める。かと思いきや、その両者が戦う合間のビルを、CGのグルーブとトレギアが突き抜けていくんですよ。ビルの破壊と左右にいるジードや怪獣はSFXで、画面左に抜けていく絡み合ったウルトラマンたちはVFX。このワンカットに、「ああ!自分がここ数年ずっと観たかった『特撮』だ!!」となって、泣きそうになったんですね。グルーブが横に飛ばされてビルを連続で突き抜けていくカットもそうですし、手前を走る湊家の車を守るシーンも素晴らしかった。スーツのシワの質感を再現した感じもすごく良いですし、それでいて、兄妹が融合したことによる中性的なフォルムや流れるような動きもCGならでは。

 

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ウルトラマングルーブは実際のスーツも作られているのですが、それでもCGで通す。そこにすごい意気込みを感じる訳です。トレギアも、実際のスーツとフルCGとをカットで使い分けて、グルーブの実景との親和性を高める役割を担っていて。画面構成の随所にかなり気が使われているな、と。SFXとVFXの融合、ここまで出来るのか、と。

 

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そういう意味で、今作はVFX監督に神谷誠氏がクレジットされているんですよね。フルCG映画である『バイオハザード』等を監督されており、同時に、特撮監督や特撮助監督としてゴジラやガメラにも携われてきた方で、そのご経験がこれでもかと活きたのではないかな、と。ウルトラマングルーブ、本当に感涙モノの映像でした。ありがとうございます。

 

といったところで、後半ちょっと面倒くさい感じになりましたが、非常に素晴らしい作品だったと思います。「家族の絆」というもはや手垢のついたテーマを恥ずかしがらずに正面から扱い、その結果、兄妹が融合する新たなウルトラマンが登場する。そんなウルトラマンはVFXでグリグリと動き、SFXと見事に共存しつつ平成後期の絵作りを力技で総括していくような、エンタメ性と「陽」に満ちた活躍を見せる。続いて流れる主題歌が、「決して絆を諦めない」だなんて、順当だけどちゃんとしてるんですよ。ツボをしっかりと押さえてくれる。堅実。

 

そんな、物語の面では観たいものをしっかりと観せてくれて、映像では期待を上回る新たな可能性を感じさせてくれて、大満足の結果でした。シリーズ随一の人間味あふれるウルトラマンに対して「君は湊カツミか・ウルトラマンか」を突きつけるのも、とてもヒヤッとしました。この辺り、作風に自覚的だよなあ。トレギアの背景をばっさりと切っているのは賛否割れそうですが、この辺り、後続作品で拾ってくれそうな感じもあり・・・。

 

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