ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

ウルトラマンネクサスが『X』で魅せた11年ぶりの「夜襲」

思わず、咽び泣いてしまった。

 

場所は自宅のリビング。風呂上りの嫁さんはサッパリしてリビングに戻ったら旦那が嗚咽を漏らしていたので、正直ドン引きしたことだろう。しかし、『ウルトラマンX』第20話「絆 -Unite-」を観たその時の私は、人目(嫁目)をはばからずに泣き続けた。どうしても涙が止まらなかったのだ。

 

夜襲 -ナイトレイド-

 

さかのぼること11年前の2004年、『ウルトラマンネクサス』の放送が開始された。

 

※当記事は、移転前のブログに掲載した記事を転載し、加筆修正を行ったものです。(初稿:2015/12/9)

 

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ウルトラシリーズにおける異色作として、今もなお語り継がれている『ネクサス』。

 

「主人公はウルトラマンにならない」「ウルトラマンになる人間は劇中で変わっていく」「毎週必ず怪獣を倒す訳ではない」「陰鬱としたテイストで描かれる連続ドラマ」。結果として、その新機軸は広く受け入れられたとは言い難く、物語は早期終了という形で幕を閉じた。

 

『ネクサス』の予算事情については、決して、潤沢なものではなかったのだろう。円谷プロ自体が経営難だったことが最大の要因だ。それを受けてか、ネクサスは自ら「メタフィールド」という亜空間(別次元)を作り出し、そこで怪獣と戦うという設定が設けられた。もちろん、その亜空間は毎回同じセットであるため、ミニチュアの予算を大幅に削減できる。敵怪獣・スペースビーストは良くも悪くも生命力が強く、何週にもわたってウルトラマンと戦い続けた。これもまた、怪獣の着ぐるみにかける予算を削減する意味を持つ。

 

これらの「製作上の都合」が卵か鶏かは分からないが、作劇はそれを補うように構成されていった。

 

元レスキュー隊員の主人公・孤門一輝は、ある日銀色の巨人に命を救われる。そのウルトラマンに変身する姫矢准という青年は、戦場カメラマンの経験からトラウマと自責の念を抱き、孤独な戦いを続けていた。「ウルトラマンは我々の知らない亜空間で戦っている」というミステリアスな設定が、「次第に姫矢の心の内を知っていく孤門」という謎解きの構図に重なっていく。また、いわゆる「防衛隊」にあたるナイトレイダーも、多彩な科学を用いて事態の隠蔽を図る組織であり、その隠蔽性もウルトラマンそのものの謎や神秘性に一役買っている。

 

後にネクサスの力は千樹憐という青年に受け継がれる。そして、彼の自身の命を軽視した戦いぶりを、姫矢との関わりを経て成長した孤門がたしなめる、という流れに繋がっていく。

 

そんな憐の生い立ちを入り口として、ナイトレイダーという組織やネクサスの謎が明かされていくも、この辺りで番組の早期終了が見えてしまう。しかし、「巻き」の展開でありながら「ネクサスがネクサスらしくあること」を制作陣は最後まで崩さなかった。今でこそネットでは『ネクサス』を称賛する声に溢れているが(私もご多分に漏れずそのひとりだが)、もしかしたら、同作は早期終了を迎えたからこそ、ここまで語られているのかもしれない。あの怒涛のクライマックスと、リアルタイムでの「嗚呼、終わってしまう・・・」という冷や汗を伴う感覚。それが、作り手と視聴者に過度の緊張感をもたらしていたのだろう。

 

とは言いつつ、私は『ネクサス』は決して「驚くほど良く出来た作品」には届かないと感じている。

 

「好き」と「クオリティが高い」は、往々にしてイコールではないのだ。毎週のように似たような怪獣が出てくるにも関わらず、ウルトラマンは中々それを倒せない。そして、毎度のように苦戦する。数々の挑戦以前に、特撮ヒーローという土壌に一般的に求められる「カタルシス」「爽快感」というものが非常に偏っている。また、主人公がひたすら悩み続けるのも特徴で、恋人を悲惨な形で失った際には、放送リアルタイム換算で1ヶ月ほど抜け殻状態になっていた。土曜の朝に観る番組として、これほど不親切なものはない。

 

しかし、様々な(主に制作的に)過酷な状況の中でも、非常に熱い志で作られていることがカットごとにガンガン伝わってくる。それをウルトラマンでやるという構造そのものが、当時の私の頭を毎週のように殴り、酔わせていた。だからこそ、“私の中で”、『ウルトラマンネクサス』は間違いのない傑作のひとつにカウントされている。

 

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そんな劇的な最終回から、11年。シリーズ最新作である『ウルトラマンX』に、ネクサスが客演での登場を果たした。

 

『X』は、改めて振り返るとまさに「2周目のウルトラマンメビウス」とも言うべきタイトルに成長を遂げており、平成以降のウルトラマンたちが、多数、ゲスト登場を果たした。それも、ただ出てくるだけではない。しっかりと原典の面白さや魅力がそこに活きているため、ファンにはたまらない演出が頻出。何より、制作陣が「こだわって」「楽しく」やっていることがひしひしと伝わってくる。その明確なベクトルに、毎回大いに楽しませてもらった。(もちろん、客演回以外のアベレージも非常に高いということを書き添えておきたい)

 

 

第20話「絆 -Unite-」にて、ネクサスはなんと、防衛隊Xioの女性副隊長・橘さゆりを変身者として登場する。

 

ネクサスに変身できる者、つまり適能者(デュナミスト)であるが、それをすでに20話近く登場していた既存のキャラクターに割り当てるとは、とても大胆な構成である。とはいえ、そもそも「客演」なのだ。正直、孤門や姫矢がウルトラマンXとなる大空大地の前に現れて、「諦めるな!」と声をかけネクサスに変身し、一緒に戦った最後にオーバーレイ・シュトロームでも一発撃ってくれれば、それだけで拍手喝采する用意は存分にできていた。「ネクサスがまたテレビで観られる」、それこそが最大の旨味だからだ。

 

しかし、阿部雄一監督率いる制作陣は、当時と同じようなある種こちらを突き放す志の熱さを、11年ぶりに作中に込めた。

 

「女性の副隊長」がネクサスの適能者に選ばれるのは、言うまでもなく原典のナイトレイダー副隊長・西条凪をオマージュしたものだ。そう、ネクサスの力は受け継がれていくからこそ意味があり、それは作中でも度々明言されてきたことだった。ある意味、「孤門や姫矢が10年が経った今もネクサスの適能者であってはいけない」のだ。

 

だからこそ、まさかのシークレットゲストとして登場した孤門役の川久保拓司は、そのレスキューぶりでファンサービスを振りまきつつ、ネクサスをどこか確信じみた表情で見つめるだけに留まった。それは、過去に自身が持っていた力だからか、妻の鼓動を感じたからか。上手い塩梅でボカして魅せた演出に、惚れ惚れするばかりだ。

 

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その相手としてベムラーが登場するのは、ネクサスの第0話に相当する映画『ULTRAMAN』の敵怪獣ザ・ワンを引用しているのだろう。そこから繋いでか、湖で暴れるのも初代『ウルトラマン』の1話と同じである。

 

他にも、スペースビーストを上からの拳ひとつで倒すアンファンス、新宿というロケ地、何より「女性がウルトラマンに変身する」というインパクトなど、初めて『ネクサス』を目にした2004年10月2日の朝8時と同じ感覚に襲われてばかりだった。11年前に第1話「夜襲 -ナイトレイド-」を観た時の、「うわッ!これはこれまでのウルトラマンとは違う・・・!何かすごいものを観ている気がする!」という、ワクワク感。同時に込み上げる、「ウルトラマンでこれをやっていいの?」という仄かな焦燥感。

 

『ネクサス』が持つ観る側を突き放す不親切さは、作品に込められた志の熱さとイコールだ。だからこそ、その突き放された分の「距離感」を埋めたくて、視聴者は必死にそれを追いかける。そうして、次第に心を囚われていく。そんなあの頃の心の動きと全く同じパターンが、11年ぶりに、私の中で起きた。

 

「え?え?」と戸惑いながら。驚きながら。そうした、見えや絵面だけでなく『ネクサス』という番組そのものを客演させる手法。そしてそれを見事に「やれている」ことへの感動。これで嗚咽を漏らさない訳にはいかなかった。「感動して泣く」という言葉じゃ到底足りない感覚が、思いっきり頭を殴ってきたのだ。

 

メタフィールドなのにやや雲が見えすぎているとか、橘副隊長ならではの色違いのジュネッス形態が観たかったとか、その手の面倒オタクな感想も無いと言えば嘘になる。しかし、ただ単にネクサスを登場させるだけでなく、「ネクサスを客演させるという意義」をこれほどまでに高い地点に見出し、それが見事に達成されたこの『X』第20話は、本当に、素晴らしかったのだ。

 

現役の子供たちは、「ネクサスは女性が変身するウルトラマン」とでも捉えただろうか。それも、全く間違いではない。でも確実に伝わったのは、「ネクサスは他とは何かが違う変なウルトラマン」という、今後も不変であろう評価の根っこの部分であると、一介のこじらせたオタクとして信じて疑わないのだ。

 

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特撮ヒーロー番組は常に「現行が旬」である

『シン・ウルトラマン』の制作が発表された。特撮オタクとしてはもう色んな意味で驚きのタイトルなので、少なくとも同作の公開まではまたひとつ死ねない理由ができたな、といういつものムーブに突入している。続報が楽しみでならない。

 

そんなタイミングでTwitterのタイムラインを見ていると、「これを機にウルトラマンを観てみようかな」という人が・・・。それを受けて、つい、以下のようなツイートをしたところでした。

 

 

ウルトラマンに限らずライダーや戦隊も、「初心者に何をオススメするか」というトピックが交わされることが多い。私も、これまで何度も尋ねられたことがある。もちろん、「こんな作風が好きならあれがオススメ!」「この作品は映像がすごいぞ!」「誰それが出演しているあれはいいぞ!」というオススメも何度もしてきたのだけど、そこに枕詞のように置いているのが、「まずは今やっているやつがいいよ」という文言。

 

色々と主張はあると思うが、私は基本的に、「初心者には現行作品がオススメ」派です。

 

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というのも、その前提として、「作品の感想には匂いや空気や景色が伴う」と思っていて。

 

先日観た映画『きみと、波にのれたら』の感想でも書きましたが、音楽や映像作品に限らず、思い出というのは作品そのものだけに留まってはくれないんですよね。それを観ていた時に、どんな生活をしていたか。主に誰とコミュニケーションを取っていたか。どんな音楽を聴いていたか。何を嗜好していたか。窓から見える景色、街並みとそこにある匂い。そういうのが複合的に絡み合って、「感想」や「思い出」になっていく。

 

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だから、例えば特定の音楽を聴く度に当時付き合っていた相手のことを思い出したり、ある映画を観ると実家を離れて少しだけ涙したあの頃の感覚が蘇ったり、本棚から漫画を取り出せば友人たちと夜遅くまで馬鹿やってた時代を懐かしんだりする。「作品の感想」というのは、その作品の登場人物だの謎だの演出だの伏線だの云々とはまた別に、そういった個々人の半生と伴って形作られるものだと捉えている。

 

だからこそ、リアルタイムの現行作品なのだ。ウルトラマンでいえば、現在放送中の『ウルトラマンタイガ』。仮面ライダーは、『ジオウ』はもう終わってしまうので、例えば今度始まる『ゼロワン』を。戦隊なら『リュウソウジャー』ですね。その作品のクオリティがどうとか、人を選ぶかもしれないとか、そういうのを全部取っ払った先にある「今やっているものを毎週追う」ことの意味。これが本当に大きいと思うのです。

 

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もちろん、今や動画配信サービスが定番なので、後から一気に追うことも可能である。これはこれで、本当に素晴らしいことだ。記憶が鮮明なうちにすぐ次の話を視聴できるので、理解度も深まるだろう。作品を深く味わうことに焦点を絞るのならば、むしろ一気観の方が適しているかもしれない。

 

しかし、ここには絶対的に「半生」が伴わない。

 

毎週放送される最新話を観て、その次の話までの一週間の暮らし。誰それと会話して、嬉しいことも凹むこともあって、そしてまた訪れる最新話。一週間のうちに、SNSで作品の感想を読んだり、ネットの海から考察を漁ったり、外に出ればそのヒーローがキャンペーンでチラシに載っていたり、お店には玩具が並んでいたりする。映画館に行けば変身アイテムを持った子どもが目を輝かせ、ヒーローショーでは声援が飛び交う。

 

そういった「半生」を伴わせた感想は、いつしか「思い入れ」に昇華されるのである。作品の評価軸とは全く別のゾーンにある、その作品への気持ちのベクトル。「愛着」と言っても良いかもしれない。

 

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また、こういった特撮ヒーローは後年の映画等で作品の垣根を超えて集合するのが常なのだが、この時に、「リアルタイムで追ってきた」というプライスが限界突破で炸裂していく。登場するヒーローの両肩には、我々ひとりひとりの半生が乗っかっているのだ。

 

颯爽と現れる先輩ライダー。彼を一年間追っていたあの頃、自分は就活中でコーヒーをがぶ飲みしながら何枚も履歴書を書いていた。後輩を助ける歴戦のウルトラマン。この作品を観ていた頃は、今はもう離れたあの土地に住んでいて行きつけの居酒屋だってあった。

 

そんな集合作品で展開されるのは、「ヒーロー大集合」に見せかけて、実のところ「僕の・私の半生大集合」なのである。なので、驚くほどに化ける。思い入れと思い入れが渋滞を起こしていくので、涙腺はびっくりするほど緩くなっていくし、胸は自然と高まってしまう。これこそが、「現行を追う」ことの最大の価値なのだと、繰り返し繰り返し実感していく。「よくぞ追っていたぞ、数年前の自分!」と、過去の自分を褒めたくもなってしまう。(もちろん、作品の内容によっては、たまにこれが諸刃の剣となるのだけど・・・)

 

例えば全50話の作品を一日一話のペースで一気に観たとして、50日。しかし、それをリアルタイムで毎週観ていくと、当然のように365日を要する。単純計算で7倍以上。「その作品と過ごす人生」を、7倍以上も積み重ねることになる。そりゃあ、「思い入れ」になりますよね。制作スタッフも、キャストも、同じ365日を生きながらその作品を作っていく。最新話までの一週間を、監督や脚本家やキャスト陣も同じだけ過ごしている。どうしたらもっと面白くなるだろう。どうしたらもっと良い演技ができるだろう。その結実が、電波に乗って週単位で届く。当たり前すぎる話だけど、やっぱりこれって、本当にプライスレスだと思うのです。

 

「2019年の初夏に『ウルトラマンタイガ』を観た」「2019年の秋に『仮面ライダーゼロワン』を観た」。この体験の可能性こそが、今や数えるほどしかない特撮ヒーロー番組の、最大のストロングポイントなのかな、と。動画配信サービスで「後から追える」環境が強化されてきたからこそ、だからこそ、リアルタイムで。私はこれを、勧めています。

 

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『別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019』に作品レビューで参加しています

お仕事の報告です。

 

7月8日に洋泉社より発売される『別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019』にて、執筆陣の末席を汚しております。タイトル通り、「平成という時代に放送・公開された特撮作品」をシリーズや制作会社を問わず網羅する、ある種の決定版&資料性の高い一冊です。

 

別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019

 

本書にて、私は計13作品のレビューを担当しています。膨大な全体数に比べれば、ひどく些細な点数ですが。それぞれ、作品の概要・あらすじ・見どころなどをまとめています。

 

担当作品は、仮面ライダーだと『仮面ライダーオーズ』『仮面ライダービルド』『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』他、戦隊は『特命戦隊ゴーバスターズ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』他、ウルトラマンは『ウルトラマンネクサス』、その他、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(前後篇)』や『超星神グランセイザー』など。

 

自分が担当したページを中心に事前にゲラ刷りを確認しておりますが、情報の密度がすごいのなんの・・・。もはや辞典ですよこれは。「特撮」好きの皆様、一家に一冊、いかがでしょうか。

 

平成30年と4カ月。11069日間平成特撮の軌跡!

 

執筆者64名、総レビュー数400!
全社混合、媒体問わず、
大ボリュームで平成の特撮を振り返る超決定版!

 

平成特撮31年カラーギャラリー

 

●スーパー戦隊
●メタルヒーロー
●ゴジラ
●ガメラ
●ウルトラマン
●仮面ライダー
●戦争映画
●オカルト
●クリーチャー
●巨大特撮
●牙狼-GARO-
●等身大ヒーロー
●バイオレンス
●ロボット
●ヒロイン・ファンタジー
●SF/ファンタジー
●実写化映画
●一般映画の特撮

 

【対談・インタビュー】
対談:若狭新一&小中千昭
対談:会川昇&荒川稔久
対談:西川伸司&品田冬樹
対談:三池敏夫&寒河江弘
対談:尾上克郎&大屋哲夫
座談会:開田裕治&大内ライダー&タカハシヒョウリ
インタビュー:藤原カクセイ
対談:佛田洋&田口清隆

 

【コラム】
Vシネマの特撮/平成のスーツアクター/平成の特撮音楽/Jホラーと平成特撮/
平成特撮CM/その頃、世界では/ピンク映画の特撮作品/
昭和・平成・令和の河崎実/ガンエフェクトの進化
平成特撮主要作品年表

 

【執筆】
會川 昇/青井邦夫/秋田英夫/アベ ユーイチ/荒川史絵/飯塚貴士/
石井 誠/石熊勝己/五十棲遥太/市川綾子/今井 敦/煎野鷹之/
榎本健吾/大内ライダー/大口孝之/大倉崇裕/岡 秀樹/岡本敦史/
尾崎一男/ガイガン山崎/かとう あきら/加藤よしき/加藤 礼次朗/
金田益実/唐沢なをき/キシオカタカシ/切通理作/矩形葉児/小林雄次/
坂井孝行/寒河江弘/佐藤 樹/清水俊文/清水直樹/朱川湊人/白石雅彦/
神武団四郎/鈴村展弘/高鳥都/タカハシヒョウリ/田口清隆/
武富元太郎/田野辺尚人/辻本貴則/冬門稔弐/トヨタトモヒサ/中沢 健/
中島紳介/なかの★陽/中村宏治/中村 哲/西畑泉紅/Bazil/馬場裕也/
林谷和樹/樋口尚文/ほりのぶゆき/馬飼野元宏/円山剛士/三池敏夫/
村井さだゆき/モルモット吉田/結騎了/ロボ石丸/鷲巣義明

 

別冊映画秘宝 平成大特撮1989-2019 - 株式会社洋泉社 雑誌、新書、ムックなどの出版物に関する案内。

 

別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019

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「特撮はライダーや戦隊だけじゃない」問題に思うこと

「特撮」という漢字二文字に抱くイメージ、あるいはそれが意味するところは、もちろん、人によって異なるのだろう。それを撮影技法として解釈するか、映像文化のジャンルのひとつで扱うかで、話はいくらでもややこしくなるのだけど。

 

私も特撮好きのひとりとしてTwitterで生息しているが、この界隈では度々、この「特撮」におけるボヤのような事態が起こる。それは、「特撮好きと言いながらライダーや戦隊しか観ていない奴ら」といった攻撃であったり、「ライダーや戦隊だって立派な特撮なんだから『特撮ファン』で構わないはずだ」等の反撃であったり、それはそれは、尽きることのない小競り合いである。

 

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「特撮」をさかのぼっていくと、トリック撮影による『月世界旅行』や、レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションなど、もうそれだけで話がいつまでも終わらなくなってしまう。日本の文化、映像ジャンルとして絞り込むならば、ウルトラマンやゴジラといった巨大特撮(怪獣特撮)、仮面ライダーやスーパー戦隊に代表される等身大ヒーロー特撮、等々が主たるところだろう。

 

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元は撮影技法としての「特殊撮影」を意味していた単語が、ウルトラマン・ゴジラ・仮面ライダーといった世代を超えて愛されるキャラクターを生み出すにつれ、その定義を次第に「撮影技法」から「文化」「ジャンル」へと傾けてきた。

 

撮影技法としての「特撮」であれば、今や一般ドラマでも大いに用いられている。本当は刺されていないのに血を吐き、撃たれていないのに服が裂ける。技法としての「特撮」を取り入れていない映像作品を探す方が、むしろ難しいだろう。

 

一方、冒頭で触れたのは、文化やジャンルの方の「特撮」である。2019年初夏の今現在で挙げれば、毎週放送中の『仮面ライダージオウ』『騎士竜戦隊リュウソウジャー』をはじめ、間もなく放送が開始される新番組『ウルトラマンタイガ』、絶賛公開中の『ゴジラ / キング・オブ・モンスターズ』、広義でいけば『アベンジャーズ / エンドゲーム』『X-MEN:ダーク・フェニックス』も近しいジャンルと言えるだろう。

 

ただ、そこにおいて、『ゴジラ』『ウルトラマン』を始めとする巨大特撮・怪獣特撮こそが「特撮」だと主張する層もあれば、仮面ライダーやスーパー戦隊を愛好する自分を「特撮好き」と自称する層もある。細分化すればきりがないが、ひどく大雑把に分類すると、このふたつの層が不毛な争いを繰り広げることが少なくない。私も、Twitterでそれを何度も目にしてきた。

 

例えば貴方が筋金入りの「ビールオタク」だったとして。「エビスしか飲んだことがない人」が「ビール好き」を名乗ったら、どう思うだろうか。例えば貴方が長年の「Apple信者」だったとして、「最新のiPhoneしか使ったことがない人」が「Appleオタク」を名乗ったら、どう感じるだろうか。いわゆる「にわか」を嫌悪するオタクの構図だとか、とはいえ最初は誰もが「新参者」だったファンの層の話だとか、そこを掘っていくとこれまた話が永遠に終わらなくなってしまう。

 

あくまで、あえての定義の話でいくならば、ウルトラマンもゴジラもライダーも戦隊も、仮にどれかひとつでも好きならば、「特撮好き」と言えるのだろう。それをその人が事あるごとに自称するのか否かは、個々人の感性や自意識の問題である。私なぞがとやかく言うことではない。定義としての正しさと、それをそのままに発露して火傷する面倒臭いネットの空気感については、誰もがある程度の体感をもって学んできたのである。

 

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ただ、「特撮」の話でいくと、ライダー・戦隊には「継続性」というこの上ない強みがある。

 

現行のスーパー戦隊シリーズなら約40年、平成仮面ライダーだけでも約20年。これらのシリーズは、ひたすらに新番組を提供し続けてきた。今や世代を超えて、親子で戦隊やライダーを観る時代。一方で、ゴジラやウルトラマンももちろん長い歴史を誇るのだけど、戦隊やライダーに比べると、休止となった期間もあった。ゴジラがシリーズとして息を吹き返したのはつい近年のことだし、ウルトラマンも、一年を通してのテレビシリーズは06年の『ウルトラマンメビウス』以降現在も制作されていない。

 

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これが何を意味するかというと、Twitter等の利用者率が高い若年層にとっては、下手をすれば「特撮=戦隊・ライダー」が当たり前なのかもしれない、ということだ。

 

『ウルトラマンメビウス』から『ウルトラマンギンガ』まででも、その間は7年。『ゴジラ FINAL WARS』から『シン・ゴジラ』だと12年になる。その間、戦隊やライダーは休むことなく新しいヒーローを世に送り出し、世代を超えてファンを作り続けてきた。

 

もちろん、これをもって安易に「続いている方が偉い」などとは、口が裂けても言うまい。決して、そういう話ではない。ただ、実態として、ウルトラマンもゴジラも戦隊もライダーも群雄割拠だった「特撮」を生きた世代と、気付けば毎年のように出会えるのは戦隊とライダーくらいしかなかったかもしれない「特撮」を生きた世代が、存在するのではないだろうか、という話だ。(映像メディアの普及もあるので、あくまで傾向の話として)

 

冒頭の、「特撮好きと言いながらライダーや戦隊しか観ていない奴ら」も、「ライダーや戦隊だって立派な特撮なんだから『特撮ファン』で構わないはずだ」も、そういうジャンル史が背景にあったとしたら、どうだろう。

 

また、これは作風やアプローチの違いなのだが、戦隊やライダーは様々な流行り物を雑多に取り込み、映画も音楽も舞台もホビーも何もかも、無数の選択肢を毎年のように提供し続けている。

 

何てことない台詞がキャプションと共にネットミーム化することもあれば、キャストへの黄色い声援が飛び交う場面も少なくない。SNSでの実況とも相性が良く、毎週のようにトレンドを席巻。俳優ファンにも声優ファンにもアニメファンにも、様々な界隈にアプローチを仕掛けていく制作スタイル。

 

つまりは「フック」が驚くほどに多く、雪だるま式にファンを増やしていくのが常なのだ。ウルトラマンやゴジラと比べて、(ひいては東映・円谷・東宝のコンテンツの扱い方の違いにも繋がるのだが)、ライダーや戦隊はひどくガラパゴス化が進んできたとも言える。(「フック」が多いということは、ファンの好みの細分化が加速することも意味する)

 

加えて何度も書いているように、「特撮」という二文字の定義そのものにおいて、個々人によってかなりの差があるのだ。

 

思い返せば私も、VHSの『ウルトラビッグファイト』からこのジャンルに触れ、平成VSゴジラを映画館で観て、戦隊シリーズを毎年追い、平成ライダーの始まりに立ち会い、そうして中学生の頃だったろうか、私がこれまで愛好してきた作品群が「特撮」という二文字で一応のジャンルとして「くくれる」ことに、ひどく驚いた記憶がある。

 

だって、ウルトラマンもゴジラも戦隊もライダーも、「楽しみ方」が割とかなり異なるのだ。これがひとつのジャンルとして認知されていること自体に、妙な違和感を覚えながらも、次第に慣れていった経緯がある。今でこそ「特撮好き」と気軽に名乗ることもあるが、本当は、「ウルトラマン好き、ゴジラ好き、戦隊好き、ライダー好き、etc.」と、それぞれ分けて表明したいくらいである。

 

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つまりは、「継続性」の面から見た世代の隔たりと、「特撮」という二文字が持つあまりの多様さ。これらが複雑に絡み合い、そこに私も例外ではないオタクの面倒臭い生態が加わることで、先のような不毛な小競り合いに繋がってしまうのではないだろうか。「特撮はライダーや戦隊だけじゃない」問題にはこういう背景があるのではと、思うところである。

 

綺麗ごとかもしれないが、願わくば同じ「実写フィクションを愛好する者」として、そこに隔たりなど設けて欲しくないな、と思うのだ。興味さえあれば、の話にはなってしまうが。

 

戦隊やライダーは確かにガラパゴス化が進み今や特殊なジャンルとなっているが、ウルトラマンやゴジラやその他の特撮作品にも、それらとはまた違った映像技法が詰め込まれている。そこを読んでいく楽しさは、尽きることがない。

 

戦隊の巨大ロボとゴジラの撮り方は近いサイズ感でもアプローチが異なっていたり、ライダーのCGとウルトラマンのCGも画面構成としてそれぞれ別物の進化を遂げている。戦隊やライダーも、一昔前では考えられないほどコンテンツとして太く厚く変容した。「特撮」を広く解釈していけば、人形劇も、アメコミ実写映画も、アクション映画も何もかも・・・ 懐かしの『ニャッキ!』や『ロボットパルタ』だって、「特撮」と言えてしまうのである。

 

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こうして私もブログを書きながら、微力ながら、その一端を担えたりするのだろうか、と考えることがある。

 

ライダーだけでなく、戦隊もゴジラもウルトラマンも。その他の怪獣もヒーローも。特殊撮影が用いられた映画についても。・・・徒然なるままに記事を更新しているが、何らかのきっかけで「これも観てみようかな」と、そういう人がひとりでもいればこの上ない喜びなのである。嘘を本当にする職人芸に、魅せられたオタクとして。

 

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ゴジラ キャラクター大全 東宝特撮映画全史

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感想『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』 私が長年観たかった「特撮」がそこにあった

公開から一週遅れで、『劇場版ルーブ』、鑑賞してきました。本編の前半までの感想については、以前『特撮秘宝』に作品紹介として寄稿させていただいたので、そちらをご参照いただくとして。後半とクライマックスに関してはブログに書くタイミングを逃してしまっていたので、その辺りも含めて劇場版の感想としたいな、と。

 

TVシリーズでの戦いから一年後を舞台に、湊家の最後の戦いを描いた映画、『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』。「絆」あたりの単語は近年のウルトラマンでは多用されすぎてていて、実はちょっと食傷気味でもあるのですが、家族がメインテーマである本作としては、やはりこういうテーマに着地していくのかな、と。

 

 

『ウルトラマンR/B』自体は、色々と意見が割れる作品だったのかな、というのが本音。リアリティラインの置き方や、設定の明かし方、ウルトラマンという像の描き方として、不満を抱いてしまう人がいたのも分かる気がします。『オーブ』では特に平成ウルトラマンから扱われてきた光と闇というテーマをファンタジー路線で扱い、『ジード』ではゼロやベリアルという新時代のメイン級ウルトラマンを軸に継承の物語を展開した。どちらも、「ウルトラマン」という偉大なコンテンツの背中と、それに向けられたパブリックイメージに、様々な角度からアプローチした作品だったなあ、と。

 

続く『R/B』は、コメディかつホームドラマということで、『オーブ』『ジード』と比較すると作風がガラッと変わって。転じて、「ウルトラマンの描き方として軽い」という意見が出るのも分かるんですけど、とはいえ、変身した姿で饒舌なウルトラマンは過去にも何度も描かれていたり、コメディ追求なら『マックス』のエピソードにもいくつか振り切ったものがあったりで、実のところ、『R/B』は新機軸っぽく見えて、平成後期のウルトラマンがやってきた「陽」の部分の集大成だったと思うんですね。「ウルトラマンでここまでやれるぞ」、という挑戦も込めて。

 

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その結果として、確かに敵サイドのドラマが割を食っていたり、家族の物語を描くためか兄弟が何度も喧嘩してしまうなど、キレイでない側面もあったかもしれない。でも、明るく前向きに、兄弟が力を合わせて戦う、子供たちに向けたエンタメ特撮として、とても素直な作品だったと思うんですよ。もっと言えば、無邪気というか。家族の物語、兄弟から兄妹への流れ、子を守りたい母と送り出す父など、フォーカスして描きたいポイントはひしひしと伝わってきて。「陽」の側面に振り切ったウルトラ作品として、むしろ後年に向けた試金石というか、「ここ」に線を引いてみせたことに意義がある作品だったのでは、と。

 

といった感想を持っている訳ですが、そんな『R/B』の完結編として、今回の劇場版へと続いていく。家族がそれぞれの道へ歩み出す中、長男であるカツミは自分の夢に迷っていた。謎次元から干渉してくるトレギアは、カツミと、その友人との夢を問いかけ、そこにある絆を壊そうとする。湊家は、そして前作主人公であるリクは、そんな魔の存在にいかに立ち向かうのか。

 

ヒカリノキズナ

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まずシナリオとして、『R/B』の「家族の物語」と、『ジード』の「親子の物語」が、しっかり融合しているのが素晴らしくて。作風というか、作品テンション的には水と油な両作ですが、この一点についてはやっていることが非常に近い。そこをしっかり汲み取って、共存させる。当たり前といえば当たり前かもしれないですが、ここがしっかり整備されていたのはとてもポイントが高いんですよ。新旧共演は、共通するテーマ性の魅せ方が大事な訳です。

 

そして、リクですよね。何より彼の成長というか、その堂々した立ち振る舞い。観ているこっちは親戚のおじさんと化す!「リク、立派になって・・・」。屈託のない笑顔から、キリっとした表情、そして声の通る発声。先輩でありながら、親戚の甥っ子みたいなポジション。全てにおいてリクの旨味がちゃんと出ていて、『ジード』を観ていた人の多くは大満足だったのではないでしょうか。「たったひとりの母親だろ!」のシーンは、もう泣いたよね。ぐっときた。

 

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上で「『R/B』は陽ウルトラマンの集大成」と書いたけれど、まさにそれを象徴するように、基本は毒っけのあったジードがルーブのコメディワールドに取り込まれていく様子はとても面白く、リクもその中で伸び伸びとキャラクターを発揮させてたなあ、と。変身動作が被るカットもそうだし、決めセリフが混ざるとか、変身状態でのコントとか。でも、あの地を這うような低姿勢の構えがちゃんとそこにあるので、ジードらしさも損なわず。良い塩梅だったと思います。

 

などと色々と語ってきましたが、私が一番感動したのは、クライマックスの映像。VFXで描かれるウルトラマングルーブ。これがもう本当に素晴らしかった。

 

もう周回遅れの議論だと承知で書きますが、未だにネットには「特撮とCG」を対立項で語る意見が多くて。私は常々、それは違うんじゃ、と思ってきたのですよ。CGは、特撮の表現技術のひとつであって、むしろ内包されるものなんだと。せめて「SFXとVFX」と言ってくれ、と(我ながら面倒くさい上にこの区分けにも色々と注釈がつくのは承知ですが・・・)。要は、「特殊撮影」という意味でいくと、CGも立派な特撮な訳ですよ。どっちもあっていいじゃん、と。自分はこの立場の人間で。まあ、「特撮」を言葉・文化・技術・ジャンルのどれで語るかで前提が異なってくる話ではあるのですが。

 

とはいえ、だからこそ、『シン・ゴジラ』におけるVFXで描かれたゴジラや戦車、ミニチュアワークで破壊される街並みなどの共存には、最高にアガった訳です。この境目が分からないくらいの映像の精度。なんて素晴らしいんだ、と。「今やなんでもCGで出来る」なんて言われて久しいですが、直近の洋画では例えば『ファースト・マン』では新時代のリアプロジェクションのような撮影模様があったりで、従来のSFXと、その後年で発達してきたVFXを、随所で使い分けつつ共存させるのが近年のトレンドな訳ですよ。特撮好きとしては、これぞ「特殊撮影」なんだと、そういうアガりポイントを感じることが最近は多くて。

 

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特撮TVシリーズでいくと、平成仮面ライダーでは『クウガ』のゴウラムや『龍騎』のミラーモンスターでCGが意欲的に使用され、戦隊シリーズでは、『ガオレンジャー』のガオアニマルや『アバレンジャー』の爆竜、そして、『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』では遂にフルCGのロボがグリグリと動き回る映像が出てきた。国産TVシリーズ特撮でも、VFXがどんどん馴染み深く、そして着実に根付いてきた訳です。

 

そんな土壌でウルトラシリーズはどうだったかというと、まず平成三部作を経て、『ネクサス』での板野サーカスには当時夢中になりましたし、その前日譚である映画『ULTRAMAN』の空中戦にも目を丸くしたんですよね。ウルトラマンゼロが活躍するグリーンバックの背景に、『ウルトラマンサーガ』ではCGでミニチュアの街並みを広域に展開させていたり。その後も、『ギンガ』以降のニュージェネレーションな作品群でもCGは多用され、坂本監督によるスピーディーでアニメチックな使い方で印象的なカットが生まれるなど、振り返ると色々と語りたいポイントは多い。また、結局続報が無いので何とも語り辛いのですが、突如公開されたフルCGの『ウルトラマンn/a』なんてのもありましたね。

 

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主にSFXの意味での、文化しての「トクサツ」を色濃く受け継いできたウルトラシリーズにおいて、CGの本格導入というのは、ひとつの課題としてずっとあったと思うんです。そんな中で、前述のように、この平成後期の直近十数年、様々なアプローチがなされてきた。そんな積み重ねの結果か、今回の劇場版ルーブでは遂にフルCGのウルトラマンが活躍する。それもワンカットや要所での緩急づけではなく、正真正銘の本格使用。空中戦はもちろんのこと、実際のスーツであるジードと並び立ったり、スーツの造形を見せつけるかのような接写もあったりで、かなり攻めた映像に仕上がってるんですね。

 

これがもう本当に感動モノで。「特撮かCGか」なんて、そんな対立項で語ってる場合じゃないんですよ、と。CGという「特殊撮影」のニュージェネレーションですよ、これは。CGモリモリな映像としては『牙狼』なんかも大好きなんですが(シーズン2のクライマックスが最高でしたね)、今回の劇場版ルーブは、そのCGを使ったSFXとVFXの共存が丹念に模索されていて、そこが本当に素晴らしかったと思うんです。『シン・ゴジラ』でやっていたバランスを、もっとエンタメ的に色濃くやってみせる。その前向きな姿勢こそが、『R/B』の作風にもマッチしているな、と。

 

空中戦はもちろんのこと、同時に、俯瞰したフィールドで戦うジードやスネークダースネスをワンカットに納める。かと思いきや、その両者が戦う合間のビルを、CGのグルーブとトレギアが突き抜けていくんですよ。ビルの破壊と左右にいるジードや怪獣はSFXで、画面左に抜けていく絡み合ったウルトラマンたちはVFX。このワンカットに、「ああ!自分がここ数年ずっと観たかった『特撮』だ!!」となって、泣きそうになったんですね。グルーブが横に飛ばされてビルを連続で突き抜けていくカットもそうですし、手前を走る湊家の車を守るシーンも素晴らしかった。スーツのシワの質感を再現した感じもすごく良いですし、それでいて、兄妹が融合したことによる中性的なフォルムや流れるような動きもCGならでは。

 

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ウルトラマングルーブは実際のスーツも作られているのですが、それでもCGで通す。そこにすごい意気込みを感じる訳です。トレギアも、実際のスーツとフルCGとをカットで使い分けて、グルーブの実景との親和性を高める役割を担っていて。画面構成の随所にかなり気が使われているな、と。SFXとVFXの融合、ここまで出来るのか、と。

 

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そういう意味で、今作はVFX監督に神谷誠氏がクレジットされているんですよね。フルCG映画である『バイオハザード』等を監督されており、同時に、特撮監督や特撮助監督としてゴジラやガメラにも携われてきた方で、そのご経験がこれでもかと活きたのではないかな、と。ウルトラマングルーブ、本当に感涙モノの映像でした。ありがとうございます。

 

といったところで、後半ちょっと面倒くさい感じになりましたが、非常に素晴らしい作品だったと思います。「家族の絆」というもはや手垢のついたテーマを恥ずかしがらずに正面から扱い、その結果、兄妹が融合する新たなウルトラマンが登場する。そんなウルトラマンはVFXでグリグリと動き、SFXと見事に共存しつつ平成後期の絵作りを力技で総括していくような、エンタメ性と「陽」に満ちた活躍を見せる。続いて流れる主題歌が、「決して絆を諦めない」だなんて、順当だけどちゃんとしてるんですよ。ツボをしっかりと押さえてくれる。堅実。

 

そんな、物語の面では観たいものをしっかりと観せてくれて、映像では期待を上回る新たな可能性を感じさせてくれて、大満足の結果でした。シリーズ随一の人間味あふれるウルトラマンに対して「君は湊カツミか・ウルトラマンか」を突きつけるのも、とてもヒヤッとしました。この辺り、作風に自覚的だよなあ。トレギアの背景をばっさりと切っているのは賛否割れそうですが、この辺り、後続作品で拾ってくれそうな感じもあり・・・。

 

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