ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

特撮ヒーロー番組は常に「現行が旬」である

FOLLOW ME 

『シン・ウルトラマン』の制作が発表された。特撮オタクとしてはもう色んな意味で驚きのタイトルなので、少なくとも同作の公開まではまたひとつ死ねない理由ができたな、といういつものムーブに突入している。続報が楽しみでならない。

 

そんなタイミングでTwitterのタイムラインを見ていると、「これを機にウルトラマンを観てみようかな」という人が・・・。それを受けて、つい、以下のようなツイートをしたところでした。

 

 

ウルトラマンに限らずライダーや戦隊も、「初心者に何をオススメするか」というトピックが交わされることが多い。私も、これまで何度も尋ねられたことがある。もちろん、「こんな作風が好きならあれがオススメ!」「この作品は映像がすごいぞ!」「誰それが出演しているあれはいいぞ!」というオススメも何度もしてきたのだけど、そこに枕詞のように置いているのが、「まずは今やっているやつがいいよ」という文言。

 

色々と主張はあると思うが、私は基本的に、「初心者には現行作品がオススメ」派です。

 

スポンサーリンク

 

 

 

というのも、その前提として、「作品の感想には匂いや空気や景色が伴う」と思っていて。

 

先日観た映画『きみと、波にのれたら』の感想でも書きましたが、音楽や映像作品に限らず、思い出というのは作品そのものだけに留まってはくれないんですよね。それを観ていた時に、どんな生活をしていたか。主に誰とコミュニケーションを取っていたか。どんな音楽を聴いていたか。何を嗜好していたか。窓から見える景色、街並みとそこにある匂い。そういうのが複合的に絡み合って、「感想」や「思い出」になっていく。

 

www.jigowatt121.com

 

だから、例えば特定の音楽を聴く度に当時付き合っていた相手のことを思い出したり、ある映画を観ると実家を離れて少しだけ涙したあの頃の感覚が蘇ったり、本棚から漫画を取り出せば友人たちと夜遅くまで馬鹿やってた時代を懐かしんだりする。「作品の感想」というのは、その作品の登場人物だの謎だの演出だの伏線だの云々とはまた別に、そういった個々人の半生と伴って形作られるものだと捉えている。

 

だからこそ、リアルタイムの現行作品なのだ。ウルトラマンでいえば、現在放送中の『ウルトラマンタイガ』。仮面ライダーは、『ジオウ』はもう終わってしまうので、例えば今度始まる『ゼロワン』を。戦隊なら『リュウソウジャー』ですね。その作品のクオリティがどうとか、人を選ぶかもしれないとか、そういうのを全部取っ払った先にある「今やっているものを毎週追う」ことの意味。これが本当に大きいと思うのです。

 

【Amazon.co.jp限定】『ウルトラマンタイガ』オープニングテーマ「Buddy,steady,go!」(通常盤) (L判ブロマイド付) 

 

もちろん、今や動画配信サービスが定番なので、後から一気に追うことも可能である。これはこれで、本当に素晴らしいことだ。記憶が鮮明なうちにすぐ次の話を視聴できるので、理解度も深まるだろう。作品を深く味わうことに焦点を絞るのならば、むしろ一気観の方が適しているかもしれない。

 

しかし、ここには絶対的に「半生」が伴わない。

 

毎週放送される最新話を観て、その次の話までの一週間の暮らし。誰それと会話して、嬉しいことも凹むこともあって、そしてまた訪れる最新話。一週間のうちに、SNSで作品の感想を読んだり、ネットの海から考察を漁ったり、外に出ればそのヒーローがキャンペーンでチラシに載っていたり、お店には玩具が並んでいたりする。映画館に行けば変身アイテムを持った子どもが目を輝かせ、ヒーローショーでは声援が飛び交う。

 

そういった「半生」を伴わせた感想は、いつしか「思い入れ」に昇華されるのである。作品の評価軸とは全く別のゾーンにある、その作品への気持ちのベクトル。「愛着」と言っても良いかもしれない。

 

スポンサーリンク

 

 

 

また、こういった特撮ヒーローは後年の映画等で作品の垣根を超えて集合するのが常なのだが、この時に、「リアルタイムで追ってきた」というプライスが限界突破で炸裂していく。登場するヒーローの両肩には、我々ひとりひとりの半生が乗っかっているのだ。

 

颯爽と現れる先輩ライダー。彼を一年間追っていたあの頃、自分は就活中でコーヒーをがぶ飲みしながら何枚も履歴書を書いていた。後輩を助ける歴戦のウルトラマン。この作品を観ていた頃は、今はもう離れたあの土地に住んでいて行きつけの居酒屋だってあった。

 

そんな集合作品で展開されるのは、「ヒーロー大集合」に見せかけて、実のところ「僕の・私の半生大集合」なのである。なので、驚くほどに化ける。思い入れと思い入れが渋滞を起こしていくので、涙腺はびっくりするほど緩くなっていくし、胸は自然と高まってしまう。これこそが、「現行を追う」ことの最大の価値なのだと、繰り返し繰り返し実感していく。「よくぞ追っていたぞ、数年前の自分!」と、過去の自分を褒めたくもなってしまう。(もちろん、作品の内容によっては、たまにこれが諸刃の剣となるのだけど・・・)

 

例えば全50話の作品を一日一話のペースで一気に観たとして、50日。しかし、それをリアルタイムで毎週観ていくと、当然のように365日を要する。単純計算で7倍以上。「その作品と過ごす人生」を、7倍以上も積み重ねることになる。そりゃあ、「思い入れ」になりますよね。制作スタッフも、キャストも、同じ365日を生きながらその作品を作っていく。最新話までの一週間を、監督や脚本家やキャスト陣も同じだけ過ごしている。どうしたらもっと面白くなるだろう。どうしたらもっと良い演技ができるだろう。その結実が、電波に乗って週単位で届く。当たり前すぎる話だけど、やっぱりこれって、本当にプライスレスだと思うのです。

 

「2019年の初夏に『ウルトラマンタイガ』を観た」「2019年の秋に『仮面ライダーゼロワン』を観た」。この体験の可能性こそが、今や数えるほどしかない特撮ヒーロー番組の、最大のストロングポイントなのかな、と。動画配信サービスで「後から追える」環境が強化されてきたからこそ、だからこそ、リアルタイムで。私はこれを、勧めています。

 

S.H.フィギュアーツ ウルトラマンタイガ 約150mm PVC&ABS製 可動フィギュア

S.H.フィギュアーツ ウルトラマンタイガ 約150mm PVC&ABS製 可動フィギュア