ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

総括『ウルトラマンZ』 立ちはだかる「壁」を取り込んで輝く、「さいきょうのうるとらまん」

「Blu-ray BOXを買った経験」は数あれど、まだ最終回を迎えていない放送中の番組の、それもまだ序盤の段階で、躊躇なくAmazonの予約ボタンを押したのは、おそらくこれが初めてのことであった。

 

『ウルトラマンZ』。2020年の特撮分野は、これを外しては語れない。毎週のようにSNSを中心に異常なまでの盛り上がりを見せ、最終回放送当日には同番組を指した「最高の最終回」という文字列ががトレンドに躍り出るなど、近年のウルトラシリーズでも屈指の人気を誇った。先日発表された「ネット流行語 100 2020」で見事6位を獲得したのも記憶に新しい。

 

本作の語り口は非常に豊富なのだが、単純に、とにかく「面白い」のだ。「面白いウルトラマン」。どこまでいってもこれに尽きる。特殊撮影による映像が面白い。登場するキャラクターが面白い。展開されれるストーリーが面白い。意欲的な演出の数々が面白い。月並みで、ともすれば陳腐な表現にはなってしまうが、「面白かった!!」と声を大にして語るのが最大の賛辞だと思えてならない。スタッフ、キャストの皆さん、本当にありがとうございました。心の底から楽しませていただきました。

 

遥かに輝く戦士たち

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では、そこから一歩踏み込んで。『ウルトラマンZ』の何がどう「面白かった」のか。

 

これを語る上で、まずは2013年からのウルトラシリーズ、通称「ニュージェネレーション」の作品群に触れる必要がある。当時の「円谷プロの経営難」や「巨大特撮冬の時代」といった文脈について、読者諸賢に今更の説明は不要と思われるが、これを経て現場に突きつけられた大命題のひとつは、「ウルトラマンで玩具を売る」ということであった。

 

もはや特撮ヒーロー番組において、「玩具販促」は絶対に避けては通れないトピックである。仮面ライダーシリーズであれば、『仮面ライダー龍騎』がトレーディングカードゲームの流行りを取り入れたり、『仮面ライダーダブル』が後年も続くコレクターズアイテム商法を打ち立てたりと、その文脈は語りきれないほどだ。スーパー戦隊シリーズだと、古くは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の獣奏剣がなりきり玩具として革命的であったし、『炎神戦隊ゴーオンジャー』の炎神ソウルもひとつの分岐点に挙げられるだろう。『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』では玩具展開が苦戦を強いられ、それがいくばくか番組の展開にも影響を及ぼしたのは、苦い記憶である。

 

これらの特撮ヒーローにおける玩具は、変身後の姿、あるいは変身前のキャストが、その玩具を実際に操作することで「なりきり遊び」の需要を喚起する。「とにかく点数が豊富なアイテムを」「ベースとなる玩具に」「自由自在に組み合わせながら戦う」、というのが近年の潮流であり、それは等身大で戦う仮面ライダーやスーパー戦隊は概念上の同サイズ(プロップや劇中サイズという実情はさておき)として展開できるため、親和性が高い。

 

一方のウルトラマンも、上記2シリーズと同じバンダイが玩具展開を行う訳だが、ここには決定的な壁が存在している。それはシンプルに、「変身後のヒーローが巨大」という点だ。仮面ライダーのようにUSBメモリやメダルや指輪をがちゃがちゃと操作して戦う光の巨人は、かなり滑稽に見えてしまうだろう。そして、これはウルトラシリーズの利点の裏返しになってしまうのだが、彼らは非常に「神秘的な存在」なのだ。人間がそのまま変化するのではなく、あくまで彼らは宇宙人であり、来訪者である。その近寄りがたさや神々しさが、ウルトラマンという存在の唯一無二のストロングポイントなのである。だからこそ、そんな神にも等しい存在に、玩具をごちゃごちゃと操作して欲しくはない。それは、ウルトラマンの利点を殺すことにも繋がってしまうのだ。

 

ウルトラマン レジェンドウルトラ変身シリーズ ギンガスパーク

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  • 発売日: 2020/02/01
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

この壁を突破するために、『ウルトラマンギンガ』以降のシリーズには、「インナースペース」という概念(描写)が持ち込まれた。ウルトラマンは神秘の存在のままとし、それと一体化する地球人が、ウルトラマンの内部、あるいは精神世界のような光の空間で、玩具と同じアイテムをがちゃがちゃと操作するのである。これにより、「ウルトラマンが玩具を扱うことなくウルトラマンで玩具を販促する」という、まさに「ウルトラC」を決めているのだ。(もちろん一方で、「ウルトラマンがコクピットから操られるロボットのように感じられてしまう」という声も依然として根強く存在する)

 

そもそも、「ウルトラマンで玩具を売る」は至難の業なのだ。変身に使うアイテムはあるものの、そこに拡張性は付与し辛い。防衛隊の戦闘機や兵器も、防衛隊員が携帯する通信機や銃も、特撮ヒーロー番組の「主役」たるウルトラマンが直接用いるものではない。如何せん「なりきり」とは距離があるのだ。そのため、ウルトラマンを「ウルトラマンらしく」作れば作るほど、ダイレクトな販促のマーケティングには壁が立ちはだかる。戦闘機を登場させるにも、発射コンテナを造形したり、ミニチュアを操演するのには手間がかかる。防衛隊を出しても、そこに販促上の旨味は薄い。その判断からか、近年は防衛隊が大々的に存在しない作品が増えてきた。

 

だからこそ、「インナースペース」を用いた「巨大戦闘での玩具販促」が可能であるならば、そこを膨らませていくのが当然の判断となる。暗躍する悪のキャラクターを設定し、そいつにも主人公と同じアイテムを所持させる。主人公はアイテムを使ってウルトラマンに変身するが、悪のキャラクターは、同じ操作で怪獣を召喚したり、時には自分が変身したりするのだ。防衛隊を出すのは費用対効果が悪いので、主人公たちは商店街の住人や警備会社勤務とし、アイテムを獲得したり奪い合ったりするプロットに尺を割く。

 

更には、先輩ウルトラマンを何かしら絡める必要もある。ただの「アイテム」だけでは、仮面ライダーやスーパー戦隊に比べて、まだまだどうしても「弱い」。『仮面ライダーディケイド』のライダーカードや、『海賊戦隊ゴーカイジャー』のレンジャーキーのように、アイテムそのものに「レジェンドヒーロー」の属性を付与させることで、「アイテム」としての魅力や強度を高めることができる。だから、お話の作りに関しても、先輩ウルトラマンにどうにかして触れなければならない。

 

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そんなこんな、多種多彩な「ここまで」をとにかく前のめりにやり続けることで、ウルトラシリーズはやっとこさTVシリーズを十二分に継続できるにまで息を吹き返したのである。それはもう、ミニチュアセットにかけられている予算や手間ひとつとっても、一目瞭然だ。

 

このように、「ウルトラマンで玩具を売る」を何年も続けていくうちに、お話の自由度(あるいは柔軟性)は実のところ失われていった。「主人公がウルトラマンに変身してインナースペースで玩具を操作して」「敵である謎の男も同じアイテムで怪獣をけしかけて」「先輩ウルトラマンを宿したアイテムや客演で話題性を作る」。これが、2013年以降のウルトラシリーズが辿った(辿らざるを得なかった)、物語構築の黄金パターンなのである。

 

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さて、例によって前置きだけで約3,000字に届いているのだが、そんなこんな土壌の上に作られた2020年の新作が、『ウルトラマンZ』である。まずは、実業之日本社から出版された『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』掲載の田口清隆監督インタビューを引用したい。

 

ーーー対するウルトラマン側についてもお話を聞いてみたいのですが、まず今回の変身アイテム、ウルトラゼットライザーとウルトラメダルについてはいかがですか?

 

田口 僕と吹原さんでプロットを考えながら「どんな変身アイテムが来ても、物語に溶け込ますぞ!」と結託していたんですが、「今回はカードとメダル3枚です」と言われて、ちょっとひっくり返りました(笑)。『ウルトラマンX』の時、自分が関知せずに設定された最終アイテムや後半の展開を、最終回で回収することになって、頭を抱えたという経験がありまして。だから『オーブ』のときには「最初に最終アイテムと最後の展開を決めましょう」と提案して、おかげでウルトラマンオーブは最終形態を第1話に先行登場させたりなどもできて、全体の構成が上手くまとまったと感じていたんですね。なので今回もシリーズ構成として、変身アイテムをお話の展開にキチンと盛り込もうと思っていたんですが…「こんな量のアイテムを、劇中でどうやって面白く機能させるんだ?」と、一時は真剣に降りようとしました(笑)。そこはなんとかアイデアを捻り出して、自分を納得させたわけですけど。

 

(中略)

 

ーーー『Z』はニュージェネレーションと呼ばれる近作のなかで、どんな位置づけの作品になるのでしょうか?

 

田口 去年の『ウルトラマンタイガ』がニュージェネレーションの集大成みたいな言われ方をしていたし、坂本浩一監督が撮られた『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』は、ウルトラマンゼロとニュージェネレーションヒーローズたちの、ひとつの総決算といえる作品でしたよね。令和という新元号から始まったタイガまでがニュージェネレーションの一区切りと考えて、『Z』は令和代表の新たなウルトラマンにしようと思っていたんですよ。平成ウルトラマンの代表と言ったら必ずティガが出るように、ウルトラマンゼットは令和を背負って立つヒーローにしようと、最初はそういうつもりだったんですけど……。変身アイテムは歴代ウルトラマンの力を借りるものだし、「10周年を迎えたゼロを主軸に置いて、それからベリアルを絡めるためにウルトラマンジードも登場させましょう」というお題が出されて……。「それって完全にニュージェネじゃん!」って(一同笑)。なので、もう割り切って、自分なりのニュージェネレーションヒーローズの総括をやってやろうじゃないかっていう気持ちに切り替えました。

 

・実業之日本社『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』(2020/7/17発売)P94〜95

 

ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本

ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本

  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

この、読んでいて若干ヒヤヒヤする内実の末に生まれたのが、『ウルトラマンZ』である。

 

田口監督ご自身が怪獣やウルトラヒーローに大変造詣が深いのは周知の事実だが、そこから生み出される「面白いウルトラマン」には、2020年現在、このような多数の壁が存在してしまっている。つまり、この状況下で「面白いウルトラマン」を作るということは、その「面白さ」の舞台裏に緻密な設計や戦略を積み上げながら、玩具販促や制作の事情といった諸条件をねじ伏せつつクリアする必要がある、ということなのだ。

 

「壁」を無視するでも、「壁」の内側で構築するでも、「壁」を壊すでもない。「壁」を、とにかく全力で「取り込む」ことが求められる。『ウルトラマンZ』は、この点が非常に優れていたのである。『Z』の「面白さ」は、何よりここに尽きる。

 

「面白いウルトラマン」や「ウルトラマンらしさ」のために防衛隊を登場させたいが、戦闘機や隊員武器の玩具はセールス的に苦戦を強いられる。ならば戦闘機をロボットに置き換え、ウルトラマンと同じ肩の高さで巨大戦を展開させよう。これであればソフビとしてリリースできる上に、キングジョーのように「ロボット玩具」としても売り出せる。人間サイドの「ギリギリまで頑張ってギリギリまで踏ん張る」「ウルトラマンとの共同戦線」も、むしろ戦闘機より絵的な説得力が増すだろう。

 

ウルトラマンZ ウルトラ怪獣シリーズ 121 セブンガー

ウルトラマンZ ウルトラ怪獣シリーズ 121 セブンガー

  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

先輩ウルトラマンの力(=アイテム)を借りて変身すると、どうしてもニューヒーローが「先輩頼り」として見劣りしてしまう。更には、ウルトラマンゼロをお話に絡めなければならない。ならば逆に「まだまだ未熟なウルトラマン」に設定してゼロの弟子ということにし、その上で「先輩の力を借りて戦う」というプロットにしよう。3分の1人前の新米宇宙警備隊員が、地球人と共に成長していく物語にするのだ。更には、弱々しく見えないように、地球語が不自由という愛着の湧くキャラクターにしておく。

 

ウルトラマンZ DXウルトラゼットライザー

ウルトラマンZ DXウルトラゼットライザー

  • 発売日: 2020/06/20
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

話題性も含め、ゼロ・ジード・ベリアルを登場させることが求められる。ならばジードにはゼットと同じアイテムで新しい姿に変身してもらって、「ゼロとジードを撮る」や「玩具販促演出」に長けた坂本浩一監督に該当エピソードを担当してもらおう。ベリアルの頭部が喋る、という世界観を台無しにしかねない奇抜なアイテムには、『ウルトラマンX』のエクスラッガーやグリーザの能力設定を引用しながら一定のリアリティを持たせて物語に溶け込ませよう。複数のウルトラマンが客演するのなら、それが人類側の兵器開発にリンクするストーリー展開にして、更には敵の最終目的にも絡めてしまおう。

 

バンダイ ウルトラマンZ 幻界魔剣 DXベリアロク

バンダイ ウルトラマンZ 幻界魔剣 DXベリアロク

  • 発売日: 2020/10/03
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

「ピンチはチャンス」とはよく言われるが、『Z』は「壁の取り込み方」が非常に秀逸なのだ。クリアしなければならない諸条件に振り回されるどころか、逆に、それを全て物語の「強み」に転化させていく。「あれもこれもしないといけない」が、結果として、「あれもこれもあるバラエティ豊かな作品」に仕上がる。このマジック。この執念。ニュージェネレーションシリーズのメイン監督を『X』『オーブ』と複数回担当してきた田口監督や、同監督が盟友と語った吹原幸太氏の、渾身のシリーズ構成である。

 

ーーー今回、田口監督はシリーズ構成として、クランクインする前段階で、最終回までの流れが全て見えている状態なわけですね。

 

田口 ええ。早い時期に専用の会議室を作ってもらい、パーティションを壁に並べて、1話から25話までの「やらなければならないこと」や「やりたいこと」のメモをどんどん貼っていきました。「最終パワーアップがこれだから、それをどうやって手に入れるか?」とか「この姿に変身する時に使う怪獣は?」とか、それこそ「この回は、あの監督にお願いしよう」まで、その時点で決めていきましたね。大変な作業でしたけど、それをやりたいから今回はシリーズ構成も任せてくれと言った部分もあるわけですし、それを北浦さん(同作のチーフプロデューサー)は承諾してくれたわけですので、本気でやらなくちゃいけませんからね。

 

・実業之日本社『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』(2020/7/17発売)P94〜95

 

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そして、ここまで綿密にシリーズ構成を組み上げたからこそ、作り手の「こだわり」や「遊び」、あるいは「熱意」を入れ込む余裕までもが生まれてくる。

 

登場する怪獣のセレクトは田口監督が大好きなシリーズ初期(『マン』や『Q』)のものが多いし、『エース』の後日談や描写補完(光線技の名手たるエースの超獣観)といった見事な扱いや、ケムール人が登場する「2020年の再挑戦」等のマニアへの目配せもそつがない。ウルトラシリーズの作劇の大切なフォーマットである「怪獣個々の生態や能力によってお話が展開する」がしっかりと底に通っており、ブルトンの四次元展開で主人公が在りし日の父と再会したり、ネロンガの透明化を受けて主人公とウルトラマンがコンビとして互いを高め合うなど、とにかく「ウルトラマンらしい」魅力に溢れている。

 

先のストーリーで登場した要素がまさかのタイミングで活きてきたり、後の展開のための布石がしっかりと事前に配置されていたりと、細やかな配慮が行き届いているのも嬉しい。ハルキを散々悩ませた怪獣討伐問題において、その要でもあった親レッドキングが、まさかのラスボスに吸収されてしまう残酷さ(超最短距離でデストルドスの凶悪さを強烈に描写!)。バロッサ星人の「武器を収集する」という習性を再登場時にベリアロクとリンクさせる周到さ。キングジョーというオーバーテクノロジーを中盤の盛り上がりに設定しつつ、クライマックスで「更なるオーバーテクノロジーが人類を自滅に導きかける」という縦軸の着地点に落とし込むスマートぶり。『パシフィック・リム』のような、湿度の低いからっとしたハルキとヨウコの男女描写もとってもニクい。

 

実はゼロは劇中では数えるほどしか登場していないのに、「ウルトラマンゼロの弟子」というトピックの印象がしっかりと残っているのは、「豆知識的な本編補完+キャラクター描写+細やかなサイドストーリー」の三拍子が見事に揃った『ウルトラマンゼット&ゼロ ボイスドラマ』の功績が大きい。この手の番外編は近年恒例になりつつあるが、今年は特に、TVシリーズ本編をフォローする関係性(あるいは距離感)においてひとつの完成形だったと言えるだろう。

 

また、ジャグラスジャグラーとして話題をさらったヘビクラ隊長こと青柳尊哉氏の出演は、実はジャグラーというキャラクター以上の意図があったのではないかと類推してしまう。というのも、青柳氏は田口監督と個人的な親交も深く、同監督の短篇自主怪獣映画『女兵器701』へも出演し、同じく自主制作となる空想科学連続ドラマ『UNFIX』では主演を務めているのだ。つまるところ、「隊長」という劇中設定以上に、撮影現場の実質的な座長として田口監督の意を的確に汲み、他キャストを守り立て、活気づかせる・・・ そんな役割を期待され、全うしたのではないだろうか。それほどまでに、ハルキ、ヨウコ、ユカ、それにバコさんと、ストレイジの面々には一種のファミリーとしての魅力が備わっていた。

 

といった諸々だけでもすでに大満足なのに、「特撮」=「特殊撮影」の純粋な面白さ、映像のクオリティもずば抜けている。毎週必ずと言っていいほど、「うおっ!」という身を乗り出す程のキラーショットが用意されているのだ。テレスドンが倒れ込み、ドミノ倒しのように倒れていく電柱と電線。ペギラとの縦横無尽な空中線。VR技術を用いたこれまで見たこともないアングルでのスカルゴモラとの乱戦。グリーザは実景と爆破エフェクトとの合成で大規模破壊を実現し、メツボロスは俊敏にビルの壁を走る。最終回では、川北特撮仕込みの至高のライティングでセブンガーが前線に駆けつけ、SFXとVFXが互いを高め合いながら視聴者を「燃え泣き」に導く。

 

とにかく、「面白い」。語れば本当にきりがない。以前『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』という漫画について当ブログで語った際に書いた、「クリエイターと消費者の信頼関係」。これがまさに、理想の形で構築されたのである。

 

漫画でも映画でもアニメでもドラマでも、「信頼感を感じさせてくれる作品」が大好きだ。それは主に、作者や演者、クリエイターに向けられた信頼感。

 

「この作品のことだから、こんな展開が訪れても、きっと巧く処理してくれるだろう」。「新キャラが登場しても、今ここにある『面白さ』はしっかり維持してくれるだろう」。「あるいは、こちらの想像や期待を常に少し上回る形で、延々と膨らんでいってくれるだろう」。

 

作品を読む(観る・プレイする)ことで熟成される、消費者→クリエイターへの信頼感。それが、期待通りしっかり返球される。なので、更に信頼が増す。期待の送球。また次も絶妙な返球。繰り返し、繰り返し。どんな期待の球を投げても、自分のミットに驚くほど突き刺さる。そうして構築される、盤石の信頼関係。

 

消費者のひとりとして、こういう信頼関係を築ける作品に出会えることは、この上ない幸福である。

 

信頼感のハイパーインフレーションラブコメ、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』がすごい - ジゴワットレポート

 

・・・などと、ここまで自分なりに同作の「面白さ」を挙げてきたが、これがまた非常に清々しいのは、『ウルトラマンZ』という作品がいわゆるオタクな人達の考える「ぼくのかんがえたさいきょうのうるとらまん」にこの上なく肉薄していることである。

 

これは、田口監督自身が(敬意を込めてこう評したいが)誰よりもその道の「オタク」であることが大きな勝因だろう。まるで、小煩いオタク集団が酒を飲みながら語る「理想のウルトラマン」が、そっくりそのまま実現してしまったような・・・。そんなバランスとニュアンスが、「緻密に構成された舞台裏」という計算高さを、良い意味で忘れさせてくれる。テレビに向かって、拳を握りしめながら真剣に「ご唱和」したくなってしまう。

 

コロナ禍で撮影が一時中断されたりと、難しい状況も大いにあったことだろう。例年恒例となっている春先の劇場版も、現時点では全くアナウンスが無い。そんな、何かと鬱憤が募る情勢の中で、とにかく突き抜けて純に「面白い」ウルトラマンが毎週のように観られた。この幸せが絶対に忘れられない、そんな2020年だったと言えるだろう。

 

最後に。田口監督と共にシリーズ構成を担当され、『ウルトラマンZ』が遺作となった脚本家・吹原幸太氏に、ご冥福をお祈りします。この数ヶ月、心の底から幸せでした。本当にありがとうございました。

 

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感想『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』 バランスの良い脚本を映像はどこまで遵守するべきか

Twitterで過去のツイートを確認してみると、実に5ヶ月ぶりの映画館であった。

 

コロナ禍の影響を受け、公開が延期された『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』。『ウルトラマンギンガ』から始まる新世代ウルトラマンの変身者が一堂に会するとあっては、リアルタイムでその発展を追ってきたファンとして、銀幕で見届ける必要があった。時は8月。やっと、やっとこの映画が公開された。まずは何より、その事実を喜びたい。

 

 

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5ヶ月ぶりの映画館は、なんだか懐かしいような、あるいは新鮮なような。映画館特有の、消毒されたカーペットの匂いが鼻孔をくすぐる。お布施の意味も込めてフードコーナーで軽食を仕入れ、いざ劇場へ。まばらな観客。やがて始まった予告編のコーナーは、その全てが「映画館で観るのは初めて」のものだった。当然である。5ヶ月も行っていなかったのだ。こんなに映画館に行かなかったのは、高校生の頃以来かもしれない。

 

さて、そうした奇妙なワクワクと共に鑑賞した、『ニュージェネクライマックス』。近年では東映ヒーローを中心に「和製ヒーロー共演映画」の本数は増大した。それぞれの因縁の敵や、個別作品で関わった先輩後輩。そういった個別の要素を掛け合わせながら、遂に英雄たちが集結し、巨悪に立ち向かっていく。本作も、その王道を踏襲している。

 

本作を語るにおいて、前段として、昨年YouTubeにて公開されたネットムービー『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』に触れる必要があるだろう。坂本監督による果てない熱量が込められた本作は、ニュージェネなウルトラマンたちが持つ個々の文脈をぎっちぎちに詰め込むことで、飽和ギリギリのお祭りテンションを実現することに成功している。また、坂本監督のこだわりだけでなく、脚本を務めた足木淳一郎氏による積年の職人芸も見所だ。(詳しくは下記記事を参照)

 

www.jigowatt121.com

 

変身前の生身の役者は登場せずアフレコのみの出演ではあったが、「ニュージェネレーションヒーローズの集合映画」として、割と満点に近いクオリティを叩き出してしまった。その歴史を土台から支えたウルトラマンゼロの存在や、商業的都合であるキーアイテムの物語への活かし方など、とにかくサービスが過ぎる。

 

つまり、これが何を意味するかというと、多くのファンの『ニュージェネクライマックス』への期待値は、『ウルトラギャラクシーファイト』により爆上がりしていただろう、ということだ。私も例外ではない。「次はいよいよキャストも勢ぞろいするのか!」という、期待の追い風。まずはウルトラマンの宇宙格闘巨編、次に、変身者もそろっての地球での決戦。円谷の映像戦略として、実に上手いことノせてくれる。

 

それに応えるかのように、『ニュージェネクライマックス』は大きく3つの要素をバランスよく脚本に配置し、映画としての強度を高めたかったのだと思われる。事実、その設計に限って言及すれば、完成度は非常に高い。

 

3つの要素とは、「①タイガとタロウの親子物語」「②トライスクワッドの完結編」「③ニュージェネウルトラマンの集結」、である。シナリオ構成におけるこの3要素のバランス感覚はお見事で、MCU(マーベルシネマティックユニバース)を参考にしたという話も十二分に頷ける。偉大な父親という一種のプレッシャーに悩む若きウルトラマンが(①)、仲間との出会いや別れを通して成長し(②)、先輩ウルトラマンと共闘しながら父を救うにまで成長する(③)。大筋は実に良い。

 

また、先輩ウルトラマンたちの登場も、クロスオーバー物として王道の作りだ。すでに昨年の映画で共演を果たしている湊兄弟とリクはセットで登場するし、デジタルに強い研究者タイプの大地はアンドロイドであるピリカと絡み、大人の風格を持つガイさんはカナさんと共にチンピラ怪人とアクションを繰り広げる。今や座長ポジションに収まった礼堂ヒカルは誰よりもタロウのことを心配しているし、「親と子の避けられない戦い」の経験をタイガに向けて苦々しく語るリクも良い。個々の持ってる要素が有機的に絡み合いながら、グリムドとの決戦に向けて物語が収斂していく。

 

テレビシリーズ初回の粗筋と絡めながら、お借りしていた力の返還と共に先輩たちとの交流が描かれ、遂に全員が揃って同時に変身する。街中のセットには、所狭しとウルトラマンたちが立ち並ぶ。実に良い。これもまた、心の底から「観たかったもの」だ。

 

トレギアの過去をいかに描くのか、という点でやや「しこり」を感じるものの、そもそものトレギアというキャラクターの確立や運用面から地続きの問題でもあるので、個人的にはそこまでマイナスには感じられなかった。

 

というのも、『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』特装限定版Blu-rayのブックレットによると、デザイン段階ではトレギアの設定がほとんど固まっていなかったことが分かる。この時点で「ウルトラマンの特徴である顔パーツやカラータイマーを封印する」イメージで描かれた仮面や拘束具が、今となっては「グリムドを抑え込んでいた拘束具」にも取れるのがちょっと面白いな、とも思ったり。

 

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そんな「バランスの良い脚本構成」の本作だが、これが大変残念なことに、完成形の映像作品として、「悪い意味でバランスが良い」仕上がりになってしまった。

 

察するに、前述の3要素をシナリオに隙間なく配置して絡ませた結果、撮影や画作りにおいても、その「バランスの良さ」を生真面目に踏襲してしまったのだろう。Aというイベントの後にBが起きる。CはDと絡みながらEに向かう。そういった話の筋そのものは綺麗なのだが(整理が行き届いているのだが)、映像としても、どこか淡々と、ノルマをこなすような印象に傾いていく。

 

はい、次はこれです。その次はこれです。お次はこうなります。まるで、映像そのものが話の筋を読み上げて聞かせてくれるような、奇妙な感覚。特に溜めることもなく、引っ張ることもなく、緩急の幅も決して大きくない。そう、それをやってしまっては、せっかくのバランスの良い脚本に支障を来してしまうかもしれないからだ。とはいえ、それをあまりに遵守した結果か、「同じような盛り上がり」が「同じような頻度」かつ「同じようなテンポ」で淡々と提供されていく・・・。

 

これを最も象徴していたのが、各ウルトラマンのBGMが流れるシーンである。

 

前述の『ニュージェネレーションヒーローズ』では主題歌が流れたので、それを受けるように、各々のメイン劇伴を流す。これは良い。聴き慣れたメロディなので、当然のようにアガる。しかし、個々のアクションシーンに合わせて音楽がブツ切りで挿入されていくため、絶望的に盛り上がらない。淡々と、あるいは機械的に。ここにはこれ。ここにはこれ。結果として、流れ作業のようにも感じられてしまったのだ。(せめて編曲されたメドレー形式ならどれほど良かったか!)

 

変身前の全員が揃うシーンも、もう少し、この感慨深さに浸らせて欲しかった。先輩たちに力を返して、割とすぐに一斉に変身してしまう。確かに、目の前に闇に堕ちたタロウとトレギアがいるので、ここで和気藹々と話す訳にもいかないが・・・。それにしても、どこかノルマを消化するように集うメンバーに、一向に胸のワクワクがブーストしなかったのが本音だ。

 

全方位にバランスよく、複数の要素をこなしていく。一見それは優等生のような作りだが、一転して、「どこも突き抜けていない平均的な作品」になってしまう恐れがある。個性をバランスよく配置した末の、没個性。しかし、ことウルトラマン(特撮ドラマ)に限って言えば、映像的魅力でもって「突き抜け」を設けることができたのではないか。それは例えば、お話の歩みが止まるほどの濃口なアクションか、目を見張るほどの特殊撮影的魅力に満ちたカットか。

 

特撮ドラマにおいて、本来独立して強さを発揮するはずの「映像」が、「お話」のバランスの下に収まってしまったら、どうなるのだろう。『ニュージェネクライマックス』は、その一例と言えてしまうのかもしれない。願わくば、もう少し「逸脱」が欲しかった。

 

遂に立ち並ぶトライスクワッドの共闘や、タイガを強く励ますヒロキ、遠き日のタロウを彷彿とさせるウルトラホーンの出番など、「いいぞ!」となったシーンは沢山あった。重ね重ね、個々の展開は実に良い。無駄なく綺麗にまとまっている。だからこそ、これがもっと「うねる」ような映像構成なら、何倍にも化けたのではないだろうか。「観たかったもの」は確かに観られたはずなのに、どうしようもなく拳が汗をかかないし、胸も高まらない。

 

ウルトラマンレイガが「最強」なのも、映像にそれを実感させられたというよりは、「最強です」と説明されたような感覚なのだ。この表現が、伝わるだろうか。

 

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『ウルトラマンサーガ』における「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」について

先日、実業之日本社から発売された『ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本』を買ったのですが、これがもう本当に、素晴らしい一冊でして。

 

ウルトラマンゼロの鮮烈なデビューから10年。これまでの活躍に携わってきたキャストやスタッフの証言がとにかくてんこ盛りで収録されており、「こういうのが読みたかった!」と伏して拝むクオリティ。最新作『ウルトラマンZ』関係も豊富で、中でも田口清隆監督による『Z』制作秘話は必読。ホビージャパンから毎年発売されているライダーや戦隊の「公式完全読本」と近いフォーマット(誌面構成)なので、そちらが好きな人には特にオススメです。

 

ウルトラマン公式アーカイブ ゼロVSベリアル10周年記念読本

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そんなこんなで「ウルトラマンゼロ熱」が自分の中で急上昇し、勢いのまま、数年ぶりに映画『ウルトラマンサーガ』を鑑賞。ありがとう、Netflix。思い立ったらすぐに観られるのがありがたい。

 

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『ウルトラマンサーガ』は当時劇場で観て以来大好きな作品で、もう何度繰り返し観たか分からないのだけど、今回も無事に号泣してしまった。瓦礫の中で両親を失って嘆く子供のシーンは、2012年公開というタイミングを考えると、あまりに胸が痛い。トラウマと、虚栄と、それでも懸命に生きる人間を描き、クライマックスではウルトラマンダイナが復活する。この一連のシーンは何度観ても涙腺が緩む。

 

前述のように『ウルトラマンサーガ』は、2011年に起きた東日本大震災の影響を強く受けた作品。エンドロールでは、宇宙における地球の情景から次第に日本にカメラが寄り、最後には東北地方がアップになる。非常にストレートな想いが込められた映画である。

 

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東日本大震災というテーマは、ここ10年ほど、国内特撮作品においても非常に慎重に扱われてきた。

 

ひとつは、人と人とが手を取り合う尊さを描いた『仮面ライダーオーズ』。反対に、底抜けに明るく活気があり、デザイン上の涙ラインを廃して作られた『仮面ライダーフォーゼ』。『特命戦隊ゴーバスターズ』においても、命に対する価値観は時に残酷に描写された。ヒーロージャンルとは異なるが、『シン・ゴジラ』も、東日本大震災を外して語ることはできない。『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、実際の現実世界には助けに来てくれない虚構のヒーローを題材としており、震災の影響が強かったことは各種スタッフインタビューでも触れられている。

 

 

そう、ヒーローは、実際には助けてくれなかったのだ。津波を止めることも、避難を手助けすることも、街を復興することもなかった。東日本大震災において、テレビの中のヒーローたちは、そこから抜け出して来てはくれなかった。沢山の、震災に直面した子供たちを前にして、無情にも無力だったのである。

 

ある種の当然である、フィクションの限界。そういう事実を突きつけられた翌年に公開されたのが、『ウルトラマンサーガ』だ。ウルトラマンがいくらスクリーンの中で戦おうと、現実には誰ひとり救えない。ある意味、これ以上に難しい公開タイミングは無かっただろう。加えて、当時の円谷プロが経営的に厳しかったことは周知の事実であり、テレビシリーズでの現行ウルトラマンも途絶えていたタイミングだ。

 

「ウルトラマン」というコンテンツは、このタイミングで、一体何を発信するのか。あるいは、発信できるのか。それを象徴するのが、作中における、ウルトラマンゼロの台詞である。

 

ハイパーゼットンに立ち向かうウルトラマンゼロ・ダイナ・コスモスを前に、敵役であるバット星人は、吐き捨てるように問う。「ウルトラマン、なぜ貴様らは邪魔をする!なぜ人間に寄り添う!人間… つまらない生き物!」。そこに、ゼロが叫ぶように答えるのだ。「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」。放たれる必殺の一撃。倒れるハイパーゼットン。「お前が人間の価値を語るなんざ、2万年早いぜ!」。

 

私はこのゼロの台詞が本当に大好きで、彼の数ある名言の中でも、迷いなくトップに数えたいほどだ。かつて光の国で大罪を犯して追放された生意気な戦士が、数々の戦いを経て、(パラレルとはいえ)遂に地球に降り立ち、人間とウルトラマンの永き関係を知る。そういう彼の背景も併せると、胸にくるものがある。

 

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とはいえ、先の「ずっと昔からそうしてきた」という台詞には、一部に否定的な意見が存在する。その最たるものとして、ライムスター・宇多丸氏が2012年3月に自身のラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で『ウルトラマンサーガ』を評論した、その一幕が挙げられるだろう。

 

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宇多丸さんの映画評論は私も大ファンで、ほぼ欠かさず聴いているのだけど、感想はおよそ8割が「すごい!なるほど!ほぇ~!」という感じで、残りの2割が「ちょっと待ってくださいよ宇多丸さん!!!そこは!!!そこは違うでしょう!!!ちょっと!!!」、である。10回聴いたら2回くらいは、解釈の違いでラジオに向けてエアプロレスを繰り広げてしまう。そして、『ウルトラマンサーガ』評論については、その2回の方に該当したのだ。

 

冒頭、リスナーメールを読み上げるくだりで、こういう投稿があったことが紹介される。「ウルトラマンたちが人間を守る理由が、昔からそういうもんだから!って、そんなんでいいんですか? ウルトラマンってそういう話なんですか?」。

 

評論の最後の方でも、宇多丸さん自身が、先のシーンについてこう述べている。「バット星人が、なぜ人間なんてものを守るのか、つまらない生き物じゃないかって言うのに対して、あ、これはきっとね、グッとくる台詞で、ガッツリ返してくれるんだろう、と。(中略) それに対してゼロがね、理由なんかねぇよ!ずっと昔からそうしてきた!それだけのことだ! ・・・いや、それちゃんとした理屈で答えないなら、このやり取り自体要らないだろ!かなりがっかりしたけどね、アレね」。なぜそうも雑に答えてしまうのかと、宇多丸さんは、そう疑問を投げかけていた。

 

ちょっと待ってくださいよ宇多丸さん!!!そこは!!!そこは違うでしょう!!!ちょっと!!!・・・いや、分かりますよ。そこに真っすぐな理屈で返答して欲しかったという意見も、分かりはするんです。ただ、この『ウルトラマンサーガ』においては、上映された返答が120点だと、私は思うのです。(念のため補足しておくと、宇多丸さんは評論全体としては、『ウルトラマンサーガ』を絶賛されていました)

 

思うに、本作を語るにおいては、「ウルトラマン」というコンテンツそのものが果たしてきた役割が重要なポイントな訳です。

 

テーマとしては、「ウルトラマンが居る」という、シンプルな一点。それは確かにフィクションの存在だし、実際の災害において誰かを助けることはできなかったけれど、ずっと昔から、そしてこれからも、無数の子供たちに夢や勇気を与えてきたのが、ウルトラマンというコンテンツなのである。子供たちに向けて、「これからもウルトラマンがいるからね」、と。もっと突っ込めば、「ウルトラマンを作って君たちに夢を与えていくからね」という、円谷プロを始めとした作り手の方々の切なメッセージが、この作品には込められているんじゃないかと。

 

もちろん、作中でそんなメタフィクションに繋がるような台詞は出てこないけれど、「辛い時はウルトラマンを観て元気を出してね」「これからも側に居るからね」という信念の語りかけを、随所に感じることができるのだ。これが、2012年当時の、円谷プロによる東日本大震災への「回答」だったのではないか。もちろん、震災後に設立された「ウルトラマン基金」の存在も欠かすことはできないだろう。

 

そう考えると、ウルトラマンダイナに変身するアスカの存在も、非常に大きな意味を持つ。かつて、地球で生き残った子供たちと過ごし、共に歌い、希望を与え続けたアスカ。しかし、ダイナはハイパーゼットンの前に力尽き、その存在を消してしまう。ウルトラマンは助けてはくれない。泣き叫ぼうとも帰ってこない。しかし、そんな絶望の世界に訪れたのも、またウルトラマンだったのだ。

 

1966年に初代『ウルトラマン』が放送を開始し、震災まで45年。常に子供たちに夢を与え、ずっと昔から、そのキラキラした視線を背中で受け止めてきたウルトラマンたち。彼らが無力な時も、それは確かに、あっただろう。それでも、ウルトラマンはずっと君たちの側に居るのだと、そう語りかけてくれたのが、『ウルトラマンサーガ』だった。私も、ウルトラマンを観て育ったひとりとして、このメッセージに強く心を打たれたのだ。

 

「ウルトラマン、なぜ貴様らは邪魔をする!なぜ人間に寄り添う!人間… つまらない生き物!」。「別に理由なんてねぇよ!ずっと昔からそうやってきた!ただ、それだけのことだ!」。

 

啖呵を切るように言い放つゼロからは、「そんな当たり前で野暮なことを一々聞くんじゃねぇ!」と、そういったニュアンスが伝わってくる。ゼロ自身も、初めて地球を訪れ、「地球人とウルトラマンの関係」を紡いでいたアスカの存在に触れた。誰よりも、その関係の尊さを実感していたのは、きっとゼロだったのだろう。ずっと昔から、ウルトラマンは、人間に寄り添ってきたのだ。真の意味で「理由がない」なんてことはない。これは、そんな額面通りに受け取る台詞だろうか。

 

そして、この台詞を述べるシーンで、コスモスとダイナの顔のアップが挿入される。コスモスは2001年に、ダイナは1997年に、その時代の子供たちに寄り添ってきたのだ。ただそれだけのことに、どれだけの意味があっただろう。それは、ウルトラマンを2012年当時に観ている子供たちにも十二分に伝わったと、そう願いたい。「Wow Wow Wow 叫ぼう、世界は終わらない」!

 

君だけを守りたい ~アスカの歌~

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戦いは終わり、アスカはまた宇宙へ、ムサシも自身の星へ帰っていく。しかし、この戦いの中でトラウマを乗り越えて強くなったタイガ(演:DAIGO)だけは、出身ではないパラレルの地球に残り、新しい人生を歩むことを決意する。波が押し寄せる海岸で、そう語るのである。

 

地球を去りゆくゼロは、そんなタイガに敬意を込めるように、「フィニッシュ!」の指ポーズを真似る。そしてこの仕草は、今やゼロお馴染みの決めポーズとして、すっかり定着しているのである。ゼロに歴史あり。ウルトラマンに歴史あり。コロナ禍の影響により、劇場最新作『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の公開は延期になってしまったけれど、これがまた2020年の子供たちに寄り添ってくれることを、期待したい。ただそれだけのことを。

 

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ミニライスくん ミニ日記 ベストセレクション『いくじなしのファンファーレ』に育児記事を寄稿しました

お仕事の報告です。

 

サークル「CREATE MALL」さんより販売される『いくじなしのファンファーレ』に、育児記事を寄稿しました。ライスさん( @rice811 )がTwitterで3年に渡り投稿された、ヒーロー大好きミニライスくんの楽しいミニ日記。本書は、その傑作選になります。購入は、BOOTHにて可能です。

 

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rice811.booth.pm

 

ライスさんにはかねてより大変お世話になっておりまして・・・。ご存知の通り、私が現在使っている白い馬のアイコンも、同氏に依頼して描いていただいたものです。今回、恐れ多くも傑作選への寄稿依頼を頂戴し、育児についてテキストを綴りました。

 

元々「CREATE MALL」さんは、東京ビッグサイトで開催されるデザインフェスタvol.51への出店を予定されていて、『いくじなしのファンファーレ』もそこで販売される予定・・・だったの・・・ですが・・・。このコロナ禍でイベント自体が中止になってしまいまして。実のところ、これに合わせて自分も東京に行きたい、なんて計画もあったり無かったり。

 

【重要】「デザインフェスタvol.51」開催中止のご報告 | アートイベント・デザインフェスタ | ART EVENT DESIGN FESTA

 

ライスさんからは「育児」というお題を頂戴したのですが、「デザインフェスタならデザインだろ!」という超短絡な思考により、「育児×デザイン」というテーマを設定。私の思う育児の面白さや難しさ、その奥深さについて、「デザイン」という切り口からまとめてみました。


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といっても、私の文章はぶっちゃけどうでもよくて、やはりミニ日記が本編な訳です!実際の商品ページからは鮮明なサンプルが見られますが、ミニライスくんが仮面ライダー・戦隊・ウルトラマンと過ごす楽しい日々は、特撮ヒーロー好きならもれなく必見です。子供ならではの目の付け所やネタの発見、ごっこ遊びの醍醐味など、「気づき」もいっぱいあります。

 

というか、最終回を踏まえて序盤を読むと、これがまた泣けるんですよ・・・。

 

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A5サイズ(148mm×210mm)、全100ページフルカラーなのに、価格はたったの1,320円。紙質も上質ツルツルなやつで、これはもう、「実質無料概念」が適用されます。こちらの販売ページより、是非ともチェックしてみてください。何卒、よろしくお願いします。

 

 

感想『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』 ニュージェネという歴史の映像化は文脈を渋滞させる

YouTubeにおける新作配信という形態も、今や珍しくなくなった。露出メディアの変遷は猛スピードだ。とはいえ、『ウルトラマンギンガ』から続いてきた通称・ニュージェネレーションの集大成を、まさか配信という舞台で披露するとは。驚きである。

 

「そんな大玉企画、せっかくなら映画の方が良かったのでは・・・!」。そんなファンの複雑な感情をフォローするかのように、追って公開が発表された『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』。「声の出演」から更にグレードアップして、「キャスト全員集合」が目玉となる。うーむ、昨今の円谷プロは本当に商売が上手い。(新型コロナの影響で公開延期となったのが悔やまれる・・・!)

 

しかしながら、「ニュージェネ全員集合」「オリジナルキャストが声で参加」「坂本浩一監督」というピースが揃った時点で、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』が一定のクオリティを魅せてくれることは、もはや既定路線であった。安心と信頼の布陣である。

 

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グリーンバックで撮影されたニュージェネ陣の縦横無尽なアクション。時折挟まれるオープンセットでの乾いた質感。歴史の蓄積を意識させるキャラクター同士のやり取り。その全てが「観たかったもの」であり、期待にしっかり応えてくれる内容であった。「満足度」という文字列がとっても相応しい。

 

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そんな本作を語るにあたっては、まず、近年の円谷プロの変化から触れねばならない。

 

転機は2017年8月。ウォルト・ディズニー・ジャパンでスタジオ部門のゼネラルマネージャーなどを歴任した塚越隆行氏が円谷プロに入社。社長を務められた(現在は会長)。ディズニーでの経験を活かしながら、ウルトラマンを含めた円谷プロが有する数々のIPをいかに活用し、広めるか。

 

昨年末に開催された『TSUBURAYA CONVENTION』も記憶に新しいが、児童向けアニメ『かいじゅうステップ』、舞台ファンの取り込みを狙う『DARKNESS HEELS』、Netflix配信の『ULTRAMAN』など、幅広い展開が今も継続されている。

 

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塚越氏のビジネスマインドについては、「科楽特奏隊」のタカハシヒョウリ氏が聞き手を務められたSPICE掲載のインタビュー記事が非常に分かりやすいので、ここに紹介したい。

 

spice.eplus.jp

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その中の、「ヒーロー集合」について塚越氏が語られた部分を引用する。

 

ポイントだと思うのは、ウルトラマンってすごく日本的だと思ってるんです。さっきの話に戻るけど、世界に向けて!といった時に、「ヒーローものをやっていくということは、じゃあアベンジャーズみたいなものをやるんですか?」とか言われることもあって。ステレオタイプにはそうなっちゃうんだろうけど、僕はそうじゃなくて、せっかく日本で作っているんだから、日本の良いところ、ウルトラマンが持っているデザインや内容もそうだし、その日本人としての良いところというのをちゃんと炙り出して、そこをコアにしようかなと思っています。これが多分、海外の人も良いなと思ってくれるポイントになるんじゃないかなと。

円谷プロ 新社長 塚越隆行 就任後初独占インタビューで「ウルトラマンの未来」を語る | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

 

すでに「アベンジャーズ」は「ヒーロー大集合」の代名詞として定着しているが、彼らと、ウルトラマンを始めとする日本のヒーローは、一体何が違うのか。塚越氏は同インタビューで「日本らしさ」について分析されているが、私のような一般消費者の目線で言えば、何よりシリーズとしての性格の違いが挙げられる。

 

『アベンジャーズ』が「異なるヒーローの大集合」なら、日本のヒーローは、「同じ土壌のヒーロー大集合」なのだ。これは、近いようで決定的に違う。例えるなら、『アベンジャーズ』が「ハンバーガーと八宝菜の共演」で、日本のヒーローが「味噌ラーメンと塩ラーメンの共演」、といった感じだ。ウルトラマンという大きなシリーズ枠の中で生まれ続けたヒーロー、仮面ライダーも、スーパー戦隊も、基本的には同じ土壌内で集結していく。(なので、『ウルトラマンVS仮面ライダー』といった作品がより「アベンジャーズ的」と言えるだろう)

 

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これが意味するものは、同シリーズ内における「縦の関係」である。

 

海外のヒーロー集合文化と比べ、日本のヒーローには「先輩」「後輩」の概念が色濃い。しかもこれは年齢的なものではなく、放送年度が先か後かという、非常にメタ的なキャリア概念を引用した、独特なものとなっている。このため、ニュージェネでいえばギンガ、平成ライダーならクウガといった「初代」は、何かと象徴的に扱われることが多い。最新のヒーローは往々にして「末っ子」に位置付けられ、先輩たちから「ウルトラマン(「仮面ライダー」「スーパー戦隊」)としての生き方」を学び取る。

 

まず先にレギュラーのテレビシリーズがあり、そこに最長一年間での作品リセットが起こる。そうして紡がれてきた同じ土壌のヒーローが、何かの機会に一堂に会する。コミックを源流とするアメコミヒーローの集合とは、どうしても色が異なってくるのだ。そして、だからこそ、その「日本のヒーロー」ならではの旨味を見極めていきたい。

 

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いつもに増して前置きが長くなったが、『ウルトラギャラクシーファイト』は、その「日本ヒーローならではの旨味」をしっかり活かした作りとなっている。シリーズの歴史という名の文脈、「先輩」「後輩」の概念を、作品の基礎にこれでもかと練り込む。ある意味、『アベンジャーズ』には真似ができないアプローチだ。

 

前述のように様々な層に話題を投げかけていく円谷プロだが、今作は、「すでにファンである層」に明確に特化している。ニュージェネを全く観たことがない人には、もしかしたらやや退屈に映るのかもしれない。先のインタビューで塚越氏は、「コアのファンを大事にします」「そして、ファン層を広げます」と語られているが、『ウルトラギャラクシーファイト 』と続く『ニュージェネクライマックス』は前者、先に挙げた多彩な作品群が後者を指すのだろう。

 

海外のヒーローと日本のヒーロー、その文化の違いからくる旨味。そして、円谷プロが仕掛ける様々なビジネスにおける、「既存ファン」へのアプローチ。『ウルトラギャラクシーファイト』という作品の立ち位置は、まさにここにあるのではないだろうか。(言うまでもなく、対象となる「既存ファン」も大きく「昭和」「平成」「ニュージェネ」に分岐しており、それぞれに応じた訴求が行われている)

 

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さて、肝心の物語の内容について。

 

本作では、坂本浩一監督が『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』でも引用した『仮面ライダーストロンガー』の「デルザー軍団編」フォーマットをベースに、ニュージェネメンバーが次々と集結していく模様が描かれる。そこに、海外配信を睨んだサプライズとしてのウルトラマンリブット、そして、ニュージェネの原点(まさに「ゼロ」!)ことウルトラマンゼロも参戦と、流石の詰め込みっぷりだ。

 

 

大きな見どころとして、先の「日本ヒーローの旨味」としての「縦の関係」がある。

 

ウルトラマン同士の出会いと、そこで交わされる会話の数々。ニュージェネを追ってきたファンならば、何度ニヤニヤしても終わりが見えない。例えば、『ジード』の映画にはオーブがゲスト出演しており、『ルーブ』の映画にもジードが登場している。そういった個々の年度における新旧の出会いを踏まえつつ、「AとBは知り合いだけとCとは初対面」等の関係性をしっかりと踏襲。細かなやり取りに落とし込んでいく。

 

どんなに事態が切迫しても常にコントなテイストを崩さないルーブ兄弟や、光の国を訪れて感慨にふけるジード。自然とリーダー役に収まる「初代」のギンガに、頼りがいのある精神論でウルトラマンの矜持を語るオーブ。それぞれのキャラクター性が遺憾なく発揮され、期待通りに絡み合っていく。「ウルトラ群像劇」として、これ以上のものは中々見られないだろう。それほどに、楽しく、充実している。

 

この点、坂本浩一監督の作家性が強く反映されているのは勿論のこと、脚本を務めた足木淳一郎氏の功績も大きいと見ている。

 

足木氏は、振り返れば2011年より『電撃ホビーマガジン』で連載されたオリジナル小説企画『Another Genesis』の執筆を担当されている。単行本化されていないのが大変惜しいのだけど、内容としては、 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のパラレル解釈版といったところか。ウルトラマンベリアルが登場する、割とハードな内容だったと記憶している。

 

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以降も、『ウルトラファイトビクトリー』『ウルトラファイトオーブ』等ですでに坂本監督とタッグを組んでいたり、ニュージェネ作品群の個別エピソードの脚本、『ウルトラマン列伝』『新ウルトラマン列伝』の構成など、近年の円谷作品群に「大きく」「長く」関わられてきた方である。だからこそ、ニュージェネメンバーの描写にも間違いがない。

 

映像面でいくと、坂本監督の近年の流れである「スピード感と巨大感の共存」がたっぷりと堪能できる。

 

同監督によるグリーンバックでのウルトラアクションといえば 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』だが、それ以降、ミニチュアワークを活用した従来のSFXの経験を経て、「手数の多いハイスピードなアクション」と「巨体が大地を揺らす存在感」の共存が図られてきた。最近では『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の映像も記憶に新しく、一時期定着していた「坂本監督といえばとにかく盛り盛りのアクション!」という評判は、もはや過去のものである。

 

中でも、『ウルトラマンギンガS』等でも印象的だったオープンセットでの映像が素晴らしい。がっつりと合成が効いたフィールドでのアクションも良いが、ウルトラのスーツと自然光の組み合わせには思わず目を奪われる。しかも、乾いた質感というか、コントラストの調整が、どこか『ウルトラマングレート』や『ウルトラマンパワード』を思わせるのだ。海外でのキャリアが長い坂本監督ならではの色合いだろうか。

 

そして、ライダーや戦隊でもお馴染みの「フォームチェンジ・武装ギミックの連続使用」や「強化形態の揃い踏み」も健在である。隙が無い。

 

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私の好む「シリーズの文脈」という視点でいくと、中盤のゼロのくだりが最高であった。

 

今更説明するのも野暮なのだが、『ウルトラマンメビウス』以降テレビでの新作が途絶えていた同シリーズにおいて、ウルトラマンゼロは貴重なキャラクターであった。銀幕での度重なる活躍や、あらゆる局面でのナビゲーターをこなしつつ、ニュージェネ作品群にも様々な形で登場。間違いなく「ニュージェネの影の立役者」であり、だからこそ、多くの後輩たちは彼の力を宿した形態を持っていた。

 

・・・といった歴史の蓄積を活かすように、それぞれがゼロの力を宿した、あるいは受け継いだ力を発揮していくシーンには、思わず胸が熱くなった。あの数分間に、「ニュージェネが歩んだ数年間」がメタ的に横たわっている。素晴らしい。しかも、それを演出するのがゼロのデビュー作を手掛けた坂本監督なのだ。色々と濃すぎる。

 

すすめ! ウルトラマンゼロ

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更にそのお返しとして、ジードが先導し導かれるゼロビヨンド。これがもう、まさに白眉であった。

 

というのも、『ジード』当時に玩具としてリリースされた「ニュージェネレーションカプセルα」と「β」は、あくまで「直近のヒーローというアイコンを利用した玩具」の域を出ていなかった。ビヨンドの力に、ニュージェネは直接的には関わっていなかったのである。「何かと直近のウルトラマンを関わらせた方が子どもたちの反応が良い」、そんな、商業的な「都合」だ。

 

その「都合」を逆に利用するかのように、今作ではニュージェネが直接パワーを分け与えることでゼロを進化させる。「ニュージェネの影の立役者」にスポットが当たる、その瞬間。ゼロとニュージェネが共に歩んだ数年間、その映像化。この発明には感極まらない訳がない。

 

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また、ゼロは海外人気が高いことでも知られており、世界同時配信という形態との相性も良いのだろう。『Ultraman Zero The Chronicle』という番組が国内より先駆けて制作されたのも、今更ながら凄いことである。そういった事情を踏まえた、海外ファンへの目配せとしても気が利いている。

 

 

以前、「特撮ヒーローは現行が旬」という記事を書いた。ポイントとなる部分を後に引用するが、これもまた、「日本ヒーローの旨味」=「縦の関係性」と一部リンクすると言える。

 

『ウルトラギャラクシーファイト』は、まさに「ニュージェネが歩んできた歴史」そのものを映像化したのだ。新旧のウルトラマンが交わり、先輩ウルトラマンの力を借りて戦い、そして、その隣には常にゼロがいた。この構造を、枠組みを、パターンを、鮮やかに物語に落とし込んでいるのだ。

 

また、こういった特撮ヒーローは後年の映画等で作品の垣根を超えて集合するのが常なのだが、この時に、「リアルタイムで追ってきた」というプライスが限界突破で炸裂していく。登場するヒーローの両肩には、我々ひとりひとりの半生が乗っかっているのだ。

 

颯爽と現れる先輩ライダー。彼を一年間追っていたあの頃、自分は就活中でコーヒーをがぶ飲みしながら何枚も履歴書を書いていた。後輩を助ける歴戦のウルトラマン。この作品を観ていた頃は、今はもう離れたあの土地に住んでいて行きつけの居酒屋だってあった。

 

そんな集合作品で展開されるのは、「ヒーロー大集合」に見せかけて、実のところ「僕の・私の半生大集合」なのである。なので、驚くほどに化ける。思い入れと思い入れが渋滞を起こしていくので、涙腺はびっくりするほど緩くなっていくし、胸は自然と高まってしまう。これこそが、「現行を追う」ことの最大の価値なのだと、繰り返し繰り返し実感していく。「よくぞ追っていたぞ、数年前の自分!」と、過去の自分を褒めたくもなってしまう。

 

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つまり今作は、「円谷プロが自社IPを再認識した上での一翼」「ゼロを原点とする近年の円谷プロ再興史」「そこに関わってきたスタッフ陣の作品愛」「日本ヒーローならではの縦の旨味」「ニュージェネシリーズの商業コンテンツ的性格を活かした物語構成」「ファンの同シーズへの思い入れ」といった、まさに要素モリモリの、オタクが語ると話題が大渋滞を起こす、垂涎の一作なのだ。端的に、「ご褒美」である。

 

そしてこの「ご褒美」には、『ニュージェネクライマックス』という第二弾が用意されている。なんとも贅沢だ。メインディッシュが終わったと思ったらメインディッシュが待ち構えている。そして、こうしてニュージェネが総括されていくからこそ、まだ見ぬ「次世代のウルトラマンたち」にも期待が高まるというものである。