予告まで含めると、「親と子」「エスケープ」「いくぞブレーザー!」までで三部作っぽい流れでしょうか。もちろん、監督・脚本のスタッフが切り替わっているので、あくまでシリーズ構成の域の話ですけどね。これまでSKaRD内部の人間関係、そこに発生するコミュニケーションを時に硬派に時にユニークに描いてきた訳ですが、ここにきて本筋of本筋、「ゲントとブレーザー」を扱うぞ!と。第12話ということでシリーズもいよいよ中盤戦です。
ブレーザー11話、「強い新規怪獣をめちゃくちゃ強敵(&魅力的)に描く」という基本のキを大ボリュームの特撮でガツンとやり切ってくれて大満足。ブレーザーとゲントの不和の動きは、やはりどっちがどっちの意図かという正解当てが主題ではなく、異なる人格の意思の混濁それ自体がポイントなのだろう。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2023年9月24日
それでは第10話とセットでのアップとなりましたが、#俺が観る 第11回、よろしくお願いします!
引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1705370169516921132
デマーガとの闘いにおけるブレーザーの行動を受けて、ゲントは自らの身体に宿るもう一つの意思に戸惑いを隠せずにいた。その折、宇宙より飛来する隕石。防衛隊の迎撃をかいくぐり地球に降り立ち、怪獣ゲバルガへと姿を変える。アースガロンでの格闘は優勢に思われたが、ゲバルガには驚くべき能力が隠されていた。
2023/09/23 放送 監督:武居正能 脚本:足木淳一郎
前述の通り、第12話ということで、2クール作品としては中盤戦にあたる。
ちょっと振り返ってみると、昨年の『デッカー』ではテラフェイザーが完成し縦軸が進み始めたのが11話で、ダイナミックタイプ初登場が15話。『トリガー』は3000万年前が描かれグリッタートリガーエタニティが登場するのが11~12話、『Z』はハルキが怪獣に感情移入し戦えなくなってからそれを吹っ切るまでが11~14話、といったところ。いずれも、シリーズ構成の中腹として盛り上がるエピソードが用意されている。
近年の多くのウルトラマンが、人間と融合し基本的にはスムーズに共存していく中で、ブレーザーはその前提に「待った」をかけている。以前の感想でも書いたと思うけど、私はこの物語を「人間とウルトラマンがお馴染みの関係に行きつく『まで』のお話」だとぼんやり感じていて、最終的にゲント隊長がいかにもニュージェネ的に「ブレーザァァァァアァーーー!!!!!」って叫んで変身するシーンなんか妄想しちゃう訳だけど、要は「ゲントとブレーザーの関係性」が肝なんですよね。『ブレーザー』という作品は、ここをシリーズ構成の中腹に持ってきた。次回の「いくぞブレーザー!」というサブタイトルがあまりに良すぎて、期待が高まりすぎてしまうアレはありますが……。
その相手役として登場するのは、新規怪獣・ゲバルガ。ぱっと見はヒトデ型のフォルムで、古くはぺスター、あるいはマリキュラやアイアロンなども頭を過ぎりますが、印象値で「人が構えていない」のって、それだけで不気味ですよね。Gタイプの怪獣は一周して安心感すらありますから。あと、本編で観ると腹の目がめちゃくちゃ不気味。顔があるべき位置に顔が無く、目なんて無い位置に目がある。それも複数、まばらに。こういう意図的に整理的嫌悪感を覚えさせるデザイン、とっても秀逸です。人間の脳って、こういう違和感をスムーズに「きもっ!」に繋げるから面白い。
そんなゲバルガ、造形や特撮だけでなく、物語面でも非常に強敵に演出されている。
まずもって、「宇宙から飛来してくる」→「それを阻止せねば!」から描くのが良い。なによりコレですよ。こういうパターンって、いきなり飛来してきて「落下予測地点は〇〇です!」ドカーン!怪獣登場!緊急出動だ!でも構わないのに、あえてその前段階をじっくりやる。やばそう、やばそう、やっぱりやばいの重ねがけ。まずはこのドラマ構成が一本取られましたね。直接的に、という訳じゃないのですが、『シン・ゴジラ』以降この手の「直接戦闘ではない作戦行動の面白さ」をしっかり魅せる作劇、そのアベレージがじわじわ上がってきている印象があります。
SKaRD基地内での事前の会話。「ガラモンの侵入を許したことで上も焦ってる感じですね」をアンリに、「宇宙怪獣の侵入は地球の生態系にどんな影響を及ぼすか分からない」をテルアキ副隊長に言わせるの、めっちゃくっちゃ良くないですか……。素晴らしい。いやマジで、ここすっごく感動しますね。痛快。ガラモン回は実質アンリ回だったし、「宇宙からの怪獣の飛来」という流れはゲバルガと同じ。そして、そんな宇宙怪獣の地球生態系への影響や懸念を、「人間と怪獣以外にもこの地球には生命がいる」と横峯教授に語ったテルアキ副隊長に言わせる。農家出身だからこそ外来種だとかにアンテナの感度が高いのも解像度高杉晋作……!!!いい!!!こういうの!!!!俺はこういう気の利いた脚本をひたすら摂取したいんだ!!!!!!
その討伐の指揮をとる中央指揮所、壁一面に大きなスクリーン。これ、あとで合成でハメてると思うんですが、現場ではグリーンバックでも垂らしたかな、あるいはそれも無く実景に合成かな。一昔前なら、こういった場面ではいくつものディスプレイをこれでもかと並べて「それっぽさ」を演出した訳ですが、イマドキは確かにこっちの見せ方だよなぁ、青いライティングも「それっぽさ」あってすごく良い。工夫が見える。
「自分の中に別の奴がいるって分かったら、どうする?」。そんなゲントの悩みをよそに、ゲバルガは大気圏に突入。「プレッシャーかける訳じゃないけど、外すなよ」からの「しっかりプレッシャーかけていただいて、ありがとうございます」。このゲントとアンリのやり取り、いい~。これも実にいい。字面だけ見ると皮肉で返しているようにも取れるのですが、両キャストの細かな表情や声色の演技のおかげで、むしろ厚い信頼関係を感じさせるシーンになってる。素晴らしい。しかし、そんな渾身の攻撃を易々と躱すゲバルガ。怪獣の球体+湖といえば、言うまでもなくベムラーですね!殻が開く際にバギバギッのSEと共に光るのなんか、美味ですよ。様式美~~!!
作戦はフェーズ2、CQCモードに移行。ちなみにCQCは、Close-quarters Combat、そのまんま近接戦闘の意ですね。
ゲバルガとアースガロンの戦闘、いやぁ、実に見応えがある。これだけでメインの「ウルトラマンと怪獣のバトル」に匹敵する特撮ボリュームですよ。湖面に映る巨体というのも燃えますし、なによりそれぞれSEが良い。ゲバルガは奇妙な声?を上げるし、アースガロンはあの鉄板を打つような カァーン の起動音が非常にくすぐる。やっぱり、戦闘機をロボットに置き換えたセブンガーの発明、革命的なんですよねぇ。アースガロンの勝率という意味ではちょっと不憫なのですが、戦闘機の特撮の見せ方ってどうしてもバリエーションを出し辛くて。巨体同士が直接取っ組み合う方が、ファイトスタイルや両者の相性、怪獣の特徴や生態を含め、描写しやすい。「早くウルトラマン出てこないかなぁ」ではなく、目の前の「アースガロン頑張れ!」に感情が動く。
パルス状の電磁波、EMPによってミサイルの軌道を逸らすゲバルガ。 electromagnetic pulse、ですね。こういう専門用語をな~んの補足も説明もなくぶち込むのがまた良いんですよ。こういうのがいいんです。いまどき、気になる子はスマホですぐに調べられますからね。変に解説役の無知寄りな隊員や一般人なんか置かなくても、真っすぐに有能な面々のみを描ける。子供向けに変に忖度しないことが、子供への最上の忖度なのだ。
アースガロンちゃんは呆気なくすごい勢いで湖に落下、見事に強さを見せつけるゲバルガ。湖のそばで戦っていたロケーションで、実景をヒキで捉えると河口そばの街。この辺りも丁寧。そしてここのゲント隊長の変身、前髪が垂れて顔にかかっているのがバチクソかっこいい。ハードな雰囲気がよく出ている。
そしてブレーザー登場!からの!ミニチュアを広めに配置して、センターに捉えたウルトラマンをカメラをゆっくり引きながら魅せる、こ、この構図!!武居監督がよくやるやつ!!武居監督がよくやるやつじゃないか!!!デッカーでもよく観たぞ!!!!「武居引き」とでも呼ぼうか!!!!
続く戦闘シーンでは、ブレーザーの動きがいちいち見応えある。もはやお馴染みとなった跳躍しての地団駄、なんだか普通に慣れちゃってますが、やはりウルトラマンがこういう動きをするのは新鮮。ゲバルガの殻を閉じる噛み付きの動作を本能的に回避していたり、細かく叫んで威嚇していたり、とにかく手数の多い演技が繊細。王道の電線手前カットも盛り沢山ですね。電線を手間に置いて奥のゲバルガが発光するカット、合成の手間が増えているとは思うのですが、こういうのをきっちりやってくれるのが嬉しいです。その後の、カメラ横移動でブレーザーの連続回避を見せる流れ、爆炎のライティングを受けたブレーザーの背中がかっこいいですし、手前のゲバルガを境に合成に切り替えるのもお見事。ゲバルガが覆いかぶさるカットでは、オープンセットで観られそうな「下から見上げる絵」をホリゾントで撮っているのがちょっと新鮮。面白い。
そんな激戦が続くも、ブレーザーはまたもやクライマックスフォームをしてしまい(雑な表現)、その果てに逃走。アースガロンのコクピットで全速離脱を指示したゲント隊長も、ブレーザーの意思が浸食していた、と。ゲント隊長の経験則による現場判断か、そもそも全部がブレーザーの意思だったのか、しかし目が光っていた訳じゃないし…… などと、この辺りはまたもやあえて明言せず、要は「いつの間にかかなり混ざってきている」ことがポイントなのでしょうね。逃走時、かっこよく飛ぶのではなく、上に引きずられるように惨めに上昇していくのが、本当のエスケープって感じでしたね。確かに、ここでお行儀よくシュワッチで帰られると違う訳だ。観ているこっちの困惑も大事なのだから。
苦悩のゲント。どうしたらブレーザーと共に戦えるのか。そんな夜、ゲバルガのEMPは街を包み込んで……。といった流れで次回!うぉ~ん!大ピンチ!!超ストレートな大ピンチだ!!
来週、「ゲントとブレーザーの関係性」に一旦の答えが示されそうですが、そこに新武器であるチルソナイトソードを持ってくるのが盛り上がりますねぇ。見てくれは良くも悪くもニュージェネなチルソナイトソードですが、ブレーザーがいかにしてそれを操るのか。ゲントがインナースペースで玉を回すのは無いと見てますが、販促とのバランスというか、ブレーザーの戦いをどう魅せるかも見所です。もちろん、ゲバルガをいかに倒すかのSKaRDの立案・作戦行動にも期待。
しかしまぁ、本当に特撮のアベレージが上がったなぁ。素晴らしい。ミニチュアの数、こんなに豊富ですよ。「山+湖」でのゲバルガ対アースガロン、からの実景合成で河口そばの風景、そして「山間部の市街地」でのゲバルガ対ブレーザー。このロケーションのスムーズかつ説得力のある見せ方、実直ッ!!「とにかく敵怪獣を魅力的に魅せる、それも言葉じゃなく演出で」。これがウルトラシリーズの大原則で、それがしっかり果たされている第11話でした。
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