前半戦折り返しの第13話。毎年恒例の総集編ではありますが、これまでの大筋を整理しつつ後半戦に向けた要素の整理、仄めかし、あるいは種蒔きがガッツリ行われるという、見逃し厳禁な回でした。
『ブレーザー』第13話。
— 田口清隆 (@TaguchiKiyotaka) 2023年10月8日
我が商業デビュー作『長髪大怪獣 ゲハラ』や、『ウルトラゾーン』ドラマパートで田口組をたった一人の助監督として支えてくた、宮崎龍太のウルトラマン監督デビュー作。
感慨深いものがあります。 https://t.co/EK0VP3WD0O
ちなみに「ノクターン」はフランス語で「夜を思わせる瞑想的な雰囲気をもつ、ロマン派の楽曲の表題」を指します。音楽のジャンルを示す用語で、この場合は「夜」のニュアンスを採用しても良いかもしれません。つまり、本筋に対する夜、本編における光が当たっていない陰の部分、物語の小休止。作中舞台が遅い時刻らしいのも関連して、中々にニヤリなネーミングです。音楽という意味では、間奏曲(劇や歌劇の幕間に演奏される音楽)みたいな捉え方もありかな。
そんなこんなで、いってみましょう、#俺が観る 第13話。
引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1710443586314264730
スカードの作戦指揮所に残り、これまでの戦闘記録を資料にまとめていたアンリ。ヤスノブやエミとともに、怪獣との交戦の記憶をたどる中で、話題は宇宙怪獣のとある共通点の話に。その一方、ゲントはテルアキから、ブレーザーについてどのように考えているのか問われて…。
2023/10/07 放送 監督:宮﨑龍太 脚本:足木淳一郎
今回は総集編ということもあり、本筋が進むことはあまり無かったのですが、後半に向けた色んな要素の段取りがありました。以下、ちょっといつもと構成を変えて、大きく2つの点について感想を残しておこうかと。
①1999年の隕石、バザンガ、ゲバルガの関連性
ぼんやり感じてはいましたが、まさかこの中盤で、ここにドカンと言及するとは思わなかった!やられた!いい意味で裏切られました。第1話に登場したバザンガには一部、赤と青のカラーリングが用いられていて、その配色は先般のゲバルガも同様。そして何より、我らがブレーザーも赤と青の生命体な訳です。いやはや、ここまでしっかり提示されてしまうと逆にミスリードを疑いたくもなるのですが、どうでしょう。素直に受け取るのであれば、この3体は同じ星から同じ軌道で地球にやってきたということになります。
もちろん、ブレーザーとバザンガ、そしてゲバルガは見てくれも生態も全く異なる訳ですが、それはそれこそ、人間とライオンとイルカの違いのようなもので。「じゃあこれまでブレーザーは同族殺しをしていたのか!?」という問題提起もあるかもしれませんが、これは突き詰めても仮面ライダーにしかならないし、人間がライオンやイルカを殺したとしても「同族殺しのジレンマ」は起きませんからね。
仮に1999年の隕石がブレーザーくんだとしたら、3年前の例の事故でゲントと一体化するまで、地球で何をどうしていたのか。その辺も気になるところです。
または違って、1999年の隕石はブレーザーくんではなく、地球にそのまま眠り続けていた、あるいは地球防衛隊が密かにその存在を隠蔽していた、ラスボス怪獣という線もあり得る。
引用:https://cocreco.kodansha.co.jp/telemaga/news/feature/blazar/dV19A
こちら、制作発表時の怪獣お披露目の写真ですけど、この左上のところ……。まだ見ぬ赤と青の配色を持つ新怪獣がいるんですよね。大きな鎌を持っていて、いかにも強そうなヤツ。こいつが「1999年の隕石」の正体なのか、あるいは、「サード・ウェイブ」となるのか。
それにしても、初回のサブタイトルだった「ファースト・ウェイブ」が伏線のように機能する話運びは実に小気味いいですね。実は上層部が隠していた何らかの事象の名称だったというオチ。ガラモンが飛来してきた軌道がお話に絡んでいるのも細かい。また、1999年という西暦、そして新聞に記載されている「地球防衛隊が隕石を撃墜した7月」というのは、言うまでもなくノストラダムスの大予言な訳です。あと、ニュージェネレーション的な意味だと、『ウルトラマンガイア』も1999年に放送されていたり。
謎は深まるばかりですが、ここまで明確に真っすぐに「これが今後の縦筋です!」と言われると、下手に予想合戦するよりもノーガードで挑みたい感じはあります。
🔵#ウルトラマンブレーザー🔴
— ウルトラマンブレーザー公式 (@ultraman_series) 2023年10月8日
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アンリが噂話に関して書いたメモ
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②エミ隊員の怪しさ
う~ん、やっぱりこれに触れずにはいられないでしょう。実は、定期購読している『宇宙船』を読んだ際に、田口監督×小柳さん(シリーズ構成・脚本)対談で、「ん、どういうことだ!?」となったテキストがありまして。それは、13話を観る前の話。
小柳 ● 言ってしまえば、変な勘繰りをする必要はないかもしれません。第12話まで描いてきたSKaRDに嘘はないです。みんな仲間だし、仲間のことを思っています。エミもそう。色々と情報収集をしているのは、徹頭徹尾SKaRDのためでしかない。そこは第12話までに描けていると思うので、信じてもらっていいはずです。好きになってもらったSKaRDが、これから大変なことに巻き込まれていくので、一緒に見守ってあげてください。
・ホビージャパン『宇宙船vol.182』P84
これを読んだ直後に13話を観たので、ああ~なるほど~~~、と。これ、エミ隊員が指摘したアンリ隊員のリップに何か睡眠薬のようなものが仕込んであって、彼女がまとめたデータを寝ている隙に消してしまったとか、そういうのもあり得るな、と。
つまり、エミ隊員はスパイの線が濃厚な訳です。彼女が潜入捜査員として非常に長けていることはこれまでも描かれてきましたが、工場の作業員の衣装も、OLの衣装も、SKaRDの隊服も、彼女がまとったコスチュームだったと。まあ、スパイというとちょっと言葉が強いですが(別に敵勢力に潜り込んでいる訳ではないので)、要はSKaRDよりもっと上層部の指示を受けていて、それをメンバーには隠している、隠密指令を受けている、ということですね。親父さんという背景も含めて。
エミ隊員とアンリ隊員の女子会のような会話、一見微笑ましいですが、彼女なりに仲間のことを情報収集していたと思うと若干のホラーっぽさがあって味わい深いです。これまた演じる搗宮姫奈さんのニュアンスが絶妙で、ざっくりとした朗らかさもありながら、どこか近寄り難いというか、ぶっきらぼうというか、自分の世界がある人のように見える。良い意味で目が笑っていない。が、同時に、「悪い人じゃない」。これなんですよ。
小柳さんが言うところの「第12話まで描いてきたSKaRDに嘘はない」って、つまりこの点なんだろうな、と。エミ隊員が事実上のスパイだったとしても、彼女がSKaRDの一員としてメンバー間でコミュニケーションを取ってきたことは決して嘘ではないし、ましてや敵に回ったりすることはないのだろうと安心できます。また、ゲント以下SKaRDの面々も、その事実が明らかになったからといって必要以上に疑心に駆られることはないんじゃないかな。「それ(隠密任務)はそれ」って感じで、そりゃあ全くショックが無いことは無いでしょうが、スッと割り切って「でも仲間だから」に進んでいけそうな気がします。
色んなインタビューを読むと、SKaRDの面々はそれぞれの役者さんの素に近いらしく。だからこそ現場の雰囲気も和やかだったと聞きます。画面越しにも、その呼吸のナチュラルさは何となく伝わってきますね。そういう意味で、エミ隊員を演じる搗宮姫奈さんは今年の8月に起業されてカフェの経営に携わられるらしく、まさしく己の行動力で進んでいく方なのです。下記のnoteを拝読しても、確実にご自分の世界があられる人。
田口 テルアキさんは本当にテルアキさんで、一番そのまんまじゃないかな。エミもそうで......まあ変な子なんですよ、搗宮姫奈は(笑)。
小柳 そうなんですね(笑)。
田口 彼女は話していて、「どこまで本音なんだろう?」「なんか変だな」と、興味を惹かれるんです。出演映画を観て度胸のある子だと思って、アクションもできるから目玉候補ではあったんですが、撮影する中で「やっぱりエミはこの子だったな」と強く実感していきました。本人としては迷いもあったようですが、ゲントとの関係性を役の上でも、俳優同士でもぶつかり合いながら表現し、だんだん最終回へ向かっていく姿が美しかったです。
・Animage編集部『アニメージュ 2023年11月号』P115
なので、エミ隊員のことは総じて「心配ない」というのが私の受け取りです。物語の縦筋としての波乱はあるでしょうが、おそらく、それを上回る「安心」が流れているだろう、と。少なくともこれまでの全13回で、『ウルトラマンブレーザー』へのそういう信頼は築けています。
といったところで、ちょっといつもよりボリュームが少なくなりましたが、総集編ということでご勘弁を。『ブレーザー』、いよいよ折り返しの後半戦に突入です。ブレーザーくんを含むキャラクターの造形・関係性も、物語の縦筋・要素の前振りも、ここまできっちり堅実にやってきた本作。ここからどう跳ねて、どう収斂するのか。期待が高まります。というか、終わってほしくないのであと3クール観たい。マジで。
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