ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

「上司」が難しい

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こんなにインターネットから離れたのは、インターネットを覚えた時以来だ。

 

ブログを約1ヶ月更新せず、Twitterのツイートも途絶え、一体何をしていたかというと、シンプルに「仕事」をしていた。以前にも書いたように、この春から光栄にも管理職の末席に名を連ねることになったが、加えて「コロナ対策リーダー」(笑)を拝命してしまった。色んな意味で、「働き方」の変革を迫られた春。自分の中で一応の「型」が定まったと思ったら、早くも6月に突入していた。たどたどしくネットの徘徊を再開するも、暫く行方不明になっていた漂流者の気分である。

 

www.jigowatt121.com

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「働き方」を見直す上で、最大のポイントは、正真正銘の「上司」になってしまったという事実だ。これまで、いわゆるサブリーダーのようなポジションは経験があるが、今度こそマジのリーダーである。部署をまとめつつ、会社の経営にも関わっていく。単純に、責任が重い。

 

さて、「上司」を拝命した春の日、まずは自分が思う「理想の上司」について考えた。これまでの転職経験の中で、心から尊敬できた上司が2名いる。不思議と彼らの仕事のスタイルは似通っていたので、自分の中で特徴を書き並べながら、目標にすることにした。

 

彼らの仕事のスタイルは、以下のポイントに集約される。

 

①非常に気さく。いつも陽気。

②世間話や雑談が大好きで、話題も豊富。

③驚くほど仕事が速く、判断も速い。

④自分の判断基準や会社の方針を細かく教えてくれる。

⑤業界に関する知識がとにかく豊富。

⑥「叱る」というより「理屈」を語ってくれる。

⑦べったりと並走しない。

⑧無駄な残業をしない。

 

これをひとつずつシミュレーションしながら、今の自分の環境だとどう再現できるのか、自分という人間だといかに実演できるのか、ここ数ヶ月はそればかりを考えていた。記録を兼ねて、それぞれ書き記しておきたい。

 

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①非常に気さく。いつも陽気。

 

シンプルに、気さくな上司は「話しかけやすい」。この「話しかけやすい」雰囲気は、仕事における「相談」「報告」「ミスの報告」等々の風通しの良さに寄与する。

 

これは夫婦関係においても同様だが、やはり、常にニコニコと陽気な相手とのコミュニケーションは楽しい。ついついお喋りが過ぎてしまうし、要らぬことまで口走ってしまう。仕事においては、部下が今現在何を考えて仕事をしているのか、どういう悩みを抱えているのか、それを無意識レベルで引き出し、汲み取る必要がある。

 

あるいは、ミスをしてしまった場面で、気難しい上司に「報告」をするのは気が引ける。早く報告しないと・・・ と焦る気持ちはあれど、臆してしまうものだ。ただ、その上司が気さくで「話しかけやすい」オーラを放っていれば、状況はいくらか違ってくる。とっても単純なことだけど、やはり「上司」になったからには、「話しかけられやすい」人間でありたいものだ。

 

そうなると、「上司」サイドとして求められるのは、アンガーコントロールである。仕事に本気で取り組めば取り組むほど、理不尽な決定や上手くいかない状況に憤る時がある。そりゃあ人間なので、不機嫌にもなる。その感情をいかに客観視し、コントロールし、部署に波及させないか。いつだって部下の前ではニコニコでいたいものだ。

 

そんなことを意識しながら、アンガーコントロール関係の本を読んだり、自分の感情を客観視するトレーニングにここ数ヶ月努めていた。「怒り」や「憤り」の出口そのものを塞いでしまうと、たちまちパンクしてしまう。大切なのは、早い段階で蓄積レベルを客観視し、効果的にガス抜きしたり、一歩立ち止まったりすることだ。

 

私の機嫌が良ければ、部署の機嫌も良い。

 

②世間話や雑談が大好きで、話題も豊富。

 

これも実は①と同じで、「話しかけやすさ」の大切なベースになっている。同僚や上司というのは、場合によっては家族よりも長い時間を共に過ごすので、快適な関係性であることが望ましい。仕事に支障が出ない範囲で、雑談は全然構わないし、煙草休憩も、コーヒー休憩も、井戸端会議も、うるさく注意することはしない。むしろ、そういう精神的な余裕がないと、顧客に対しても心地よい対応が出来ないはずなのだ。

 

「上司」になってから、忙しい合間を縫って、情報収集の幅を広げてみた。普段読まない雑誌を買ってみたり、観たことのないバラエティ番組を観てみたり。その分、一時的に趣味のインターネット徘徊が疎かになったけれど、部下との会話の中で少しずつ接点が増えてきたように感じる。歳上の部下もいれば、歳下の部下もいる。同性の部下も、異性の部下もいる。雑談では、聞いたことのないアーティストの話題にもなるし、名前しか知らなかった芸能人のことで盛り上がったりもする。そういうのを広く拾うために、従来より意識して、色んな媒体をチェックするようにしている。

 

もちろん、部下の嗜好をピンポイントで狙い撃ちして履修すると、あまりにわざとらしい。まあ、そういう下心もゼロではないが、まずはとにかく「雑談の幅」を増やすことが目的だ。深く細かく語れなくても良い。部下との話に乗れれば良い。その中で、相手がどういう考え方を持っていて、何を好み嫌うのか、個性が見えてくる。

 

仕事が色んな意味で盛り上がり、極限に達する時。部下それぞれの個性が色濃く出る場面がある。そういう時に、彼らそれぞれの立場を理解し、小さくても的確なフォローを入れることが出来るか。その「的確なフォロー」それ自体は小さくても、それを構成するのは、「100の雑談」だと思っている。浅ましい表現をすれば「情報収集」、良く言えば「会話という関係性の積み重ね」が、ギリギリの局面で生きる。

 

そして、仕事を本気でやればやるほど、「ギリギリの局面」は頻発していくのだ。

 

③驚くほど仕事が速く、判断も速い。

 

とてもシンプルなのだけど、私が尊敬する過去の上司の方々は、仕事が恐ろしく速かった。こればかりは日々是精進とも思うが、共通しているのは、「フットワークの軽さ」である。

 

すぐ済む仕事は、本当にすぐ済ませる。手元に極力「案件」を持たない。飛んできたボールはすぐに投げ返し、意識してミットを空にしていく。ひどく簡単なことだけど、実践すると意外と難しい。仕事のひとつひとつを可能な限り軽量化させ、効率化を図る。意味もなくアナログになっているものはデジタルに寄せ、デジタルに固執するばかりに手数が増えているものはアナログに逃がす。でも、そういったことを細かく続けていくと、まるでテトリスをプレイするように細かい部分がカチッとハマっていき、連鎖的に能率が上がっていく。これが脳内麻薬のように気持ち良い。

 

「判断が速い」というのも、簡単で難しい。ただ「速く」決断するだけなら子供でもできる。重要なのは、そこにどこまでの正確性が伴っているか、という部分だ。部下からすると「その発想はなかった!」「そのアプローチに光明が!?」と驚くような、そんなジャッジ。これを息を吐くように下してくれる「上司」に憧れる。

 

そのためには、判断の「手札」を増やす必要がある。他部署との関係性、経営陣とのコミュニケーション、取引先との縁。それを常に増やし、維持し、メンテナンスしながら、「ここ!」という場面で発動させる。「部下」だった頃と同じ視点での判断は、もう許されないのだ。その発想を上回り、促す立場にある。そのための、「手札」収集。これを常日頃、意識して取り組むようにしている。

 

④自分の判断基準や会社の方針を細かく教えてくれる。

 

「納得」は全てに優先する。『ジョジョの奇妙な冒険』第7部「スティール・ボール・ラン」におけるジャイロ・ツェペリの台詞。私は、仕事において常にこれを判断基準にしている。尊敬する上司は、決断に迷う局面において、各人の判断基準や会社全体の方針を細かに語ってくれたが、それはつまり、こういうことなのだろう。

 

 

究極、「自分が成功する・しない」も、「顧客が満足する・しない」も、「利益が出る・出ない」も、「納得」には勝らないのだ。例え失敗しても、「納得」が勝っていればその心の行きどころは全く違う。利益が出なくても、そこに「納得」があれば次へ行ける。むしろ、「納得」無しの利益や成功なんて、クソ喰らえである。

 

だからこそ、部下には常に「納得」を感じて仕事をして欲しい。「納得」には、情報が必要だ。理屈も、理論も、その人なりの考えも材料になる。彼らが反発する決断を下さねばならない場面であれば、その背景をひとつひとつ説明し、「納得」に向かってもらう。「君はこう思うだろう」「そして私はこう思う」「会社はこっちを目指している」。「だから、これがこうなって、そうなって、ここに着地する」。・・・などと部下に語って聞かせるには、まず何より、「上司」である自分自身が「納得」しておく必要がある。

 

そのためには、他部署や経営陣と戦わなければならない時もある。「これじゃ俺はまだ『納得』できない」「この決着では部下を『納得』させられない」。成功でも失敗でも、前進でも後退でも、とにかく「納得」が大事なのだ。そしてそれは、何も全てをワガママに主張するということではない。数学の証明問題を解くように、解に向けた判断基準や理屈をしっかりと学び、揃えることが求められる。

 

プライベートで進めている家造りも同様で、大切なのはとにかく「納得」だ。「ああ、ここをこうすれば良かった」「もっと良いアイデアがあったかも」。そういう細かな「反省」はすでに山のように生まれているが、時間をかけて打ち合わせを繰り返した「納得」の方がはるかに勝っている。だから、「後悔」は無い。

 

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⑤業界に関する知識がとにかく豊富。

 

およそ①から④までと被ってくるのだが、私の尊敬する上司は、とにかく業界への知識が豊富だった。おそらく、色んな知識を持っていてもそれが即時に活きる場面は少ないのだろう。しかし、折を見て、雪だるま式に、その知識量が意味を持ってくる。先の「その発想はなかった!」「そのアプローチに光明が!?」といったジャッジにも、これが関わってくるのだろう。

 

まずは無難に、業界新聞の電子版に手を付けた。毎朝コーヒーを飲みながら読むのを日課にしている。そして、同じ業界で個人的に注目している会社をいくつかピックアップし、その会社のホームページに載るニュースリリースや活動報告を常にチェックする。国や役所がその業界に何を求めて働きかけているのか、考えを巡らせる。

 

100、200と、情報が積み重なる中で、「これはウチでも即座に活かせるかも」というアイデアが降ってくるのだ。分かりやすい事例はSlackを通して部下に共有したり、構造の例えとして話したりする。一ヶ月前には「これしかない!」と思っていたやり方にも、違うアプローチが浮かび上がってくる。

 

「部下」は、とにかく忙しい。というより、「上司」になってしまった私とは忙しさの質が違う。トレーディングカードゲームで例えるなら、部下はプレイングそのものに熱中するべきだ。私の仕事は、デッキ構築。今の環境で最善のデッキは何か。たった一枚のこのカードを入れるべきか。将来的にどういうデッキを目指してくのか。部下がプレイングに集中できるように、あるいは楽しめるように、「良いデッキ」を作りたいものだ。

 

⑥「叱る」というより「理屈」を語ってくれる。

 

人間なので、ミスはある。私だってミスはある。それはもうしょうがない。しかし、「ミスもあるよね、うんうん、それも仕事だね」と同調して終わり、という訳にもいかなくなってきた。時には厳しくあたり、結果的に良い方向へ導くのも、「上司」の仕事である。

 

もちろん、カッとなって怒鳴りたくなる時もあるのだけど、過去の尊敬する上司には、ほとんどそれが無かった。諭されるように、ひとつひとつ、何が反省点なのかを語ってくれる。簡単だけど、難しいこと。やはり、自分もこういう上司でありたい。

 

「お客さんを怒らせてしまいました」。部下からそういう報告が入ると、まずは私も即座に加わって、火消しをする。その後、それが発生した「理屈」を一緒に検証する。時系列に互いの行動を並べながら、部下がその時その時に何を思ったのか・感じたのか・意図したのかを聞き出す。まずは最後まで聞いて、その後、私の所見を述べる。まるで、自動車学校の実技講習のようだ。感情に任せて叱るのではなく、「理屈」を検証し合う。そうして「納得」に近づける。地道だけど、やっぱりこれをしないといけない。ガッと怒鳴っても、良いことは無い。ここでもアンガーコントロールが顔を出す。

 

⑦べったりと並走しない。

 

この場合の「並走」は、仕事のやり方や速度を指す。部下が何かの案件に取り掛かる際に、一緒になってひとつひとつ考え、ランナーと並走するコーチのように仕事をする。しかし、正直なところ私にそんな時間的余裕はないし、部下だってウザったらしいだけだろう。とはいえ、どうにも気になって並走したくなってしまう。これが難しい。

 

だからこそ、尊敬する上司のやり方を思い出し、真似る。部下が特定の案件に取り掛かる際に、「A:最終目的地」「B:タブーなアプローチ」「C:本質的に外せない考え方」をあらかじめ共有し、あとは自由に任せる。口を出したくなる気持ちをぐっと堪え、並走しない。ゴール地点で待つ心持ち。想定より速く走ってくる部下もあれば、いつまでも影も形もない時もある。それでも、許す限り我慢して待ち、ゴールしてから一緒に検証する。

 

部下の中には、何でも言うことを聞いてくれるタイプの人がいる。ついつい気を許して色んな仕事を任せてしまいたくなるが、まるで自分の手先になって動くロボットを相手しているような、変な気分だ。それは単に、「私にとって都合の良い部下」が育つだけで、「会社の戦力となる社員」ではない。貴方は一生私の部下ではない。外せないポイントだけを語って、あとは自由に任せる。我慢して任せる。失敗している動きが視界の端に入っても、もう少しだけ我慢する。いよいよ火傷し始めたら声をかけ、一緒に対応する。そうすることで、少しでも学ぶことができるのではないか。願ってやまない。

 

むしろ、並走すると判断が鈍る局面だってある。これは私も反省しながら学んだ感覚だ。部下が持ってきた方法論やアプローチを、会社方針や顧客の観点から、無残にも斬らなくてはならない場面がある。そんな時に、事前にしっかり並走してしまうと、斬るに斬れなくなるのだ。否が応でも感情移入してしまう。だから、あえて距離を取る。

 

君のテーブルに今何が載っているのか、その大枠は知っているけども、細かいところまでは知らない。それをこねくり回すのは君の仕事だ。しかし、時としてその「細かいところ」に翻弄され、本質から逸脱することもあるだろう。そんな時に軌道修正するのが俺の役目。だから、俺は「細かいところ」は知らないでいることにするよ。もちろん、それでも必要な部分はあるけどね。時と場合。見極め。

 

これを段々繰り返していくと、部下は少しずつ、私や会社の判断基準を先回りして真似るようになってくる。あるいは、突っ込まれそうなポイントを想像して潰してくる。そういうアプローチが垣間見えた時、実は涙が出るほど嬉しかったりするのだ。言うまでもなく、出来上がる代物は以前より格段に良い。

 

ビジネスの現場では、往々にして「経営者目線で考えよう」という文言が飛び交う。ネットではこれに対し、「経営者目線は経営者の仕事だろ」という反論が大勢を占めることが多い。これ、私はちょっと違うと感じている。経営者でなくても、「経営者目線」を真似ることはできる。それは、飽くなきトライアル・アンド・エラーの中で、経営者(ひいては自分の上司)が何を考えいかに判断しているか、その想像力を養うことが大切、ということではないだろうか。

 

「私の判断基準を模倣しろ!想像しろ!」とは、口が裂けても言えない。そういうことではない。ただ、こちらがぐっと耐えて語り合う中で、部下がいつしか「この上司や会社はこっちを向いているから、この仕事はこうするのが良いのでは?」と気付き、こちらの指摘に先んじて試行錯誤を重ねる。これもまた「納得」だ。そして、間違っても「上司に気に入られるための仕事」にならないように諭すのも、難しいのである。

 

⑧無駄な残業をしない。

 

はい駄目〜〜〜〜!!これ!!!これが難しい!!!

 

いや、これまでの尊敬する上司は、就業時間にスパッと帰ることだってあった。そういう姿勢が部下のモチベーション維持にも繋がっていた。プライベートも大切。しっかり帰ってしっかり休む。それが大事。よく分かる。正論すぎて疑いの余地はない。

 

しかし、いざ自分が初めて「上司」になると、これがめちゃくちゃ困難・・・!①から⑦までを意識し、仕事のやり方を変え、情報収集に精を出し、部下とのコミュニケーションに時間をかけていくと、なんということでしょう・・・ 自分の仕事の時間が圧迫された!

 

バカ!分かりきってるだろ!バカ!アホ!ここ数ヶ月の残業時間どれだけだと思ってるんだお前!バカ!家族にも迷惑かけただろ!アホ!しかもそんなことしてるから体調崩してるだろ!バーカ!それみたことか!体中に風邪を集めて巻き起こせKA・RO・U、じゃねぇんだよ!元気百倍、点滴マン!とか言ってはしゃぐな!この野郎!!

 

・・・ということで、「理想の上司」を真剣に目指した結果、「⑧無駄な残業をしない」がもう全く達成出来なくて、全然駄目でした。もう少し力抜きます。これじゃ全然意味がないというか、①から⑦までも台無しにしかねない。改めます。程よく頑張ります。体と家族とプライベートを大切にします。

 

そして、インターネットに帰還します。

 

「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の言葉

「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の言葉

  • 作者:岩田松雄
  • 発売日: 2015/01/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)