『仮面ライダージオウ』第18話は、未来編に突入、「シノビ編」の後編。前回に引き続き、メインライターである下村さんの脚本を、柴崎監督が彩る。柴崎監督といえば、私は『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』が好きなんですよ。総勢30人の仮面ライダーが入り乱れるこの映画、いわゆる「春映画」枠ですけど、柴崎監督の創意工夫に満ちた画作りがキラリと光る作品になっていて。
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- 発売日: 2014/08/08
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開幕早々の、仮面ライダーJと鎧武のサイズ比が異なる戦いからの上空スイカアームズという一連のアングル移動、劇中の変身シーンも毎回ビシッと撮られていて、多彩な能力を持つ仮面ライダーたちが色んなフォームや武器を使いながら戦いを彩る演出に、良い意味で目が忙しい、というか。同時変身における変身音が混ざる、あのあえての「ごちゃごちゃ感」とか、そういう面白さをしっかり魅せてくれた作品だったな、と。
近年だと上堀内監督や山口監督が年齢的な若手層としてどんどん活躍の場を広げていますが、その先駆的な存在が柴崎監督だと思うんですよね。確か『カブト』で本編監督デビューされて、『ゴーバスターズ』でパイロット監督を務められて。そろそろ仮面ライダーでもパイロットを担当されないかなあ、と個人的には願っているんですけど、そんな柴崎監督は毎回とてもフレッシュで風通しの良い映像を撮られるので、好きなんですよねぇ。今回もジオウが飛び上がってからのキック炸裂、そして回り込んでの着地カットとか、物凄く面白くて。
などといきなり語り出してしまいましたが、ということで(ということで?)、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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「オーマジオウ未来」と「ゲイツリバイブ未来」
先週の感想で図入りで書きましたが、今現在、来るべきオーマの日を分岐点にこのふたつの時間軸が存在していることになる。
今回、ゲイツとツクヨミがアナザーシノビのライドウォッチを手に入れようと2022年に向かっていましたが、結果としては失敗。とはいえ、スウォルツによって「ゲイツらは違う時間軸には干渉できない」と言われていたし、加えて2019年時点で蓮太郎がアナザーシノビになってしまった以上、2022年の仮面ライダーシノビは存在しないはずなので、ふたつの意味で徒労だったな、と。まあこれは、演出的に「ゲイツたちはゲイツリバイブ未来にアクセスできない」ことを見せておく必要があったんじゃないかなあ、と。
複数のキャラクターの発言から察するに、やはり、「オーマジオウ未来」と「ゲイツリバイブ未来」は現時点でそのどちらが正式な未来になるか決定していない、という解釈で良さそう。だからこそ、白ウォズは「ゲイツリバイブ未来」の完全なる実現を目指して、3つのミライドウォッチを集めに2019年にやってきた。白ウォズのタブレットによれば、ゲイツはオーマの日に3つのミライドウォッチの力を使ってジオウを倒す、とのこと。
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絶対に倒せない敵
私、こういうロジックで「倒せない」みたいなの、大好きなんですよ。めちゃくちゃスタミナがあるとか、バリアを破れないとか、そういうことではなく、理屈がガッチリとハマっているから倒せない、というやつ。今回で言えば、「アナザーライダーを倒すには該当ライダーの力が不可欠なのに、その該当ライダーそのものがすでに存在していない」という事態。レジェンドライダー・アナザーライダー・ライドウォッチの三すくみのパワーバランスを利用した、非常に理詰めの作戦な訳ですね。
本来であれば、仮面ライダーシノビになった状態の蓮太郎と出会い、彼もしくは彼と関りのある人物からライドウォッチを譲り受ける必要がある。そこで初めて、アーマータイムによって疑似的にレジェンドライダーになり、アナザーライダーを除去することが可能になる。しかし、2019年に蓮太郎がアナザーシノビになってしまったので、その後の未来、つまり2022年で活躍する仮面ライダーシノビも自動的に「生まれない」ことになる。
「倒すにはライドウォッチが必要なのに、そのライドウォッチを生成するパワーソースそのものが消滅している」。これが、スウォルツが仕掛けた最大の攻撃な訳ですね。適正云々以前に、過去の蓮太郎をアナザーライダーにする目的はここにあった、と。さて、そうなると、まずはそのパワーソースを復活させる必要がある。
この点、今回のソウゴはそこまで注目する余裕はなく、「未来を信じられなくなっている民を救う」という行動原理で動いている。後の、「彼自身がアナザーの力を拒否すれば仮面ライダーシノビが活躍する未来が復活する」という結論まで想定できていたかというと、描写的に疑問が残る。まあ、ソウゴ自身もつい先日まで自身の未来に悩んでいたので、居ても立っても居られずに民を救うために飛び込んでいく様は、非常に主人公的な良さがあった。
そして、その流れを上手く利用したのは白ウォズ。ソウゴの決死の説得によって、蓮太郎はアナザーシノビであることを拒否する。①蓮太郎がアナザーシノビを拒否→②蓮太郎が仮面ライダーシノビである未来(の可能性)が復活→③「ゲイツリバイブ未来」に属する白ウォズはその未来に干渉可能なため、タブレットを使って「自身が2022年で仮面ライダーシノビからシノビミライドウォッチを入手する」という未来を2019年に誘導した、という流れだと思うんだけど、如何せんちょっと③が分かりにくかったかな、という感じではあった。
先週も書いたけれど、白ウォズのタブレットは、「可能性の未来」を操作し任意のタイミングで発生させられる能力があると思われる。なので、蓮太郎が2019年でアナザーシノビになった以上、「2022年の仮面ライダーシノビ」は可能性すら0%の状態であった。さすがに、無を有にすることはできない、と。そこで、魔王ことソウゴを利用し、彼の民を助けたい思いによって「アナザーシノビの力を拒否させる」→「2022年の仮面ライダーシノビという可能性の復帰」によって、それを引き寄せた。因果律的な、そういう話なんですよね。
ちょっとロジックに凝るあまり分かりやすさが犠牲になってしまったきらいはありましたけど、ソウゴの民を助けたいという強い思い、そして、それを利用する狡猾な白ウォズという、そういう図式自体はすごく良かったと思います。『ジオウ』ならではの人間関係が持つ魅力。
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下山ソウゴと毛利ソウゴ
補完計画でもネタにされてましたが、下山脚本のソウゴの人物像と、毛利脚本のソウゴの人物像って、やっぱりちょっと違いますよね、と。現状、下山ソウゴが初回~ウィザード編、そしてシノビ編。毛利ソウゴがオーズ編~年末オーマジオウ回、という割り振り。
今週のジオウは久々の下山脚本だったけど、やっぱりメインライターというか、ソウゴの描き方が毛利脚本と少しだけ違うな、と感じた。毛利版ソウゴは王の器たる達観さ&浮世離れな異次元青年で、下山版ソウゴは確かに常人離れしてるけどクレバーかつどこか人間臭さも感じさせる、というか。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2019年1月13日
ざっくり言うと、毛利版ソウゴは「すでに王の素質をのぞかせる者」、下山版ソウゴは「王の素質を秘めたる者」、という感じ。どっちが良いとかじゃなくて、アプローチの違いというか。なので毛利ソウゴの方が他者とぶつかりやすく、下山ソウゴは熱い本心を語ってみせたりする。あくまで印象論ね。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2019年1月13日
下山ソウゴは「こんな可愛い青年が将来魔王になるの!? うわー!」って感じで、毛利ソウゴは「このクレイジーっぷり、こいつァたしかに魔王の器ですわ......」って感じ。ソウゴという複雑な造形のキャラクターのどこにフォーカスするかが違う印象。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2019年1月13日
これは想像なんですけど、例えば今回のシノビ編が毛利脚本だったら、ソウゴ自身が「彼(蓮太郎)がもう一度仮面ライダーになりたい、という人間に戻れば、シノビのライドウォッチが手に入るかもね」などとしたたかな発想に至っていたかもなあ、と。まあ、それならそれで、その後に「彼を正直な想いに立ち返らせるのも、ほら、魔王の務めだから」とか言っちゃいそうな感じ。
毛利ソウゴはこういうしたたかな側面というか、魔王ならではのクレバーな魅力があったなあ、と思うんですよ。オーズ編で敵の軍門についてゲイツをボコボコにしたり、鎧武編で未来から干渉して好き放題やったり。「このムーブ!確かに魔王!」みたいな。対する下山ソウゴは、ソウゴ自身の純粋な思いによる行動が、結果として民を率いる王っぽく感じられる、と。毛利ソウゴがより「魔王」で、下山ソウゴが「王様」寄り、という印象ですね。
もちろん上のツイートにも書いたように、こういう様々なアプローチの集合体がソウゴというキャラクターなので、どっちが良いとかそういう話ではなく。などと書きながら思い出したのですが、オーズ編の際に公式サイトに載っていた毛利さんの様子を見るに、かなり意図的に魔王の側面を描いていたのかもしれませんね。
9話からの脚本は毛利さん。
1話から8話までジオウワールドをつむいできた下山健人さんに、まっこうから勝負を挑みます。
「ジオウって要素盛りだくさんだけど、いちばん大事なのは、『ソウゴが魔王になる』というメインプロットだよね?」
「ならば、俺がソウゴを立派な魔王へと導いてやる!」
と毛利さん、言ってることがまるでウォズ。
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シノビのスピンオフ、そしてクイズ参戦
変身シーンのエフェクトもやたら気合が入っていたので、おそらくやるだろうとは思っていたけど、本当に実現したシノビのスピンオフ。これでまた、補完計画につられて加入した東映特撮ファンクラブを解約する理由がなくなった。東映、流石の戦略だ・・・。
そして、仮面ライダークイズとして『ゴーバスターズ』のヒロムこと鈴木勝大さんが出演。いやしかし、戦隊OBの未来ライダー選抜というのも、かなり遊び心があって面白いですよね。これからの若手俳優を連れてくるのもいかにも「平成ライダー的」ではありますが、そこを捻って、「今後絶対に主役ライダーには抜擢されないであろう俳優」に担当させる、という。
記念作である『ジオウ』ならではの「お祭り感」を演出しつつ、演技力や特撮ヒーローならではの見栄の切り方もバッチリだし、東映特撮を観てきたファンは喜ぶし、ついでに現場もいくらかスムーズに進むだろう、という一石四鳥のキャスティング。さて、こうなってくると、続く仮面ライダーキカイのキャストも気になるところですが、果たして・・・。
という感じで、次回は仮面ライダークイズ編。クイズとアナザークイズが入り乱れ、それぞれのウォズが自らの属する未来に向けて画策する。いよいよ「未来争奪戦」も本番といったところか。乞うご期待!