『仮面ライダージオウ』第14話は、諸田監督が彩るゴースト編後編。話の大筋自体は「アナザーゴーストにされてしまったお兄さんを救う」なんだけど、ジオウの諸々のタイムトラベルのルールを脳内で整理しながら観ていくと、中々に複雑な回でした。
「こうなったからこうなって」「そうなったからこうなって」と頭をグルグルさせて鑑賞しつつ、最後にぶち込まれたのが「ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!」という無性にノリの良いサウンドだったので、なんかこう、色んな意味で「平成仮面ライダー観てるなあ・・・」と。
ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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過去を変えるということ
今回の物語上のキーポイントは、「過去を変えてアナザーゴーストにされてしまったお兄さんの死の運命を回避する」という部分。前回の感想で「ゴーストという命の物語において、救う相手がすでに死んでいる場合、どういうアンサーが示されるだろうか」と書いたが、まさか真正面から「死んだ事実を改変する」という答えが出てくるとは。なんという正面突破。まあ、ある意味予想を斜め上で飛び越えてくる『ゴースト』らしいといえばらしい。
とはいえ、やっぱり気になってしまうのが、「過去を変えて死者を生者にするのはアリなのか」という点。というのも、以前の「フォーゼ&ファイズ編」では、命を失った女の子を救うという選択を行わず、むしろ逆というか、「しっかり死なせてあげる」ことを選んだソウゴたち。無制限に過去に戻って事象をイジれるのであれば、あの女の子も救ってあげれば良かったのでは・・・ と思わなくもない。今回のお兄さんも、「アナザーライダーにするためにタイムジャッカーに殺された」訳ではなく、あくまで鉄筋落下事故は通常の歴史の上で発生するものだしなあ。
ここについては、最初も最初、「ビルド編」でも少し気にはなっていて。アナザービルドの彼は交通事故で選手生命を絶たれる運命を回避する契約でアナザーライダーになった訳だけど、結果としてジオウらに倒されたあとも、普通に事故を回避していた。タイムジャッカーが提案する条件は「契約」時点で履行されると見るべきなのか。例えば「王になる」までは待たないのか。良心的だ・・・。
とはいえ、以前から思っていた「タイムトラベルって邪魔合戦になるよね」という疑問を割とちゃんと描いてくれたのは面白かった。要は、①ソウゴがアナザーライダー発生1分前にタイムトラベルしてそれを阻止する → ②タイムジャッカーが更にその1分前に移動して①のソウゴを邪魔する → ③ソウゴは更にその1分前に戻って①を邪魔する②を阻止する ・・・といった、「いたちごっこ」になってしまうのがタイムトラベルの難しいところ。
これを実際にやってしまうと永遠に同じ絵面が繰り返されることになるので、まあ、色んな判断でこれはやらないだろうけど、今回だいぶ緩い邪魔合戦とはいえ、近い趣旨のやり取りがあったのは面白かったと思うのだ。
「そうそう、こういう邪魔合戦ができちゃうよね」、と。そういう、「タイムトラベルギミックの興味深さ」「なんでもありをどこまで描くか」という作劇上のギミックを優先したのか、ソウゴの「どこまで命を救うか」や「どこまでの過去改変を是とするか」という基準ラインが少しボヤけてしまったかな、という気はする。割とその時のノリと気分で決めてるのかな。そうであれば相変わらずクレイジーだ。
ただ、そういうツッコミや理屈とはまた別の話で、目の前の命を救うために若造ふたりがキャッキャしながら(誤解を招く表現)奮闘している様は、実に微笑ましかったですね。タケルは頼もしい先輩ながらも従来の末っ子属性が生きていて、18歳という設定のソウゴとも相性が良い。観ていて和みますね。
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野生のマコト兄ちゃん
警官の妹さんが「お兄ちゃんが!」と叫んだ時に人一倍の反応を見せたマコト兄ちゃん、相変わらずでなんか安心しますね。しかしまあ、毎度のことながら、何の前触れもなく唐突に現場に駆けつけて「タケル!なぜ変身しない!?」と叫んで、これ『ゴースト』未見の人はどうだったんだろう、という不安がよぎる。変身してしまえば「あ、『ゴースト』に出てくるライダーなのね」という理解になるかな。
2015年のタケル「俺は天空寺タケル。眼魔が出現したらしいんだけど、御成とバタバタしてたら現場に駆けつけるのが遅れてしまった。そして気がついたら、俺は仮面ライダーゴーストじゃなくなっていた。...え、仮面ライダーってなんだっけ? 眼魔? まあいいや。俺はゴーストハンター、タケル!!」
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年12月9日
ちなみに、今回外出先からTTFCで鑑賞したのですが、このゴースト&スペクターの同時変身シーンは変身音声が左右にきっちり割り振られていたので、イヤホン装着で観ると面白いです。「お~」ってなります。
しかし、改めて考えるとジオウルール的に割と複雑なことをやってますよね。詳しくはTwitterでも書いたんですけど。「どの時点でのどの事象がどの人物にどんな影響を及ぼすか」を脳内で整理しながら観ていくと、良い感じで脳トレになる感じ。
2018年のタケルが2015年に行き、2015年時点でのアナザーゴースト発生を未然に防いだため、2015年以降の正史が継続され、2018年のタケルにとっては正史への復帰を意味し、生成済みのゴーストライドウォッチをまだジオウに渡す前なので、ゴーストに変身可能、というプロット、複雑すぎやしないか......。
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2018年12月9日
あと、今回のもうひとつの大きなポイントとして、「タケルが幽体における食欲云々の話題に共感していた」部分。この時点で、「お兄さんが死んでいない」とはいえアナザーゴーストは通常通り2015年で発生していたため、2018年のタケルはすでに偽史に放り込まれているはず。そういう意味では、本来の「仮面ライダーゴースト」としての物語を歩んでいないので、彼が本編で辿った「ご飯が食べたい」な展開は無かったことになっているはずなのだ。
これについては、先の「オーズ編」における「アンクと出会わなくても『オーズ』本編と同じ答えに辿り着いた映司」と同じ理屈で良いだろう。つまり、仮面ライダーとしての物語を失っても、限りなくそれに近い運命を辿っている、というやつだ。タケルは、仮面ライダーにならなくても、ゴーストハンターとして様々な事態に遭遇し、霊体になってご飯が食べられなかったり、アカリにシラヌイを作ってもらって危機を脱したり、そういった経験があったのだと思われる。なので、ソウゴの霊体云々に共感を寄せることができる。
この辺りをひとつひとつ追っていくと、本当に複雑だなあ、と。タイムトラベル物は理詰めでがんじがらめになってしまう怖さが付き物で、私のようなオタクはむしろそんな理詰めを解きほぐしていく面白さがあるんだけど、世の少年少女はどういう理解で鑑賞しているのだろう。新しいアーマーをどんどん出していく派手さで牽引するバランスなのかな。
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傍若無人、ディケイド!
そして相変わらずの門矢士である。ディケイド龍騎の両肩のアーマーがすごく下に付いていたのはともかく、相手に合わせてゴーストに変身するのがいかにも士らしい。『ディケイド』本編でも似たようなことをよくやっていたので、ニヤニヤしながら観てしまった。ディケイドゴースト、ゲイツゴーストアーマー、アナザーゴーストと、同じ配色のゴーストが3人もいるのに全員偽物という絵が楽しい。
また、この辺りのアクションシーンは明度が渋めのパキッとした感じに調整されており、ちょっと劇場用ライクな映像でしたね。非常に観やすく、臨場感のあるシーンだった。
ディケイドゴーストの戦いは、浮遊能力を存分に活用したヒット&ウェイ戦法。なんてズルいんだ(褒めてる)。その縦横無尽な戦い方は『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー 』におけるゴースト初登場シーンを思い出すし、同時に、所々の所作がやっぱりディケイドっぽいふてぶてしさ満載なのが良かったですね。カットごとの遊び心が豊富。ごちそうさまでした、といった感じ。
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そして、ゴーストライドウォッチを無効化するディケイド。なんてやつだ。何をどうしたらそんな能力があるんだ・・・。前のシーンでは例の銀の壁でタイムトラベルまで可能にしていたし、登場するごとにチートレベルが上がっていくディケイド。何より恐ろしいのは、そんな無理やりな設定が唐突に付加されても、「ディケイドだから」で納得できる自分がいること。まあ、ディケイドだしなあ。ライドウォッチ無効化については、「全てを破壊し全てを繋ぐ」、つまり、「ライダーの物語を破壊する存在」というメタ解釈的には美味しいけど。
そういう意味では、ジオウは「ライダーの物語を改変」、ディケイドは「ライダーの物語を破壊」、というアプローチの違いがある。歴史の上書き合戦で仮面ライダー本来の物語を歪ませていくジオウと、メタな視点を含めて既存の仮面ライダーの枠組みや理(ことわり)をぶっ壊していくディケイド。「自身の物語(過去や未来)を持たない」という意味では共通するソウゴと士だが、そのライダーが持つ物語上の役割は少し異なる。今週のラストで「この世界は俺に破壊されてしまう」と宣戦布告を放った士だが、来週からはこの辺りが描かれるのだろうか。
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歩く電子ライダー図鑑、ディケイドアーマー
「歩く完全ライダー図鑑」とは、ディケイドのコンプリートフォームを指した『ディケイド』21話のサブタイトル。10年の時を経て、ライダー図鑑は電子画面にパワーアップ。顔面にタブレットを張り付けたようなディケイドアーマーは、様々な仮面ライダーの力を行使することができる。

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先週の感想で「ディケイドアーマーはガンバライダーっぽいのが熱い!」と書いたけれど、こうやって改めて並べてみると、コンプリートフォームにも似ていて面白いですね。ジオウ本来の銀の配色が活きてる。コンプリートフォームの胸のアーマーがそのまま斜めになって(通常の)ディケイドっぽい非対称なデザインになる、という見方もできるし、色々と感慨深い。
「色んなライダーの力を司ったライダーの力をまとう」という何重にも「仮面ライダーシリーズ」を着込んだ存在、ディケイドアーマー。やっぱり存在そのものがオタク的に美味。
そして、「ディケイドの力でビルドの力を使うジオウがエグゼイドの技を使う」というもう何が何だか分からないごった煮の絵面は、良い意味で笑うしかないですね。なんという混沌。そりゃあ、約20年を総括していく訳だから、混沌上等、といったところか。むしろ、この混沌模様をあえて整理せずに意図的にやっている辺りが潔い。必殺技が電王の剣さばきに似ていたのもニヤリポイントでしたね。
あと、引きの絵で変身して必殺技を放つファイズアーマーも良かった。あえてカットを割らずにワンカットで魅せるから、臨場感がある。
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次回、ソウゴが未来へ
『電王』当時、毎週ナレーションで「過去か未来か・・・」と言いながらほとんど過去に行ってばかりだったのが小さな不満だったのだけど、遂に『ジオウ』では本格的に未来に行ってくれるようで、期待が高まる。しかも、未来のオーマジオウはソウゴと同じ「善い魔王」を自称するときたものだ。平和を願い、民を思う、そのピュアな部分が突き抜けた結果、本人は「善い」つもりでも第三者からすれば「魔王」である。そんな哀しい物語が示されてしまうのだとしたら、ソウゴには大きな試練になりますね。
2068年の街並みや世界観がどう演出されるのかも楽しみ。果たして、ディケイドの暗躍モードはいつまで続くのか。それとも、この士自体が実はすでにアナザーディケイドだったりするのかな。うーん、それはさすがに疑いすぎか。

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