ジゴワットレポート

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感想『ウルトラマンブレーザー』第5話「山が吠える」 #俺が観る EP05 その封印を解いてはならない

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『ウルトラマンブレーザー』の感想を綴る連載シリーズ #俺が観る 、5話にして金曜の更新になってしまいました。ギ、ギリギリだ......。いや違うんですよ!皆さん、今日が何の日かご存知ですか? 8月11日の祝日、そう!「山の日」なんです!山怪獣ドルゴが登場する5話をレビューするのにこれほど適した日があるでしょうか!? いやない!!(反語)

 

......というのは置いておいて、公私ともどもちょっと多忙な一週間でした。その「私」の方なのですが、先週の記事でも書いた通り、池袋サンシャインシティでやっていますウルサマに行ってきました。久方ぶりに東京に出張だったので、その流れで。前日にオタクの友人らと飲んだのですが、ずっと「夏はウルサマ!」が合言葉の飲み会でした。いざサンシャインシティに着くと、いやぁ〜 これは高まりますよね。素晴らしい。バザンガに襲われて復興した街として有名ですが、実際に足を運ぶと感慨深いものがあります。

 

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作中でゲント隊長らが移動していた館内スポットも巡りつつ、人生初のウルサマへ。ステージショーでは観客と一緒に手拍子やご唱和をしたり、サプライズも飛び出す内容。たまたま右後方の席で、ちょうどその真後ろ辺りに高所のミニステージありまして。セブンさんが真後ろで激励してくれたり、ブレーザーさんが真後ろからジャンプして降り立ってくれたりと、前方とはまた違った臨場感のある席でした。なにより、現役の子供達が声を枯らしてウルトラマンを応援する、そのシチュエーションや空気感に込み上げるものがあります。

 

展示コーナーも素晴らしかったです。せっかくなのでいくつか写真を載せつつ......。

 

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とにかくアースガロンが可愛くてカッコよくて、展示コーナーにいる時間帯の半分くらいはアースガロンを撮ってた気がします。複座式のコクピットも、タイミングを狙って無人のところを撮影できました。いや〜、楽しかったですね。その後、池袋のかるまるというサウナで蒸されながらウルサマを反芻して楽しむまでがセットでした。後期ステージも始まったばかりなので、これから行かれる方、ぜひ楽しまれてください!夏はウルサマ!


といったところで、前置きがクソ長くなりましたが、今週も #俺が観る 、よろしくお願いします。

 

引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1687613166900129792

 

アンリの故郷で新型レールガン『メガショット』の演習が実施される。そこでアンリは幼馴染のミズホと思いがけぬ再会を果たす。メガショットの設置工事で祠が撤去されたことにより、地元に伝わる守り神・ドルゴが目覚めてしまうと言って演習中止を訴えるミズホだが、アンリはそれを受け入れることができない。そうして無情にも演習が開始されてしまう。

ウルトラマンブレーザー – 円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト

 

2023/08/05 放送 監督:辻本貴則 脚本:継田淳

 

まずもって、5話連続で新規怪獣ですよ。素晴らしい。既存怪獣の要素が無く、完全な新規怪獣だけでここまで続くの、いつぶりだろうか。山怪獣ドルゴは、いわゆる「倒す相手ではない」怪獣のパターン。これは初代『ウルトラマン』でいえばシーボーズなどが有名ですが、要は怪獣それ自体に悪意がなく、場合によっては人間のエゴという降りかかった火の粉を払っているだけの場合もあり、怪獣を鎮静化させることが目的化するケース。怪獣の知能は多くの場合で動物ですから、反射的に暴れたりもしちゃう訳で。つまり、「山を開拓したら住んでた熊が暴れ出してしまった」みたいなものですね。

 

 

それでも。この地球の環境においては人間が生態ピラミッドの頂点なのだから、ドルゴの鎮静化に失敗してしまったら、否が応でも駆除対象にせざるを得ない。加えて今回はメガショットをその身に積んでしまっているので、地球防衛軍日本支部の重大なスキャンダルにもなりかねない。あのまま暴れて人里に降りてしまい、メガショットの銃撃が人命を奪うなんてことがあっては、大惨事も大惨事ですからね。事は割と重大。

 

そんなメガショット。最初は山の上にちょこんと乗っている見てくれがなんだか安っぽく感じられてしまい、先週の予告の時点では「もうちょっと砲台とか造形しても良いのでは......」などと思っていたのですが、ごめんなさい!!!! ま、まさかドルゴの両肩にそのまま植え付けるなんて!!! いや、これ本当に素晴らしいアイデアですよね。メガショット、どう見てもすでに情報が出ているアースガロンのMod.2に繋がる武装で、カラーリングもそのままな訳です。「怪獣然としたロボットにツインキャノンを装備させる」という、メカゴジラを受け継ぐ組み合わせ。これを先に玩具都合で開示しておいて、本編ではひと足先にひと捻り、「本物の怪獣にツインキャノンを装備させてしまった事件」をやっちゃうんですよ。これにはやられました。すごい!このあわや大惨事のトラブルが先にあり、しかもそれをブレーザーと協力するアースガロンが収めたことで、Mod.2への期待やカタルシスは何倍にも膨れ上がる。

 

 

『Z』と同様、田口監督の細やかなシリーズ構成が光ります。田口監督のシリーズ構成って、なにか全体の本筋で仕掛けてひっくり返したりするよりも、本筋からひとつ逸らした “副線” を巧妙に連結させることで世界観が無限に厚くなるような、そういう味ですよね。

 

また、ドルゴに植え付けられてしまったメガショット。これが実に痛々しい。先週のレヴィーラに引き続き、なんて可哀想なんだドルゴ!可哀想!可哀想でいいぞドルゴ!! 着ぐるみの造形、山を表すコケのような植林がすごく生々しく、角度によっては本当に丘の特撮セットみたいなので、それに明らかに人工的なメガショットが付いてしまってるのが可哀想でなりません。しかも、劇中の様子を見るとメガショットって自動的に動いてますよね。アースガロンの攻撃も自動で追尾して撃ち落とす動きを見せてましたし、砲台も敵の動きを測って撃ってるようです。だからこそ、どう見ても本来は温厚で寝ることが仕事のようなドルゴが、メガショットのせいで「動く危険砲台」になってしまった。それを取り外そうとウルトラマンやアースガロンが立ち塞がるので、ビームのひとつでも撃ちたくなるのは当然。無罪!無罪ですよドルゴ!

 

しかし、いくら人間のエゴという火の粉でも、熊が山を降りるなら駆除せねばならぬのが道理。劇中中盤、場合によってはドルゴを殺す必要がある...... という認識を共有する面々が目を伏せるシーン、すごく良かったです。みんな大人の判断をしている。例えばここにカナタやケンゴがいたら、「ドルゴを倒すなんてそんな!だめです!なにか方法があるはず!」ってなる。彼らは若く優しいので、そういうリアクションが出てくる。しかしゲント隊長をはじめSKaRDの面々は、特殊部隊という背景もあり、おそらく早い段階で「最悪のケース」を想定している。それは、ドルゴが人命を危険に晒すこと。メガショットがその被害を拡大させてしまうこと。その場合はすぐさまドルゴを駆逐しなくてはいけない。こういうところでリアルな思考がひとつまみ入ると、途端にピリッとするんですよね。いい......!

 

ちなみにこのメガショットを積んだドルゴ、ソフビだと取り外せるそうですね。良き。というか制作会見の時はメガショットを積んでないんですよ!チクショー!こういうサプライズ大好き!!

 

 

ストーリー面ですが、今回はこれまた定番の土着神信仰もの。怪獣といえば「古よりこの地に伝わる」ですからね。こういうのがレパートリーにいるだけでグッと深みが出るってものです。その地に住む人間が警鐘を鳴らしに来るとか、巻物に怪獣が描かれているとか、もう役満ですよ役満。最高。ありがとうございます。

 

アンリ隊員の個人回でもあるのですが、エリ隊員の個人の活躍をがっつり描いた前回と異なり、あまりアンリ隊員にメインで踏み込む作りではありませんでした。というより、彼女のパーソナルな部分に触れつつ、「地元との距離感」「幼少期の思い出」にふわっとリーチしていき、最後にそれを言葉にせずとも理解してくれる上長と確かに交わして終わるという、おとなしくも上品な作り。分かりやすくアンリ隊員に「地元との確執」や「田舎への苦い思い出」を用意する事もなく、友人とも関係そのものはずっと良好で、その上でドルゴにまつわる事件が起こる。それを通して、幼少期に友人と祠に手を合わせていたこと、声が聞こえるという神話のような出来事に仄かに憧れていたこと、そして、自分も確かにこの地で育ってきたことを改めて体感すること。そういう、さりげない要素を端々に用意しつつ、ドルゴの「倒すべき怪獣ではない」=「沈静化が目的」な大筋も相まって、派手さは無いが上質な印象でした。

 

とはいえ、派手さが無いというのは作劇のギミックの話であって。映像面では、ドルゴが目覚めるシーンの感涙もののオープンセット、水を飲むシーンの特撮とSEの良演出、そして鼻提灯というコミカルなシーンまで、とにかくドルゴが見応え抜群。また、アースガロンも操縦者によって戦闘スタイルが変わったり(みんな大好きデカレンジャーロボ!)、膝で矢を割って超反復で投擲するブレーザーだったりと、思わず巻き戻して観ちゃうシーンが多かったです。これはもうウルトラマンに限らず特撮ドラマ全般に求めている事ですが、一話に一度以上、本当に一度だけでもいいので、「ウォッ!? すごい映像だッ!」と目がカッと開いちゃうシーンが欲しいものです。『ブレーザー』、今のところ毎回何度もあって眼福。

 

また細かいところですが、アンリ隊員が祠に仏像を納めるシーン。「眠ってくれィ!」と空手の構えのような所作で息を吐いてから体全体を使って振り下ろすのですが、でもこれ、一刻を争う場面でそんな所作は本当は要らなくて。しかし、彼女にとってはこの瞬間になにか「神聖なもの」を感じていて、土地に伝わる神様を鎮めるための大切な行為、あるいは儀式なので、自然とああいう礼儀を重んじるような動きになったのでは、と。これ、その後のシーンでブレーザーがドルゴを移動させる前に例の祈祷ポーズをちゃんとやるのと同じなんですよね。天と地、生きとし生けるものへの敬意。それを払う者たちの物語。ブレーザーの狩猟民族としての祈祷ポーズ仕草と、ドルゴの土着神信仰ものが、上手い具合に噛み合っていて。アンリ隊員とその地元をメインに据えることで調和が取れている印象すら有ります。手堅い。

 

あ、あと。ブレーザーへの変身シーンの主観映像もダイナミックで手に汗を握りましたが、その後のシーン。ブレーザーがアースガロンと並び立ったり、アンリ隊員と目が合うシーン。ここ、普通のウルトラマンだったら頷くと思うんですよね〜。「ウルトラ頷き」。あのSEと共にウルトラマンがこっちを見ながらゆっくり頷いてくれるやつ。しかし、ブレーザーは頷かないんですよ。「ウルトラ頷きチャンス」で頷かない。これがまた特異で良い。本作のテーマがコミュニケーションだと謳われていることからも、まだここで頷くまでの関係性には至っていない、と。それに、やはりゲント隊長の意識や自我がブレーザーに活きているとは(現時点では)思えないんですよね。ブレーザーはブレーザーの自我で動いているというか。だからアースガロンやアンリ隊員に無条件の信頼を寄せたりはしないんじゃないかな、とも思ったり。

 

といったところで、手堅く、上質で、それでいてアイデアに満ちたドルゴ編でした。「山怪獣」という二つ名が単純明快シンプルパワー炸裂すぎて大好き。

 

次回、早速の総集編ですが、よくある「SKaRD面々によるウルトラマンブレーザー対策会議」とかではなく、マスコミによる市井の人々の反応を踏まえたモキュメンタリーになっている模様。田口監督の性癖を感じるゥ!こういう見せ方、小気味良いですよね。

 

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