ジゴワットレポート

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感想『ウルトラマンブレーザー』第4話「エミ、かく戦えり」 #俺が観る EP04 才女の瞳が、真実を映す

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『ウルトラマンブレーザー』も早くも4話。約一ヶ月をもうこの番組と過ごしたことになりますが、毎週とっても見応えのあるエンターテイメントを提供してくれて感無量であります。おかげで我が家のアースガロンちゃんも大活躍。ちょっとしたポーズを取らせながら手に持って眺めているだけで、可愛くてかっこいいんですよね。セブンガーといい、田口監督の「ロボットに愛嬌を加えてキャラクター性を持たせる」手法は本当に絶妙だと痛感するばかり。

 

 

そんなこんなで、今週も #俺が観る 、いってみましょう。「エミ、かく戦えり」です。

 

引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1685076444215660544

 

3か月前に突如現出した怪獣レヴィ―ラ。その唯一の対処方は、大手化学企業ノヴァイオが開発した新型殺菌剤『FK1』で一時的に追い払うことであった。だが、謎多きこの怪獣とノヴァイオ社との間には不可解な繋がりが…。真相を探るべく、エミはノヴァイオ社社長の曾根崎のもとで潜入捜査を行う。

ウルトラマンブレーザー – 円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト

 

2023/07/29 放送 監督:辻本貴則 脚本:継田淳

 

今回はやはりレヴィーラに尽きますよね。放送前の制作発表ステージで怪獣軍団がお披露目された際、ひときわ注目を集めていたレヴィーラ。半透明のビニールを貼り付けたような異形っぷり、どこか生理的嫌悪感をうっすら漂わせる造形や佇まいは、一体本編でどんな活躍を見せてくれるのか期待大でした。蓋を開けてみると、液状化してトリッキーに立ち回ったり、派手なオープンセットで市街地を破壊したかと思えば夜戦までこなし、まさに期待に応える大活躍ぶり。

 

 

しかし、私がとても気に入ったのはその出生です。なんて儚く、物悲しいんだろう、と。レヴィーラに感じていた既視感がクリオネだったのは納得の種明かしだったのですが、クリオネは巻貝の仲間ということもあり、まともな知性は無い訳です。今回、悪徳商売人にこれでもかと利用され、命の尊厳を踏みにじられていましたが、本人(本人?)はそれに憤慨する頭脳すら持たない。ただの実験動物と同等の扱いで、利用され、増やされ、最後にはブレーザーに撃破され粉々になっていく。この悲哀ですよ。なんて可哀想なんだ!いいぞ!可哀想でいいぞレヴィーラ!!

 

 

エミ隊員が盗み出されていた機密資料を閲覧するシーン。一旦停止して資料の文章を読むと、隕石に付着していた物体Aに類似する生物は地球上におらず、火に近づけると避けるような動きをするとのこと。『遊星からの物体X』ネタににやりとするところですが、実はこのカット、液体窒素を使って物体Aの活動を停止する実験まで載っているんですね。つまり、エミ隊員が最後に取った作戦はこの記述をヒントにしたものだったと。まあ、彼女が才女であることは度々描写されていたので、そんなワンカットの文章なんて細かく読まなくても話が分かるように作られているのですが、だからこそ細部に拘ってくれるのが嬉しいんだなぁ。

 

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「実験生物として生み出された怪獣」という設定だけでも今回のお話は成立するのですが、ここに「隕石に付着していた地球外生命体とクリオネの間の子」という背景を加えることでSF的にぐっと深みが増している。それでいて、レヴィーラの悲哀性も増すってもんです。もしかしたら本当に物体Aは細胞の一部とかで、元の完全体(?)だと知性を持った宇宙生命体だったかもしれませんからね。それが、遠い宇宙の果ての太陽系第三惑星で、いち企業のエゴのためだけに命を歪められ利用されてしまう。とはいえ、知性も感性も持たないが故に「救う」対象にすら届かず、ただシンプルに排除されることでしか物語上のエネルギーを持たない存在。こういう、キャラクターよりもバックグラウンドで存在感を示してくる怪獣、いいですよね……。

 

初代『ウルトラマン』が毎週30分のTV怪獣映画、という性格を持っていたのは有名な話ですが、怪獣というのはただのヤラレ役では無くて。もちろん、ごく単純に巨大なスケールに感じる浪漫や恐怖もその魅力ですが、やはり何より、怪獣自身が何かしらの爪痕を残して散っていくこと。視聴者の心に何かを残した後に、銀色の巨人に敗北していくこと。そこまでがセットで、ウルトラマン概念における「TV怪獣映画」が成立する訳です。

 

なので、例えば『ジード』のベリアル融合獣のように「完全に人間に操られるだけの怪獣」は、それはそれでインパクトはあるのですが、前述の「TV怪獣映画」としては弱さもあって。スカルゴモラがスカルゴモラじゃないといけない理由に欠ける、という話です。怪獣の生態・キャラクター性・バックグラウンド・散り様が、物語の縦筋にあまり関与しない。もちろん、だから駄目ってことじゃなく、それは作品ごとのコンセプトやスタッフ陣のフェチの置き方の違いによるのですが、とにかく今年の『ブレーザー』はここをしっかりやるんだ、と。

 

 

バザンガが硬いからこそ降下作戦や特殊部隊の活躍があったし、ゲードスはその歴史や生態がSKaRDの隊員個々の活躍を炙り出し、タガヌラーは動く時限爆弾として物語に緊迫をもたらす。全てがそうではないのですが、やはり既存怪獣のスターシステムだと「その怪獣の背景や生態はすでに過去作でやっているのでお馴染みですね」なノリでお話との接続が薄くなる傾向にある気がしていて……。

 

怪獣を新規で作るということは、怪獣が物語と密に接続されるということ。この物語に必要なのは「怪獣」ではなく、「バザンガ」や「ゲードス」や「タガヌラー」や「レヴィーラ」なんだと。そういう語り口をしっかりシリーズ全体でやる!、というのがとても明確なんですよね、『ブレーザー』は。だから美味しい。

 

 

そんなレヴィーラ、液体がCG合成だけじゃなくガチの液体だったのはすごく良かったですよね。やっぱり、特撮って実物のナマの動きがあってなんぼ、みたいなことろあるので。ドロドロの液体に押されて道端の車や公園のベンチが流れていくカットとか、実に沁みます。

 

また、レヴィーラまわりの辻本監督の特撮、バッチバチに冴えていて見応えがありすぎました。毎週の感想で書いているように私はオープンセット大好き人間なのですが、冒頭、自然光のもとで爆炎を背負って市街地を蹂躙するレヴィーラは感涙モノのカット。こういう、怪獣やウルトラマンの背丈より高く炎が上がるやつ、『ギンガS』の坂本監督以降かな、シリーズでも割と定番の見せ方になってきていて。坂本監督の場合は純粋なヒーローの決めカットに構図が振ってありますが、今回のレヴィーラだとビルの谷間で生々しい高さを感じさせながら高い炎が立ち上がるので、被害の尋常じゃないっぷりが伝わってきます。レヴィーラの身長が見たところ高層ビルとそう変わらないのがすごくいい!

 

あと、アバンでエミ隊員が社長の写真を撮っているシーンで、怪獣が出現して、カメラが左に向くと窓の外でレヴィーラが暴れているカット。最初の社長の後ろ、窓の向こうは普通に実景なのですが、途中の窓枠を境界線にミニチュアに切り替わっている。素晴らしい。確か『激走戦隊カーレンジャー』だったか、似たような特撮シーンがあったんですよね。実景のレッドレーサーが上を見て、カメラがぐんっと横に振れるとミニチュアワークに切り替わってるやつ。それこそ田口監督も「等身大と巨大さを同一画面に」がお好きで『魔進戦隊キラメイジャー』に参加された際も存分にそれをやられていたのですが、どちらかというと田口監督は合成やカメラワークが主体のスタイル。今回の辻本監督は、前述の水のカットもそうですが、出来るだけ物撮りを重視しつつアイデアと工夫でそれらを繋いでいく印象があります。

 

 

といった感じで、とにかくレヴィーラがよかった!そしてレヴィーラまわりの特撮も最高だった!という前置きでした(前置き、とは)。何回も繰り返し観たいカットが多すぎましたね。毎週のことですが。

 

さて、お話のメインはエミ隊員の潜入捜査。まずサブタトルの「エミ、かく戦えり」が韻を踏んでいるのがもう好きなんですが、とにかくパンツスタイルがお似合いで……。すらっとした脚で繰り出すキックは画面栄えが抜群でした。また、「潜入捜査もの」「事件捜査もの」としてのプロットもよく出来ていて。電子機器でやり取りではなく、わざわざ水族館で落ち合って隊長と情報交換するのもオッシャレ〜〜。クリオネが怪獣の元ネタなので水棲で水族館、という示唆はもちろん、ゲント隊長がしっかり私服スタイルで「偶然会った他の客との会話」に擬態しており、それを更にあえて敵に見せて罠にかける、という転がし方も素敵。

 

エミ隊員のアクションシーンは、奪った銃をノールックで破棄したり、回し蹴りの後にすっと首を回して髪が浮いたり、とにかく「デキるオンナ!!」な見せ方に満ちていて、好きでした。田口監督がインタビューで「設定が特殊部隊なので体つきも体術もある程度しっかりできる人をキャスティングした」と述べていたのですが、それを実感する内容でもありました。

 

 

まさかの偶然&アドリブという頭をぶつけるくだりも、ブレーザーブレスを焦って隠すくだりも、エミ隊員をメインに据えながらもゲント隊長のお茶目なシーンがしっかり用意されているのもポイント。ゲント隊長もとにかく仕事の出来る有能な人なのですが、そんなキャラクターの人間臭い所作が垣間見えるの、愛着がもりもり湧いちゃうんですよねぇ。

 

クライマックスは久々の夜戦!ブレーザーのたてがみの発光がこれまた美しいのですが、今回の名場面はビルに倒れ込みそれを盛大に倒壊してしまうブレーザー。レヴィーラの攻撃を受けてブレーザーが後ろに吹っ飛び、カメラが切り替わって反対側のビルにじっ……と寄ってからの、ワンテンポ溜めてど〜ん!こ、この溜めが!これがいい!!破壊されるビルの「破壊される前」を舐めるように撮ってからのインパクトですよ。素晴らしい緩急。そして飛び散ったビルの破片、最後に大きいのが画面中央に飛んできて大きな落下音、からのそれに驚くエミ隊員らのカットに繋がるのもすごく良い。仕込みが細かい。巨大戦・ミニチュアワークとドラマパートをしっかり繋げていきたいという熱い想いを感じる。(おそらく最後に飛んでくるパイプ状の破片はCGで付け足してると思うのですが自然すぎて分からない!)

 

必殺技は初の上手投げを披露、そして何気にアースガロンちゃんも夜戦デビューで発光が美麗……って、おいおいおい最後のニコニコ眼はそんなん反則ですよお前。こんなん販促だ!

 

ラストは花言葉できっちりしっとり締めて終わる、実に手堅く作られたシナリオでした。アースガロンの初登場とか、新部隊の結成とか、そういう目に見えて盛り上がる展開ではなかったですが、3話までで提示された『ブレーザー』のリアリティラインや人間描写の生っぽさ、怪獣を作劇にきっちり接続する性格や気合と予算を感じさせる特撮など、ホップが終わり次第にステップに移行するターンとして、とても実直でした。

 

さて!来週も新しい怪獣が出てくる〜〜〜!うわ〜〜!幸せ……。幸せじゃ。そして、実は今度ウルサマに行きます。来週の #俺が観る では、ウルサマの写真なんかも載せられるかと。ウルトラ充の夏、きてるぜ。

 

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