ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

感想『ウルトラマンブレーザー』第3話「その名はアースガロン」 #俺が観る EP03 戦士たちが駆るは、鋼の体を持つ獣

FOLLOW ME 

DXアースガロンを買いまして、自宅でいつも拝んでいます。いってきます、アースガロン!ただいま、アースガロン!

 

この手のフィギュアって、よく「可動域がすごい!」「存分にブンドドできる!」と言われますが、実は私はあまりそういう楽しみ方をする人間ではなくて。なんというか、それが “在る” ことがもう最高といいますか。アースガロンでいえば、それこそポーズを取らせたりもしますが、最も充実感を覚えるのは単純に手に持っている瞬間なんですよ。実在感。ずっしり感。リアルな物体の存在感。今ここに “在る” という、その事象だけで素晴らしい。そういう楽しみ方(楽しみ方?)が好きです。

 

 

そんなこんなで #俺が観る 、第3回。いってみましょう。

 

引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1682539733015224322

 

新戦力アースガロンの開発に携わっていたヤスノブを一員として迎え、ついに集結したSKaRD。対怪獣戦に向け訓練に励むことに。そのさなか、新たなエネルギー源の貯蔵タンクが一夜にして空になるという怪現象が、世界各国で発生しているとの情報が…。原因は怪獣であると踏んだSKaRDは、満を持してアースガロンを戦場に投入する。

ウルトラマンブレーザー – 円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト

 

2023/07/22 放送 監督:田口清隆 脚本:小柳啓伍

 


www.youtube.com

 

冒頭、テキサスに出現するタガヌラー。こういう「アバンで怪獣の生態が描かれてOP入り」という段取りの懐かしさよ。そして田口監督って諸外国で暴れる怪獣を撮るのお好きですよね。グリーザ然り、デストルドス然り。あっちでも暴れて、こっちでも暴れて、そして遂に日本へ、という流れ。こういうスケールを明示されると、国外にある地球防衛隊支部はアースガロンをどのように見たのか、あるいは諸外国でSKaRDの活躍がどのように報道されたのか、なんて妄想も膨らんじゃいます。

 

 

しっかし、タガヌラーがタンクを襲うシーン!ちゃんとミニチュアや夜空のホリゾントをこしらえて撮ってある!これはスケール的にタガヌラーの小さなプロップを作ってますかね。しかもタガヌラーの眼が発光までする。最高だ。「国外の数ヶ所でタンクを襲っている謎の怪獣」なんて、隊員の説明台詞でも済ませられそうな描写なのに、ちゃんと特撮で撮る。絵で見せる。だからこそ説得力と実在感が出る。なんて良い時代になったんだ……。(毎週こんなことを言っている気がする)

 

あなたの荷電粒子砲はどこから? 私はジェノザウラーから!ってことで、メカニック担当のバンドウ ヤスノブ隊員が本格的に登場。気さくな関西弁キャラですね。調べたところ、演じる梶原颯さんは兵庫のご出身でした。エネルギーの説明をがりがりとホワイトボードに書くシーンなんか、いいですよねぇ。こんなの、子供はもちろん大人も意味不明な人が多いと思うんですが、ああいうのをちゃんと「それっぽく見せる」のがすっごく大事なんですよ。

 

 

「彼は狙撃の名手だ」とか「〇〇は得意なんで任せてください」とか、そういう説明的なキャラの肉付けではなく、ちゃんと視聴者に肌感で伝えてくれるのが良い。先週も書いたけど、田口監督がどれほどのリアリティでやりたいのかがよく伝わってくる。大切なのは、「すごい」と説明されること、ではなく、「すごい」と感じること。我々が実生活の会社や学校で人と関わるのと同じで、その人にとっては何でもない言動やニュアンスから「あっ、すごい人なんだな」と理屈じゃなく感覚で理解する。

 

SKaRDは一種のプロジェクトチームでは、と先週の感想に記したが、であるならば「それぞれが一芸に秀でている」ことがきっちり伝わるのが何より重要。潜入捜査を器用にこなす天真爛漫なエミ隊員、理系一辺倒ではなく社交性にも長けたヤスノブ隊員、等身大の表情からプロフェッショナルな佇まいへの切り替えが美しいアンリ隊員、そしてサブリーダーとしてのポジションを的確にこなすテルアキ副隊長。技巧や体術だけでなく、人間性すらもどこか一芸に秀でている。

 

こういう「凸凹チーム」って本当にいいですよね。凸凹なのは協調性じゃなくて、得意分野の話。

 

 

大好きなのは、アースガロンのコクピットの魚眼カメラのシーン。こういう「寄り」の作り方、大好き。コクピットを狭く作ってあることが造形的にも活きてる。マニュアルが笑っちゃうくらい分厚いのも良いし、それに付箋がアホほど貼ってるのも最高。いやぁ~~、そうなんですよ。実際こうやって全身全霊でガリガリ取り組むときは紙なんですよ!タブレットじゃなく!紙に書き込んで汚していくんですよ!

 

「裏技があって、首の付け根に……」のくだり、ここで多くの視聴者が「ということはつまりそういうことなんだな!」って思ったら、ものの十数分後につまりそういうことになりましたね!いい!こういう予定調和をきっちり仕込んで果たすから気持ちがいい!そして模型で模擬戦闘するくだりも、これも馬鹿みたいに笑える最高のシーンなんですが、一番喋ってるのが副隊長なのがまた粋なんですよね~。このシチュエーションで最も雄弁そうな開発に携わったヤスノブ隊員はメモを取るのに集中してて、攻撃した時の弾道だけガチ再現してる。

 

この短い一連の訓練シーンだけで、「隊員それぞれの人間性」「技術的な得意分野」「次第に固まっていくチームワーク」「隊内の充実した機運の高まり」が肌感で一気に理解できるの、最高 of 最高ですね。理解度が実に生々しい。この職場に出勤する時、毎朝「あ~、しんどっ!」って言いながら笑顔でやる気でそう。これなんですよ。

 

そしてゲント隊長の回想。やはりこれは例の3年前の……。光の渦の中に見えた白い人影を、不審に思うより先に助けようとするゲントさん。なんだ聖人かよ…… 聖人レベル風切大和だよこんなの……。あと、すっごくどうでもいいことなんですけど、私も仕事中は結婚指輪を外す人間でして。キーボードと取っ組み合って作業する時に左右の手の重さが違うのが嫌で、腕時計も必ず外します。小学校から吹奏楽で打楽器をやっていて、スティックを握る際は必ず時計を外すのですが、その癖が今になっても抜けず。もちろん、指輪も腕時計もそれぞれに専用スタンドがあって、そこにディスプレイさせるのですが。なので、仕事終わりに指輪をはめるゲント隊長にちょっと親近感を覚えてしまいましてね。(マ・ジ・で・どうでもいい話だな!)

 

“いいチーム”は周りの意見をただ肯定するだけでなく、喧嘩しろとは言いませんが、時には意見を言わなければならない。コミュニケーションってそういうことだし、それができる仲を築かないといけないから、“いいチーム”になるのはなかなか難しいなと思いました。

『ウルトラマンブレーザー』蕨野友也 現場でも “いいチーム” を目指して | アニメージュプラス - アニメ・声優・特撮・漫画のニュース発信!

 

アンリ隊員に発言を求めるゲント隊長、とてもかっこいい。それに「うわぁ、特殊部隊っぽい」とこぼすアンリ隊員もとっても面白い。こういうテンポのいい軽妙なやり取りがどこかしこで続くの、小柳さんの脚本の味なのか、田口監督の間の取り方なのか、キャスト陣のチームワークが成しているのか。きっと、その三位一体なのでしょうね。

 

この後の「俺たちは俺たちの判断で出撃することを許可されている」のシーンでのアンリ隊員のニヤケ顔、ハイライトです。

 

 

田口監督が平成ゴジラVS世代でとってもお好きなのは周知の事実ですが、私も同じくVS世代でして、あの頃のメカゴジラやモゲラを彷彿とさせる圧巻の発進シークエンスでした。こんなものがテレビで観られる日がくるとは。ありがたや。ありがたや……。アースガロンの模型とスーツをカットごとに使い分けているとは思うのですが、その模型もめちゃくちゃ出来が良いですね。ライティングも含め、しっかり巨大に見えます。模型然としていない!

 

そして冷却材!!!!!!!!冷却材のシーン!!!!!!!「ば、馬鹿~~~~っ!!!!!!!!!!!」って叫んじゃいましたね。生きててよかった!!!!そして飛び立つアースガロンがスッと上に行くのではなく少しぐらついてバランスを取りながら上昇していくあの絶妙なニュアンス!!!!ふぉおおおおお!!!!!飛び方!!!!メカゴジラ飛び!!メカゴジラ飛び!!!!!!!!

 

<2023.8.7追記>

すみません、冷却材ではなく、正確には轟音を低下させるための水の噴射のようです。失礼しました。岱名創さん、ありがとうございます!

 

 

そのため宇宙開発をしている各国とも、発射時の轟音(ごうおん)を低減させるため、噴射煙をスムーズに流す煙道を発射台の下に設けたり、ロケットの炎に向けて大量の水を噴射させたりしているというのだ。火を消すわけでもないのになぜ水?と疑問に思うのも無理はない。原理はこういうことらしい。水を勢いよくロケット火炎に向けて噴射すると、ロケットの噴射エネルギーによって即座にミスト状になり、轟音が非常に細かい水滴に吸収されて音が減衰するというわけだ。実際に、JAXAが行った実験でも散水による減音効果が確認されている。

水環境研究の最前線(12):水を研ぎ、究める 水滴が轟音を制す|コラム|国立環境研究所

 

<追記おわり>

 

 

実際のところ、ここ数日、この発進シークエンスだけを日に何回も観てます。中毒みたいに観てます。

 

 

そして、ゲストでご出演の関智一さん。なんというか、こういう「トンチキ現場科学者」をしっかり好演されていて素晴らしいですよね。先週の「警鐘を鳴らすジジイ」と同じく、「トンチキ現場科学者」は特撮の名物ですから。あとあれですね、「怪獣ほんとにいるんだもん少年」とか「恋の予感だけど実は宇宙人美女」とか、大将ッ!この調子でいつものやつ頼むよッ!

 

あとエミ隊員の潜入捜査。これって、彼女のコスプレというか、色んな衣装が毎週観られるってことですよね。楽しみだな。なんでも似合いそう。

 

 

ゲント隊長の見事なネゴシエーションを経て、アースガロン、初陣!アースガロンが川北後光で吠えた後の、一歩目を踏み出すシーン。ここで左足のかかと、鉄パイプの箇所がちゃんとグンって伸びてるんですよ!これ!これすごくないですか!?????? これなに!? スーツがガチでそういう仕込みの造形なのか、CGでここだけ処理してあるのか、脚のプロップだけ別に作ってあるのか。とにかくここ、めちゃくちゃ燃えますね。性癖を感じる……。

 

太陽光のもと、オープンセットで殴り合うアースガロン。こんなん鼻血でますわ。その後のアースファイヤーも、ちゃんと怪獣内部の温度に影響を与えないよう、鎌だけ狙うのが小気味いい(この後の尻尾からのミサイルもちゃんと鎌や周囲の地面だけを狙っている)。そもそもですが、この初陣にあたってしっかり「アースガロンで近接戦闘を仕掛ける必要性」が組まれているのが丁寧で。冷静に考えればこんな愛くるしい二足歩行の軍機なんておかしいのですが、こういった「アースガロンが出撃するに足りる理由」をしっかりシナリオに配置することで、設定上の違和感と細かく相殺させてる。この配慮がいいんですよね。痒い所に荷電粒子砲が届く。

 

 

今週の「俺が行く」、本当に文字通り「俺が行く」でしたね。そして、オープンセットで煙の中に現れるウルトラマンブレーザー。なんて神々しい……。撮影スケジュール上、3話がクランクインだったらしく、このタガヌラー戦がブレーザーの撮影デビューとのこと。なので、祈祷ポーズが登場シーンではなく戦いが終わった後に小モーションになってたりしますね。現場レベルでじわっと洗練されていくんですよ、こういうの。

 

完全に「熱ッ!あっつ!」に聞こえてならないブレーザーくんが死ぬほど面白い訳ですが、やはり彼のモーション、完全に狩猟民族なんですよね。蛮族テイスト。およそ文明人の香りがしない。そしてタガヌラーがエネルギーを放出した直後、びっくりのスピード解決!おいおいおいおいブレーザーくん!工場で爆発したらやばい言うてるやないか!なんだそのかっちょいい爆炎は!!

 

 

かくして、この3話までがメインである田口監督の担当回でした。

 

かなりこだわりが強いのはひしひしと感じるところで、「夜戦ワンシチュエーションのツカミ」な1話、「チーム結成と怪獣生態対応の様式美」を示す2話、「隊員らのキャラクターを肉付けしつつアースガロンをお披露目」な3話と、1~3話を使って『ウルトラマンブレーザー』をしっかりと提示する。1話で極めてリアルに振って、2話でコミカルな戦闘もやって、しかし3話を中心に登場人物の造形は生っぽくやる。およそこういうバランスでやります、というメッセージが力強いですね。仕込みも前振りも盛り沢山。

 

次回はエミ隊員がメイン。しばらくは隊員個々の話になっていくのだろうか。ゲント隊長のオフの姿、家族とのシーンも早く観たいところですね!家でも息子さんがご飯をこぼした時に「俺が行く!」ってテッシュ取りに行ってて欲しいよ~~~!

 

next ▶

www.jigowatt121.com

 

◀ prev

www.jigowatt121.com