ジゴワットレポート

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感想『ウルトラマンブレーザー』第2話「SKaRDを作った男」 #俺が観る EP02 結集せよ、志共にする者たちよ

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『ウルトラマンブレーザー』のことを考えていたらあっという間に一週間が過ぎて『ウルトラマンブレーザー』が始まった。こんな幸せな日々があと半年もあるだなんて。ありがたやァ、ありがたやァ。……などと、拝むような心持ちで過ごしております。

 

つい先日サウナに行った際にサウナ室がガラガラで実質貸し切りだったので、魔が差して腰にタオル一枚の状態で熱気に包まれながら変身直後の祈祷ポーズをやりました。腕をしっかり伸ばして腰を低めに落とすと結構いい感じのストレッチになるのでオススメです。

 

 

そんなこんなで今週も #俺が観る 、いってみましょう。先週は沢山の「俺が読む」をありがとうございました!

 

引用:https://twitter.com/ultraman_series/status/1680003015837904896

 

バザンガを退けたゲントは、司令部参謀長・レツから新設の特殊怪獣対応分遣隊『SKaRD』の隊長に任命される。早速隊員たちに面会へ向かうゲント。エミ、テルアキ、アンリ…合流したのはひとくせもふたくせもある隊員たち。そんな折に飛び込んでくるゲードス現出の知らせ。人員も装備も整っていない中、SKaRDの初任務が始まろうとしていた…。

ウルトラマンブレーザー – 円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト

 

2023/07/15 放送 監督:田口清隆 脚本:小柳啓伍

 

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「遠い銀河のブレーザー。眩い光の中からやってきた、ウルトラマンブレーザー」。アバンタイトルでゲント隊長が幻視した謎の光景。一体化した過去の記憶なのか、あるいは変身した際のイメージか。

 

ぶれーざー Blazar(Blazing quasi-stellar object)

活動銀河核からは超高速ジェットが放出されることがあるが,このジェットをほぼ正面から観測したものがブレーザーである。ジェットのビーム内では電波からX線領域にわたるシンクロトロン放射と、ガンマ線領域では逆コンプトン散乱がおこる。相対論的ビーミング効果で、電磁波のエネルギーは高くなり、強度も増幅され変動時間は短縮される。したがってブレーザーは広い波長帯で非常に明るく、激しい時間変動を示す。

ブレーザー | 天文学辞典

 

このシーン、よく見るとブレーザーと思われる光の存在も右手を伸ばしてゲントの左手を掴んでるんですよ。お互いに恋人握りみたいになっている(恋人握りって表現、もしかして古い……!?)。本作がコミュニケーションのお話というのは度々語られていますが、やはりゲントとブレーザーというメインの関係性の変遷には注目したいところですね。

 


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こちらのバンマニでも主演の蕨野さんが話せる範囲でストーリーに言及しているのですが、やはり両者が一体化した過去というか、背景にひと捻りありそうなんですよね。変身した際のグングンカットでも赤と青のラインが途中から巻き付いていて……。つまり、素のブレーザーことブレーザーオリジン(仮称)はグレーに黒のラインのみのウルトラ狩猟民族で、血管のようなラインをゲントとの一体化によって身にまとっているとするならば、今やゲントはブレーザー無くしては死んでしまう存在なのかもしれない。「一体化することによって相手の生命を持続させる」はウルトラ定番ですからね。

 

 

この収録音声からすると、「ブレーザー、一緒に戦ってくれ!」「いくぞブレーザー!」も中々どうして期待を煽られる。

 

そして遂にお目見え、OP。いやぁ、まず曲が良い。最高ですよ。歌い出しの「命の!行方を!照らすため!」に顕著ですが、このダダダダン!ダダダダン!の打ち込みパターンが全編に配置されていて、力強さや激動のイメージがある。Bメロの「ひとりじゃないから、胸に抱いた希望を掲げ」なんかメロディの動きがすごい。ここ実際に口ずさんでみると、思ってたより音が上がったり下がったりしていてかっこいい。「抱いた」のキーがにくい。

 

そしてサビ、「星に射抜かれてひとつになった瞬間を」「今も立ち上がるたび懐うよ」。ここがとにかくインパクトありますよ。かっこよくてハードなのに、どうしようもなく泣きメロ。「星に~」は言うまでもなくウルトラマンと人間が一体化したシークエンスを思わせる訳ですが、特に好きなのは続く「今も~」のフレーズ。「立ち上がる」ってことは一度地面に転がっているので、つまり何度でもめげずに困難に立ち向かっていく、怪獣相手に起き上ってファイティングポーズを決めるウルトラマンを脳裏に映してくれる。しかも「懐うよ」って!「思う」でも「想う」でもなく「懐う」はセンス良すぎだろ……!「強敵に立ち向かう度に、ブレーザーと一体化したあの瞬間を懐かしむよ」、って、おいおいおいおいおい…… お、俺は……… これが最終回で流れたら死んでしまうかもしれない…………

 

僕らのスペクトラ

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映像はサビにやられました。新規怪獣がど~~ん!しかも、Twitter、YouTube、ニュース映像、新聞記事、古文書、衛星、監視カメラなど、様々なフッテージや媒体で報じられ目撃される未知の怪獣ときたもんだ。サビ頭でウルトラマンの活躍でも変身でもなく怪獣ですよ。たまらないですね。

 

今回の新規怪獣大進撃、これまた田口監督のリクエストだったそうで。

 

――多数の新規怪獣が投入されることも話題のひとつですね。
 永竹社長と最初に話したときに戻るんですけど、バンダイさんの商品戦略も考えた場合、ウルトラマンがタイプチェンジしないなら何がその穴を埋めるのか? 「新怪獣をいっぱい出すのはどうでしょう?」と提案しました。「何匹出せばいいと思う?」と聞かれて、「せめて全話数の半分」と提案しました。つまり12匹。「よし、それをやろう」と社長が言ってくれて、正直「本当に?」と驚きましたね。そこからいろんな調整ごとが僕の知らないところであったんだと思いますけど、結果××匹(まだ内緒)作ることになりました。

・ホビージャパン『宇宙船vol.181』P83 田口清隆監督インタビュー

 

 

こういった経緯でマジのガチに近年では類を見ない新規怪獣のボリュームになった訳ですから、そりゃあ、サビ頭に持ってきたくなりますよね……。『ブレーザー』の撮影はすでに終わっていて、このOP映像が行程のどの時点で編集されたかは分かりませんが、かなり先々の怪獣まで出てきているのがビックリですよ。こんなOP観たことない。

 

他のカットでいくと、田口監督おなじみの川北後光でキメるアースガロンもやっぱり最高なのですが、サビ前のビル街に佇むブレーザーがまたいいんです。カメラの視点やアオリもありますが、ビルが高くてウルトラマンがやや低い。生々しい高さで、そこにぬるっと存在している。これ、都会のビル街をふと見上げた時に、「ああ、この景色に怪獣やウルトラマンがいたら、こんな感じかなぁ」と脳内で妄想する絵なんですよ。まさに。

 

さて、いざ本編へ。ゲント隊長が各隊員のもとを訪れ、招集をかけていく流れ。各キャラクターを印象付ける軽妙で生っぽいやり取りが素晴らしいのですが、とても面白いなと感じたのは、この一連のシーンで一切のBGMが鳴らないこと。役者陣の演技、カット割り、間の取り方、それらだけでムードを形成している。仮にこの回が坂本監督の演出だったら、エミ隊員とのカフェの場面ではお洒落なジャズが流れてテルアキ副隊長はワンダバみたいな軍事系のが流れてアンリ隊員だと笛の音の和風サウンドが流れること間違いなしなのですが、いや、えっと、それが悪いとかそういうことではなく、田口監督は本作のSKaRDをどれくらいのリアリティで描きたいか、ってことだと思うのです。

 

キャラ付けにおいて、記号的に分かりやすい特徴や口癖を持たせて表現ずることを俗に「アニメっぽいキャラ付け」なんて言ったりしますが、今回の田口監督のプランはそっちではない、と。『ブレーザー』を観てから改めて『Z』を思い起こすと、相対的には割と「アニメっぽかったな」と驚くほどで(怪獣オタのユカ隊員あたりに顕著)。中間管理職であるゲント隊長が主人公で、上も下もいるからこその悩みややりがい、そこに生まれるコミュニケーションを描くのであれば、所属組織が生々しいリアリティに溢れていた方が共感は得られやすい。レシートを奪い合うくだりや、ペンを探すくだり、上司の背中でサインを書くくだりなど、分かりやすい「アニメっぽさ」に頼らずにキャラクターを印象づけていく。(ちなみに、アンリ隊員がその場でしゃがんで床で書くことはしない=武道の使い手として床を下敷きのように使うという判断はしない、あたりの好感度の調整がニッチで好き)

 

たまに雑にイコールで表現されちゃったりもしますが、特撮番組における「リアリティが高い」と「シリアスである」は、決して同値ではない。また、「明るく楽しめる」ことと「コメディ調である」こともまた、異なるのだ。

 

この点、『ブレーザー』は「リアリティが高い」&「明るく楽しめる」が目指しているバランスなのだろう。事前の予告や初回のテイストが割と「シリアスである」に寄っていたので、「そればっかりじゃないよ、こっちのテイストにもしっかり目配せしてありますよ」と。この2話までを足して割ると『ウルトラマンブレーザー』という番組そのものの配合を感じ取れるような、そんな印象を受ける。ネオンの街で格闘したかと思えば、釣りですからね。

 

リアリティでもうひとつ言及すると、人間の対怪獣認識。SKaRDの面々の履歴書をよく見ると、キングザウルス三世、ゴルドン、シーゴラス、ゴキネズラ、クレッセント、ラゴラス、ペギラなどの名前が並んでおり、いずれも撃滅作戦が行われている。つまりこの世界では、地球防衛隊が設立された1966年以降、人間がウルトラマン等に頼らす一般兵器(あるいはそれ+α)で怪獣を撃ち倒してきたのだ。これまでは長く後手に回り、「出たら倒す」判断を積み重ねていたようだが、怪獣の頻出に伴い違うアプローチが求められてきた。怪獣の生態や特性を調査・分析し、個々の個体に応じた戦法を立案、あるいは前線で怪獣災害に立ち向かう組織。そういった背景で設立されたのがSKaRDなのだろう。だから、この度のゲードスに対しても既存の部隊が〇〇のひとつ覚えみたいに火力で押しまくって惨敗しているし、結果的にそれが上陸への挑発にもなってしまった。地球防衛隊は今、「ただ火力で殴る」以外の選択肢を模索するフェイズに立たされているのである。

 

 

実際の仕事でも、組織に広く体制を整える前に、各部署の精鋭をプロジェクトチームなどと称して集め、先行して新規業務にあたらせたりする。往々にして少数精鋭で、それは指示系統を圧縮し一刻も早い成果物に繋げるため。つまり、もしSKaRDの活躍が認められ評価される未来があれば、地球防衛隊はSKaRDを雛形として、怪獣災害に硬軟織り交ぜた対応が可能な部隊をもっと大規模に組織するのかもしれない。

 

……といったリアリティの位置づけにおいて、これらは作劇にも十二分に寄与することだろう。「SKaRDは一種のプロジェクトチーム」と捉えれば、大事な仕事なのに人数が少ないのも、予算が少ないのも、各隊員が一芸に秀でているのも、肌感覚で理解できる。SKaRDの設立目的に照らし合わせていくと、必然的に怪獣が物語の中心に位置するし、怪獣を通しての「未知とのコミュニケーション」という振り方にも出来る。

 

『Z』でも見られた、「ウルトラマンの作劇において伝統とされる要素」にフェティッシュに理屈付けをしていく構造は、田口監督のこだわりの大きな部分なのだろう。そして、多くのオタクはこれが大好物である。

 

 

こちらもOPに続いて遂にお披露目、ブレーザーの変身、グングンカット。前述のように、体表のデザインに応じたエフェクトがポイント。

 

ブレーザーブレスは私も玩具を買って遊んだのですが、このね…… 左腕を相手に見せるように構えて… 右手をクッと持ってきてストーンを入れる手はずがね…… すごく、こう、「なりきり度」が高いんですよ……… そしてゲント隊長のように左手はグーで右手はパーにして…… いやぁ、昨日の晩もね、ちょうど、ふふ… 俺が行きましてね…………

 


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田口監督はインタビューで、「1~3話は自分が監督だからリソース(予算)をやりくりして全部初回に注ぎ込んだ」「だから2、3話はある種いつも通りにやっている」と話されていて。しかし、まぁ。この「いつも通り」も今やすっかりアベレージが高くなったというか、これが「いつも通り」なんて本当に幸せなことです。嬉しい。

 

確かに、ゲードスやブレーザーを寄りのアオリで撮ってミニチュアの数を最小限で済ませたり、引きのカットはもっとずっと引いて市街地破壊ではなく実景への合成で処理したりと、「リソースやりくりの結果」っぽい箇所はあるにはある。しかし、かまぼこ工場を豪快に破壊するミニチュアカットや、途中に挟まれるオープンセット撮影、水流攻撃のマトリックス避け、長回しによる泥仕合、釣り対決に塩焼きなど、終わってみると「1話より金がかかってないな……」なんて感覚には絶対に至らないようになっている。しっかり緩急があって、アイデアと遊び心に楽しく振り回される。リソースがなければ創意工夫。職人技である。

 

新番組予告でも印象的だった、ブレーザーが走ってきて飛び掛かるCM明けのカット、良いですよねぇ。質感や画角的にここからの数秒がオープンセットなのですが、自然光に照らされたブレーザーのスーツは造形の生々しさがより一層際立つというか。そしてブレーザーくん、やはり完全に戦闘民族のそれ。祈祷ポーズもそういった未発達文明の香りがする。彼の出自、どこまで明かされるのだろう。

 

さて、女性陣のアシストもあり無事にゲードスを撃破したSKaRDだったが、次なる指令は「ブレーザーより先にアースガロンで怪獣を倒すこと」。これ、職務を全うしようと思ったらゲント隊長が俺が行かなければいいだけの話なので、早速中間管理職が面白いパターンですよね。アースガロンの玩具が出る週でもあるので、結果的にブレーザーが手伝ってアースガロンの大活躍で撃破、ってところでしょうか。え? DXアースガロン? もちろんとっくにAmazonで「俺が買う」してますが……。

 

 

最後に。昨晩、久しぶりに『ウルトラマンZ』のBlu-rayに収録されているメイキングを観たら、田口監督はこう話されていました。

 

「自分の今までの失敗も成功も含めて、これってこうすればよかったんじゃないかみたいなのを、なるべく片っ端から実行してやってますね」

 

『Z』が面白かったのは、いわゆる「ニュージェネらしさ」に果敢に理屈付けを行ったところだと思っていて。「喋って説明してくれるウルトラマン」が必要なのであれば喋るだけで面白いキャラクターに、インナースペースでの玩具操作がマストなのであればそのシーンのやり取りをコメディ調に、リアリティがぶっ飛ぶような顔付きの剣であれば凶悪怪獣を出して設定面で意義を補強して……。期せずして出来上がっていった「ニュージェネらしさ」という凸凹に、監督なりの凹凸をはめ込んで、エンターテインメントという「平ら」を目指す。つまり、一種の「均(なら)す」作品。

 

そして『ブレーザー』は、その均した土地のどこかに、新たに見たことのない異色な塔を建設するような……。なんだか、そんなイメージがある。『Z』が一度行われ、『トリガー』『デッカー』という新しい角度からのアプローチも続いたからこそ、こういった奇異な作品が生まれていくのだな、と。

 

やはり作品は単体ではなく、シリーズとして脈々と続く歴史や文脈があるのだ。それを踏まえて観ると、より旨い。

 

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