ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時思ったこととか。

それでも私は旅先でTSUTAYAに寄りたい

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TSUTAYAの閉店ペースがエグい、という話を読んだ。

 

wasteofpops.hatenablog.com

 

加えて、上の記事に言及されつつ動画配信事情のイマについて書かれているこちらも拝読しました。

 

fujipon.hatenablog.com

 

ここ数年、一気に「動画配信サービス」が一般的になったと感じる。私も、AmazonプライムビデオとNetflix、東映特撮ファンクラブ等に加入している。一昔前に比べて、確かに、実店舗で作品を見て選ぶことは少なくなった。

 

「レンタルビデオ店の思い出」とか、「レンタルビデオ屋で遭遇したエピソード」とか、感傷に浸れそうな話題をここで並べることもできるが、それはあまり意味を為さないのだろう。実店舗は減少傾向にあり、動画配信サービスが会員数を増やす。その流れはもう止められないのだ。アメリカのレンタルビデオチェーン「ブロックバスター」は、動画ストリーミングサービスの台頭を受けて2010年の時点で経営破綻しており、むしろ日本のペースは遅すぎるくらいだと感じている。

 

話をTSUTAYAに戻すが、私は、旅先でTSUTAYAに寄るのが大好きだ。ちょっとした遠方でTSUTAYAを見つけると、ついつい駐車場に車を入れてしまう。

 

「TSUTAYA店内の空気を味わいたい。俺はTSUTAYAエアーフェチである」などという先鋭な話ではなく、単純に、そこでしか借りられないDVDやCDと出会いたいからだ。ご存知の通り、TSUTAYAのレンタルにおける品揃えは店舗によって大いに異なる。やけにビジュアル系バンドのCDに強い店舗もあれば、ボカロ曲を驚きの枚数取り扱っている店舗もある。「お、これがあるのか!」という小さな出会いが、そこにはあるのだ。

 

例えばGEOだと、宅配レンタルというサービスがある。ウェブから作品を選んで注文し、後日家に届き、鑑賞したらポストに送り返す。一方のTSUTAYAには、郵送返却というサービスがある。私が愛用しているのがこれだ。これは、料金を追加で払うことで、ポストに投函して返却できる専用の布ケースを借りることができる、というもの。遠方のTSUTAYAで出会った作品は、この郵送返却を利用して店舗に返す。

 

この、GEOの「宅配レンタル」とTSUTAYAの「郵送返却」だが、それぞれ、動画配信サービスと実店舗の利害に近い性格があると感じている。

 

結局のところ、「なぜ実店舗が良いのか」という話だ。それは、目的の作品以外とも出会えるから。陳列棚にはイチオシの作品が特集されていたり、目的の作品以外のディスクが目に入ったり、そうした偶発的な出会いがそこにある。とはいえこれは、我々より上の世代が「ネットニュースなんかじゃなくて新聞を読め」と豪語していた理論とそう大差はない。視界の隅に、偶発的に別の情報が滑り込む可能性、そのプライス。獲りたい情報以外も獲れ。それが社会人だ、それがビジネスマンだ。新社会人の頃、新聞大好きな上司にそう言われたのをよく覚えている。

 

ただ、目的以外の情報は、今や動画配信サービスでも獲れるようになってきた。「あなたにオススメ」「この作品を観た人はこんな作品も観ています」。そういった、自分の嗅覚に反応しそうな作品がビッグデータのもとに表示される。まあ、これはこれで一定の取捨選択が行われた後であり、本当の意味での「獲りたい情報以外の情報」とは違う、という主張もあるかもしれない。

 

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そんな予防線を張りつつも、でも結局ウェブというのは、「探しているものにしか出会えない」という原則があると感じている。Googleの検索窓を前に、探したいものを探す。探された作品と出会えたのは、探したからである。そんな当たり前のような原則が、そこにはある。それは、動画配信サービスの検索窓も、GEO宅配レンタルの作品検索窓も、同じだ。探したい作品を自分から探す。

 

しかし世の中には、「探す」にまで気づきが至っていない、しかし自分にとっては「出会い」に数えたい、そんな作品もある。TSUTAYA等の実店舗に行くと、そんな「出会い」が発生する可能性が、ウェブよりは高いような気がするのだ。「あ、この(昔はよく聴いていたけど今は情報収集していない)バンド、新しいアルバム出したんだ」「へぇ、この俳優さん、こんな映画にも出てるんだ」「このコンセプトアルバム、面白そうだなぁ」。そういった偶発性のある「出会い」は、そもそもの「探す」を通過しない。探さないから、出会わない。

 

今やTwitterをはじめとするSNSが普及し、情報を自分専用にカテゴライズすることが容易になった。作り込んだタイムラインには、自分が欲しかった情報が並ぶ。なんとお手軽で、なんと便利なことか。しかしそれは、反面、偶発的な「出会い」を締め出してしまっている。結果的に、いつも観るような映画と、いつも聴くような音楽と、いつも知るような情報に溺れ続け、どんどん深海に潜ることはできても、新しい海に行くことは無くなっていく。

 

そんな、漠然とした危機感のようなものがあるのか、偶発的な「出会い」を求め、私は旅先でついついTSUTAYAに寄ってしまうのだ。郵送返却というサービスが、それを可能にしてくれる。「うわ!このジャケットかっこいい!良さそうなアルバム!」。そんなノリで借りたCDを、その後の旅の道中で再生し、「んー、なんかあんまり趣味じゃないかも」となったとしても、それでも、それには何か意味があるんじゃないか、と。そう思えてならないし、そう思いたいのかもしれない。

 

「探していないものに出会う」というのは、非常にカロリーが要る事象で、意識しないと発生させることはできない。そういった状況が年々色濃くなってきていると感じる。だからこそ、TSUTAYA閉店が相次ぐという情報は、やはり嬉しいものではない。自宅の最寄りのTSUTAYAは頻繁に利用しているが、「旅先TSUTAYA」のファンとして、どうしようもない動画配信サービスへの移行を寂しく眺める、そんな日々を送っている。

 

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