ウルトラ身の上話からしなくてはならない。
昭和末期に生を受けたため、「現行のウルトラマンシリーズ」には恵まれなかった。鼻たれ小僧の私にとって、VHSシリーズ『ウルトラビッグファイト』や、同じくVHSをレンタルして観た『ウルトラマンパワード』『ウルトラマングレート』が原体験である。
ついにやってきた1996年『ウルトラマンティガ』が、実質人生初となる「リアルタイムのウルトラマン」。TDG三部作を経て、連続TVシリーズとしては『コスモス』まで少しのお休み。その後、『ネクサス』『マックス』『メビウス』と続き、またお休み。鼻たれ小僧は大学生になっていた。
この頃になると、オタク的な素養が(良くも悪くも)備わってきて、円谷プロダクションの経営的なあれこれにも関心が増していた。膨大な累積赤字の影響もあり、TYO傘下に入り円谷家の同族経営に終止符が打たれた。やがて、バンダイナムコグループの持ち株比率も上がっていく。連続TVシリーズがお休みだった時期もあいまって、いちファンとして「大丈夫なのだろうか……」という漠然とした不安があった。
趣味としてやっていたのが、ブログである。高校卒業の時期に立ち上げたFC2ブログを更新するのが日課で、好きな特撮作品、漫画や映画、アーティストのことを書いていた。
その頃のブログ文化に存在したのが「バトン」だ。知り合いのブロガー同士で、共通のテーマについて書く。〇〇さんからバトンが回ってきました。次は〇〇さん、お願いします。トラックバックなんて、もはや死語だろうか。私のブロガーとしての原体験は、間違いなくこの2000年代にある。
SNSの潮流に圧されながらも、ブロガー友人らと「バトン」を再演してみようじゃあないかと盛り上がった、これはそんな企画の一本である。企画名は「リレー・リレーション」。記念すべき第1回のテーマは「ウルトラマンゼロ」。シリーズ60周年を記念しての新作映画も製作される、歴代きっての風雲児だ。

第1回、木本仮名太さんによるイントロダクションを受けて私が担当するのは、光栄にもウルトラマンゼロの華々しいデビュー作、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』。
齢アラフォーの今になって観ると、とにかくゼロが若い!若すぎて涙が出てくる!
勘当息子が遠方で修行して実家に帰ってくるような話なので、これを大学生の時分に観られたのは、体感として大きかったかもしれない。私は、ゼロと同じような変遷を辿ってきた錯覚がある。今では私も、あの頃の青臭さや勢いは目減りし、後進を育成する立場になってしまった。嗚呼ゼロよ、君も中間管理職かい?
同作の公開は2009年。特撮オタクの読者諸賢は覚えているだろうか、これが『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』と同日公開だった事実を!
△の東映マークがふたつ並ぶ、気でも狂ったかのようなぶっとんだ映画と同じタイミングで、理不尽なくらい強いウルトラマンゼロがデビューを飾ったのだ。特撮ヒーロー冬の陣とはこのこと。
今となっては特撮ヒーロー界を総ナメする坂本浩一監督の、記念すべき日本デビュー作。
全編ほぼグリーンバック、背景はCG、ワイヤーアクションによる縦横無尽なウルトラマンの活躍。メビウスで収斂させた光の国要素と『大怪獣バトル』の設定を下敷きに、光の国をサーガとして大胆に再設定。ウルトラマンという種族が元は人間とほとんど同じだったこと、光の国の全容が描かれたこと、ウルトラマンに声優を起用する土壌を作ったことなど、後のシリーズに与えた影響は計り知れない。
昭和シリーズでも描かれた数々の要素を体系的に整理し、ブラザーズマントでウルトラ兄弟の格付けを決定づけた。また、ウルトラの父やウルトラマンキング、セブン→レオ→ゼロの子弟設定と、体育会系なノリの注入。どこか神秘性のあったウルトラマンの世界に「やんちゃでヤンキーなウルトラマンゼロ」と「歴史上ただひとり悪に走ったウルトラマンベリアル」が加わることで、世界観にもぐっと深みが増した。おっとトレギアくん、君は今は黙って座っておくように。
ゼロが超人気キャラクターと化した今、改めて『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』を振り返ると、現行のウルトラマンの世界観においてめちゃくちゃ基盤というか、もはや基礎工事のコンクリ打ちレベルの立ち位置になっている、そんな感覚がよぎる。
設定面は言わずもがな、ウルトラマンというキャラクターやIPをどのように運用するか、そのルーツを紐解くとまずは同作に辿り着くのではないか。言うまでもなく、更に深掘ると『メビウス』を経て昭和2期シリーズまでいくのだけど……。
でもやはり、ある意味での世代という欲目もあってか、『ウルトラ銀河伝説』が後に与えた影響は凄まじいものがあると、そう思えてならないのだ。
まずもって、ウルトラマンとは切っても切り離せなかったミニチュア要素、これを思いっきり断ち切っている。全編ほぼグリーンバックで、ウルトラマンが飛んで跳ねて、後ろに跳びながら光線を放ち、重力を無視するような動きを見せる。当時、これがどれだけ衝撃だったか。むしろ、「ウルトラマンにこういうアクションをさせてもいいんだ!?」という、一種のタブー破りの感触すらあったものだ。どしーん!どしーん!という音をつけてしまえば、高速で攻撃を繰り出すウルトラマンもちゃんと巨大に見える、このコペルニクス的発想!
そして、ウルトラマンのキャラクター性。どうしてもTDGが感覚のベースにある自分にとって、光の国という文明や社会の描写はショッキングですらあった。名前もない大勢のモブトラマン、赤子が入ったカプセルを抱く母親ウルトラマンとその旦那。ウルトラマンに、光の国に、「生活」がある……!こうも描かれてしまっては「じゃあゼロの母親は誰なんだよ!」と生々しいツッコミを抱いてしまうほど、こちらも衝撃だったのである。
悪のウルトラマンことウルトラマンベリアル。これもショッキングでしたね。圧倒的善性で描かれてきたウルトラマンの文化、それもM78に、いわゆる闇堕ちした存在がいた、と。猫背で、マスクが突き出したような造形で、大きなカギ爪ときた。あまりに禍々しい、ヴェノムのようなウルトラマン。こんなことが「許されるのか」、と。
言うまでもなく、過去のシリーズでも試行されてきた要素ばかりだ。『ネクサス』にも悪のウルトラマンが出てくるし、キャラクター性も昭和ウルトラマンでは度々描かれてきた。ただし、その時その時代に生まれていた要素の数々を、こうも取り込んで、咀嚼して、体系化してみせる。それが何より偉業なのだ。今となっては、これが向こう約20年の基礎になっているのだから。
まるでハリウッド映画のようなルック、それなりの「格」を感じさせる映像の数々も、ひとつのブレイクスルーであった。こういった、数々の取り組み。これまで確かにあったウルトラマンの持ち味を、ひとつのサーガに捉え、統合し、整え、ニューヒーローにお披露目させる。実はラスト20分ほどしか出番がないのが信じられないくらい、強烈に印象付けられたゼロのデビュー戦。セブンの息子なのに赤くない、スラッガーがふたつ、ありえないくらい目つきが悪い、しかも粗暴、ヤンキー、名だたる有名怪獣を怒涛の勢いで撃破していく、嘘だろおい。
そんなウルトラマンゼロが、今となっては登場する度に盤面をリセットするほど、特異点に成長した。彼が舞い降りて「二万年早いぜ!」と啖呵を切れば、もう我々は一気に歌舞伎の観客だ。「よっ、待ってました!」。
2009年。この翌年に、円谷プロダクションは51%の株をフィールズに売却し連結子会社となった。映画や総集編的な番組で繋ぎ、『ギンガ』を番組内番組で始め、連続TVシリーズが独立して冠を飾るのは2016年『オーブ』まで待つことになる。
この7年間。ギンガやビクトリーという後輩を得ながらも、ウルトラマンというIPやシリーズを牽引したのは、やはりゼロだったのだ。あらゆるショーで、またはナビゲーターの役回りで、彼がその看板を掲げ、やがて後進に託した。漠然とした不安が募る2009年当時、彗星の如く現れ、そんな懸念を吹き飛ばすように鼓舞してくれたヒーロー。
あのやんちゃなゼロが。辺鄙な惑星で、稽古の相手をするレオに悪態をついていた彼が。今のウルトラシリーズの復権の礎を築いたのだ。このゼロの「戦い」、そして「立ち位置」「ポジション」「成長」を、デビューからずっとリアルタイムで追えた。大学生、そして社会人になってからの「私とウルトラマン」は、ゼロと共にあった。
あの日、あの冬の映画館で、華々しいデビューを飾ったウルトラマンゼロ。彼の活躍の日々を、その歴史を、「リレー・リレーション」で追いかけてみようじゃあないか。
それではバトン、回します。アクセスカウンターがキリ番だったら報告してください。
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