『仮面ライダージオウ』第12話は、上堀内監督が描く鎧武編後編。毎回、このジオウ感想記事は火曜前後にはアップしようと目論んでいるのですが、様々な都合で今週も遅れ気味。面目ないです。今週は、娘を寝かしつけて「さあ、自分の時間だ!」と意気込んだ次の瞬間には早朝、布団の中で目覚める、という事態に複数回襲われてしまい、上手く時間が取れず・・・。趣味の時間確保は永遠の課題であります。
ということで(ということで?)、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう!
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神紘汰への歴史改変効果について
先週の感想で散々長文を書き連ねて「神となった紘汰は『ジオウ』における歴史改変の効果を受けないのでは?」という仮説を推したけれど、今週の描写を観るにぶっちゃけハズレっぽいですね。まあ、そもそもが鎧武好きの希望的観測に満ち溢れた仮説だったので、むしろ順当なところか。
アナザー鎧武が撃破された後のシーン、崩壊するかのような精神世界でソウゴへの教えを今一度説いて消えていく神紘汰。そもそもの前回序盤の干渉も、アナザーライダーが倒されて歴史が完全に書き換わる刹那のタイミングでソウゴに接触してきたのかな、と。
『ジオウ』における歴史改変のタイミングにはかなり演出の幅があって、ざっくばらんに言えばタイムラグというか、リレーのテイクオーバーゾーンのような期間があるように解釈している。だから、アナザービルドとビルドが戦うことができたり、それはアナザーエグゼイドとエグゼイドも同様だったり。一気にスパッと改変後に移行するのではなく、歴史が混濁する期間があり、ゆるりと改変後に切り替わっていく感じなのかな、と。(まあ、ビルドとエグゼイドに関しては、少年少女の記憶にも新しい直近のライダーということで、あえてしっかり変身させて登場させるという意図があったと思われるが)
そんな歴史が混濁する刹那の瞬間を使って、正史のレーンに存在する神紘汰がソウゴに接触した、という解釈が無難なところだろうか。しかしまあ、『ジオウ』の歴史改変効果は宇宙の先にまで及ぶのか。というより、「番組」という概念ごと改変する感じだから、誰がどこで何してようが、究極関係ないのかもしれない。なんてチートな。
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ゲイツ、森からの帰還
そんな神様の接触を受けて、ソウゴはゲイツを自力で森から帰還させる。「鎧武ライドウォッチがないとアナザー鎧武を倒せない」とそれらしい理由のやり取りがあったけれど、ソウゴ、特に3日後のソウゴは、ライドウォッチが奪われることが分かった上であえてそうしている。要は、単に「ゲイツ、戻ってきて」と告げてもへそを曲げたゲイツは「はいそうですね」と戻ってくるはずがないので、「敵を倒すのに必要なライドウォッチを持ってきてもらう」という大義名分を仕立てた訳なんだよね。
言いたいことは、結局は「ゲイツ、戻ってきて」なんだけど、そこに理由をこしらえるソウゴのクレバーな面や、わざわざ持ってこさせたライドウォッチを運搬するという流れを見透かしたようでその上で乗っかってくるちょっと可愛いゲイツが面白い。
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ライドウォッチがバイクになるのも、ロックビークルとギミックがほぼ同じなのがくすっとさせてくれる。
また、ゲイツが現代に戻ってきて鎧武ライドウォッチを手渡すシーン、「約束は守ったぞ!」と叫ぶんだけど、その前の交信シーンでは「約束」という単語は一回も出てきていないんですね。ソウゴは、ただ「ライドウォッチを持ってきてね」とお願いするのみ。それをはっきり「約束」と認識して叫ぶのが、ゲイツっぽいなあ、と。(「条件」や「借り」じゃなく「約束」という表現なのがゲイツの人の良さが出ている)
そして、ソウゴから最後まで目をそらさずに「帰ってきた」ゲイツ。ここで笑みがこぼれたりしないのが良かったです。そして運命を本当に変えるかのごとく、ウォズの書物にも名前が登場。彼の行動は、最終的にどこまでの影響を持つのか。
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歴史改変を受けたレジェンドたち
以前のオーズ編の感想で、「正史じゃなくても同じ答えにたどり着くレジェンドにはモヤモヤを感じないといったら嘘になる」的なことを書きましたけど、今回の鎧武編でもそんなことを思ってました。今度は逆の意味で。
戒斗の方は、『鎧武』序盤からある意味完成されたキャラクターで、それがダンスでも戦国時代でもサッカーでもライダーバトルでも、常に強さを求め全力で強者として君臨しようとしてきた。一方の紘汰は、ただのフリーターが知らず知らずのうちにどんどん地球の命運を背負わせられていくというキャラクターのため、『鎧武』という物語自体が改変されて「なかったこと」になってしまうと、要は「ただのフリーター」である気のいい兄ちゃんになってしまう。これって、先の映司とはまた別の意味で寂しいよなあ、と。
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『ジオウ』におけるレジェンドの出演について、ネットでは「どうせ出すならもっと活躍させて」「変身シーンが観たい」という声も多く、確かにそう思う自分もいながら、でもやっぱり現状でもすでに「出しすぎ」なくらいに感じていて。やっぱり、リアルタイムで仮面ライダーを観る子供たちにはジオウこそが「現行レジェンド」なのだから、そんなに過去のライダーが出張ってもしょうがないよね、と。だから、ビルドやエグゼイドはまだしも、ファイズとか、オーズとか、今の少年少女たちはどういう受け取り方で視聴しているのか、気になるところではあるんですよ。
その点、「アナザーライダー出現によりレジェンドが仮面ライダーにならない存在として出演する」というアプローチは、もしかしたら主役を喰ってしまうかもしれない先輩ライダーをいい感じで制限するギミックとして、有効なんですよね。話の作り方が、そっくりそのまま、番組の目指すバランスに直結している。現行のジオウやゲイツをしっかり活躍させつつ、でも記念作として過去キャストも出演させて、話題性と往年ファンの関心も勝ち取りたい。そんな強欲なまでのバランスを成立させるために、アナザーライダーという設定があるんだと。
そんなふうに考えながら、特にメッセージを発することなく、でも感慨深い表情で鎧武ライドウォッチを渡す紘汰を観ていました。物語的には「何が何だか」な気のいい兄ちゃんでしたが、キャスト的には、そして当時を知るファン的には、グッとくるよなあ、と。
『仮面ライダー鎧武』の正史では、異星で神さまやってます、というのが正しい「紘汰なう」ですが、「5年たってもやんちゃなう」な紘汰も見てみたいですよね。
一方、神さま化したライダーも、王になりたいライダーもめずらしいので、せっかくだから「神 VS 王」も見たい。
という我々の欲ばりに応えてくれたのが、葛葉紘汰役の佐野岳さん。やんちゃはやんちゃなりに、5年ぶん成長した紘汰をしっかり演じてくれました。
紘汰が鎧武ウォッチをジオウに渡すシーン。ついにこれで「鎧武を手放す」という感じがして、佐野さん的にも万感迫ったそうです。
ウォッチひとつひとつに思いがあり、ドラマがある。
投げてましたけどね、ウォッチ……。
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鎧武アーマーとアナザー鎧武
前回触れるのを失念していた、鎧武アーマーのデザイン。これまでのアーマーはあくまで「そのライダーのデザイン」をアーマーに落とし込んでいたので、鎧武アーマーのような「そのライダーそのものをデザイン」した鎧武アーマーの胸の鎧武顔は、珍しい部類。とはいえ、鎧武が出演した共演映画で出てくるレジェンドアームズは、「顔を着込む」というアプローチでデザインされており、その辺りをオマージュしたのかな、と。1号アームズとか、もろ、ですよね。
また、鎧武アーマーの上部(鎧武顔部分)と下部(前垂れ)を繋ぐラインが、まんまカチドキアームズのそれなので、そこも個人的にお気に入りポイント。肩周辺にロックシードが踊ってるのも、カチドキの旗っぽいシルエットなんですよね。んー、やっぱりカチドキ好きだなあ。かっこいい。
ジオウ第11話終了。仮面ライダージオウ鎧武アーマー如何でしたでしょうか。ヘッドギアMは鎧武と同様のパーツ構成でウォーフレームがオレンジ色になっているのがポイントです。変身シークエンスの変形も再現されてます。そしてアナザー鎧武、デザインは篠原さんです。次回の展開お楽しみにです✨⌚️ pic.twitter.com/4hgv41laf1
— 山口純一 (@junichi_yama) November 18, 2018
続いてアナザー鎧武ですが、何より、アンダースーツが鎧武のそれとほぼ同じなのが素晴らしい。鎧武のライダーたちは、「共通システムに違う果実のアーマーを被る」というコンセプトで差別化されていたので、まるで鎧武が「腐ったオレンジアームズ」を被ったように見えるのが良いんですよね。しかも後頭部では長い黒髪が踊っていて、その姿は完全に落ち武者。かっこいいというか、「アナザー鎧武」としてこれ以上ない感じが良い。
そんなふたりの鎧武の戦いは、2018年と2013年を画面分割して描くギミック盛りだくさんな描かれ方。鎧武アーマーの線の多いデザインや造形を遠近両方で堪能できる他、ベルトのギミックをアップで見せたり、そもそもの明度が異なるためにスーツの照り方が異なっていたりと、見どころが多い。上堀内監督らしい、凝ったバトルシーンでした。
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次回、ゴースト編
さて、次回は天空寺タケル出演のゴースト編。ゴーストライドウォッチの出自も明かされるとのことで、その辺りも楽しみですね。
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すでにゴーストライドウォッチが生成されている件について、「もうゴーストの歴史は二重に改変された後なの?」と勘違いしていましたが、よく考えたらあれは未来からゲイツが持ってきた代物。なので、例えば、「アナザーゴーストが生まれる前の正史のゴースト時間軸にゴーストライドウォッチを持ったゲイツが存在する」としても、なんら矛盾はないことになる。鶏が卵を生む前に、その卵を未来から持ってきてしまう感じ。
しかしそんなゴースト編に、我らがディケイドが参戦。当然のごとくただのレジェンドでは扱われないだろうと予想していたが、新ドライバーを引っさげての登場とは、まさに破格の扱われ方。破壊者はやることが違う。
⌚⌚キャスト発表だジオ!Part11⌚⌚
— 仮面ライダージオウ (@toei_rider_ZIO) November 25, 2018
「仮面ライダーディケイド」より、 門矢士/仮面ライダーディケイドを演じた井上正大さんの出演が決定ジオ〜!!!
どういう役かというと…だいたいわかるジオ?通りすがるんだジオ!#ディケイド #仮面ライダージオウ #だいたいわかった #カメンライド #ジオウ pic.twitter.com/8VbsgFFXDk
『ディケイド』に関する私の解釈は、下の記事のとおり。それ以前のライダーの歴史を破壊して繋げることで、平成ライダーという個々の作品をシリーズというコンテンツに錬成した弩級のイレギュラー野郎な訳ですね。そんな、「番組」そのものをいじってきたディケイドが、「番組」それ自体を奪って無かったことにしていくジオウと接触する。どんな化学反応が起こるのか、楽しみですね。敵として登場するのが、いかにもディケイドらしい。流石。
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ということで、鎧武編後編でした。今回地味に感動だったのが、ふたりのソウゴの合成が本当に自然だったこと。もちろん、後ろ姿を似せた代役をカット毎に使い分けているのは承知なのですが、それでも本当に自然にやり取りしていて、「おーー」、と。私が小さい頃の「同じ人間がふたり」な展開は、およそ片方が明らかに合成な感じで浮いていたものです。(遠い目)