『仮面ライダージオウ』第11話は、上堀内監督参戦の鎧武編前編。
『クウガ』からずっと観てきた平成ライダーですけど、個人的に、『鎧武』の頃はかなり熾烈にハマっていた記憶。それが悪いという訳じゃなく、やはり二期の作風がじんわりと固定化されてきていたあの頃、制作陣自らそれを打破しようとする縦軸たっぷりの作品を提供してきたので、私もご多分に漏れずそのウェーブに乗っていた、という感じ。意図された「連続性の高さ」は、『アギト』『龍騎』『ファイズ』の頃を思い出して、懐かしい感覚でしたね。
そんな鎧武編ということで、期待と不安が膨らみながらの鑑賞。『鎧武』という作品は、TVシリーズが終わった当時は「ここまで世界観がガチガチに組み上げられた作品は冬映画等の続編が作り辛いだろうなあ」と感じていたけれど(例えば主人公が地球を離れるラストとか、ドライバーの個数が限定されているとか、ヘルヘイム自体に悪意が無いとか・・・)、なんのその、意外とその不安をひっくり返すように「その後」が沢山提供された作品でもあるんですよね。
世界観や設定がガチガチだからこそ、それを逆手に取って、組まれた枠組みごと持ってくることで話を転がすことができる。非常に「その後」の展開が面白いことになっているな、と。
・・・といった辺りにも触れつつ、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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『ジオウ』における神となった紘汰の扱い
まず触れておきたいのは、『鎧武』の主人公・紘汰の扱い。本編では時間軸を前後させて描いていたけれど、ジオウが2013年にて鎧武アーマーでアナザー鎧武を撃破した直後に、謎の精神世界?に誘う形でソウゴに接触。「信じてみるといい、その男の力を!」と語りかけ、あろうことかアナザー鎧武が撃破される直前に時間を巻き戻している。(その後、アナザー鎧武は逃走)
このことから、神となった紘汰は『ジオウ』におけるアナザーライダー発生による歴史改変の理屈の外に位置している、という仮説を立てることができる。
理由は、①そもそも紘汰が神の状態で2013年に干渉している(神化したのは『鎧武』本編2014年なので未来から過去に向けて接触していることが分かる)、②アナザー鎧武撃破直前に時間を巻き戻している(①と同様、時間を自由に行き来し、ある程度操ることができると思われる)、③アナザー鎧武がすでに存在し、更に鎧武ライドウォッチがジオウの手にある状態で、神の姿が失われていない(これまでの原則ルールから考えると、アナザー鎧武が存在し、加えてジオウが該当ライダーのライドウォッチを奪取・所有している時点で、最終的に神となる『鎧武』の物語自体が消失しているはずである)、以上3点。
よって、この仮説を更に推し進めていくと、『ジオウ』の世界観では紘汰が2人存在することになる。『鎧武』本編のクライマックス、黄金の果実を手に入れ、「始まりの男」として神の力を得て、ヘルヘイムごと地球を去った紘汰。この時点で彼は人間を超越した力を手に入れ、地球の様々な理(ことわり)から外れた存在になったのだろう。なので、過去にも自由に干渉できるし、『ジオウ』におけるアナザーライダーの歴史改変効果を受けない。(逆に『ジオウ』の歴史改変効果は地球内の事象に限定して発生するという説も可能)
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結果として、宇宙に存在する神紘汰と、歴史改変効果を受けて鎧武の力を失った2013年時間軸の紘汰、その両名が同時に存在する世界が成立するのではないか。通常は、「アナザーライダーを倒した瞬間だけオリジナルの歴史が復帰する」というルールがあるが、神紘汰はその例外に該当するのかもしれない。(そもそも、「過去に干渉できる」という能力については、『鎧武』本編でも「始まりの女」となった舞が披露していたものである)
などなど、色々と並べてみたものの、要は希望的観測なんです。「神となった紘汰は、アナザーライダーの歴史改変を受け付けないくらいチートな存在であって欲しいな」、という、イチ個人の期待。それくらい、地球を去って行った男の覚悟に『鎧武』放送当時に魅せられたので、こういう期待を膨らませてしまうんですよね。
さて、神紘汰の出番は後編にもう一度くらいあると思うので、どういう締めになるのか期待ですね。あと何気に、進行上未来のソウゴ(未来から来たと言いつつ実は2018年を起点に2013年を経てから2018年に移動しているので、非常にややこしい)がどうやって時を超えてきたのか、まだ描かれていないんですよね。普通にタイムマジーンでやってきた可能性もあるけれど、これも神となった紘汰がその力で移動させたのかもしれない、などと・・・。
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ヘルヘイムを5年間放浪する戒斗
正直、まともに食料もないどころか文化的な諸々も完全に存在しないあのヘルヘイムの空間で5年間自給自足して、服もパリっとしててヘアスタイルもばっちりキマっている駆紋戒斗って、もうそれだけで言い様のない面白さがこみ上げてきて、非常にズルいですね。
そもそも、アナザー鎧武が邪魔者を放り込んでいたあの空間が本物のヘルヘイムなのか、アナザー鎧武固有の能力による疑似的なヘルヘイムなのかは、判断が難しいところ。前回のアナザーオーズも一般市民をヤミーに変える固有能力を持っていたので、アナザー鎧武も近い性質があるのかな、と。
などと考えつつ『ジオウ』のテレビ朝日公式ページを閲覧すると、アナザー鎧武の紹介ページに以下のような記述がある。
アナザーライダーと呼ばれる怪人の一種。
2013年のアスラが変身した姿で、大剣を所持し、剣術による戦闘を得意とする。
亜空間に干渉し、亀裂を生じさせることでヘルヘイムと呼ばれる場所へとつながる扉を開く。
インベスに似た怪人を出現させ、使役することも可能で、一定の条件下で撃破しないかぎり、何度でも復活する。
「インベスに似た怪人」。それはつまり、インベスそのものではない、ということだろうか。まあ、仮に本物のヘルヘイムと繋げているのなら、アナザー鎧武は宇宙規模の能力を持っていることにもなるので、疑似ヘルヘイムの可能性も十二分にあるのかも。
であるならば、あのヘルヘイム果実に『鎧武』本編のようなインベス化の効果はなく、普通に食すことも可能で、駆紋戒斗は煮たり焼いたり蒸したり時には生のままであの果実を食べまくって5年間を過ごしていたのかもしれない。強者はサバイバル能力も高いのだろう、多分。
前述した「神紘汰がソウゴのアナザー鎧武撃破に待ったをかけた」意図は、ヘルヘイムに迷い込んだゲイツが自力でそこを脱出する機会を作る、というもの。
でもこれって、考えようによっては、神紘汰は歴史改変された末にヘルヘイムに追放された戒斗のことを認知していて、彼が森に居るからこそソウゴの仲間は脱出できる、と判断したのかもしれない。全てを超越した男は、その歴史が改変されていたとしても、盟友でありライバルであった男のことを見ていて、間接的に後輩の仲間を彼に託した。そう考えると、めちゃくちゃアツくないですか? 「今あの森には戒斗がいる。アイツなら導いてやれる・・・」みたいな。
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「時をさかのぼり過去に干渉する」ことの重大さ
今回の鎧武編で言及されている、過去干渉の是非。『ジオウ』が面白いのは、本編を進めながら毎回少しずつ当番組における設定を解説していくところにある。
ビルド・エグゼイド編ではアナザー発生による歴史改変の模様をしっかり提示し、フォーゼ・ファイズ編では別個だったはずの平成ライダーの物語が時間軸で連続していることを描き、ウィザード編ではアナザーライダー一時撃破による正史復帰、オーズ編ではアナザーライダーを該当年度で撃破する必要性と、補完計画で先に解説した設定を各編で物語に絡ませながら描写していっている。
となると、鎧武編でこれに該当するには、おそらく「過去干渉の是非」だろう。「むやみに過去を変えてはいけない」という認識は、それこそ『ドラえもん』から何から用いられてきたことだが、『ジオウ』でもそういう認識で間違いがなさそう。ソウゴが過去に飛んで自分に干渉することに、ウォズは驚き、ツクヨミは激怒している。
今回劇中でも触れられたが、しかしそもそも論として、ゲイツやツクヨミのやっていることも立派な過去干渉なのだ。オーマジオウが魔王として君臨する前に倒してしまいたい訳で、それは立派なダブルスタンダードである。以前の感想で、「ゲイツやツクヨミは未来の警察組織的なやつの一員なのかも」というようなことを書いたが、だからこその葛藤を抱えており、それが平成ライダーの物語を一通り巡回した後の本筋に絡んでくるのかな、とも思ったり。
過去に干渉し、ましてやその事象に手を加えるのは(おそらく)重罪に値する。それを分かっていてやろうとするゲイツだが、彼の行動はウォズの本にも記載されていない。ゲイツのやることは全てが無に帰すのか、真の意味で「未来を変える」未来が待っているのか。
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上堀内監督の演出が冴える
大変恐縮ながらぶっちゃけてしまうと、初登場時よりオーズアーマーが魅力的に描かれるとは思ってもみなかった・・・。トラクローのエフェクトがすごく派手で見応えがあるし、ワイヤーアクションか滑空気味に斬りつけるのもかっこいいし、土煙を巻き上げながら回り込んで追撃で空に跳ぶのも素晴らしい。空中戦のタカ、斬撃のトラ、機動性のバッタと、それぞれの特性がしっかり活かされている。
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また、序盤のタイムジャッカーがゲイツを誘うシーンの踊り子とか(冷静に考えるとなんであんな道端に踊り子がいるのかよく分からないが、演出的に妖艶な感じがGOOD)、そこでの逆再生とか、クライマックスのソウゴとソウゴの邂逅が消えゆく煙の中で行われるとか、どれもこれもアイデアが面白い。さすがの上堀内監督・・・!『エグゼイド』の時計オブジェやプールシーンを発案されたお方!
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そんなこんなで鎧武編前編でした。『鎧武』のテーマのひとつとして、「信念を貫き合う」というのがあると感じていて。主人公はその信念を貫いた結果、自らが人を捨てて故郷すらも捨てた。ライバルは、自身の求める理想という名の信念に殉じた。そうやって、大人になりきれない若者たちが、でもその若者だからこそ持つフレッシュな信念とどのように向き合うか、それを確かめ合った物語だったと思うんです。
ソウゴは、過去干渉というタブーを犯しながらも、仲間であるゲイツを自らの考える近しい「民」として迎えたい。ゲイツは、ソウゴを信じたい気持ちも芽生えながらも、自らが当初目的としていた打倒オーマジオウの想いが捨てられない。
それぞれ譲れない信念があり、それは通常だと交わらない訳ですね。そんな両名にそれぞれ接触するのが、「信念が交わった末に決定的に決裂した」、そんな『鎧武』の2人。彼らが、ソウゴやゲイツをどのように導くのか、期待が高まりますね。
(あとこれは宣伝ですが、インスタグラムのアカウントでブログの更新通知をしているので、良かったらフォローをよろしくお願いします。過去話の感想は、ZI-O signalのカテゴリーページから参照できます)
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