『仮面ライダージオウ』4話はエグゼイド編の後編。先週の感想でも書いたように、中澤監督の遊び心あふれる演出で、イベント性の高い回でした。「いいぞ!ジオウ、どんどん面白くなってきたぞ!」というのが率直な感想ですね。
ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。今週はなぜかびっくりするくらい時間が取れなくて、「どうにか5話放送前までに更新するぞ!」と自分を追い込みながら、現在土曜夜0時を回りました。果たして放送前までに間に合うのか!?
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『ジオウ』という番組のフォーマット
東映の公式ホームページにて、白倉プロデューサーが以下のように書かれている。
3・4話エグゼイド編、あれが、『ジオウ』という番組の基本パターンです。
アナザーライダーによる事件発生。
契約者の事情に付け込み、彼らをアナザーライダーに変えるタイムジャッカーさん。その事件をソウゴ君たちが追う中で、レジェンドさんたちと行き会う……というお話。
時間を行き来するのでこんがらがりますが、ストーリーはどストレート。設定が分からなくても楽しめる工夫になっています。
1・2話ビルド編、3・4話エグゼイド編と、レジェンドも明確。元ネタの番組を未見の方でも「ああこれがビルド」「これがエグゼイド」と分かりやすいですよね。
ビルド編はシリーズ初回ということで、設定の説明・主要登場人物の紹介・世界観描写など、色々とやらないといけないノルマも多かった印象。なので、それらを一通り終えた後のエグゼイド編が「基本パターン」と位置付けられるのは、すごく納得がいく感じですね。
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「①アナザーライダーによる怪事件発生」「②レジェンドキャストと現行キャストの交流」「③ライドウォッチを受け継いでジオウが活躍」。大まかに並べるとこのパターンが『ジオウ』の基本と思われるが、エグゼイド編で特に良かったのは、ソウゴのキャラクターが掘り下げられたこと。
「王として民を気遣う」「平然と(もしもの場合は)自分を倒してくれと言い出す」あたり、やはり浮世離れした雰囲気があるソウゴ。そんな、民衆(?)の心象を察することができる主人公が、その信条をもって、アナザーライダーになった父親・レジェンドの永夢・ゲイツやツクヨミを繋げていく。ツンツンしつつ善い人オーラが隠し切れないゲイツも含めて、主人公たちトリオのドラマがしっかり展開されたのが良かったですね。
ということで、その「基本パターン」を受けて、自分なりに情報を整理したのが以下の記事。アナザーライダーやライドウォッチに対する理解は、今のところこんな感じで良さそう。(せっかく作ったのでこっちにも図式を貼っておく)
仮に「存在権」というものがあったとして、『ジオウ』はそれを奪い合う物語と言える。
正規の仮面ライダーが持っていた存在権を、アナザーライダーが上書きすることで強奪してしまう。存在権を奪われた仮面ライダーは、「仮面ライダーがいなかった歴史」というIFの世界に放り込まれる。
アナザーライダーを一時的に倒すことで存在権が元の持ち主に戻るため、その間に、存在権をライドウォッチとして生成、ジオウに譲渡する。最終的に、ジオウは正規の仮面ライダーから授かった存在権でアナザーライダーの偽史を更に上書きする。(しかし、存在権そのものを失った世界はまたもや改変されてしまう)
来る「王様決定戦(仮)」に向けて、存在権を上書きして強奪したいタイムジャッカーと、その存在権そのものを譲り受けて我が物にしていくジオウ。その戦いを受けて、レジェンドな仮面ライダーたちは、「元々の正史」「創られた偽史によるIFの世界」「存在権そのものがなくなった世界」といった数種類の歴史を歩むことになる。
今のところ、前回のビルド編と今回のエグゼイド編はこの記事に書いた理解で問題なさそうなので、次回のフォーゼ&ファイズ編でも通用するのか引き続き様子を見たいところ。『ディケイド』のような2話前後編構成を三巡目の世界でいきなり崩してくるあたり、パターン崩しが専売特許な「白倉プロデューサーらしさ」を感じる。
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永夢というドクターの生き様
今回観ていて嬉しかったのは、永夢が相変わらずナチュラルクレイジーなキャラクターに描かれていたところだ。「患者の心身を救うために奔走する」と言えば聞こえは良いが、彼のそれは少し過剰なところがあり、そこにあの射抜くような冷たい視線が重なって初めて、「永夢」という危ないバランスのキャラクターが完成する。(下記『全史』の高橋悠也インタビューによると、小説版における永夢のクレイジーな描かれ方は実際の飯島くんの演技に影響を受けたというから面白い)
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命の大切さを説くために自身にも痛みが同期されていると分かっていながらパラドを瀕死にまで追い込んだりと、『エグゼイド』を観た人なら、彼のクレイジーな側面にはいくらかの理解があるだろう。
そして、それらを実行する時の永夢は、誰にも心の内を明かさずに独断で動くことが多い。『エグゼイド』の面白さは、クセの強いサブライダーたちに振り回されていた永夢が、いつの間にか「振り回す側」に回っていく部分にもある。サブライダーたちがいつしか永夢のフォローに回っている構図に、思わずニヤニヤしてしまうのだ。
その点、今回の永夢もアナザーエグゼイドになってしまった父親を救うために、独断で動いていた。アナザーエグゼイドを倒し、一時的に永夢にエグゼイドの力が戻ったタイミングでも、すぐに変身してジオウやゲイツに襲いかかる。おそらく、一気に正史に振り戻された彼の目に写った光景は、「救いたい患者を追い詰める異形の怪人たち」だったのだろう。それはもう、あの覚悟を決めた視線で排除にかかるはずである。
つまり、今回の永夢の行動のポイントは、彼が正史に属していようと偽史に放り込まれていようと、「父親とその息子を救いたい」という目的がブレていなかった点にある。たとえエグゼイドの力が有ろうが無かろうが、永夢はドクターとして患者のために戦っているのだ。「変身できるとかできないとか関係ない!」。まるで『平成ジェネレーションズ』のタケルや『ドライブ』最終回の進ノ介を彷彿とさせるような、1年間を戦い抜いたヒーローの姿である。
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ビルドの力が失われても戦兎と万丈の仲が壊れていなかったように、エグゼイドの正史が壊されていても永夢が変わらずに患者のために奔走していたように、『ジオウ』における歴史改変は、むしろそのレジェンドの核を浮き彫りにする役割を担っているのかもしれない。変わっても、変わらないもの。そこに一貫したテーマや信条、プライドがあるのだ。
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『ジオウ』はどこまで “レジェンド” を扱えるか
中澤監督によるエグゼイドセルフパロが詰まったジオウの戦い方は、非常に面白かったですね。
そもそも平成ライダーはどちらかというと「バンク」的な演出を避けてきた作品が多く、だからこそ近年の「ゲーム画面のように必殺技発動のカットが入る」「必殺技を放つ際にどこからともなく数式が流れてくる」といったお決まりの生成は、どこか一周した感があって新鮮味があった。それを、当時の監督がセルフパロでいじっていく様子は、やはり観ていて非常に面白い。次回の坂本監督によるフォーゼアーマーの演出にも期待が高まるところ。
また、4話で驚いたのは、『エグゼイド』本編2話の映像がそのまま用いられたところだ。
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こういうバンク映像の使い方はアリなのか・・・! という衝撃。
今回はライダーが戦う戦闘シーンだけだったが、例えばキャストが変身するといった生身の俳優が映るシーンも、権利的にいけちゃったりするのだろうか。うーん、やはり難しいかな。そういった応用が効くのであれば、正史で変身するレジェンドをバンクで処理し、その時代の戦闘に介入する形でジオウが現れれば、アフレコのみのスケジュール確保でレジェンドを出演させられるのでは、などと妄想が膨らんでしまう。
レジェンド出演といえば今回ラストに出てきた弦太朗だが、私の見立てでは「驚異的なほどに骨格が似た別人」であり、おそらく福士蒼汰の出演は叶わないだろう。それでも、演出でやり繰りして頑張って(推定)代役を立てながら、逃げずに「正史」を描こうとするそのスタンスを、私は買っていきたい。
さて、次回はフォーゼ&ファイズ編。私の平成ライダーで一番思い入れのある作品が、『ファイズ』なのです。なので、期待も大きく、不安も大きく、といった心持ち。ライダーTVシリーズでの久々の坂本監督登板も楽しみですね。(なんとか放送までに更新が間に合ったぞ!)