ジゴワットレポート

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『ビルド』40話における氷室幻徳の私服ギャグシーンおよび近年の平成ライダーのギャグパートに関する雑感

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『仮面ライダービルド』第40話「終末のレボリューション」にて、氷室幻徳というキャラクターが予想の斜め上の私服センスを披露する、というギャグシーンが放送された。

放送当日から、その半ば過剰な演出と氷室幻徳というキャラクターとのギャップについて、Twitterのオタクたちの間でモヤモヤとした意見が飛び交っている。

 

かくいう私も、昨日以下のようなツイートをした。

 

 

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氷室幻徳というキャラクターは、パンドラボックスの光を浴びたおかげで攻撃的な性格になりイキっていた時期もあったが、仮面ライダーローグになることでそれを脱し、敵の手によって命を落とした父に代わって我が国を守るために立ち上がる、という流れを経ている。

 

演じる水上剣星氏の強面イケメンなビジュアルや、コートをなびかせながら度々主人公たちの前に立ち塞がった過去、今や贖罪のヒーローとなった物語に至るまで、『ビルド』作中でも最も「ギャグシーン」と距離のあった人物だ。

 

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その幻徳の私服が猛烈にダサい。それを、ギャップでギャグにする。これは分かる。

が、当の幻徳がランウェイを歩くかのように登場し、自分に酔った恍惚の表情を振りまきながらそのファッションセンスを見せ付ける一連のシーンは、あまりにも「これまでの幻徳」とはかけ離れたものであった。

 

ギャグシーンなので、狙いは「ウケ」だろう。

しかし少なくとも、私は「戸惑い」の方が大きかったし、おそらく微妙に顔を引きつらせながら視聴していたことだろう。

 

『ビルド』は戦争というヘビーなテーマを採用しながら、しかも、「一般怪人をスカッと倒してその回を終える」というパターンがシリーズでもトップクラスに少ないので、何らかのギャグシーンを挿入して緩急を付けたい、という意図は十二分に分かる。

メッタメタな冒頭アバンでのあらすじ紹介がその役割を果たしているし、そのあらすじ紹介の内容が本編にまで活きるという力業も少なくない。平成ライダーというシリーズにおいて、この方向性での緩急の付け方、「ウケ」の狙い方を強く設定した作品は、過去に類を見ない。

 

だからこそ、今回のファッションショーシーンは、「近年の平成ライダーらしいギャグパート」ではあったが、「ビルドらしいギャグパート」とは言えなかった、というのが私の雑感である。

 

もちろん、万丈や一海を使ったギャグパートはこれまでの回でも沢山あったが、その多くが彼らのキャラクターにおける応用の範疇にあった。

幻徳がいきなりギャップを見せるのは、それはそれで良いのだけど、あまりにもそれまで彼が背負ってきた過去や物語の流れから考えるに急にアクセルを踏み抜いた感があって、戸惑いを覚えてしまった。

 

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上のツイートでも書いたが、私の見解だと、これはもはや軽い事故なのだ。

シナリオの意図と、演出の意図と、Tシャツを販売するといった大人の事情と。それら諸々の、玉突き事故。そうだと思いたい。

 

『電王』前後から一気に作風が陽性寄りになった平成ライダーシリーズだが、『鎧武』辺りでは変身音をSEとしてギャグパートに持ち込む方法論が確立され、その後も定期的に、「演出過剰なギャグシーン」が披露され続けている。

 

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ここまでずっと、今回の『ビルド』40話を中心にそのモヤモヤについて語ってきておいて今更だが、私はその「演出過剰なギャグシーン」自体は、あって然ると感じている。

正確には、生まれてくる背景を何となく察せられる、というか。

 

つまりは、もう元も子もない原則論に立ち返るのだけど、昨今の『仮面ライダー』が子どもをメインターゲットに制作されているからである。

その子どもたちへの「ウケ」に、私のようなオッサンがあーだこーだ言うこと自体が、本当はピントがズレている。それはもう、自分でも分かり切っているのだ。

 

想像するに、子どもというのは、ただうんこのイラストがそこにあるより、それにわざわざ矢印で「うんこ」と注意書きしてある方が「面白い」のではないだろうか。

それ自体の面白さもさることながら、「それが面白いものである」という図式。そういう見せ方。それにより、「面白いとされるものを面白がる」という薄い共犯関係が成立する、というか。

 

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そのアンテナが年齢的にズレてしまう方からすれば、「うんこ」の注意書きは不要にしか思えない。だって、見れば誰でも分かる、当然のようにうんこなのだから。わざわざ名前を添える必要はない。

 

でも多分、そのアンテナが一番引っかかる世代からしたら、「うんこ」と称されているという図式そのものに、「自分も面白がれる」という感覚をを抱くのではないだろうか。

だから、過剰にそれがそれであることをアピールする。ギャグシーンが、ギャグシーンであることを、内容だけでなく演出でも重ねて表現する。

 

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嫁さんが観ている韓ドラを横目で眺めている際に、ついつい、「なんでそこわざわざ近寄って話すんだ」とか「必要以上に脱ぐ意味はあるのか」というツッコミを入れてしまう時がある。

 

逆に、以前私が『超星神グランセイザー』を観ていた際に、横から嫁さんに「なんでこの人(インパクターロギア)は普通に銃を撃てばいいのにわざわざクルクル回るの?」と聞かれたことがある。

なぜって、その方がかっこいいというか、そういうアクションのコンセプトというか、演出というか、魅せ方というか、それはもう、「そういうもの」なのだ。

 

復讐!ロギアの挑戦

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韓ドラのイケメンが取りあえず脱ぐのは、嫁さんのようなメインと設定される女性視聴者が「(第三者から見れば不必要な)それ」を求めている(と、制作陣が考えている)からであり、インパクターロギアが必要以上に回転しながらガンアクションを披露するのは、私のようなメインと設定される男性視聴者が「(第三者から見れば不必要な)それ」を求めている(と、制作陣が考えている)からだろう。

 

話を戻すが、つまりは、今回の氷室幻徳の私服ギャグシーンも、メインと設定される子どもの視聴者が「(第三者から見れば不必要な)それ=ギャグシーンをギャグシーンであると強調すること」を求めている(と、制作陣が考えている)から、ああいう形になったのだろう、と思うのだ。

 

それが本当に子供たちに「ウケ」たのかどうかは、私は子どもではないので分からないが、「ギャグシーンがギャグシーンであること」はそれなりに大事なのだろう。

だって、まさに『でんじゃらすじーさん』がそういうパターンで作られているのだから。「それだけで面白い」では足りず、「それだけで面白いものを面白がろう!面白いよ!!面白いよ!!」と、何重にもアピールしていく姿勢。

 

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・・・なとという、今回のギャグパートへの私なりの「理解」はある。

が、それと相反せずに、「せっかくの氷室幻徳というキャラクターがちょっともったいなかったのでは」と残念に感じてしまう私もいる。

このふたつの感覚の同居は、誰にどう言われようと、どうにもならないのだ。

 

ギャグとは、色んな意味で、諸刃の剣である。

 

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