映画『シン・ウルトラマン』の広報まわり、とても興味深い。
俗な表現でいくと「公式がネタバレをどんどん投下してくる」パターン。これは色んな意味でイマドキだなと、公開から約2ヶ月、楽しんで見ていた。(公式が正式に情報を出してるのでネタバレもへったくれもないのだが、文意優先でそう表現することをお許しください)
引用:映画『シン・ウルトラマン』ゾーフィ&ゼットン名場面映像【大ヒット上映中】 - YouTube
以下、記録も兼ねて投下ペースと内容の列挙を。
2022年5月13日。映画『シン・ウルトラマン』が公開。この時点では、予告映像に登場したネロンガ・ガボラ・ザラブ、そしてメフィラスの人間態のみが登場怪獣として判明しており、ファンの多くはどの怪獣が登場するのか期待に胸を膨らませていた。メフィラスが怪獣態になるかどうかも、勿論不明だった。
2019年の撮影から3年。
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年5月12日
映画『シン・ウルトラマン』
遂に本日公開!!
ー空想と浪漫。
そして、友情。ー
感動と興奮の
エンターテインメント大作を
ぜひ劇場で!#斎藤工 #長澤まさみ #有岡大貴 #早見あかり #西島秀俊 #庵野秀明 #樋口真嗣 #シンウルトラマン #本日公開 pic.twitter.com/5I08p1rFto
5月23日。まさかの登場となったゾーフィの存在が明かされる。フィギュア化の一報から公になるパターン。まだ劇場公開から1週間そこらである。
登場情報解禁! 「S.H.Figuarts ゾーフィ(シン・ウルトラマン)」、6月発売決定 https://t.co/r6yIrxPa5F #ウルトラマン pic.twitter.com/GMOPahwPRQ
— HOBBY Watch (@hobbywatch_jp) 2022年5月23日
5月25日。長澤まさみの巨大化が明かされる。メフィラスが出る時点で大方予想はされていたが、マジでやるとは。ロケ地も当時のフジ隊員と同じ場所らしく、原典を知る層に訴求していく。
ー #KATO太くん
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年5月26日
大ヒット御礼舞台挨拶
調査報告ー #長澤まさみ さん演じる
「巨大浅見」が解禁!
長澤さんの撮影は
グリーンバックでしたが
現場でのロケ、実は
初代「#ウルトラマン」巨大フジ隊員出現と
同じ場所で撮影されたそうです!#シンウルトラマン #大ヒット上映中 pic.twitter.com/ZvcKD8iH18
5月27日。本編冒頭映像1分17秒がYouTubeで公開。『ウルトラQ』関連の怪獣の存在など、ケレン味たっぷりの導入部が明らかに。シン・ゴメス解禁。
映画『#シンウルトラマン』
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年5月27日
冒頭映像1分17秒をプレミア公開開始!
5/29(日)19:59までの
48時間限定公開!
一緒にチャットで盛り上がりましょう!#大ヒット上映中 https://t.co/f8wTqgdQf8
6月3日。主題歌コラボMVが公開。メフィラス星人の怪獣態と『シン・ゴジラ』への目配せを兼ねた竹野内豊の出演が明かされる。
ウルトラ大ヒット記念!#米津玄師「#M八七」
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月2日
×#シンウルトラマン
コラボMV解禁!!
まだまだ謎の多い#ウルトラマン の最新映像に加え
外星人・メフィラスの本来の姿や
政府の男・ #竹野内豊 など
初解禁映像満載のMVに!
ご視聴はこちら▶︎https://t.co/lk3XpymPEA#大ヒット上映中
6月4日。公式から正式に「ネタバレOK」とのお達し。公開からまだ1ヶ月も経っていない。
映画『#シンウルトラマン』
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月4日
感想投稿キャンペーン開催中!!
ネタバレOK!
皆さまの本作の感想を
鑑賞時の半券、
または関連グッズなどを撮影して#シンウルトラ感想戦 をつけて投稿してみてください!
…長澤さん、有岡さん、早見さんの
本作のお気に入りのシーンは?
ぜひご参加ください! https://t.co/CE9mkTonzK pic.twitter.com/Iu1sicHpac
6月6日。山本メフィラスムーブメントに迎合するように、メフィラス名場面映像が公開。ネットの盛り上がりを公式が追いかける。「時流に乗る」、私の好きな言葉です。
さらに…!
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月6日
メフィラスの
登場シーンに特化した
まさかの【メフィラス名場面映像】も
公開!!
劇中の印象的なシーンほか
外星人としての“本来の姿”で#ウルトラマン と戦うシーンも!!
YouTubeでも公開中▶︎https://t.co/EmLFO1Wckz
ぜひご覧ください!#シンウルトラマン #大ヒット上映中 pic.twitter.com/8Dk3hPqLSS
6月13日。ウルトラマンの声を演じたのが高橋一生であることが公開。ここで公開からちょうど1ヶ月。
ウルトラ #大ヒット上映中!
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月12日
映画『#シンウルトラマン』#ウルトラマン の声を演じるのは#高橋一生 さん!
ウルトラマン愛溢れる
インタビューを公開!
ぜひご覧下さい! pic.twitter.com/PCfrFRmYGi
6月24日。本編冒頭映像10分33秒がYouTubeで公開。グレーの体色でAタイプなウルトラマンがスペシウム光線を放つまで。予告で使われていた光線シーンが事実上のフェイクだったのも、今思えば遠い日の面影。
祝・観客動員数262万人突破!
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月24日
興行収入39億円突破!!
映画『#シンウルトラマン』
本編冒頭映像10分33秒を
本日20:00〜東宝MOVIEチャンネルにて
プレミア公開!
6/26(日)19:59までの
48時間限定公開!
ぜひご覧ください!#大ヒット上映中
6月25日。ゼットンが公開。公式からこのビジュアルが公になったのはおそらくこれが初。
映画『#シンウルトラマン』#大ヒット上映中
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月25日
天体制圧用最終兵器
「ゼットン」 pic.twitter.com/39LdgDP2Ia
6月27日。ゾーフィ&ゼットン名場面集が公開。山寺宏一の声の出演も明かされる。クライマックスの映像がめちゃくちゃ使われている。
興行収入40億円突破を記念し#ゾーフィ & #ゼットン
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月27日
名場面映像を公開!!
ゾーフィの声を演じるのは#山寺宏一 さん!!
ーーそんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。
YouTubeでも公開中!▶︎https://t.co/7SWx9wnACb
ぜひご覧ください!#シンウルトラマン #大ヒット上映中 pic.twitter.com/ow6XbWY6gF
6月30日。VFXのメイキングが公開。モーションキャプチャーでクレジットされていた庵野氏の実際の動きが見られる。「 “あの庵野” がウルトラマンを演(や)る」という文脈の強さもあってか該当ツイートは数時間で万単位のRTへ。
【#シンウルトラマン 制作回顧録 VFX編】
— 映画『シン・ウルトラマン』公式アカウント (@shin_ultraman) 2022年6月30日
本日で6月も終わりですが
上映はまだまだ続きます!
感謝の思いを込めて、
メイキング映像をお届けします!
FILE①:スペシウム光線発射
あの #スペシウム の舞台裏です。#大ヒット上映中 pic.twitter.com/ZVimcFadDD
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「劇場公開とTwitter」というトピックは、常にネタバレ問題と隣り合わせだ。
結局は各人がTLを巧く構築する他ないのだが、特に大作が公開された週末あたりからは、Twitterにふせったーの波が押し寄せる。「(作品タイトル)、○○○○○○○・・・」というツイートが無限に出現し、ネタバレ配慮のワンクッションを置いた上で感想が交わされるのだ。
今日からシン・ウルトラマン公開!鑑賞直後ってぶわーっと感想書きたくなりませんか?「でもまだ見てない人もいるから…」というときはふせったーへどうぞ
— 伏せ太@ふせったー10周年 (@fusetter) 2022年5月13日
ふせったーは編集もできるから、誤字があっても大丈夫。落ち着いてから感想を追記するのもよきですhttps://t.co/v24AJO4OPf#シンウルトラマン pic.twitter.com/7w6WJmtEZT
ふせったー公式も、大作が公開されたり最終回を迎えたりすると、商機を逃すまいとこうして存在をアピールしている。このサービスは作品の展開やオチに限らず、作品に仕込まれた何らかのサプライズについて語りたい際に、非常に有効である。私もふせったーを長年愛好しており、その恩恵は重々承知している。
とはいえ、それはいわゆる性善説に基づくような話だ。公開直後だろうがなんだろうが、ネタバレをオープンにがんがん話題にする人は結構いる。オープンにして話すと未見の人の興味関心を削いでしまうのではないか・・・ という配慮(?)のマインドも、もしかしたらすこぶるオタク的な発想なのかもしれない。
それに、不用意にネタバレな話題を扱うとワールドワイドなSNSで急に誰かに刺される恐れがある。つまり、観た映画について踏み込んだ感想をツイートしたくても、それがネタバレになるから扱えない。ふせったーで書くのも良いが、それは未見の人からしたらパンドラの箱なので容易には開けられない(=布教にはならない)。SNSの広大なマーケットでムーブメントを起こそうにも、オタクがこぞって配慮した結果、盛り上がるのは「○○○○○」の羅列。それは、「なんか盛り上がってるっぽい」の域を出られるのだろうか。
あるいは。「Z世代はネタバレに抵抗がなくむしろオチを調べてから鑑賞する」という言説が叫ばれるようになって久しい。それは、時間を無駄にしたくないからか。失敗をどうしても避けたいからか。私個人としては、わざわざ観に行った映画がすこぶる微妙で「微妙~~!」と眉間に皺を寄せながら帰路に着くのも大切な経験だとは思うが、他方で、ハズレを引きたくない心理もよく分かる。「普通の人」は、映画館での映画鑑賞は年に1本か2本なのだ。そりゃあ、外さないに越したことはない。だからこそ、公式がネタバレをどんどん投下していけば、ファンもそれに伴って感想のレイヤーを調整するため、TL閲覧が自然と「オチを調べる」行為に近づいていく。
この、「ファンが感想のレイヤーを調整する」というのが、実に巧妙だと思うのだ。配慮したいオタクは、結局は公式の許しを待っている。「これについて話題にしてOKですよ」「ここまでは語って大丈夫です」という、お触れを待っているのだ。『シン・ウルトラマン』の情報の出し方とそれを受けたファンの動きをずっと見ていたが、投下に連動するように、「今日から『ウルトラQ』まわりは語ってヨシ!」「ゾーフィに触れるけどまだゼットンの名は出さない」といった調整をする人が多かったように思う。それも、おそらく無意識に。もし「ネタバレやめてください!」と刺されても、懐から「公式の許し」という盾を取り出すことができる。その心理状態を、じっくりと誘導しているのかもしれない。(以前『進撃の巨人』が公式に「○○話まではネタバレOK」と告げた時も、すこぶるイマドキだと感じたものだ)
やはり、人は「盛り上がっているもの」に弱い。夏の夜の虫のように光に吸い込まれる。行列があれば近寄ってしまうし、車が多く停まっていれば気になってしまう。オタクの配慮は「○○○○○」ばかりで、どうにも「盛り上がっている」の可視化に欠けてしまう。であれば、公式自ら段階的に隠し玉とされていたアレコレを投下することで、「○」を取り払い、しっかりと「盛り上がっている」に見せようではないか。誰とでも繋がれるからこそ、誰にでも配慮しなくてはいけなくなった時代。その配慮こそがムーブメントを妨げてしまうのだとしたら。熱量の高い客層は、放っておいても公開直後に劇場に駆け付けるのだ。「そうでない人」の背中を押せるのは、「盛り上がっている」オーラに他ならない。
ちょうど同時期、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』も公開後PVと題して同作の隠し玉をがっつりと公開していた。劇場公開から僅か18日後の出来事である。私個人の体感だが、これらに限らず、公開中にいわゆる隠し玉とされている要素をオフィシャルに明かす映画は、近年増えてきたように思う。どんどん投下し、どんどん語ってもらい、どんどん未見者を煽る。円盤ではなく銀幕で稼ぎ抜く。そんな勢いを感じる。
これからもこうした情報公開が業界で標準化されるのであれば、気になっている映画は早々に観に行かなければならないだろう。「公式からネタバレをくらう」という間違った日本語が、今まさに、映画産業で加速しているのかもしれない。