僕「クリストファー・ノーラン監督の最新作!『TENET』!楽しみだなあ」
TENET「こんちわ。予告、観る?」
僕「もう何度も観たよ。予告だけじゃストーリーが全然分からないけど」
TENET「映像すごいっしょ?」
僕「相変わらず抜群の雰囲気があるよね」
TENET「実際に観る感じ?」
僕「観る観る!こうして公開日のレイトショーに来てるぞ!」
TENET「楽しんでくれよな」
僕「サンキュー、TENETくん!」
TENET「それでさ、開幕、取り急ぎテロ起きるから」
僕「取り急ぎテロ!?」
TENET「まずはテロが起きる感じなんすよ」
僕「これは誰がどういう意図で起こしたテロなんだろう。主人公の立ち位置は・・・。何かを奪い合ってるのか? 奪還作戦? いや、要人の逃がし? まあ、観ていればそのうち理解できるでしょう」
TENET「いや、感じて」
僕「え?」
TENET「感じて」
僕「しかし流石のノーラン監督だよな。オペラのシーン、エキストラがすごい。爆破もかなり大規模だ」
TENET「感じた?」
僕「いや、まあ、感じた。取りあえず感じたよ」
TENET「見て!なんとなく偉い人が出てきたよ!」
僕「お、出た!なんとなく偉い人!ここ予告でも観た船のシーンだ!タイトルの単語が出てくるシーン!」
僕・TENET「「"TENET"」」
僕「ふぅ~~!!これあれでしょ!これ以降、事あるごとにTENETが会話の中に出てきて、お話の推進力になるやつでしょ!」
TENET「もうあんまり出ないよ」
僕「え?」
TENET「ほら、次いくから」
僕「うん」
TENET「ちゃんと説明聞いてね。弾が銃に戻るんだよ」
僕「うん、ちょっと待って。あのさ、エントロピーってなんだっけ」
TENET「弾が戻るの!」
僕「いやだから」
TENET「戻るの!!」
僕「はい」
TENET「ちゃんと説明聞いてる? こっちが原因、こっちが結果。はい、リピートアフタミー」
僕「げんいん・けっか・げんいん・けっか・・・」
TENET「ね? だから戻るんだよ」
僕「え?」
TENET「戻るの!!」
僕「はい」
TENET「よし、裏社会の人に会いに行こう!」
僕「待って待って。その人は何をしている人だって? 武器商人? う、うん、なるほど。いきなり話が進むけどまだ大丈夫。続けて」
TENET「バディのイケメン、お出ししとくね」
僕「バディのイケメンだ」
TENET「かっこいいスパイアクションを見て!!」
僕「おっ、すげぇ。スタントマンじゃなくてガチやんけ。バンジーのシーン、照明もすごくいい感じ」
TENET「かっこいいスパイアクションを見て!!」
僕「ぶっちゃけ今何のために侵入しているのか100%理解できてないっぽいけど、まあ、まあ」
TENET「かっこいいスパイアクションを見て!!」
僕「観てる観てる。分かったから」
TENET「この辺りで、色々と説明していくね」
僕「うん。頑張って聞くから。よろしく頼むよ」
TENET「アルゴリズムっていうのが重要なんだよ」
僕「アルゴリズムって、あのアルゴリズムのこと?」
TENET「いや、アルゴリズムじゃない。でも、アルゴリズム」
僕「え?」
TENET「ほら、プルトニウムも重要だから!これは要チェック!」
僕「プルトニウムって、あのプルトニウム!?」
TENET「いや、プルトニウムじゃない。でもプルトニウム」
僕「え?」
TENET「アルゴリズムとプルトニウム。分かった?」
僕「いやだから、アルゴリズムとプルトニウムなんでしょ?」
TENET「違う!アルゴリズムとプルトニウムじゃない!いい加減にして!アルゴリズムとプルトニウムだから!」
僕「うお!エリザベス・デビッキ!出た!身長高っ!!!!!すっご!!!!」
TENET「スパイ映画には幸薄そうな美人が似合うよね」
僕「わかるが」
TENET「とりま空港行こうね」
僕「絵を処分するんだろ? 分かるよ」
TENET「とりま飛行機を倉庫に突っ込ませるわ」
僕「え?」
TENET「だって気を逸らさないと」
僕「グリーンバック撮影?」
TENET「いや、1/1飛行機」
僕「え?」
TENET「飛行機」
僕「マジかよこれ・・・・・・」
TENET「ガチいくぞ~~~~~~」
僕「(思わず爆笑している)」
TENET「はいドーーン!!」
僕「嘘だろ・・・やっば・・・」
TENET「はいここで逆行敵の出現!!アクション!!」
僕「え、誰? 敵!? え?」
TENET「感じて!アクション見て!」
僕「相手これ逆行してるじゃん!うわ!動きキッモ!すっご!うっわ!」
TENET「見て!ほら!感じて!」
僕「うん!理屈はちょっとよく分からないけどアクションすごい!」
TENET「え? 理解できてないの?」
僕「え?」
TENET「飛行機すごかったでしょ?」
僕「うん、すごかった」
TENET「でも絵は処分できてませ~~~ん!!ざんね~~~~ん!!」
僕「嘘だろ・・・」
TENET「とりま海行くぞ」
僕「うん」
TENET「セイターが話してるの全部大事だから聞いててね」
僕「・・・もう少し親切に語ってくれると助かるんだけど」
TENET「え? じゃあ感じて」
僕「はい」
TENET「次は高速道路!」
僕「何のために高速道路でアクションが発生するのか完璧には理解できてないけど!」
TENET「いいから!」
僕「おけ!」
TENET「見て!高速道路を長期間封鎖して撮ったカーアクション!見て!」
僕「すげぇな。車を四方から挟むの、画がすごすぎる」
TENET「でしょ~~~?」
僕「うわ!なんか逆行してる車!」
TENET「ここよく見てて!」
僕「おけ!」
TENET「セイターきたよ!カーアクション頑張ったよ!」
僕「おけ!」
TENET「そしてここから逆行の扉を通るね!」
僕「え?」
TENET「まず向こうで拷問してるでしょ? あっちが赤で、こっちは青だから。ほら、分かった?」
僕「え? ちょ」
TENET「実はね~~~~、現在と未来の挟撃作戦だったんだよ!!!じゃじゃ~~~ん!!!!」
僕「え?」
TENET「よーし、扉を通るぞ!逆行だ!あ、マスクつけてね」
僕「う、うん。まあ、うん」
TENET「はい逆行~~~~!!見せ場連続っしょ!すごいっしょ!?」
僕「逆行して酸素が吸えないのは分かるんだけどさ」
TENET「ん?」
僕「例えばさ、気圧とかも逆になったらさ、そもそも体が存在できなかったりしないっけ? 何がどこまで逆行するルールなんだっけ? あれ、これ見当違いな疑問?」
TENET「感じて!!!」
僕「え?」
TENET「感じて!!!」
TENET「見て見て~~~!あの逆行していたシルバーの車は~~~!主人公の車でした~~~!!!!」
僕「おけ。まあ、おけ」
TENET「はい!燃えたから凍ります!」
僕「ちょ待」
TENET「え?」
僕「いや、まあ、分からない訳じゃないけど。流石にそうはならんやろ」
TENET「なってるでしょ?」
僕「ならんでしょ」
TENET「なってるじゃん」
僕「ひぇ~~~~」
TENET「ほら、イケメンが色々説明するから!」
僕「TENETくん、僕、頑張るよ!イケメンの説明聞くよ!」
TENET「ちゃんと聞いて!ほら!」
僕「で、でた~~~~~ 肝心な説明が欲しい時にいい感じの雰囲気の比喩~~~~~」
TENET「ほら、感じた?」
僕「感じた・・・のか・・・?」
TENET「感じたね? ほら、もう一回空港行くよ!」
僕「うん。分かった。これアレでしょ。空港で襲ってきた逆行敵は、自分たちなんでしょ!」
TENET「ご名答~~」
僕「いいぞいいぞ。映画のシーン構成までもが逆行していく感じ!『インセプション』で浸らせてくれた物語の構造と映画の作りがリンクしていく感じ!これはもしや!クライマックスの舞台はオペラでのテロか!!そうなんだな!!!」
TENET「いや、もうオペラは行かない」
僕「行かない?」
TENET「行かない」
僕「行かないのか~~」
TENET「そういうのいいから。ほら、見て!逆行アクション!今度はさっきと視点を変えて撮ってるよ!」
僕「銃が手元に戻るの、そうはならん感じがあるけど、いいカットだよね」
TENET「なってるじゃん!」
僕「なってるんだよなぁ~~~」
TENET「理解できてきた?」
僕「細部はもう置いておくわ。主人公たちは、今、逆行状態のまま過去に行ってるんだよね」
TENET「過去という概念を捨てて!時間の方向は」
僕「いや、便宜上の表現の過去ね。多分ざっくりは分かってるから」
TENET「分かってんじゃん。じゃあここでもう一回、扉入るから」
僕「ん? 逆行世界でまた逆行するの? ちょっと待って一旦整理したい」
TENET「さっき分かってたじゃん」
僕「いや、分かって・・・分かって・・・分かってたのか・・・? 僕は分かっていたのか・・・?」
TENET「もういい!感じて!」
僕「はい」
TENET「そしてスタルスク12に行きます!」
僕「スタルスク12」
TENET「赤チームと青チームに分かれます!」
僕「赤チームと青チーム。ちなみにこれは」
TENET「いいから!分かれるの!!!」
僕「はい」
TENET「ビルどーーん!ぎゅるぎゅる~~ どーーん!」
僕「映像すごいな」
TENET「理解できた?」
僕「ほんとごめん、若干眠い」
TENET「ダメ。見てほら」
僕「くっそ、映像良すぎるな・・・」
TENET「起きた?」
僕「ごめん眠い。公開日金曜にするなよ。仕事終わりのノーランはきついって」
TENET「ダメ。見て、イケメンの儚い見せ場!」
僕「イケメンの儚い見せ場だ」
TENET「ね? 理解できたでしょ? こういうことだったんだよ」
僕「つまり、どういうことだってばよ」
TENET「こういうことだから。ね?」
僕「うん」
TENET「楽しかった?」
僕「うん」
TENET「理解できた?」
僕「・・・・・・いや・・・」
TENET「楽しかった?」
僕「うん」
TENET「どうやって死にたい?」
僕「老衰」