ジゴワットレポート

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ポケモン老害は国民的ヒーローの夢を見るか。感想『ポケットモンスター ソード・シールド』

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『ブラック・ホワイト』の発売が2010年とのことで、私にとってちょうど10年ぶりのポケモンであった。

 

過去最高にやり込んだタイトルといえば、間違いなく『ハートゴールド・ソウルシルバー』だ。つまり、「そういう世代」である。あの頃は大学生だったこともあり、無限にも等しい時間があった。朝起きてはポケモン、昼もポケモン、夜更かししながらポケモン。やはり、このゲームには中毒性がある。昔から新作が出る度にプレイしていたが、社会人になってからは段々と忙しくなった。よって、『X・Y』『サン・ムーン』は今も手つかずのままである。

 

ポケットモンスター ソウルシルバー(特典無し)

ポケットモンスター ソウルシルバー(特典無し)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 任天堂
  • 発売日: 2009/09/12
  • メディア: Video Game
 
ポケットモンスター ムーン - 3DS

ポケットモンスター ムーン - 3DS

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 任天堂
  • 発売日: 2016/11/18
  • メディア: Video Game
 

 

Nintendo Switchで蘇った『ゼルダの伝説 夢をみる島』を一通り遊び終えたタイミングで、『ソード』を購入した。仕事も休みの年末年始にやり込むつもりだったが、親戚づきあいに翻弄され、気付けば仕事始め・・・。寝かせに寝かせ、1月中旬からのプレイとなった。

 

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実に10年ぶりのポケモンには様々な驚きが詰まっていた。前述の通り『X・Y』『サン・ムーン』は未プレイなので、何より「知らないポケモン」の数がえげつない。「見た目とタイプが裏腹なので決めてかかると痛い目を見る」場面も多く(私はこれを勝手に「ヌオー系」と呼んでいる)、「ええ!? この固そうな(はがねっぽい)ポケモンにほのおが通用しないのか?」などと、何度も頭を抱えるはめになった。

 

また、私は基本的に「新シリーズは新ポケモンだけで手持ちを構成したい」人間なので、今回は「どれが新種か」をググりながら冒険するスタイルを取らざるを得なかった。「いい感じに進化しそう!」と期待して捕まえたドロバンコが前作ポケだった時の哀しさといったら・・・。

 

ポケットモンスター ソード -Switch

ポケットモンスター ソード -Switch

ポケットモンスター ソード -Switch

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 任天堂
  • 発売日: 2019/11/15
  • メディア: Video Game
 

 

ただ、今回のポケモンは自分にとって妙に「痛い」というか、ある種の「ダメージ」が残る作品でもあった。それは、自分という人間がポケモンに関する「老害」と化しているのではないか、その事実への恐れである。おそらく、2タイトル飛ばしてプレイしていることで、より一層拍車がかかっているのだろう。

 

「そらをとぶが不要。ストーリー序盤から自由にワープ移動できる」「道中どこからでもボックスにアクセス可能」「手持ち全員がデフォでがくしゅうそうち完備」「連戦シナリオでも勝手に手持ちを全回復してくれる場面多数」「野生を回避しながら草むらを進むことが容易」「強制バトルに入りそうな場面でも『はい・いいえ』確認のワンクッション」「マップを開けば次にやるべきことの指示が載っている」「制限なしでいつでもわざを忘れたり思い出させたりできる」・・・。その他諸々。

 

胸の奥、いや、腹の底でふつふつと、「今のポケモンってこんなにヌルいのか?」という自分が熟成されていく、この嫌な感覚。過剰な手厚さを前に、否が応でも積み重なっていく違和感。

 

私も歳を取ったということなのか。「昔はこうだった」「それに比べて今は楽だな」。実生活でもオタク趣味の場面でも、そういうことを言いながらマウントを仕掛けてくる連中を「老害」と捉えて忌み嫌っていたはずだ。しかしどうだろう。実際に自分が半生を共にしてきたポケモンが相手となると、つい、「昔はもっとこうだったのに・・・」と感じてしまう。言いたくなってしまう。嗚呼、嫌だ。最悪だ。こんな自分は知りたくなかった。まさかポケモンを「純粋に楽しめない」日々がやってくるとは。

 

まるでその象徴のように、プレイしながら心底嫌気がさしてしまったのが、主人公のライバルキャラ・ホップである。

 

 

現チャンピオンの実弟であり、主人公と同じ街の出身。共に旅に出てジムを巡ることになるが、このホップという少年、ことあるごとに主人公にまとわりついてくるのだ。新しい街に辿り着けば、まずホップ。ジムリーダーに勝利したと思ったら、いきなりホップ。洞窟の奥にもホップ。観光地にホップ。野道にホップ。ホップ、ホップ、ホップ。頻度としては完全にストーカーである。ステップもジャンプもしない、ただただホップ。ホップホップホップ。

 

察するに、これは先の老害感覚ともリンクしてしまうのだけど、ホップは本作におけるナビゲーターの役割も兼任しているのだ。それも、異常なまでに手厚いほどに。プレイヤーが「行き先」に迷うことがないよう、また、ジムリーダーに挑んでいくモチベーションを演出するよう、度々ホップが現れる。その目標を熱く語り、効果ばつぐんの技に過剰に反応する。ライバルキャラといえば「主人公の旅の途中で忘れた頃にエンカウントする強敵」という認識だったので、あまりに出現頻度の高いホップには、苦い顔しかできなかった。草むらのポケモンは避けられるのに、ホップが避けられない。

 

ポケモンにおける「旅」というのは、青春のイニシエーションと近い印象がある。親元を離れ、相棒のポケモンと共に、見知らぬ土地を巡る。たまに実家に顔を出すこともあるが、基本的には孤独なひとり旅。その黙々とした研鑽の魅力、そして、チャンピオンになった際の達成感。私にとって、ポケモンの「旅」はそういう印象だったのだ。

 

それがどうだろう、ホップである。こちとら、胸を躍らせながら見知らぬポケモンや見知らぬ街に臨んでいるのに、執拗なまでに地元の友人がまとわりついてくるのだ。いやいや、もっとライバルってのは、街を出るタイミングとかの忘れた頃に「ピキーン」ってSEで登場して高圧的な態度を取ったかと思えばジム戦の直後でつい回復を失念していたために大ピンチに陥るとか、そういう、そういうもんじゃないのか、と・・・。

 

などとまあ、老害ムーブを発動させながらホップを疎ましく思っていたのだ。正確には、ホップ自身は悪くない。彼は健気な少年だ。ただ、物語構成や過剰に丁寧なナビゲートシステムが、その「健気さ」を押し付けてくるのだ。嫌というほどに。

 

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しかし、ストーリーを進めていくに連れて、自分が過去のポケモンの影を必要以上に追っていたことに気づかされる。

 

そう、今回のポケモンは、そもそも「青春の旅」じゃないのだ。これは一種のスポーツで、ラリー的にジムを巡っていく。そういう、ひと夏の長期競技なのだろう。時期的にどうしてもオリンピックを連想してしまうのだけど(狙っているのか?)、国民の関心を集める競技、それこそが主人公も参加するジムリーグである、と。だからこそ、ホップは同じ競技に挑む選手なのだ。

 

例えるなら、学校のスポーツ測定だ。「お前どこまでやった?」「俺は反復横跳びが終わったぞ」「シャトルランはめっちゃ得意なんだ」。クラスメイト(この場合のホップ)と、体育館の出入口でそういう話をする。まるで、そんな空気感なのだ。少なくとも本作は「青春のひとり旅」といったコンセプトではない。

 

すると、過剰に手厚く思えたシステムまわりにも次第に納得感が増していく。スポーツのプレイヤーは、雑多ことに意識を配らないものだ。それは最初から「整っている」(=整えられている)ものであり、選手は試合や競技そのものに全神経を注ぐ。進路に迷ったり、野生ポケモンに疲弊したり、手持ちを入れ替えるためにわざわざポケモンセンターまで戻ったりと、そういうことはやらないのだ。参加中のリーグ、その本番である試合に、全身全霊で挑む。

 

そして、そこまでお膳立てするからこそ、ジム戦の演出が冴える。アリーナのように四方八方を観客に囲まれ、その声援を受けながら戦うのだ。特筆すべきは音楽で、サッカーのサポーターが発する歓声やチャントが盛り込まれたアレンジは、否が応でも胸を熱くする。試合中にジムリーダーが喋り、最後の一体になるとシームレスにメロディが移行、緩急が生まれる。私の知っているポケモンには無かった、「バトルの最中のストーリー」が、そこにはあった。

 

そうなると、こちらもその「ストーリー」に応えたくなってくる。つまり、自然と「魅せる試合」を意識させられるのだ。例えば、相性の悪いポケモンを壁にして控えを回復させるとか、そういう「スポーツマン精神に反しそうなプレイ」に抵抗が生まれてしまう。より劇的に、ドラマチックに、勝利をもぎ取る。相手がダイマックスを仕掛けるタイミングを読んで、こちらも同時に繰り出す。巨獣が睨み合い、スタジアムの熱気は最高潮に達する。その瞬間、プレイヤーはパフォーマーと化している。

 

 

そういった演出が巧いため、気付けば、プレイヤーはまんまとノせられている。市井の人々が、自分を「もうすぐ金メダルを獲りそうな有望選手」らしく見つめ、噂話をする。なんと気分が良いのだ。そう、俺はヒーローなのだ。この地方のヒーロー選手として、新たなチャンピオンになるのだ。俺に期待しろ。俺を応援しろ。最高のパフォーマンスで応えてみせよう。そういった「ハイな高揚感」へプレイヤーを誘導するために、システムのストレスフリー化(≒ ヌルさ)が加速する。「雑多なことは最初から排除しますから、振り返らず進め、未来のチャンピオン」。まるでそう言われているかのように。

 

・・・などと感じつつ、終盤のストーリー運びにはいくらか難点があった。複数のライバルを倒して盛り上がったタイミングでかくれんぼ。遂にチャンピオンに挑戦する最高潮のタイミングで横槍からの森行き。せっかくプレイヤーを「ハイ」にする仕掛けに満ちているのに、自らそれを潰してしまう話運び。ここまできたら、徹底的に「ハイ」路線でも良かったのではないか。とはいえ、ホップが「伝説使いの片翼」を担う展開は面白く、彼をストーカー呼ばわりしていた私も心中でこっそり謝ったものである。

 

ポケモンは常に、「人とポケモンの共生」をあらゆる角度から描いてきた。ヤドンの尻尾が売買される現場で憤り、天変地異を巻き起こす神話の存在に恐れおののき、その主従関係からの解放を訴える男と相対する。今回の『ソード・シールド』は、このテーマに「人間とポケモンが共に挑む国民的スポーツ競技」という答えを打ち出しており、これもまた新たな「共生」の形として納得したものである。大きなポケモンが「ちゃんと大きいまま」その辺りをウロウロする。このセンス・オブ・ワンダーといったら!

 

気づけば老害となっていたアラサー糞野郎も、国民のヒーローになれる。それを赦し、誘い、まんまとハイにしてくれる。ポケモンは、なんとも懐の広いゲームだ。

 

 

ポケットモンスター ソード・シールド 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略+ガラル図鑑

ポケットモンスター ソード・シールド 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略+ガラル図鑑

  • 作者:元宮秀介,ワンナップ
  • 出版社/メーカー: オーバーラップ
  • 発売日: 2019/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
電撃Nintendo 2020年2月号

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/21
  • メディア: 雑誌