ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

個人のテキストが誰かの人生に影響を与えるということ

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ブログを書き始めて、10年以上が経つ。

 

最初に作ったブログは学生時代のリアル友人との交流も兼ねていたが、次第にネット人格に移行し、現在のひとつ前のブログをかなり力を入れて運営していた。加えて、その少し前からTwitterにハマっており、観た作品の感想を連投ツイートなどしていたので、それならいっそブログにまとめて記事にしようと思い立ったのが、2014年頃だろうか。これが前述の「ひとつ前のブログ」で、あれよあれよと規模が大きくなった結果、おかげさまで企業からの執筆依頼をいただいたりもした。

 

約2年前に、はてなブログに移転。相変わらず映画等々の感想を好き勝手に書いていたが、光栄なことに執筆依頼も次第に増え、「結騎 了」という自分のハンドルネームが載ったコラムや雑誌を目にすることも少なくなくなった。一昔前では考えられないほどに、趣味において充実した生活を送っている(もちろん仕事も楽しいし、プライベートもいい感じ。最近また娘が一段と可愛くなってきた!!)。

 

そんな中、友人に誘われ、先日東京で開催されたトークイベントに出演した。ブログタイトルを冠したイベントだったこともあり、来場して下さった方は、全員が私のブログを読んでくださっている。そんな光栄すぎる空間で喋った内容については先日の出演後記にまとめたが、そのイベントの際に、参加者のお一人から手紙を頂戴した。便箋5枚にもわたる内容。宿に帰ってから、開封し、一気に二度読んだ。

 

手紙をくださったのは、ハンドルネーム おソース@ssssfx_さん。『総天然色日記』というブログを運営されていて、実は付き合いはかなり長いのである。しかし実際にお会いするのは初めてで、Twitterでの交流を経ての数年越しの対面であった。まさかお会いできる日がくるとは・・・。

 

内容を要約すると、以下になる。もちろん、ご本人の許可をいただいた上で掲載する。手紙を頂戴した私自身が要約するのが、ちょっと小恥ずかしいのだけれど・・・。

 

・結騎さんとの出会いがなければ現在の自分はなかったと思っている。

・大学生の時に、ふと好きな作品タイトル(『仮面ライダー鎧武』)で検索し、結騎さんのブログに辿り着いた。

・その際に、「単なる趣味でも一個人がブログで好きなことについて語るのはこんなに楽しいことなんだ!」と知り、自身もブログを開設した。

・その後大学ではエンタメ研究や雑誌編集を専門に学び、その結果、出版プロダクションに就職。現在はフリーの編集者としても活動しており、(当ブログでも感想を書いたような)作品関連の仕事にも携わっている。

・ずっとこの報告と共に感謝の気持ちを伝えたかったので、今回手紙を書いた。

 

と、まあ、こういった内容だった訳です。読んで思わず、感極まったというか、何というか・・・。私のような、いち個人が趣味で作って書き散らしていたブログに影響を受け、その果てに現在はフリーの編集者としてお仕事されているなんて。そんな。そんなことってありますか。びっくりですよ。感謝感激が過ぎますよ。

 

元々私は、文章を書く練習なんてしたこともないし、どこかで学んだ訳でもない。ただ自分が、映画や特撮番組を観て発生する「ここが良かった!」とか「ん~ここは!」などの感情を頭の中だけに留めておけないので、ブログという形でこぼしているだけなのだ。ブログ運営がどうだの、記事の作り方がどうだの、そういうテクニック的な何かもあるにはあるけども、その土台にあるのは、「ちょっと俺に語らせてくれ」という単純なリビドーに過ぎない。キーボードを、思いのままにカチャカチャと叩きまくる。それがもし誰かに読まれたら嬉しいよね、と、所詮はその程度なのである。

 

なので、まさかそのリビドーの部分を感じ取ってくれた方が、それを活かせる方面でお仕事されていて、あろうことか私なぞの影響が少なくない、と・・・。そんなことってありますか。このトーシローの、アラサーなオッサンの、面倒臭くこじらせたオタクが、「あーでもない」「こーでもない」と作品をこねくり回すだけのこんなブログが。誰かの人生に、大なり小なり影響を与えるだなんて・・・。

 

おソースさんとはネット上では長いお付き合いなのですが、リアルではどんなお仕事をされているか全く存じ上げなかったので(ネットの付き合いではよくあること)、今回手紙をいただいてすごく驚いたんですね。そして同時に、特に目標を掲げてやってきた訳でもないこのブログ執筆という趣味生活が、全く予想もしていなかった方向から労われた感じがあって、ひとりで勝手に、感慨深くなってしまったのです。「こんな・・・こんな場末の趣味ブログが・・・誰かにとってはそれなりに意味があったのか」、と。

 

ブログ全盛期の時代も終わり、今やSNSが大流行。ネットには一生かけても到底目を通しきれない情報が溢れていて、完全なる供給過多。私も、色んなブログやその他のサイトを毎日沢山読んでますが、ほとんどがルーティーンのように目を通す感じで、ひとつひとつを吟味するというよりは、情報という波に浸かっている状態そのものが心地よい、といった日々を送っている。そんな毎日において、週刊少年マガジンのように「!!」が頭上に浮かぶサイトに出会える機会は、正直多くはない。それは多分、おソースさんも例外ではなかったと思われる。

 

そんな情報過多な世界で、私のブログに、おそらく「!!」を感じてくださった。これが、書いている人間にとってどれほど光栄なことか。どんなに嬉しいことか。もちろん、一番は自分のリビドーをテキスト化することなのだが、同時に、ネットの大海のどこかの誰かひとりにでも「!!」が届けば良いなと、そう薄く願っているのだ。今回、それが確かに届いていたという実証をご本人からいただけて、もうなんか、参ってしまうよね、という状態であった。まいっちんぐ。

 

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思い返せば私も、高校時代、「!!」を覚えたサイトがある。

 

『e-flick』という、主にガンプラやフィギュアのレビューを取り扱っているサイトだ。同サイトにおいて、運営者のK3さんは仮面ライダーの毎週感想を更新されていて(大変残念ながら現在は止められているのだけど・・・)、それを読むのがあの頃の私の何よりの趣味だった。感想と考察のバランス、熱量とロジカルの配分、何よりその魅力的な語り口に、毎週何度も同じページを読み返していた。心の中で、誠に勝手ながら師匠ポジションにいらっしゃる方で、現在の私の趣味生活における諸作品との向き合い方は、氏のサイトに大きな影響を受けている。もう、確実に。

 

「こんなふうに作品と向き合えるのか!」「あんなふうに語ることができるのか!」という、当時の私のエウレカが、それ以降のTwitterやブログとべったりの趣味生活を創ったといっても過言ではない。今や、ブログを書かないと物足りないほどにそれが生活の一部となり、果てには他ならぬ作品語りの執筆依頼も頂戴しながら、様々な場で自分の思いをテキスト化する毎日を送っている。

 

何かこう、不思議でありながら、素敵なことではないだろうか。自分で言ってしまうのも小恥ずかしいのだけど、誰かに影響を受けた私が、また誰かに影響を与え、おそらく、おソースさんが編集された雑誌やその他のメディアに、また誰かが「!!」を灯すのだろう。個人のサイトやブログ、ひいてはテキストには、こういう可能性がある。それ自体が、何より素敵なことではないか。いただいた手紙を読みながら、そういった「巡り巡る」ものを感じてしまい、何かをアウトプットすることの面白さを痛感したのであった。

 

・・・などということを、手紙のお返事として一週間ほど考えていたのだけど、ふと、これを他ならぬブログに書きたい、という思いが湧いてきた。私と同じように、テキストという形でリビドーをぶつけている個人に、こういった事例があることを知って欲しくなった。もしかしたら、あなたも誰かの「誰か」になっているかもしれませんよ、と。インターネットという広すぎる海には、あなたを「情報の波」ではなく、「個」として見てくれている人がいるかもしれませんよ、と。

 

そう思い立ち、おソースさんにTwitterのDMを送り、ご本人の了承を得て、この記事を書いている。もしかしたら、単なる自慢みたいに見えるかもしれないし、そういう気持ちが全く無いかと問われたら、ちょっとは嘘になるだろう。でも、なんかこう、上手く表現できないのですが、「良く」ないですか。個人の、趣味の迸りだけで書かれたような文章が、誰かの人生にほんの少しでも影響を与えるという、その構造が。私もそのひとりだったし、そうして今度はいつのまにか、嬉しいことに逆の立場での「誰か」になっていた。こんなにハッピーなこと、それこそ個人のブログに書かなくてどこに書くんですか、と。

 

取り留めのない内容になったけれども、こういうことがあるから、ネットに文章を書くのって、やめられないんです。テキストサイト時代を生き、ブログ全盛期を生き、SNSの隆盛を今また生きているけども、やっぱり、自分の頭の中だけじゃ抱えきれない何かをインターネットに放流するこの面白さだけは、不変なんだよな、と。

 

もしかしたら、何十年か後は頭で念じればそれが瞬時にテキスト化される技術が一般化するかもしれないが、それでも私は、時代遅れのようにキーボードをカチャカチャと叩くことに意味を見い出しているのだろう。それだけは、どうしようもなく確信が持てる。

 

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