ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

感想『仮面ライダージオウ』第37話「2006:ネクスト・レベル・カブト」ZI-O signal EP37

FOLLOW ME 

f:id:slinky_dog_s11:20180828164256p:plain

 

『仮面ライダージオウ』第37話は、山口監督&毛利脚本でおくる、カブト編前編。山口恭平監督といえば、今でこそ『平成ジェネレーションズFOREVER』を大ヒットに導いた勢いマシマシの監督ですが、『カブト』当時は2ndADといて現場に入られていたとのこと。『ジオウ』におけるレジェンドキャストの出演は、もちろん視聴者は湧くのですが、現場も一年間ずっと同窓会をやっている雰囲気なのかもしれませんね。

 

 

では早速ですが、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。

 

スポンサーリンク

 

 

 

カブト、再演!

 

『仮面ライダーカブト』という作品は、先週の感想でも少し書いたように、平成ライダーが産み落とした化け物のような作品だと思っていて。従来の「特撮ヒーロー」をいちから見直したリアル志向の『クウガ』と、ファンタジー色を強めた『アギト』『龍騎』、怪人側のドラマやキャラクターの描き方が深まった『ファイズ』『剣』、そして、シリーズ随一の異色作とも言える『響鬼』。平成ライダーというシリーズは歳を重ねながら、段々と様々な領域を「取り入れて」「広げて」きた訳です。

 

『カブト』は言うなれば、その領域の境界線ぎりぎりを全力で走るような作品なんですよね。平成ライダーがシリーズを重ねる中で「あり」にしてきたこと(コンセプト・描写・方法論等々)を、今一度全部ぶちこんでみよう、過去にウケたものは全部やってみよう。ZECTという組織を軸にしたリアル志向と、宇宙から飛来した怪人というファンタジーかつハードSFの路線、キャラクター色を強く描写することで物語を転がし、『龍騎』でウケた多人数ライダーの混戦模様も、『ファイズ』や『剣』がやった怪人側のドラマも、その全部を贅沢に盛り込んでみよう、と。

 

その結果、誰も観たことのない、しかし、どれよりも「平成ライダーらしさ」がほとばしる、化け物のような作品が出来上がった訳です。それが、私が思うところの『仮面ライダーカブト』。言うなれば、シリーズとして続いてきた平成ライダーへの印象の集合値、その概念のようなものが立体化した作品、という感じ。

 

そして、前述のようにあまりにも要素をごった煮にした反動か、軸を非常に強く設定してあるんですね。それが、主人公・天道総司。水嶋ヒロの圧倒的ビジュアル説得力と、強烈な俺様キャラ。これにより完成された天道という主人公が、どの登場人物よりも、どの物語設定よりも、高速で力強く物語を駆け抜けていく。そして、周囲はその天道にことごとく翻弄される。

 

キャラクター同士が、騙し騙されを展開したり、様々な思惑が複雑に交差したりするんだけど、結局は天道がその全てを締めにかかる。なので、雑多な要素が力業でまとまっていく(流石にちょっとまとまっていない時もあったけど・・・)。と、まあ、非常に特異な作品な訳です。平成ライダーの様々な概念を贅沢にお鍋にぶち込んで、出汁が溢れそうなくらいタプタプで、でもそのお鍋を天道が調理しているような。すごいバランスで仕上がってるよなあ、と、何度観返しても痛感する・・・。

 

仮面ライダーカブト Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]

仮面ライダーカブト Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]

仮面ライダーカブト Blu‐ray BOX 1 [Blu-ray]

 

 

そして今回のカブト編も、負けず劣らず要素が盛り盛り。「レジェンドキャスト3人登場」「既存キャストがアナザーライダー化」「巨大隕石襲来」「ワーム襲来」「ツクヨミの謎」「門矢士再登場」「時空のゆがみと歴史の矛盾」「アナザーにより消失しないレジェンドライダーへの疑問」・・・。と、まあ、雑多に盛り込んでくる訳です。そして同時に、「騙し騙され」の群像劇や、怪人(ワーム)の擬態設定を活用したドラマ展開、味方と敵に入り乱れる「多人数ライダー」要素。いかにも『カブト』らしい、てんこ盛りな作り方。

 

話があっちに行ったりこっちに行ったりするけれど、見ごたえのある戦闘シーンや、ハッタリの効いた画に、グイグイと引っ張られる。これこそが『カブト』だよなあ、と、懐かしみながら観ていました。

 

スポンサーリンク

 

 

 

クロックアップ描写の面白さ

 

『カブト』の映像的な面白さは、主にふたつ。『イナズマン』のような脱皮=「キャストオフ」と、『サイボーグ009』の加速装置=「クロックアップ」。言うまでもなく、共に石ノ森章太郎原作の要素な訳ですね。そして、1号ライダーをはじめとする昭和ライダーが確立した「仮面ライダー=虫」というデザインコンセプト。前作『響鬼』がかなりの意欲作+異色作だったこともあり、王道かつ原典の要素で脇を固めているのも『カブト』の大きな特徴。

 

話を戻しますが、キャストオフはもう単純に画が面白いですよね。アーマーをまとうタイプの一段階目の変身と、そのアーマーを弾き飛ばす二段階目の変身。キャストオフ寸前の浮いた状態のアーマー内部のCG描き込みだったり、キャストオフ後にピアノ線というアナログ特撮で可動するカブトやガタックの角だったり。そして、はじけ飛ぶアーマーがワームを蹴散らしていく爽快感。キャストオフという設定は、非常に華がある。今回の『ジオウ』においても、ガタックのキャストオフがしっかり描かれて、眼福でした。

 

続いて、クロックアップ。これもまた抜群に面白い。クロックアップは主に二種類の描き方があり、それは、「ライダー視点」か「第三者視点」かの違い。前者だと、高速移動という設定を「周囲が遅くなる(もしくは止まる)」という解釈で映像化する。雨が空気中で水玉になって止まっている中を戦ったり、オリーブオイルの瓶が落ちるまでの止まった空気の中で敵を倒したり。一方、後者の「第三者視点」のパターンは、ライダーやワームの動きがよく見えず、とにかく高速バトルがそこらで展開される。詳細が分からない代わりに、「速さ」の印象を強く持たせることができる。

 

37話の中盤、市街地でのガタックとパンチホッパーの戦い。これは、カブト世界の新参者であるソウゴ(ジオウⅡ)を使った「第三者視点」で描かれた。山口監督の画作りとして面白かったのが、かなりアナログな特撮でそれを描いたところ。ただ効果音と行き交う影で見せるのではなく、そこらで不規則にコンクリート片やドラム缶が跳ね上がる映像。しかも、その直前には、ゲイツリバイブ疾風とウォズシノビによる「効果音と行き交う影」を先に見せているのだ。アプローチを細かにずらしながら、クロックアップの面白さを描写する。上手いですねぇ。

 

そして、クロスオーバー作品ならではの、「そのクロックアップをどう打ち破るか」の問題。『ディケイド』では、同じく高速で動くためにファイズアクセルにカメンライドしたり、クウガペガサスの超知覚で一撃を決めたりしていた。今回の『ジオウ』では、ジオウⅡの未来予知で敵の行動を予測して当てにいったり、ウォズギンガの広域攻撃で実質的に敵のスピードを無効化したり。こういう技の応酬は、観ていて非常に面白いですね。

 

スポンサーリンク

 

 

 

歴史が繋がる矛盾

 

今回一番驚いたのは、「①アナザーライダーが発生しているのにレジェンドライダーが消失していない問題」「②仮にライダーの歴史が繋がっていたら当然発生する矛盾問題」のふたつに、作品内で言及があったこと。

 

まず①については、確かにこれといった回答が示されていなかったんですよね。敵サイドの目的が変化してきているので、該当放送年度ではなく、2019年でアナザーを作ることで、オリジナルの消失を回避していた(=剣やアギトのようにオリジナルの力そのものが敵の目的だった)という解釈をしていたけれど、「これ」というロジックが示されていなかったのは確か。かなりふわっと、「発生年度が違うから?」以上に確度を上げることができなかった。これについて、ソウゴが真正面から言及したということは、おそらくしっかりと物語内で回答があるということ。これは非常に楽しみですね。

 

続いて②。これはぶっちゃけ、それとなくスルーしてしまうものと思っていました。『ジオウ』の世界は、2000年にクウガが活躍して、2001年にアギトが戦って・・・ 2017年にビルドが奮闘した、という、平成ライダー19作の歴史が直列で繋がっている、という設定を持っている。しかし、未確認生命体の跋扈も、バトルファイトでジョーカーが一時勝利した際の破滅の可能性も、渋谷隕石の被害も、ヘルヘイムの森の侵略も、その全てが同一の歴史にあるとするのは、やっぱり無理があるんですよね。

 

かなり強引かつ、記念作品ならではのメタな感覚で、「まあそういうものよね」という自己納得な理解をしていたのは、正直否めない。そもそも、「クウガ」と「2000年」をイコールで結ぶ行為こそが、結構な掟破りなのだから。

 

仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 2

仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 2

仮面ライダージオウ Blu-ray COLLECTION 2

 

 

しかし、今回それに作品内でクエスチョンを投げた。加賀美は、「渋谷はいつこんなに復興したんだ?」と、ソウゴたちと違う歴史を問いかける。加賀美は、「どこ」で2019年まで生き続けていたのか。謎は深まるばかり。

 

例えば、本来パラレルで並列に存在していた19本の世界が、常盤ソウゴの力で近づいたり離れたりしているのだろうか。ソウゴの未来創造能力が、無意識のうちに、それぞれをある時点で20本目=ジオウ世界線に強制融合させていたとしたら。「君が願うことなら、全てが現実になるだろう。選ばれし者ならば」・・・。

 

まだ完全に復興していない渋谷に生きていた加賀美が、ある日突然、ジオウ世界線に投げ込まれる。そうすると、あんな反応になるのだろうか。とするならば、ジオウ世界線に元からあった仮面ライダーの歴史はどういう解釈が可能なのか。アナザーライダー発生による正史の消失を繰り返してきたジオウ世界線は、実は、本当に20本目だけを指していたのか。

 

まだまだ「提示」の段階なので、もう少し材料が欲しいですね。次回以降が楽しみです。

 

スポンサーリンク

 

 

 

次回、カブトに選ばれるのは……

 

予告で登場していたカブト。さて、誰が変身するのか。可能性、「①天道本人が登場!」「②後光を浴びるシルエットのみの無口な男性(要は天道)が登場!」「③加賀美、本編1話から13年の時を経てカブトゼクターに選ばれる」。さあ、どれだろうか。

 

「カブトはやっぱり天道じゃないと」という思いもあるにはあるけれど、もし③だったらそれはめちゃくちゃ熱いんですよね。放送当時、カブトゼクターを手にしようと天に手を掲げ、スルーされてしまった加賀美。力がないことを嘆きながら、弟に擬態したワームを倒してくれと、カブトに頼む加賀美。もちろん、彼は後にガタックの力を手にする訳だけど、加賀美にとっての「カブト」は、やっぱり特別な存在だと思うのです。友である天道が変身するライダーでもあり、彼なりの、「力の象徴」とも言えるのかもしれない。

 

そんな加賀美がもし、遂にカブトに変身したら。そして、13年越しに、「弟」を騙るワームと対峙する。あの時カブトに頼るしかなかった男が、カブト自身になったとしたら。そのアプローチは、非常に面白いし、とても『ジオウ』的だと思うんですね。『ジオウ』は、歴代ライダーの物語を偽史に放り込んだり、更には本編の設定をなぞるだけでなく大胆に終わらせてきたりしてきた。そういう攻め方を観ているので、加賀美のカブト変身もあり得るのかなあ、と。

 

 

ん~、まだ色々語り足りないけど、もう気付いたら5,000字超えてました・・・。ツクヨミの兄が仮にスウォルツだったら「異能の妹と兄」という構造はまさに『カブト』だとか、毛利脚本お馴染みの魔王ムーブを発動させて従者にパンチホッパーを処理させてニヤリと微笑むソウゴだとか、今回も見所が多かったですね。

 

といったところで、次回、「2019: カブトにえらばれしもの」。高速のヴィジョン、見逃すな!ついてこれるなら・・・。