ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

なぜジョジョのアニメを観るとこんなにも心が洗われるのだろう

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アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』が、とにかく毎週楽しみである。もちろん、数多のファンと同様に私も、原作はセリフを覚えるほどに読み込んでいる。このスタンドにはどうやって勝つのか、誰がどこで命を落とすのか、次はどんなスタンド使いが攻めてくるのか。全部分かっているのに、実際にアニメを観るとどうしようもなく心がざわつき、心臓の脈打ちを実感し、手に汗を握り、涙が出てくる。端的に、素晴らしいクオリティだと感じている。

 

Coda/Fighting Gold

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ジョジョのアニメといえば、1部が再び(あえて「再び」と書きたい。円盤発売をいつまでも待ちますが構いませんね!)アニメ化されると知った時は、非常に驚いたものだ。懐かしい。あの頃はまだ結婚もしていなかった。大学生の頃、友人と「4部がアニメ化したら絶対面白いよね。毎週敵スタンド使いが変わるし、レギュラーキャラは増えていくし。お洒落なOPとか付けちゃってさ。杜王町は連続アニメに向いた設定だよね!」と語り合ったものだが、あれよあれよとその4部も最高の形で実現し、遂には5部に到達した。スタッフ陣による4部最終回オーディオコメンタリーがYouTubeで公開された際、何度も繰り返し聴いたのだが、「しばらくは(制作の)ペースを落として・・・」「お休みを・・・」という発言に、アバッキオを失った直後に冷徹にその場を立ち去ろうとするブチャラティのごとく唇を噛み締めていた。

 

アニメ化された5部が面白いのは、とにかくシリーズ構成の功績が大きいと感じている。言わずもがなの小林靖子氏だ。オリジナルシーンの挿入については、同人ノリに片足突っ込んでいる印象も若干あるのでここでは触れずにおくが、次々と襲い来る敵スタント使いをどの程度のテンポで処理していくか、という点で、遂に完成形をみたのではないだろうか。

 

駆け足で合計2クールに圧縮した1・2部はともかく、3部はかなり律儀に前後編で敵スタンドを倒していく構成で、丁寧さに喜びはしたものの、スピード感に欠ける印象があった。続く4部では、エピソードを必要に応じて入れ替えたり、同時進行に読み替えたり、Cパートを使って次話の導入部を前倒しにしたりと、かなり実験的なアプローチが見られた。

 

これが今回の5部では、前述の通り、完成形として素晴らしい出来になっている。前後編構成の型にはめる訳でも、極端に足早で駆けるのでもない。時に大きく一話の中で前半部と後半部を分け、アクロバティックに物語を消化していく。ベイビィ・フェイスとホワイトアルバムを1.5話+1.5話の計3話で消化したのには舌を巻いたものだ。恐ろしくサクサク進んでいくのに、「巻き」を感じさせない濃厚さ。これだ!このテンポこそがジョジョなんだ!

 

さて、いつもに増して前置きが長くなったが、アニメジョジョを観ると心が洗われるという話をしたい。それは、展開を暗記している物語の運びに涙するとか、そんな当たり前のことではない。観終わった後に、平たく言えば「明日への活力」というか、「生きる底力」のようなものが、充電される感覚があるのだ。もちろんこれは、原作を読んでも同様の効果があるが、やはり視覚だけでなく聴覚までもを用い、声優の演技・スリリングな劇伴・グルーブ感すら覚えるアニメーションと併せて摂取すると、何倍にも膨れ上がって頭を殴ってくる。

 

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思うに、ジョジョにおけるキャラクターの描き方にあるのだろう。彼らは、主人公サイドも悪役も、基本的に迷わない。自分の信念がそれぞれ驚くほど強く、それを全うし、時にそのために命すら落とす。単に敵を倒すのではなく、信じる夢を信じる仲間と叶えるために敵を倒す。人を陥れるために行動するのではなく、自らのプライドと覚悟を貫くために人を陥れる。誰もが原則として迷わず、自分に嘘をつかず、信念に従って行動する。眩しいまでの、真実に向かおうとする意志。それに、どうしようもなく感銘を受けてしまうのだろう。ある種の理想像、生き方としての手本。

 

現実にはどうだろうか。会社のトップがやっていることが気に食わないからといって、部署で結託してクーデターを起こすなんて、そんなことは出来やしない。大なり小なり、自分に嘘をつき、誤魔化し、理由を見つけて正当化し、なんとかやり切ろうとする。ジョジョに出てくるキャラクターたちに比べて、なんと恥ずかしいことか。しかし、だからこそ、彼らの生き様に、そうは生きられないルサンチマンのようなものを刺激されるのか、心が洗われ、明日も頑張ろうと、月並みながら力強い活力に落ち着いていく。

 

もちろん、前向きに、信念に従って生きるキャラクターは、ドラマにも他のアニメにも沢山存在する。ただ、ジョジョが前述の効能に適当なのは、現実離れしている設定にある。これが例えば、私と同じサラリーマンを描いたドラマだったら、前向きな登場人物にグッとはくるものの、「彼も組織の中で苦労してるんだよな」「たまにコーヒー飲んで一息ついてるんだよな」と、余計な情報が脳内をかすめてしまうのだ。

 

その点、ジョジョは良い。私にスタンド能力はない。日本社会にも、私が知る限り、あの手のギャングはいない。5部に至っては更に、美麗なロケーションも手伝って、我々が生きる現代日本との心理的距離感がすごい。ブチャラティみたいな髪型をした人はそうそう見かけないし、小便を飲ませる人も、フォークを顔に突き立てる人も、拳銃と喋る人もいない。そんな、フィクショナルな世界だからこそ、そこにあるたったひとつのシンプルな「生き様」が、何よりもストレートに響くのだ。自分と距離感のある方が、むしろ自分に響く。現実離れしている方が、意外にも置換が容易い。フィクション作品との向き合い方は、実に面白い。

 

5部アニメも佳境だ。この後、あのキャラクターが登場し、レクイエムが発動し、彼が命を落とし、ヤツが本領を発揮する。物語は遂に最終決戦の地へ到達しようとしている。涙と生唾がダラダラと漏れることが必須な展開が続くのは分かっているが、覚悟を持って見極めたい。そして、彼らにまた、明日の活力をもらいたい。

 

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