先日Twitterにおいて初めてある本の存在を知り、即日でAmazonでポチり、それが昨日やっと自宅に届いた。娘を寝かしつけた後、ビール片手に読みふけったのは、『仮面ライダー・クウガ マニア白書』という一冊である。
「I‐NETファンクラブ連合軍」により2001年2月28日に発行された本書だが、見れば分かるように、非公式のファンブックである。スタッフリストを見てみると、往年の個人サイト管理者の名前がずらり。URLが直に載っているあたりに時代を感じてしまうが、そんなオタク諸先輩方の熱と愛がこもった一冊となっている。
『マニア白書』の名に恥じない本書は、全エピソードのあらすじやみどころ、登場人物紹介、グロンギ怪人の一覧やクウガ各フォームのデータ掲載など、一通りの情報が網羅されている。それもただデータが載っているだけでなく、アンオフィシャルだからこその、随所に見られるファン視点の感想が面白い。
そもそも、本書が2月28日に発行されているのが驚きである。直前の1月21日に『クウガ』が最終回を迎えているため、そこからわずか1ヶ月。もちろん、最終回までの内容をしっかり踏まえたものになっており、スタッフの方々の胆力が感じられる。
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論説のコーナーでは、『クウガ』という作品をマニアの視点で読み解く文章が続く。この点、私のような若い特撮オタク(といってもすでにアラサーだが・・・)とは視点が異なるのが面白い。
私はウルトラマンや仮面ライダーが国内での新作を休止していた世代で、後に、ウルトラマンなら『ティガ』が、仮面ライダーなら『クウガ』が、そのコンテンツとの実質的な出会いとなった。そんな状況もあり、平成ウルトラマンや平成仮面ライダーの「新しさ」に魅せられ、その後もずっとそれらを追っていくことになる。だから、このブログでもそうだが、『クウガ』の「新しさ」については、ついつい褒めちぎる方向性で感想を残してしまう。
それもあるからして、この『マニア白書』のような、諸先輩方の感想を読むのは面白い。本書の論説コーナーを読むと、『クウガ』の「新しさ」を褒め称えながらも、同時に廃されてしまった「従来のヒーロー性」に後ろ髪を引かれる様が克明に記されている。「クウガはここが良かった、あれも良かった、それも良かった。しかし、これが無くなった、あれも見られなかった、もっとこうして欲しかった」。私には持てない、昭和の仮面ライダーをリアルタイムで観ていたからこその視点は、読んでいて非常に新鮮である。「ファンとは、『あぁ、面白かった』では済まないところが因果だ。」(P136)という一文には、深く頷くところだ。
まあ結局は、時代は廻るのだ。私は昭和の仮面ライダーをリアルタイムで追えなかった世代だが、だからこそ、平成仮面ライダーはずっと視聴し続けてきた。だからこそ、一期の殺伐とした作風が今やあまり見られなくなったことを寂しく感じる時もあるし、逆に、二期の明朗な作風に安心感を覚える場面もある。先日も以下のような記事を書いたが、こうやって次の世代・次の世代に論調は受け継がれていくのだろう。
個人的な『マニア白書』の見所は、グロンギ語の解説コーナーだ。放送当時に個人サイトを中心にその解読が盛り上がったのは何となく記憶にあるが、本書には、1話から48話までのグロンギ語全翻訳が収録されている。
もちろん、あくまでファンによる翻訳なので、全てにおいて正確とは言えないものの、これは素晴らしい代物である。ファンにとっては垂涎モノの資料だ。今度から『クウガ』を観る際は確実に本書片手になるだろう。
他にも、『クウガ』における「はずれて良かったクウガ大予想」のコーナーや(一条さんの「宇宙刑事ギャバン化」など)、音楽展開のまとめ、ロケ地探訪記、クウガに関する世に出回った記事の記録、視聴者アンケートの掲載など、ファンブックとしての作り込みに余念がない。当時少年だった私には想像も及ばなかった、一条さんを男性ヒロインと捉えて熱をあげる女性ファンの声など、なるほど読み応えがある。
最後に、本書は現時点では相応の中古価格で入手可能なので、気軽に購入できるおススメの一冊である。随所に新世紀のあの頃の匂いを感じられて、懐かしいやら、私の世代にはむしろ斬新やら、楽しい一冊だ。『クウガ』、なんと力強く罪深い作品よ。