『仮面ライダージオウ』第7話は、ウィザード編の前編。『ウィザード』は2012年放送なので、実に6年前。懐かしいなあ。
当時の私はまだ独身で趣味にお金を注ぎまくることが許されていたので、ウィザードリングはほぼ全て集め、ボーイズトイのフィギュアシリーズ「WAP!」もコレクションしていた思い出。股関節の処理が例年よりグッと良くなって、スタイルが(当時としては)抜群のクオリティだったけど、オーズの組み換え・フォーゼのモジュール換装ときて「頭部が光る」というギミックは、ややインパクトが弱かったかな。んー、それにしても懐かしい。
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ということで、『仮面ライダージオウ』の感想を綴る「ZI-O signal」(ジオウシグナル)、今週もいってみましょう。
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『ジオウ』が描く「ウィザードらしさ」
初期設定の披露(ビルド編)、アナザーやレジェンド関連のフォーマット確認(エグゼイド編)、パターン破りの意気込みと拡張性の高さを見せたバラエティ回(フォーゼ&ファイズ編)と続いてきた『ジオウ』。続くウィザード編は、言うなれば「ドラマ回」だろうか。今回印象的だったのは、ソウゴやゲイツといったメインキャスト陣の他に、ゲストである芝居小屋メンバーのドラマに尺が割かれていたこと。ここのドラマをしっかり描いてくれたのが、実に『ウィザード』らしい。
『ウィザード』は、主人公である魔法使い=操真晴人=仮面ライダーウィザードが、人々の絶望を希望に変えていく物語。毎回登場するゲストキャラクターたちの半生が描かれ、怪人・ファントムがそれをあの手この手で絶望に突き落とそうとする。ファントムの目的は、人間を絶望させて新たなファントムを生むこと。ウィザードは、時に絶望に瀕した人物の深層世界にまで潜り込み、内なるファントムを退治する。(書いていて思ったけど、『エグゼイド』におけるバグスターウイルス関連と構造的に近いのかもしれない)
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だからこそ、『ウィザード』において重要なのは、描かれるゲストキャラクターの半生。夢を持つ人や、誰かのために懸命に生きる人など、そんな人物たちが「希望」に向かっている様子が描かれるからこそ、ファントムにしてやられた際の「絶望」が際立つ。『ジオウ』の7話は、話運びがまさにこのウィザードの文法を踏襲していて、6年も愛と献身を貫いてきた男が一気に絶望に落とされる様子をじっくりと描いてくれた。こういう要素の扱い方は、原典を知る者として嬉しい限りですね。
「プロポーズされた日なので、よく覚えています」で一瞬の希望を抱かせつつ、ミスリードで絶望まで一直線に持っていく話運びは、実に意地が悪い。しかも、エンゲージリングがその絶望の象徴なのも、『ウィザード』本編との対比として非常に皮肉が効いている。
また、タイムジャッカー達は過去と未来を行き来できるので、あの芝居小屋の人間模様がどう転がるのか事前に知れる立場にある。つまり、愛と憎の三角関係が成立すると分かっていながら、芝居小屋を救う術(=アナザーウィザードの力)を与えたことになる。もはや本家のファントムよりやり方がきつい・・・。
などなど、『ウィザード』ならではの「ゲストキャラクターの希望と絶望を描くドラマ」と、『ジオウ』特有の「タイムトラベル・タイムジャッカー・アナザーライダーの設定」が綺麗に融合していて、感心しっ放しの正味30分でした。実にウィザードらしい。天晴れ。
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『ウィザード』における恋愛
これは解釈がある程度分かれる話、と前置いておくけども、私はウィザード小説版がものすごく大好きなんですよね。どこの部分の「解釈」かというと、晴人とコヨミがLOVEなのかLIKEなのか、という点。私は、『ウィザード』の肝はこのふたりの共依存にまで踏み込んだLIKEだと感じていて、彼らが恋愛関係に「至らなかった」ことに拍手したクチなんですよね。
だからこそ、『戦国MOVIE大合戦』のウィザード編が素晴らしかった、という話でもありまして。
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よって、今回の『ジオウ』でも早瀬が実はお嬢さんに対して抱いていたのは恋愛感情ではなく、「ただ笑っていて欲しい」的な屈折した献身欲だった・・・ というオチを想像してしまうのだけど、さすがに前後編2話でそこまではやり切れないかなあ。分かりやすく、といっては何だが、確かにここは素直に恋愛感情で展開した方が「絶望」の扱い方として分かりやすい。
つまり何が言いたいかというと、ウィザード編で「恋愛感情」という要素を持ってきたのが、これまた実にウィザードらしいと感じる訳ですよ。
「誰かに憧れる」「誰かを心の支えにする」「誰かに笑っていて欲しい」という希望に分類される感情のひとつに「恋愛感情」も数えられると思うのだけど、だからこそ、一気に反転して絶望になってしまう怖さがある。現実でも、「恋愛感情」の結果で人が人を殺めたりする。前回のアナザーファイズの彼も、恋愛か否か際どいラインでの献身っぷりだったけど。
などなど、『ウィザード』は「人のドラマ」を描いていたからこそ、色んなことを考えてしまいますね。
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ゲイツの行動原理
先週あたりから実はじわっと気になっていたのが、ゲイツくんの行動原理。彼の第一目的は「ソウゴをオーマジオウにしないこと」で、そのためにはソウゴ殺害も止む無しというのは度々描かれてきたけど、じゃあ彼がアナザーライダーを躍起になって倒そうとするのはどういう意図なのかな、と。
まあ、アナザーライダーは未来の王になるべくタイムジャッカーに生み出された存在なので、ふらっと人を襲うようなやつを野放しにして王にする訳にはいかない、というのは分かる。ゲイツくんが倒したいのは、「オーマジオウ」でもあり、「無慈悲な魔王」。アナザーライダーたちは、放っておくとその後者になってしまうかもしれない。
だから、一時的にジオウと協力してでも、アナザーライダーを倒す意味はある。とはいえ、今回のように躍起になってアナザー討伐に励むのは、彼の第一目的を考えると若干の違和感もあり・・・。
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思うに、ゲイツやツクヨミは、時の運行管理的な価値観を持っているのかなあ。未来の世界でウォズと何度か手合わせしていたっぽい会話もあったが、概念でいけばタイムパトロール的な、そういう組織の一員、というか。それが、未来でいうところの警察ポジションなのかもしれない。いや、彼はもうちょっと兵士っぽいニュアンスなので、「時空取締隊」みたいな感じかな。管理というより、実働部隊。ツクヨミは婦警さんというか補佐&分析官。(そういえばウォズのファッションも隊服くずれっぽいかも・・・)
なので、「時の運行を乱す」行為そのものが、彼にとっての悪。アナザーライダーは、存在そのものが悪という考え方。
しかしそうなると、オーマジオウという「通常の歴史の中で生まれた存在」の若い頃を殺そうとする行為は、彼らの信条に反する行為とも言える。警官が銃を持ち出してテロリストの親玉を個人的に狙いに行ってしまう感じ。あれ、そうなると、ジクウドライバーって未来の世界では銃のような支給武装品だったりして。
・・・などなど、ゲイツくんの過去が今のところほとんど描かれていないので、彼がドライブやゴーストのライドウォッチを持っていることも含めて、色々と妄想してしまうんですよね。いつか描かれるであろう彼の過去が待ち遠しい。
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「新番組が始まる」という枠組み
さて、一度は触れておくべきか、というのも、白倉伸一郎プロデューサーのTwitterでのツイート。
遅まきながら。
— 白倉伸一郎 (@cron204) October 5, 2018
ジオウにおいては、「もしタイムジャッカーが介入してなかったら」という想定はありえません。
ビルドを例に取るなら、先週までのエグゼイドとはまるで別設定のビルドがしれっと始まったのは、タイムジャッカーがエグゼイドの歴史をなくしてしまったからである…みたいなことです。
某ジオウは、「過去の番組の時系列の矛盾」を解決しようとしているわけではないんですけどね。
— 白倉伸一郎 (@cron204) October 12, 2018
「過去の番組が、前までの番組があたかもなかったかのようにしれっと始まる矛盾」を解決しようとしている部分はありますが。
どこまで『ジオウ』本編にこれらの考えが持ち込まれるかは分かりませんが、つまり、「毎年新番組が始まる」(=前年までのヒーローの活躍が終幕を迎える)という究極の大人の理屈をお話に盛り込むとなると、面白いことになるのかもしれませんね。「ヒーローが代替わりするのは、タイムジャッカーが『番組』を終わらせてきたから」、という。「過去のライダーを活躍させるための装置なのでそれ自体に物語は要らない」という『ディケイド』にも通じる超絶メッタメタな考え方ですが、果たして。
あ、メタと言えば、補完計画も相変わらずの相変わらずで。素直に監督に直訴に行っちゃうあたり、ソウゴの人の良さというか、ちょっとおバカな可愛さがあって良かったです。
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次回、仮面ライダービースト登場!
ビルドの世界では、アナザービルドの発生によってクローズの力も消失した。思うに、クローズは戦兎が創ったライダーでもあったので、彼が葛城巧という存在に放り込まれるのなら、クローズが消えるのは必然だったのかもしれない。
一方、来週はおそらく偽史においてビーストが登場。元来ビーストは、ウィザードの出生とは全く関わっておらず、そのテクノロジーの違いこそが『ウィザード』終盤でも展開に活かされたライダー。白い魔法使いに対するカウンターに成り得る存在、という美味しいポジションでしたね。
なので、アナザーウィザードが出現して歴史が変わっても、ビーストは普通に活躍していたのかもしれない。まあ、すでにビーストライドウォッチが生成されてるっぽいのは気になりますが。もしかして、仁藤は2018年に出てくるけどビーストは2012年とか? うーむ。
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ジオウ第7話終了。アナザーウィザード如何でしたでしょうか。前にお話したドライバー部が骨になっていてシャバドゥビタッチしたく無いですねwアナザーライダーの特徴でもある「口」もちゃんとシールドの中にあります。デザインは篠原さんです。
— 山口純一 (@junichi_yama) October 14, 2018
次回、仮面ライダービースト登場!お見逃しなくです✨ pic.twitter.com/1e3aj9k6U8
あと、アナザーウィザードのデザインも素晴らしかったですね。ベルトの手が骨になっているイメージからか、全身に骸骨の意匠が散りばめられていて。ウィザードの「顔が指輪」というデザインを発展させて、後頭部にリングが生えているのも面白い。毎回ニヤニヤさせてくれるなあ。