数えてみたら、この『アントマン&ワスプ』でMCUは通算20作目に到達(映画作品のみカウント)。思えば遠くへきたもんだ・・・。
直前の『インフィニティ・ウォー』がクロスオーバーを主軸に据えたドッカンドッカンのお祭り映画だったのに対し、『アントマン&ワスプ』は前作『アントマン』のテイストそのままにコメディタッチに仕上がっており、シリーズ全体の箸休め的なポジションに収まっている。こういうシリーズ構成というか、バランスの取り方は流石ですよね。
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軽く前作のおさらいをしておくと、何より『アントマン』がMCUのフェイズ2に属しているのが好きなポイントですね。
『アイアンマン3』で幕を開けたフェイズ2は、『ウィンター・ソルジャー』でシールド崩壊という転換期を迎え、『エイジ・オブ・ウルトロン』という遺恨を残すクライマックスへ向かっていく。で、その直後にフェイズ2の最終作として公開されたのが『アントマン』。
爽快さから針を振り戻したヒーローの是非や功罪、といった重い展開に進んでいったシリーズが、ここにきて「(娘にとっての)父親はヒーロー」という至極ミニマムな語り口を打ち出す。アントマンという極小なヒーローは、MCUにおけるテーマの範囲もミニマム、という位置づけ。
でも、その位置づけこそが『アントマン』の強み。『ウィンター・ソルジャー』で国際的な信用を失い、『エイジ・オブ・ウルトロン』で多くの犠牲者を出してしまったアベンジャーズに対して、シリーズを追ってきた側もヒーローに対する絶対的な憧れや信頼に影を感じ始める。そんなタイミングで、明るくおバカなアントマンが娘のために奮闘する。「ああ、ヒーローってこういう形もあるよね」と、ホッと一息つきたくなる。そんなバランス感覚が素晴らしいと感じている。
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今作『アントマン&ワスプ』も同様の効果を期待してか、『インフィニティ・ウォー』で劇的かつショッキングなエンディングを迎えたMCUフェイズ3の「箸休め」ポジションを担っている。構造も前作と同じで、主題も、地理的な展開範囲も、とってもミニマム。小さく、それでいて焦点を絞った分かりやすい物語として成立している。
ヴィランの目的も良い意味でスケールが小さく、同情しやすい塩梅に設定されており、どちらかというと『エージェント・オブ・シールド』に出てくる単発エピソードのゲストのよう。
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『アントマン』の肝は突き詰めれば「小さくなれる」の一点だが、それを「大きくなれる」から「物の大きさを自由に変えられる」にまで応用し、前作より枚数の多いカードを切っているのが印象的だ。前作ではクライマックスの戦いでワンポイントとして用いられたサイズアップのギミックは、『シビル・ウォー』でジャイアントマンを演出し、『アントマン&ワスプ』では画面を彩る数々のアイデアとして活かされている。
ビルを小さくしてそのまま持ち歩くのは痛快だし(基礎工事に突っ込んではいけない)、巨大化させたアリを研究開発のアシスタントとして使役するのも面白い。
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総じて、前作が持つ「ユニバースの箸休めポジション」をしっかり踏襲しながら、「父親と娘というテーマ」も再度描き、サイズチェンジのギミックはバリエーション豊かに発展させるという、理想的な続編に仕上がっている。
主人公・スコットと娘のキャシーだけでなく、ピム博士とホープ、ビル博士とゴースト(エイヴァ)の疑似父娘と、親子関係の多重構造で魅せるアプローチも前作同様に隙が無い。ストイックなホープと抜けてるけどなんだかんだ頼りになるスコットのコンビも、観ていて微笑ましい。姐さん女房的な。
反面、味わいが前作と同じ、やはりどうしてもユニバースが向かっている壮大なスケールに見劣りを感じることから、期待値を飛び超えてはこないのも正直なところである。また、ヒーロー物における家族再生のプロットもやり尽された感があり、期待値を十二分に満たしてはくれるものの、大きくは超えてこないかな、と。
「ミニマムなスケールが良い」と書いておきながら、そのスケールの小ささに物足りなさを感じる。なんとも贅沢でワガママな観客だ・・・。
先日の『インクレディブル・ファミリー』の感想でも書いたが、優秀なスタジオが展開する作品は、どうしてもハードルが上がってしまう。ピクサーも、MCUも、「最低限のクオリティ」があまりにも保証されすぎていて、本来不必要な「ない物ねだり」に陥ってしまったり。重ね重ね、贅沢な話である。
さて、MCU次作の『キャプテン・マーベル』は、シールドの歴史と絡めながらサノス妥当への布石が打たれる作品になりそうなので、『アベンジャーズ4』に向けて見逃せない一作である。楽しみに待ちたい。
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