率直にシリーズ最高傑作と言って良いのかもしれない。
それは、もはや笑うしかない怒涛の生身アクションもそうなんだけど、シリーズ初の監督続投作として、どこか過去5作をまとめ上げる気概を感じるからだ。
作品のテーマだけでなく、主にイーサンのキャラクター造形が巧い。
『ミッション:インポッシブル / フォールアウト』は、前作『ローグネイション』の直系の続編。
これまでもシリーズを通して登場したキャラクターは沢山いたが、今回は主人公サイドから悪役に至るまでその多くが続投。第三勢力と紅一点を兼任するイルサ(レベッカ・ファーガソン)も引き続き登場し、前述の通り監督も同じ。
『ローグネイション』での出来事が直接絡んでくるので、時間に余裕のある人は復習してからの方が良いかも。
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私はこの『ローグネイション』がとにかく好きで、それは、イーサンという凄腕の諜報員の悲哀や熱意を、同じく諜報員であるイルサと対比させるアプローチで描いたから。
組織の都合でトカゲの尾のように切り捨てられる立場にあったイルサを、愛する人や過去を捨ててまで今なお諜報活動に身を捧げるイーサンが救う。
「なんでそこまでして?」「いやいや、まだまだやりますよ」といった感じのイーサンのあのニカッとした笑顔が、そのまま、アクションスターとして今なお進化し続けるトム・クルーズ自身のプライドの表明にも感じられる。
そういった、トムのセルフプロデュースという側面も加味して、『ローグネイション』は面白かった。予告で印象的だった飛行機しがみつきを最序盤で披露するあたり、ハングリーさがすごい。
今作『フォールアウト』はそこから一歩進めるように、「イーサンというキャラクターの強さと弱さ」を描く。
人が好いからこそ失敗し危機も招くが、人が好いからこそ全てを救おうとする。少年のような真っすぐさとスパイとしてのクレバーさが絶妙に同居した世紀の「いいヤツ」。
「少数と多数のどちらを犠牲に~」というお題なら、超絶な根気とパワーとテクニックで、少数も多数も全部救ってみせる。そんなスーパー欲張り諜報員は、もはやトム・クルーズでないと演じられないのだろう。彼自身が誰よりも、彼の魅力とそれが映える舞台を把握している。
『ローグネイション』で、イーサンが諜報員に打ち込む姿をイルサと対比させる形で描き直し、『フォールアウト』では彼自身の精神性や人間味の部分に踏み込む。
しかも、それをあのキャラクターを再登場させながら展開することで、シリーズ内での「イーサンというキャラクターの解釈違い」にまでアンサーを出そうとしている。(それぞれ監督が違うのだからイーサン解釈にブレがあるのはある程度しょうがないのだけど)
トム・クルーズとクリストファー・マッカリー監督がこの『ミッション:インポッシブル』の過去5作をどのように捉えているか。どこを反省し、どこを買っているか。
それが如実に反映されたのが『フォールアウト』という気がしてならない。
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さて、アクション面に関しては、もう「すごい!」としか言いようがない。
近接格闘シーンでは派手に壁を破壊しながら実際に「当てる」アクションが(良い意味で)痛々しいし、バイクシーンは逆走そのものを絵として美しく成立させるのが天才的だ。カーアクションにおける方向転換も神がかっていたし、街中を疾走する一連のシーンも高低差や障害物を上手く使ったアクションゲーム的な見所があった。
そして何より、クライマックスのヘリ操縦シーンはもはや常軌を逸している。一人で「撮影」「操縦」「演技」をこなしたトム・クルーズだが、いよいよ観客がドン引くレベルにまで踏み込んできた。
アトロク(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」)で語られていたが、ヘリのシーンは内部試写後にトムと監督が「あまり面白くないのでは?」とガッカリしたとのこと。完全に撮る側の感覚が麻痺している。
普通なら(?)アクション映画好きとして「いいぞもっとやれ」と言いたいところだが、もう『ミッション:インポッシブル』に関しては「そろそろちょっと加減しても良いんじゃないかな・・・」と及び腰になってしまうほど。
「なんでもCGでできる」「なんでもグリーンバックで合成できる」時代とはいえ、やはり、生身でやるからこその効果はいつまでも強い。映像表現として、というより、一種のアトラクション的な疑似体感だ。ミラーニューロン様々である。
総じて、「イーサンというキャラクター造形からシリーズを俯瞰=総括」「過去最高難易度の生身アクション」の2つが見事に合体しているので、冒頭の「シリーズ最高傑作では」という感想に落ち着いている。
これを超えるには、作品そのもののアプローチをガラッと変える必要があるだろう。
相変わらずの騙し・騙されな展開、軽度のスティングが頻出する構成は、とにかく観ていて飽きない。
興行初動は前作を上回ったらしいが、この夏最高のエンタメ娯楽作として、多くの人に観て欲しい一作である。
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