『クウガ』からリアルタイムで追ってきた平成仮面ライダーシリーズも、ついに20作目。
ついつい「20年!」と書きたくなるけれど、『ディケイド』が半年だったので19.5年が正確なカウント。とはいえ、記念すべき20作目が最後の平成仮面ライダーというのは、メモリアルな感じがして良いですね。
ということで、放送開始前の今だからこそ書ける『ジオウ』への感想(期待や予想)を、記録がてらまとめておこうかと。放送が終わった頃に読み返して「うわー!こんなこと書いてるよ~」と過去の自分をあざ笑うためのやつですね。
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実質『ディケイド2』をやる意味
そもそも「平成仮面ライダー」というのは、それ以前の作品群と呼び分けるための便宜上の呼称だったと記憶しているのだが、いつの間にか立派な公式の呼び名になっていた。
まあ、『平成ライダー 対 昭和ライダー』なんてトンデモ作品が出てきた辺りで今更な話なのだが、「いつ作られたか」でチーム分けして対立するのも本当に常軌を逸しているよな、と。
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たまたま昨日読み返していた『語ろう!』シリーズ1冊目で語られていた田崎竜太監督の表現を引用すると、東映のヒーローは、駄菓子みたいな作風なんだと。
円谷のウルトラマンが子供向けに色々と添加物など気をまわして慎重に提供されたお菓子だとすれば、東映のはもっとざっくばらんで、良い意味で節操なく市場に繰り出される駄菓子。(念のため、これはどちらが良いという話ではなく、性格の違いの話)
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『クウガ』で仮面ライダーと刑事のイケメンコンビの評判が良かったから、『アギト』ではイケメン3人体制にしよう。ライダー3人がウケたから、次は13人にしよう。そんな感じで、ウケたことを節操なく取り込んで反映して、ガツガツと提供していく。(ある意味これの集大成が『カブト』かもしれない)
それは白倉伸一郎プロデューサーが得意とするスタンスとも一致するところで、結果が出たものはそれを継続・引用し、炎上商法と叫ばれようが話題性を獲りにいく。
そんな土壌の上で、毎年様々な作風やモチーフを模索し続けて発展していったのが、平成仮面ライダーなんだよな、と。
「平成仮面ライダーの転換期」に数えられる作品を私の感覚で挙げるならば、まずは『龍騎』、そして『電王』、続いて『ディケイド』。もうひとつ挙げるなら『ダブル』だろうか。
リアル志向で組まれた『クウガ』『アギト』を更なるファンタジーテイストでぶっ壊した『龍騎』は、同シリーズの重要なキーワードである「多様性」を体現したような作品である。
後の『電王』と、ふたつ飛ばして『ダブル』は、主に2期以降の作風を決定付けるパワーを持っていた。両作品における、コメディとシリアスの配分、SF設定の濃度や魅せ方、ガジェットや玩具展開の方法論は、現行の『ビルド』まで脈々と受け継がれている。
一方で『ディケイド』は、それまで独立していた各作品を強引に繋げてみせた怪作で、ただ連なっていたからシリーズと呼ばれていた平成仮面ライダーをひとつのコンテンツとして囲う役割を担っていた。
もちろん、『ディケイド』の破壊が『電王』の破天荒さや時間移動の概念が起爆剤になって成立していたことは言うまでもない。
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語ればいくらでも切り口はあるが、『ジオウ』と改めて向き合ってみると、大きなトピックとして挙げられるのはこの2つではないだろうか。
「ウケたものを容赦なく提供するハングリー精神」と、「『ディケイド』と『電王』が肥大化させてきたシリーズの体質」。この2つを合体させると、「平成仮面ライダーシリーズ20作記念」としての『ジオウ』の輪郭が見えてくるような気がするのだ。
もはや当たり前のようにアニバーサリー作品として認知された『ジオウ』だが、私は、普通に単体の作品が平成の最後を締めくくる可能性も予想していた。『ニンニンジャー』のように、冠は記念作として、過去のレジェンドなヒーローがたまに出てくるといった塩梅。
しかし、そこはやはり平成仮面ライダー。そして、やはり白倉プロデューサー。「ウケたものを容赦なく提供するハングリー精神」が、20という切りの良い数字を見逃す訳がなかった。商業的にも、歴史的にも、ここでやらずしてどこでやる、というスタンスだろう。
しかし、正直、『ジオウ』にあまり目新しい設定はない。
「歴代ライダーの力を使う」は言うまでもなくディケイドだし、「将来魔王になる運命を背負っている」という設定も、同じくディケイド(=門矢士)が辿ってきた物語に似通っている。タイムトラベル要素はもちろんのように電王だし、レジェンドライダーのアーマーを着込んで戦うのも2期ライダーがアプローチを変えてこれまで散々やってきたことだ。(ガンバライジングを含めて)
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白倉プロデューサーはこれまで方々で『電王』について語っているが、「タイムトラベルした先の時代に当時のライダーがいる」という発想は、それこそ2007年当時にはあった構想だろう。2012年の『スーパーヒーロー大戦』(同氏がプロデューサーとして参加)でも、放送当時の時代にデンライナーで向かうとそこにアカレンジャーが・・・ というプロットが採用されている。
しかしそんなことは制作陣は百も承知な訳で、私が『ジオウ』に期待したいポイントは、やはり『ディケイド』との差別化だ。
「実質ディケイド2」である『ジオウ』が、どのように過去のライダーと関り、どのようにシリーズ=平成仮面ライダーというコンテンツを(メタな視点も含めて)総括していくのか。
『ディケイド』との毛色の違いが至る所に用意されているとは思うが、それを発見していく視聴スタイルが求められるのかもしれない。
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平成仮面ライダーにおけるクロスオーバーと「解釈戦争」
前述の『語ろう!』本には、宇多丸氏が『オールライダー 対 大ショッカー』に憤る様子が収録されている。
2012年の『アベンジャーズ』を例に挙げながら、もっとクロスオーバーの醍醐味(各キャラクターが共演するからこその魅せ方やプロットの組み方)を追求できるはずだ、「共演して、並び立って、お祭りだからそれでいいんだ」では、よくないんだ、と。
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そんな『ディケイド』から10年が経過した今、平成仮面ライダーにおけるクロスオーバーという概念は、ひとつの文脈として完全に成立している。
それは、「MOVIE大戦」という新旧ヒーローの共演劇が恒例化し、果てには積極的に当時のキャストを出演させる『平成ジェネレーションズ』にまで結実したことが何よりの証左である。
この『平成ジェネレーションズ』というシリーズの肝は、ただ過去作のキャストを出演させるだけでなく、それぞれの世界観や設定を細かに引用・融合しながら、それこそ『アベンジャーズ』のような「クロスオーバーの面白さ」を提示できている部分にこそある。並べるだけでなく、しっかりと交わらせることに成功しているのだ。
もちろん、過去の「MOVIE大戦」において新旧ライダーが継続して繋がってきた積み重ねの成果であることは、言わずもがなである。
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『オールライダー 対 大ショッカー』から、約10年。整合性をかなぐり捨てて一列に並んだ仮面ライダーたちに複雑な盛り上がりを覚えたあの体験から、約10年。
冬映画枠の変遷を中心に、平成仮面ライダーシリーズはクロスオーバーという土壌を確かに形成してきた。「ただ出てくるだけ」「ただ戦うだけ」から、「なぜ出るのか」「どう戦うのか」への変化。ずっとシリーズを追ってきたファンとしては、嬉しい変化である。
そして、その総決算としての位置づけを求められるのが、『ジオウ』だ。
「当時へ行き、その仮面ライダーと関わる」という物語に挑む以上、ここまで積み上がってきたクロスオーバーの土壌に真っ向に取り組むことは避けられない。それがどんな化学反応を起こすのか、期待もありながら、不安も大きいのが本音である。
オタクのうるさ語りとして読み流して欲しいのだが、例えば、私は『平成ジェネレーションズFINAL』におけるオーズ関連のストーリーを、100%喜んで受け入れてはいない。主演・渡部秀氏の意向が反映されたアンク復活劇は、良くも悪くも二次創作的である。
もし、小林靖子脚本なら、武部直美プロデューサーなら、あそこまで湿度の高い「幸(さち)」あふれる構成にはならなかったのではないか。そんな、クソ面倒な思考が脳内を駆け巡ってしまう。
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Twitter界隈ではしばしば「解釈」という表現が用いられるが、 『ジオウ』が1年間かけて過去19作の「当時」と関わっていくのであれば、それはオタク的には「解釈の戦い」になるだろう。我々視聴者の頭の中にある「当時」と、『ジオウ』制作陣が捉える該当仮面ライダーの「当時」。物語の背景やテーマの咀嚼。歓喜と悲嘆が入り混じる、血を血で洗う「解釈戦争」だ。
そう考えると、物語的な「解釈」への踏み込みを半ば放棄し、要素・設定・テーマ性だけを抽出して作り変えた『ディケイド』の「リ・イマジネーション」という取り組みは、程よい和平の道だったのかもしれない。
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アナザーライダーが描く「仮面ライダー」
『ジオウ』に登場する怪人は「アナザーライダー」。本来の変身者とは異なる存在が仮面ライダーに “なりそこなった” という設定らしい。
早速公開されている「アナザービルド」は、カラーリングや各部位の造形でビルドを踏襲しながら、有機的に醜くデザインされている。まさに「なりそこないのビルド」だ。
白倉プロデューサーはこれまで、仮面ライダーの原則をとても大事にしてきた。
それは、「ライダーと敵の力の根元が同じ」という初代・1号が打ち建てた様式と、それに関連した「善悪は単純な二元論ではない」というアプローチだ。正義と悪は常にこちら側とあちら側にあるのではなく、ふとしたタイミングでそれはひっくり返るし、境は曖昧である、という主張。
敵と同種であるという展開は『アギト』や『ファイズ』が分かりやすく、正義と悪の境界線の曖昧さは『龍騎』が1年間かけて描いた。『ディケイド』や、『仮面ライダー THE FIRST』『キカイダーREBOOT』『仮面ライダーアマゾンズ』など、常に前述のアプローチを孕んだ作品を送り出してきた。
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『ジオウ』における「アナザーライダー」という設定は、まさにその最新版と言える。
『ウィザード』の特別編で語られた「クロス・オブ・ファイア」の概念(仮面ライダーとは怪人になり損なった存在)にも非常に近く、「何が仮面ライダーたらしめるのか」という命題は、各作品が常に挑んできたものでもある。
最新作『ビルド』においても、兵器として一般市民から忌み嫌われる「仮面ライダー」は何をもってヒーローと定義できるのか、というプロットが重要な意味を持つ。
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「仮面ライダーになりそこなった」という意味は、おそらく、単に適合手術を受けていないとか、ハザードレベルが足りないとか、オルフェノクじゃない・特異点じゃない・ファンガイアとのハーフじゃない、といった「設定」を指すのではないだろう。
それよりも、「命の大切さを思う信念」や「愛と平和のために戦う覚悟」、「夢を守る決意」「仲間との絆」「自己を律する強さ」といった辺りを意味するのではないだろうか。
つまりは、「アナザーライダー」という怪人の設定を導入に、それに反証させる形で該当の仮面ライダーが持つ信条や作品テーマを描くような、そんな作りなのではないか、と考えられる。
「反証されるために生み出された怪人」というのも、なんとも悲劇の存在だが。
では、他でもないジオウ自身は、何をもって「仮面ライダー」なのか。未来に君臨する魔王のジオウと、“どちらがアナザーなのか”。自身の存在の定義を模索しながら、歴代ライダーと関わっていく18歳は、「次の王」になれるのか。
そんな物語が観られそうで、非常に楽しみである。
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兎にも角にも。
約20年間、半生と共にあったシリーズが、その集大成たる作品を打ち出す。これが楽しみでない訳がない。色々と思うところはあるものの、まずはなにより、「楽しめる」ことを願いたい。
『仮面ライダージオウ』は、2018年9月2日(日)、放送スタート。
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