ジゴワットレポート

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感想『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』 戦兎の今と巧の過去が交差する「桐生戦兎の物語」

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今年もライダー&戦隊夏映画の時期がやってまいりました。アギトとガオレンジャーの頃から映画館で観ているので、この恒例行事も約20年。うーん、歳を取った・・・。

 

劇場版 仮面ライダービルド Be The One オリジナルサウンドトラック

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ざっくりとTV本編『仮面ライダービルド』の感想を述べておくと、非常に「平成ライダー」を意識した作品だな、というのが正直なところ。

もちろんシリーズ最新作なので、当たり前といえば当たり前なのだけど。

 

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秋の放送開始から1クール目は、戦兎の出自を核としたミステリー&群像劇で話を転がしていく。

ここは非常に「平成ライダーらしい」展開で、謎の怪人と謎の組織、そして主人公そのものの謎が複雑に絡み合って、騙し・騙されの展開に発展しながらメイン2人の友情が創られていく、という大筋。

 

続く2クール目は、対象的に「平成ライダーらしくない」展開に。

つまりは戦争編で、これまでの仮面ライダーが踏み込んでこなかったポイントを正面突破していたのが印象的。ただ、「らしくない」というのは戦争を具体的に描く部分の話で、それを舞台設定にライダー同士の戦いを演出したり、仮面ライダー本人が自らの正義に悩むストーリーなどは、とっても「らしい」創りだったと感じている。

 

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そして3クール目以降は、言うなればエボルト編。

これまでの戦いの元凶だったエボルトに、総勢4人の仮面ライダーが愛と平和のために立ち向かっていく。男たちは傷つきながらも、互いの関係性と挟持に美学を見出しながら、膨らんでいくエボルトの野望を打倒する。

 

俯瞰してみると、「これまでの平成ライダー」が約20年で築いてきたものを吟味しながら、ある部分はそのまま継承し、ある部分は見せ方を変え、ある部分は反証を起こすように、様々な応用を繰り返してきたのが『ビルド』の物語なのかな、という印象がある。

 

新しい物語をイチから創るというより、シリーズの最新作として、「平成ライダー」のフォロワーとしての性格が強いのかもしれない。

軍事兵器としてのライダーシステムや、主人公自身が悪魔の科学者だった背景など、新鮮味がありながらどこか既視感もある、そんな作品に感じている。

 

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そんな「仮面ライダーモチーフな仮面ライダー」とも言えてしまう『ビルド』の、待望の単独劇場版が、『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』である。

時系列的には本編45話と46話の間とのことで、最終回後を描いた前年『エグゼイド』とは異なるアプローチ。完全に本編に組み込まれる形となった。(なお、これを観ていないと46話が理解できない、ということは無いので、鑑賞タイミングの前後はほぼ問題なしと思われる)

 

事前の予告通り、主人公である戦兎と相棒の万丈のフォーカスした物語で、非常に『ビルド』らしく仕上がっていた。

 

監督は『平成ジェネレーションズFINAL』を手がけられた上堀内監督ということで、氏の持ち味であるCGを大胆に使った縦横無尽なカメラワークや、ハッタリの効いた演出など、色んな意味で「面白い絵」が多かった。

北九州市全面協力のロケも見ごたえがあったが、「設定的には東都なのに写っているのは北九州・・・!?」という脳の認識がバグりかける余計な一幕も。

 

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※以下、本編のネタバレがあります。

 

 

率直な感想を述べると、面白いと思いつつも、ガツンと頭を殴ってくれる良さはあまり感じられなかった。

 

第一に、「戦兎と万丈のどちらかがピンチになってそれをもう片方が必死で助けて友情を確認し合う」というプロットは、本編で幾度となく描かれてきたもので、やはり既視感が拭えない。

もちろん、『ビルド』の核は、戦兎と万丈の関係性にある。創られた空っぽの人間・桐生戦兎のアイデンティティ形成において、万丈は欠かせない。そんな万丈も、戦兎に明日を創ってくれた恩義を感じている。「互いに互いが必要」という、ブロマンスにも片足踏み込むかのような濃い友情物語が、間違いなく『ビルド』の真髄だ。

 

しかしだからこそ、それがTVでも映画でもこう何度も描かれてしまうと、やはりプレミア感は損なわれるし、どうしても既視感が生まれてしまう。

 

映画の冒頭では戦兎と万丈が共に戦うシーンもなく、もっと言えば会うシーンもなく、この映画において戦兎と万丈の初対面はすでに万丈が敵の手に落ちたシーンから始まる。

これでは、ラストの「やっと戻った2人の関係性」も見え方として弱い。やはり、展開的に一度沈むなら、沈む前の状態を先に見たいものだ。

 

また、万丈が敵の手に落ちるのも、単なるブラッド族の洗脳というから勿体ない。

能力による洗脳だと、それは単に敵の罠以上のものではなく、戦兎と万丈が決定的に対立する条件としては弱い。せめて「ブラッド族の遺伝子によって人間じゃない自己に葛藤して敵側につく」とか、そういうアプローチで互いに正気のまま対立してくれれば、関係性回復のカタルシスも倍増しただろう。

もちろん、そんな万丈の葛藤もTV本編で結構しっかりやっているので、それはそれとして既視感満載なのだが。

 

総じて、メインプロットである「戦兎と万丈」がどうにも突き抜けないものであり、そこを全編かけてじっくりやっても、あまり爽快感を得られなかった、というのが本音である。

 

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一方、個人的に面白かったのは、戦兎と葛城巧の関係性だ。

 

時系列的に直前に父親の件で少し険悪になっていたふたりだが、今回の劇場版では万丈に対する考え方で再び対立することになる。

巧から見た万丈は、「エボルトの因子を宿した危険な存在」。一方の戦兎から見た万丈は、「かけがえのない相棒」。

 

本来、「桐生戦兎」という人間はこの世には存在しないし、彼の行動原理もその多くが葛城巧という元の人間の性格に起因する。では、何が「桐生戦兎」を立証するのか。誰が「桐生戦兎」という人間を肯定できるのか。これこそが、万丈龍我なのである。

 

戦兎が巧に背を向け、万丈の手を取るために心理世界の階段を登っていく。

「葛城巧」ではない、「桐生戦兎」としての選択。空っぽの人間が短い期間で得たかけがえのない存在。非常にエモい展開として、この辺りは上手かったと思う。

 

また、戦兎が1年間言い続けていた「ラブ&ピース」の信念は実はスカイウォールの惨劇のタイミングで父親から譲り受けた言葉だったことが明かされる。演出的には戦兎がそれを聞いているが、間違いなく、あの言葉を受け取ったのは葛城巧である。

そんな巧の深層心理にあった父親の言葉を、戦兎は自身の信条として力強く叫んでいたということだ。

 

今回の劇場版において、「葛城巧が父親から譲り受けた信念」と「桐生戦兎が新たに築いた関係」が絶妙にクロスする、つまりはベストマッチするという展開が描かれ、桐生戦兎の物語としては綺麗に完結したのかな、という感想を持った。

 

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「自身の過去を悔いる悪魔の科学者」も、「敵の傀儡として創られた空っぽのヒーロー」も、誰かの言葉に励まされ、誰かに助けられながら、自己を律してきた。

それは、戦争兵器として民衆に忌み嫌われる仮面ライダーがそれでも平和のために奮闘するドラマと同じで、「人は誰でも前を向いていける」という非常に普遍的で前向きなメッセージに帰着していく。

 

銃は戦争で沢山の人を殺したが、現代日本でも平和を守る場面で用いられる。

悪魔の科学者はずっと悪魔の科学者なのか。空っぽのヒーローはずっと空っぽのヒーローなのか。かつて故郷のために隣国を侵略した男は世界のために奮闘し、戦争の片棒を担いでしまった男は新たな国の礎になることを誓って前を向く。

 

そういった、飽くなき人間の可能性や、過去を抱きながら未来を向く美しさを説く物語として、『仮面ライダービルド』は様々なアプローチを追求してきた。

この劇場版においても、主人公・桐生戦兎の物語を今一度描き直す趣旨として、そのメッセージは強く伝わってきたと感じている。

 

だからこそやはり、もう少し「戦兎と万丈」の部分に捻りや新鮮味が欲しかったし、もっと前のめりになりたかったな、というのが正直なところである。

あと、このサブタイトルで『Be The One』(原曲)が一瞬たりとも流れなかったのは、心の底から残念である。(万丈が正気を取り戻したタイミングとか、ラストバトルとか、流すタイミングは沢山あったと思うのだが・・・)

 

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結果として、「面白い、意図も分かる、すごく『ビルド』らしい。しかしガツンと頭を殴ってくれない」という散漫な印象になってしまい、惜しさを感じる作品であった。

 

あと、ジオウは思ったより子供っぽい感じでしたね。ディケイドとの差別化かな。

 

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