ジゴワットレポート

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感想『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』 崩壊したのは誰の王国か。シリーズ5作目として正道アプローチで組まれた娯楽作

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『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』を語るにおいて、まずその邦題に言及せねばならない。

 

原題は『Jurassic World: Fallen Kingdom』なので、単純に訳すれば「王国の崩壊」「壊滅する王国」といったところか。

しかし、邦題は『炎の王国』。本作を実際に鑑賞し、更に原題を知っている人は、おそらくほとんどの人が「これはもしかしてやっちまったのでは・・・」と感じていることだろう。

 

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邦題がどのように決められているか。

 

これについては、ロケットニュースに掲載されている、当時『マッドマックス / 怒りのデス・ロード』の邦題を決めたワーナー・ブラザースの方へのインタビュー記事が分かりやすいので、以下引用。

 

──えええっ? 映画を見ないで、『怒りのデス・ロード』を思いついたのですか!?

 

出目「そうですよ! 映画の邦題って、基本的に本編を完全に観られる状態で決定することはありません。観れるときなんて、稀(まれ)ですね。ポスターとか、ほんの少しのフッテージ(映像素材)とか、それだけの材料を観ただけで、“こんな映画になるだろう” と予想して決めなきゃいけないんです」

 

──えええええええっ!(驚) それって、いざ邦題は決まったけど、完成した映画を観たら内容が全然違うなんてこともバリバリありえるじゃないですか!!

 

出目「バリバリありえますよ! だからすっごい緊張するし、責任も重大だし、プレッシャーもハンパないし、限られた情報だけで予想して……決めるのが邦題付けの難しさなんです。先を読まなきゃいけない。本当に “読み” の世界ですね」

 

【本誌独占】邦題『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の「怒りのデス・ロード」を考案した男にインタビューしてみた! | ロケットニュース24

 

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つまり今回で言えば、「噴火する火山とそこから必死に逃げる主人公と恐竜たち」が早くからフッテージとして公開されていたので、そこから、「火山の噴火」→「島が崩壊」→「恐竜たちの王国が崩壊」という連想で原題『Fallen Kingdom』と紐付けられたものと思われる。

しかし蓋を開けてみれば、島における火山パニックは映画の前半戦に過ぎず、クライマックスのあるシーンで起きた決断が世界を一変させ、それこそまさに『Fallen Kingdom』なのだ!、というオチであった。

 

上のインタビューの言葉を借りるなら、どうしても、「読み」を若干外してしまった印象を受けてしまう。とはいえ、これは仕方のないことなので、本当に仕方がないとしか言いようがない。

 

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ということで、もし仮に『王国の崩壊』とかだと前半戦の火山パニックをそれと思わせつつ最後に改めて殴ってくるステキな構図ができたのにな、と妄想しつつも、『炎の王国』の感想をざっくばらんに書いていきたい。

 

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まず、そもそものシリーズ1作目『ジュラシック・パーク』の面白さについて改めて考えると、単にデカい恐竜が存在して暴れるだけに終わっていないのが素晴らしいんですよね。

つまり、ラプトルといった人間とさほど身長が変わらない恐竜の方が、むしろ機動力が高くて真に恐ろしい、というアプローチが込められているのが上手い。

 

恐竜というと、どうしてもティラノサウルスとか、ブラキオサウルスとか、その巨体を連想してしまうものだけど、『ジュラシック・パーク』はそこに見事にラプトルをねじ込んでみせた。

これによって、追いかけ回されるハラハラ感や、満を持してデカい恐竜が出てきた時の対比による巨大感演出といった、映画全体へのメリハリが生まれている。「ラプトルが人を追いかけ回す」というアイデアは、大げさに言えば、一種の発明なのだ。

 

『炎の王国』は、その1作目が世に知らしめた発明を現代版としてしっかり蘇らせている。ジュラシックシリーズとして、この上なく正道なアプローチ。

 

しかも、ただ肉食のラプトルが牙をむいて襲ってくるだけではない。

ホラー映画の演出を盛り込みながら頭脳的に人間を追い詰める新キャラクター・インドラプトルの猛攻は、「恐竜ってここまでできるの!?」といった驚きを与えてくれた。

 

アニア ジュラシック・ワールド インドラプトル 

アニア ジュラシック・ワールド インドラプトル

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ただ本能的に襲ってくるのではなく、「人の次に頭がいい」という劇中の台詞をこれでもかと体現するように、頭脳プレーで人を騙し、騙している自分自身に喜びを覚え、分単位で学習し、人間が作った家屋に我が物顔で侵入してくる。

後半戦のインドラプトルとのチェイスは、手に汗握ること間違い無しの名シーンであった。

 

インドラプトル自身も人間の傲慢によって生み出された被害者である訳だが、そんな彼(?)が螺旋階段を物理的に破壊して襲い掛かってくる様は、視覚的な「DNAへの冒涜」として思わず膝を叩いたものである。

 

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一方で、お話の筋としては、正直中盤あたりで「またこの手のパターンか・・・」という苦笑いを浮かべてしまった。

 

その状況の中でも意欲的な画作りが沢山あったので、面白くはあったのだけど、やはり「捕まえてきた恐竜がまたそんな感じで扱われてあんな感じの人達がワラワラ集まってまたそのパターンね、ふーん」みたいになってしまったのも事実で。

もうちょっと、話の筋そのものに捻りが欲しかったかもしれない。

 

しかしそれは、クライマックスの「ある展開」を際立たせるためにあえてベタで組む、という判断だったのかも・・・ とも思うのだ。

つまりは、原題である「王国の崩壊」が文字通り完遂されるくだりである。本当に崩壊するのは「誰の」王国なのか、という辺りが面白くて、しっかりサブタイトルに還ってくる話運びにはとてつもないカタルシスを覚えてしまった。

3作目、おそらく『炎の王国』直後から始まる訳ではないだろうから、このラストからどういう世界ができあがっていくのか、興味津々である。

 

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相変わらずT-REXは美味しい所を持っていくそれ専用のキャラクターとして配置され、前作以上に良い意味でのアイコン化が進んでいた。

まるで時代劇のように、「よ!待ってました!」という感じで盛り上がるシーンを盛り上げさせるためだけに登場する訳だけど、それが完全に許されているから強い。

 

恐竜を動物と捉えて涙腺に訴えるような「飼い主の苦しみ」パターンもあれば、寝ているライオンの尻尾を摘み上げるかのような緊迫のシーン、また、恐竜固有の能力を活用しての脱出ゲームなど、「恐竜」という絶対的なテーマにあらゆるアプローチで挑んでいて、2作目としての自由度を感じさせてくれる出来だったと言えるだろう。

そこに、前述のような「ラプトルパニック」の現代リブート版、そして原題に還る大オチが待っているのだから、(中盤の展開に苦言は呈したけれども)、全体的に非常にバラエティに富んだ娯楽作として完成されていると思う。

 

クリス・プラットも、相変わらずのお茶目さ&かっこよさでしたね。玉木宏の吹き替えが必要以上にエエ声すぎて何度か笑いそうになったけれど。

 

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