ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

「後悔しない家づくり」を目指して挫折した話

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家づくりが佳境を迎えている。

 

コロナの影響も無かったと言えば嘘になるが、ほぼ予定通り、竣工する予定である。残すは施主検査を含めた軽微な修正と、外構の一部分。夢のマイホームに向けて腰を上げてから、ちょうど、一年ほどになるだろうか。思えば遠くまできたもんだ。

 

家を建てるとなると、当然、「後悔しない家づくり」というフレーズが頭をよぎる。記録も兼ねて、このフレーズと我々夫婦がいかに向き合ったか、そこを具体的に書いていきたい。

 

言うまでもなく、我々も「後悔しない家づくり」を目指して奮闘した。一時期は休日のほとんどをモデルハウスや住宅展示場巡りに費やし、知り合いの設計士と話を詰めたり、並行して5社ほどと見積もりをやり取りした。

 

しかし、「後悔」というものは、とても頻繁に、小まめに押し寄せる。「ああすれば良かったかも」「この決断は本当にそれで良いのか」「ここはもっと詰めておくべきだったのでは」。設計段階でこれが頻出するのだから、完成後は、もちろん「後悔」ばかりだろう。それもそのはず、家は、(その多くの人が)人生で一度しか作らない。「後悔しない家づくり」は、まるで「新卒を採用します!即戦力希望!」みたいなもの。あまりに無理ゲーすぎる。

 

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もっと解剖してみよう。なぜ「後悔」というワードが頻繁に浮かぶかというと、シンプルに、かけるお金が莫大だからである。

 

十数万のパソコンを買うとか、数百万の車を買うとか、そういうレベルではない。土地と家、あわせて数千万。数千万の買い物なんて、冷静に考えれば常軌を逸しているのだ。シラフでは中々やれない。マイホームという名の夢に酔った状態でないと、こんなものに実印は押せないのだ。だからこそ、「数千万もかけたのに!」という枕詞が幅を利かす。金額の大きさが、「後悔」を膨らませる。

 

一度しか建てないモノ。数千万をかけるモノ。こんな無理難題に対して、「後悔」を完全に避けることも、また無理難題なのだろう。どうしたって、それは発生する。住んでから後悔する箇所が100あったとして、それを99に、98に・・・といったことは出来るかもしれない。でも、理論上、0は無理だろう。「後悔しない家づくり」は、やっぱり至極困難なのだ。

 

・・・ということを、ちょうど一年前に痛感した。さてどうするか。どう頑張ったって、「後悔」からは逃げられない。であれば、視点を変えていく必要があるだろう。住宅展示場からの帰りの車中で夫婦でディベートを繰り広げ、辿り着いたのは、「納得度の高い家づくり」というフレーズ。

 

他でもない、誰でもない、我々家族が住まう家。であれば、私や嫁さん、あるいは娘が、「納得」を得るのが大切である。『「納得」は全てに優先する』。今更説明不要の格言だが、本当にこれが真実である。「後悔」が仮に100個出てきても、「納得」が120個あれば良い。「確かにここはこうした方が良かったかも。でも、あの時あれだけやったんだから。心の底から納得して作ったから。反省はあっても後悔はないよ」。そう言えれば、万々歳なのではないか。

 

では次の段階として、「納得度の高い家づくり」は、どうしたら叶うのか。

 

重要なのは、まず第一に、「汗をかくこと」。時間と労力をかけることで、人間は納得感を得ることができる。例え同じ結論でも、その場の思い付きで決めたものと、3時間かけて調べて思案したものでは、納得度がダンチである。

 

第二に、「軸を持つこと」。あれもこれもと様々な意見を取り入れた結果、没個性な家が出来上がることだけは避けたかった。出来上がった時に、「ここを一番見て欲しい!」と夫婦の意見が一致する家。そういうコンセプトの軸だけは、常にブラさず持っておこう、と。

 

第三は、「家族で作る」。家を作り始めると、色んな人から意見が舞い込んでくる。特にお互いの両親は、その経験値をフル活用し、間取りに意見を述べてくる。もちろん、耳を傾け、必要な意見は反映させるが、それはどこまでいっても「参考」の域を出ない。住むのは自分たちなのだ。そして、夫だけが住む訳でも、妻だけが住む訳でもない。家族というチームで全力で臨む。そういう家づくりでないと、「納得」は得難いだろう。

 

そんなこんなで前置きが長くなったが、「納得度の高い家づくり」を完遂するために家族で決めたルールや留意した点を、以下に書き並べていきたい。

 

 

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①人間的に相性が良くないと思われる営業マンとは思いきってお別れする

 

これはもうシンプルに、「納得」が得難いから。相性の悪い人と仕事をしても、気持ちが良くない。住宅業界とは不思議なもので、最初に対面した営業マンがそのまま担当として強固に固定されてしまう。プランは結構良いのに、レスポンスが悪く、更には平気で他者の悪口を並べる営業マンもいる。単純明快、健康的で建設的な打ち合わせができる人と仕事がしたい。

 

 

②打ち合わせには必ず夫婦で一緒に参加する(LINEのスピーカー通話での参加も可)

 

これも「納得」のために重要なポイント。「家族で作る」の部分。嫁さんとは夫婦だけど、元はやっぱり他人。育った環境も、実家の状況も、色々と異なる。言わずとも当然だと思っていた前提が食い違うことは、よくあるのだ(初期段階で、平屋vs二階建てで対立したのも良い思い出)。だからこそ、打ち合わせは片方だけでは絶対に行わない。必要であれば仕事を休んでスケジュールを調整する。必ず夫婦同席。どうしても無理な場合は、スピーカー通話での参加。気になる部分は持ち帰らずにその場で問う。

 

 

③条件を書き並べたもの(仕様書)を早い段階で作成し、複数のメーカーや工務店に同じ条件で見積もりを提示してもらう

 

複数のメーカー担当者と並行して話を進めていくと、A社にはこう言って、B社とはここが盛り上がって、C社とはここを削った、みたいな状況に陥りそうになる。そうなると、比較検討をして絞り込んでいく段階で情報がバラバラになってしまい、非常に効率が悪く、判断も鈍る。なので、早い段階で夫婦で話し合い、仕様書を作成した。といっても、そこまで細かいものではない。「こういう動線を確保したい」「ここだけは譲れない」といったポイントを書き並べた程度のものだ。むしろ、同じ条件での提案力+見積金額勝負、という土台を作るイメージ。

 

 

④モデルハウス等で良いと思ったポイントを撮影しLINEのアルバムで共有する(互いに小まめにチェックして意見を交わす)

 

地味だけど重要な部分。家作りにおいて、細かな仕様は放っておくとメーカー側が標準的なものでどんどん決めていってしまう。なので、「ここにこういう用途のくぼみがあると良いよね」とか、「何かをかけられそうな高さになっていると便利だよね」とか、そういうのを沢山収集しておく必要がある。LINEのアルバム機能が最も身近だったので、思いついたらいつでも互いにそこに写真を投げ込み(メモ帳箇条書きスクショも可)、話題のネタにした。常に「すり合わせ」を欠かさない意識付けにもなる。

 

 

⑤夫婦で「譲れないポイント」を3つずつ提示し、計6つについては原則必ず実現させることとする

 

住みやすい家も大切だが、理想が詰まった家も同じくらい大切である。絶対に譲れないポイントは、夫婦それぞれにある。嫁さんは、キッチンまわりに夢があった。私は、ホームシアター環境にロマンがあった。なので、それぞれのそういうポイントを、公平に3つずつ提示することにした。これ以外は、打ち合わせの中で削減しても恨みっこなし。でも、この計6つだけは、互いに最大限尊重して実現に向けて汗をかく。全ては心地よい「納得」のために。

 

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⑥互いの両親からの意見はあくまで「参考意見」であると自分たちに言い聞かせる

 

これは上に書いたものとほぼ同義である。両親の意見は、とっても参考になるが、純度の高い呪いでもある。どこまでが客観的に参考になるのか、夫婦でよく話し込むことが大切。振り回された結果、「他人の希望が詰まった家」が出来上がっては、元も子もない。

 

 

⑦迷ったら「汎用性」を意識する

 

家を作るという行為は、10年後・30年後・50年後と、老後までの人生設計とイコールでもある。どんな老後を夢見るか、その時にどんな家族でいたいか。あるいは、それより前に、親の介護の可能性もある。親が認知症になったらどうするべきか。あるいは、我々が事故に遭って腕や脚を失ったらどう暮らすか。「かもしれない」を言い始めたら、本当にきりがない。念のための手すりなどと言い始めたら、壁の全てに手すりが付いてしまう。なので、特に手すりが欲しい箇所については、現段階では下地を入れてもらうことにした。数十年後、思い立った時に問題なく付けることができるように。そして、全ての廊下とドアは平均的な車椅子の横幅を確保しておく。技術がどう進歩するかは分からないので、クローゼットの中にまでこれでもかとコンセントを配置しておく。これだけでも、汎用性はダンチだと思われる。

 

 

⑧お金をかける場所(コンセプト)を意識する

 

私は映画が好きだが、数を観ていく中で、段々と自分の好みがハッキリしていく。それは、「コンセプトが明快な映画」。これが好きだ。多少の取りこぼしや粗があっても、「ここ!」というポイントにはしっかりお金と時間がかけられていて、それが映画全体のコンセプトとして成立している作品。逆に、「あれもこれもやろうとして全体的にボヤけてしまった作品」は、あまり好まない。よって、このマインドを家作りにも応用した。夫婦共通の理想ポイントは、王道の「家族が集うリビング」。リビングを起点に各部屋を配置した間取り。なので当然、お金をかけるべきはリビング。壁にはオシャレな壁材を貼り、照明にも凝った。LDKなので、キッチンの見た目にもこだわった。その分、他の部屋はやや簡素に。そういうバランスを意識して取り組んだ。

 

 

⑨ネットの情報は話半分で受け取る

 

インターネットは便利だが、どうにも情報が多すぎる。家作りはその最たるもので、少しググるだけで無限に情報が出てくる。ただ、耐震性能や窓の種類、木造か鉄骨か、気密性や通気性なんてものは、地域によって条件が全く異なるのだ。北海道と沖縄で同じ家を建てても意味がない。また、土地の広さや形、目の前の道路の状況、近隣の住民の雰囲気など、勘案すべき条件はいくらでもある。ネットには、それらの前提条件をろくに述べずに結論だけを断言するような言説が溢れているのだ。あくまで、他人の話。あくまで、ネットの話。自分たちで「納得」を目指して熟考することが重要である。

 

 

⑩現場には可能限り足を運び、「気づき」があれば行動する

 

実際に着工になってから、夫婦で頻繁に現場に顔を出した。差し入れを片手に、大工さんと色んな話をする。すると、「ここはこうしたらもっと良くなるかも」という意見がポロっと出てきたり、また、実際に歩いてみると図面とは全く印象が違うことが、何度も何度もあった。そりゃあ、当たり前である。図面は二次元、家は三次元。住むのも三次元である。めちゃくちゃ頑張って作り込んだ図面も、目の前の柱や壁には敵わない。「ああ!ここはこうじゃないかも!」と気づいた点は、現場監督に連絡を入れ、まだ変更が効く範囲であれば修正してもらう。申し訳ない気持ちもあるが、こちらも数千万の買い物である。ここで妥協しては「納得」が薄まる。

 

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・・・以上、10点。もっと細かく、「ここに収納を作った方が良い」とか、「こういう構造になっていると捗る」とか、そういうのが無い訳ではない。しかし、上でも散々述べたように、作るのは「自分たちの家」なのだ。そこに収納があれば良いと感じたのは、あくまで我々夫婦の話。隣の人は、全くそう感じないかもしれない。選んだハウスメーカーの工法も、営業マンの提案力やセンスも、十人十色だ。

 

だからこそこの記事では、もう少し前段階にある「考え方」の部分を書き並べてみた。こうして細かな「納得」の層をいくつも積み上げた結果か、引き渡しを前にしてすでに「反省」はいくつか出てきているが、夫婦で話題になることはほとんどない。「やり切った感」に満ちているからだ。実際に住み始めてからもこれが継続することを、切に願う。

 

さて、映画・特撮をメインで扱うこのブログの読者諸賢は、以前より話題にしていた趣味部屋(ホームシアタールーム)の詳細が気になるところであろう。しばし待たれよ。現在進行形で、スピーカーやスクリーンの取り付けを行っているのだ。電動スクリーンのスイッチを入れると、隠し壁の向こうから壁掛けテレビの前にスーーーっとスクリーンが降りてきて、壁内配線により設置された5.1chのスピーカーがジャーーンと鳴って、壁一面にオーダーメイドの本棚がズーーンと天井まで届いている、そんな理想郷の実現まで、あと少し・・・。伝説まであと5秒。熱狂まであと5秒。

 

Casa BRUTUS特別編集 美しい家と暮らす。

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