ジゴワットレポート

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『カクレンジャー』から続く忍者戦隊の系譜 。「人に隠れて悪を斬る」から「忍びなれども忍ばない」まで

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これまで、「人に隠れて悪を斬る!」と、指を立てながら何度口にしてきただろう。

 

『忍者戦隊カクレンジャー』は、私の最も思い出深いスーパー戦隊である。放送開始は1994年。この時期は今の日曜朝(ニチアサ)ではなく、金曜の夕方に放送されていた。前年の『五星戦隊ダイレンジャー』や更にもうひとつ前の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』ももちろん観ていたが、物語を最初から最後までちゃんと理解して観たであろう最古の戦隊は、どうにも『カクレンジャー』のような気がする。

 

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※当記事は引っ越し前のブログに掲載した内容を転載し、加筆修正を行ったものです。(初稿:2015/3/10)

 

その後「忍者」モチーフは2002年の『忍風戦隊ハリケンジャー』で再度用いられ、そして2015年の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』まで、受け継がれていくこととなる。個人的には「和風日本伝統戦隊」のようなくくりで『侍戦隊シンケンジャー』もこの系譜に加えたいところ。


モチーフがシリーズ内で使い回されるのはよくあることで、それだけ子供たちに人気があるものが多用される。前述の「忍者」はもちろん、ジュウレンジャー・アバレンジャー・キョウリュウジャーの「恐竜」、ターボレンジャー・カーレンジャー・ゴーオンジャーの「車」、ライブマン(イエロー)・ギンガマン(レッド)・ガオレンジャーの「ライオン」等々、挙げていけば本当にきりがない。

 

時代によってそのモチーフへのアプローチは少しずつ違っていく。例えば「恐竜」でいうと、時代ごとの最新の学説に則ってティラノサウルスの姿勢や体毛などに変化が見られたりと、シリーズを長年かけて追うからこその面白さは枚挙にいとまがない。

 

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現状「忍者」の最新作『手裏剣戦隊ニンニンジャー』は、「ワッショイ」と終始お祭りのような賑やかなテンションが売りの作風だが、そのモチーフのシリーズ元祖『忍者戦隊カクレンジャー』について思い出を語りつつ、忍者戦隊の歴史を振り返ってみたい。

 

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初代「忍者」戦隊『カクレンジャー』は、いかに「忍者」に取り組んだか。

 

まず何より、「忍者」の記号を正面から大いに盛り込んだ。忍者装束はもちろん、武器は忍者刀、手裏剣やまきびしを多用し、煙と共に消えたり、突如地面の下から現れたり、敵にやられたと思ったら変わり身の術だったりと、この辺りの要素は後の『ハリケンジャー』『ニンニンジャー』にも大いに影響を与えている。

 

後続のモチーフ被り戦隊は前のものとある程度差別化を図るものだが、驚く事に前述のいくつかのポイントについてはほとんど変化がない。それほどまでに、日本における「忍者」の固定概念に揺るぎがなく、『カクレンジャー』が作った土台も強固なものだったのだろう。

 

同時に、この「忍者」だけでなく、とことん「和風」を盛り込んでいるのも同作の魅力である。変身アイテムであるドロンチェンジャーは印籠の形をしているが、普通に考えれば忍者は金ピカの印籠なんて持っていない訳である。中盤以降登場するニンジャマンはサムライマンに変身するが、随所に「侍」の意匠やアイデアが盛り込まれているのも分かりやすい。戦闘シーンの立ち回りや秘剣カクレマルの扱い方にも、時代劇の殺陣が見て取れる。


そして、このように大真面目に「忍者」と「和風」で固めておきながら、差し色で「アメリカンテイスト」をぶち込んでいるのが最大の特徴だ。

 

妖怪のデザインはアメコミチックで、とてもポップでカジュアル。妖怪らのコミュニティがあり、クラブで踊っていたりもする。戦闘時に「ZBAAAA」といった擬音が合成されるのも特徴的で、そもそも「ズバッ!」といった斬撃音は日本語の音なのに、それをローマ字読みで英字にするというかなりアクロバティックな表現をしている。メンバーのうち1人が外国人というのもとても面白いし、「Help me!」と助けを乞う仲間に対し「英語だから何言ってるか分からないや」などと言ってしまう始末。


「忍者」だけに留まらず「和風」で脇を固め、「アメリカンテイスト」で盛大に外す。この絶妙なバランスは『カクレンジャー』唯一無二のものだが、方法論としては東映が長年用いてきた手法でもある。仮面ライダーにおいても、武将で固めたところをフルーツで外す。このパターンだ。

 

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「忍者」へのアプローチを同モチーフで比べてみると、『忍風戦隊ハリケンジャー』では、『カクレンジャー』にはなかった「流派対立」の概念を採用し、それぞれの忍術にはより分かり易い「属性」を持たせていることが分かる。

 

ロボットはカラクリで動くという設定が用いられ、いわゆる「茶運び人形」の究極発展形という方向性でイメージ付けが行われている。『カクレンジャー』におけるアメリカンテイストならぬ差し色は、敵側の「宇宙忍者」という設定に見られ、コギャルな女性幹部やピエロ風の変態など、多種多様な存在と相対していくことになる。

 

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「忍者」最新作『手裏剣戦隊ニンニンジャー』も、これまたぶっ飛んでいる。そもそも「忍なれども忍ばない」という名乗り口上がどこまで真面目に考えても意味不明なのだが、これはいわゆる「忍者」ではなく「ニンジャ」モチーフと考えれば理解が容易い。

 

つまり、外国人が日本に旅行で訪れて「オー!ニンジャ!ジャパニーズニンジャ!!」と感銘を受けるような、あの類の方向性に寄せている。『カクレンジャー』の頃からこのニュアンスはある程度あったのだが、私としては「ついにあからさまにやりやがった!」といったところ(褒めている)。なんでもありでぶっ飛んでる超人集団。そんな21世紀最新型の「忍者」が、「ニンジャ」であり、『ニンニンジャー』なのだ。

 


そもそも八雲の魔法という設定と忍術が同居している時点で意味不明だし、迎撃都市のように都市部の中心地が畳のようにひっくり返るのも意味不明だし、ロボットならぬオトモ忍のモチーフがてんでバラバラなのも意味不明だし、とにかくニンニンジャーは意味不明なのだ。ツッコミを次のツッコミでカバーし続ける、まさに離れ業。しかし、その意味不明な雑多感が割とちゃんとまとまっていて、だからこそ結果的に、あの特有のお祭り感を演出していく。

 

このように、同じ「忍者」戦隊でも、そのモチーフへのアプローチの違いを見ていくと、とても面白い。前述の「恐竜」のように、時代時代で流行りの「忍者」を取り込み、変化を付けている。また、これらに『仮面の忍者 赤影』『世界忍者戦ジライヤ』等の東映制作忍者ヒーローの影響があることは、もはや言うまでもないだろう。

 

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改めてスーパー戦隊シリーズとしての『カクレンジャー』を振り返ると、諸々の要素が結構なハチャメチャであることが分かる。私は世代なのでこれがスタンダードのようにも感じていたが、立派な大きなお友達になってシリーズを再見していくと、自分はなんて変化球を喰らっていたのかと面食らうほどだ。

 

まず、『カクレンジャー』のリーダーはニンジャホワイトこと鶴姫である。他の男4人は相当な駄目っぷりで、特に序盤はヘタレ衆もいいところ。いつも鶴姫に尻を叩かれている。その分、物語が進むにつれニンジャレッドであるサスケがリーダーとして頭角を現していくのが見所でもあるのだが・・・。女性リーダーという概念は、『タイムレンジャー』のタイムピンクことユウリ、そして極め付けは『シンケンジャー』の真のシンケンレッドである志葉薫など、後のシリーズにも脈々と受け継がれている。

 

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『カクレンジャー』は、敵の本拠地が特別用意されていないのも面白い。話が進めば貴公子ジュニア(ガシャドクロ)の登場と共にやっと敵組織として成立してくるが、序盤はただの野良妖怪を退治して回るという作劇である。

 

例えば、怪しげな敵幹部同士の「カクレンジャー抹殺の任を~」とか「お主に務まるのか?」などの組織的な悪巧みや小競り合いがない。基本的にエンカウントした妖怪と戦っていく作劇のため、カクレンジャーたちも「いつもの場所」に留まることなく、愛車(愛猫?)であるネコマルというバスでクレープ屋を営みながら旅をするロードムービー型の物語になっている。『烈車戦隊トッキュウジャー』が毎週別の街を訪れていたように、カクレンジャーもずっと旅をしていたのだ。

 

ロボットも特徴的である。隠流巨大獣将の術で巻物を用いてカクレンジャーたちが巨大化し、無敵将軍へ忍者合体するのはシリーズとしてスタンダードだが、これに加え5人それぞれが獣将ファイターという分身を有している。彼らは獣将たちよりとても身軽でスリム。縦横無尽にアクロバティックに敵を翻弄する。

 

この「巨大戦で俊敏なロボ」という点は、『ハリケンジャー』の旋風神ハリアーや、『ニンニンジャー』のオトモ忍シノビマルなど、ある意味忍者戦隊の王道要素とも言える。獣将と獣将ファイター、計10体ものロボが立ち並ぶ回の巨大戦は壮観で、シリーズでもあまり類を見ない程の大盤振る舞いである。

 

アクション プラデラ ホイールクラッシュ! 旋風神ハリアー!
 


他にも、「花のくノ一組」という女性のみで構成された敵戦隊が出てきたり、ナレーションの域を超えて物語の狂言回しをする講釈師がいたり(話が進むにつれて出番が減っていくのはご愛嬌)、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』のセルフパロディ回があったりと、挙げれば挙げるほどに、相当なハチャメチャぶりが見て取れる。

 

その結果か、『海賊戦隊ゴーカイジャー』でも最後に手に入れる「大いなる力」に割り当てられていたあたり、ある程度の人気の高さが伺えるところ。変化球戦隊として、その後の21世紀以降のシリーズ展開に向けた土台として、同作はいくらか機能したのではないだろうか。

 

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そんな『カクレンジャー』の変化球ぶりを挙げ連ねてきたが、その最たる部分が「二部構成」というシリーズ構成にある。ちょうど2クールにあたる24話までが第一部で、25話からは「青春激闘編」と銘打ち、作中のテンションが段々とシリアスさを増し、アクションの見所も増えてくる。

 

第24話「あァ一巻の終わり」
 

 

何より、5人全員がバラバラに旅をする機会が設けられたのが衝撃だった。なんとカクレンジャーは中盤の決戦でガシャドクロに見事に敗北し、街の人々は石にされ、後は大魔王の復活へのカウントダウンという絶望的な状況に叩き込まれる。

 

今のままでは勝てないと知った5人は、それぞれ別の道を歩み、各々の「隠流忍法極意・忍之巻」を探す旅に出る。「これは隠流忍法の極意を手に入れるためだけの旅じゃねぇ。俺たちに与えられた試練の旅なんだ!心の底から戦士になるためのな!」。そう誓い、それぞれがこれまでの思い出を振り返った後に、「シーユーアゲイン、マイカクレンジャー」と言い残し、散り散りになるのだ。

 

当時まだ幼かった私にはこの上ない衝撃的な展開で、その次回からメンバー毎に個別のエピソードが展開され、いよいよ同作に本格的に夢中になったのをよく覚えている。しかもまたここからの構成が見事で、その「隠流忍法極意・忍之巻」はそれぞれの強化ロボットである超忍獣を呼び出すためのものであり、5人それぞれが苦難の末に新たな超忍獣を従え、再びカクレンジャーが合流した後にその全てが合体し、隠大将軍が満を持して推参するのである。

 


その大きなうねりのクライマックスは、圧巻のコスギ親子対決だ。


ニンジャブラックことジライヤを演じるケイン・コスギの実の父親ショー・コスギが、ジライヤの師匠であり育ての親として出演。しかも、ショー・コスギ演じるガリ師匠は妖怪に魂を売り渡しており、なんとジライヤの父親を惨殺した張本人であるというのだ。役の上では「育ての親」でもあり、「師匠」で「恩人」で「父の仇」、そしてケイン・コスギとしては「実の父」である相手と、完全にテレビシリーズの域を超えたスーパーアクション対決を繰り広げる。まさに29話のタイトル通り、「史上初の超対決(スーパーバトル)」!

 

第29話「史上初の超対決」

第29話「史上初の超対決」

 
第31話「見たか!!新将軍」

第31話「見たか!!新将軍」

 


盛大に土煙を巻き上げながら、子供番組の域を超える吐血を披露し、壮大な親子対決がドラマを盛り上げたその流れのまま、隠大将軍が誕生するのだ。この第二部「青春激闘編」の序盤、31話「見たか!!新将軍」までの一連のシークエンスは、戦隊史に残る怒涛の展開と言えよう。

 

ちなみにその31話では、5人の指南役であり恩人の三太夫が殺害され、その仇で因縁の相手でもあるガシャドクロを隠大将軍でついに撃破する運びとなる。

 

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『カクレンジャー』は基本的にコメディ寄りでありながら、青春激闘編序盤では思いっきりハードな展開をやってみたり、かと思いきや、最終決戦直前の49話「突然!!ビンボー」でギャグを放り込んできたりと、その作風はバラエティに富んでいる。

 

「忍者」はそれ単体では地味なものであり、華やかさに欠けるのが当たり前なのだが、戦隊としてはそれを逆手に取り、いかに「華やかな要素」を盛り込むかが命題となるのだろう。だからこそ、『カクレンジャー』はアメリカンテイストが付加されバラエティ豊かな作風になり、『ハリケンジャー』は流派同士の対立というハードな縦筋を基本軸に群像劇に厚みを持たせた。続く『ニンニンジャー』は、ツッコミをツッコミでカバーするというお祭り騒ぎが魅力になっている。

 

日本人に馴染み深い「忍者」をモチーフにした戦隊は、その要素の折衷バランスと雑多感こそが魅力であり、バランスの傾き加減や時代性が時々によって反映されるからこそ、多彩なヒーローたちが生まれていく。「忍者」は文字通り忍びの者であり、本来陽当たりの良い場所で堂々と戦ったりはしないのかもしれない。だからこ『カクレンジャー』は「人に隠れて悪を斬る」だったし、『ハリケンジャー』は「人も知らず、世も知らず、影となりて悪を討つ」だった。

 

そして2015年、「忍びなれども忍ばない」と豪語するお祭り野郎共が現れ、戦隊における「忍者」はまた新たなステージに到達した。忍ぶことを否定し、堂々と明るみに出てきた「ニンジャ」。彼らの活躍がまた語り草になった頃に現れるかもしれない次の「忍者」を思うと、大変気が遠い話ではあるが、どうしようもなくワクワクしてしまうのだ。

 

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忍者戦隊カクレンジャー超全集

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