『DXグランドジオウライドウォッチ』を、発売日に購入した。
『ジオウ』の玩具については、ジクウドライバーを始めとして最低限のものは揃えている。が、ライドウォッチは本格的に集めようとすると色んな意味で大変なので、個人的に気に入ったものを不定期に摘まむ程度である。
とはいえ、『グランドジオウライドウォッチ』だけは必ず買おうと決めていた。それは、本商品が「歌のすごさ」を掲げていたからだ。
実際に買って鳴らしてみると、確かに間違いなくすごかった。というか、あまりにも歌が長すぎて、ちょっと笑ってしまったほどだ。
変身待機音は、クウガからビルドまでの変身音(「コンプリート」「タカトラバッタ」「レベルアップ」など)が立て続けに流れる仕様。公式ブログによると、一巡で22秒。尋常じゃない長さだ。
続く変身音は、クウガからビルドまでのライダー名を連呼する新規のメロディ(30秒以上)が流れ、最後に「祝え!仮面ライダーグランドジオウ!」で締める。長らく「クウガからディケイドまではケータッチあるいはディケイドライバーのCMのおかげでスラスラと言えるがダブル以降になると急激にテンポが落ちる」状態にあったが、今回の新たなメロディを得て、ついに20作の順番を淀みなく言えるようになった。
平成ライダーの変身音における「歌」といえば、最も印象深いのはやはり『オーズ』だろうか。軽快なコンボソングは挿入歌の合いの手にまで盛り込まれ、独自の文化を築いた。『ウィザード』の詠唱、『鎧武』の名乗り口上、『エグゼイド』のゲームタイトル風アレンジや、『ビルド』の二つ名呼称。「歌」に限らずとも、ベルトが独自なメロディに乗せて音楽を鳴らしまくるパターンは、いつしか平成ライダーの様式美となった。
もちろん、「真面目な戦いの場面でふざけた音を鳴らすなんて」「ベルトがうるさすぎる」といった声も、度々上がるところではある。
とはいえ、良くも悪くも、清濁あわせ持ちながら節操なく攻めと変化を繰り返してきた平成ライダーだ。そういった批判の声によるマイナスを50獲得したなら、同時に、歌を印象付けて新たなファンを100獲得する。そうやってコンテンツを雪だるま式に膨らませてきた、稀有なシリーズと言えるだろう。
そんな「ベルトの歌」というアプローチの最終到達点が、この『グランドジオウライドウォッチ』だ。歴代最長クラスの歌と、それ単体が変形して光るギミック。二種の塗装と二種の成型色、同じ「金色」でも計四種の色合いをミルフィーユのように重ねる豪華さは、平成ライダーの終着を飾るアイテムに相応しい見栄えである。
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とはいえ、こういったアイテムが出てくること自体に、果てない年月を感じてしまう。思えば遠くまできたものだ。これが例えば、『クウガ』だったらどうだろう。許されるだろうか。
「五代!これを使え!」
雄介「一条さん!これは!?」
「全ての平成ライダーの力が込められた、最強のライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチだ!」
雄介「・・・一条さん?」
んー、やはり馴染まない。これはさすがに許されない。融合係数が低すぎる。『クウガ』のリアリティラインには、あまりにも強烈すぎる。
もうちょっと年代を進めてみよう。
「これを使え」
真司「神崎士郎!これは!?」
「全ての平成ライダーの力が込められた、最強のライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチだ」
真司「・・・神崎・・・士郎?」
「これを使ってください!」
ヒビキ「少年!これは!?」
「全ての平成ライダーの力が込められた、最強のライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチです!」
ヒビキ「・・・少年?」
うーむ・・・。やはりまだ厳しい。許されなさを感じる。
「これを使え!」
良太郎「モモタロス!これは!?」
「全ての平成ライダーの力が込められた、最強のライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチだっ!いくぜいくぜいくぜ!」
良太郎「なんだかよく分からないけど。いくよ!モモタロス!」
おっ、いい感じ。さすが『電王』。これは許しがある。後に平成ライダーというブランドに前のめりに食い込んでいっただけはあるぞ。器が大きい。
「これを使いたまえ」
士「海東!これは!?」
「全ての平成ライダーの力が込められた、最強のお宝、グランドジオウライドウォッチさ」
士「フン、だいたい分かった」
あ〜〜、やはり『ディケイド』は強い。許され係数が高すぎる。ここか!やはりこの辺りからか!今に通ずるリアリティラインがその頭角を表すのは、『ディケイド』前後なのか!平成ライダーというシリーズをライブラリ化した『ディケイド』は、10年経った今でも、劇薬のままである。
そんな作風の変遷が、主に『オーズ』以降から定着化したベルトの歌文化と融合し、「平成ライダー20作を歌い上げるアイテム」という珍妙な代物にまで到達した。よくもまあ、ここまで。『グランドジオウライドウォッチ』は、まさに、平成ライダーという文化の変遷そのものの象徴と言えるだろう。
20年前では考えられなかったこんな珍妙なアイテムを、どこか感慨深く、歴史の到達点のように感じてしまうのも、実に奇妙な話だ。
平成ライダーは良い意味で「雑多」なシリーズだと感じているが、その節操の無さが掌で曼荼羅を展開する『グランドジオウライドウォッチ』は、長年平成ライダーを追いかけてきた人ほど必要以上に「文脈」を汲み取れる、マストバイな一品なのかもしれない。「新アイテム」というよりは、どこか「記念品」の感覚に近いのだ。
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