ジゴワットレポート

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感想 映画『七つの会議』 しっかり憤って、しっかり痛快。「顔圧映画」としても期待通りの一作

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池井戸潤原作の映像化、本当に止まりませんね。すごい勢い。

 

ドラマで挙げると、私は『陸王』にめちゃくちゃハマりまして、毎週夫婦でテレビの前に正座する勢いで観ていました。映画だと、昨年公開の『空飛ぶタイヤ』は映画館で観ましたね。これも主演の長瀬智也を中心に、男たちの脂汗がスクリーンから垂れてくるかのような「圧」のある作品だったんですけど、今回の『七つの会議』も、負けず劣らずの「顔圧映画」でした。いや、むしろこっちの方に軍配が上がるかな。

 

映画「七つの会議」オリジナル・サウンドトラック 

映画「七つの会議」オリジナル・サウンドトラック

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この『七つの会議』という原作は、以前にも東山紀之主演でドラマ化されているらしく(残念ながら未見)、映像化としては二度目になる。少し調べてみると、映画では野村萬斎演じる八角という男が主役に据えられているが、ドラマ版は(映画では及川光博が演じた)原島というキャラクターが主役に設定されている。なるほど、物語の中心にいるのは八角だが、物語を進めていくのは原島なのだ。どちらが主役でも、確かに成立する。

 

野村萬斎の独特すぎるキャラクターが印象的なグータラ社員は、ある日セクハラで上司を訴える。訴えられたのは、会社にとっても大切なエース級の課長。よって、会社が立場を守ってくれるかと思いきや、即断で営業畑から人事への異動が決定する。しかも、異動からしばらく、元課長は出勤すらしていないというではないか。事の真相に興味を持った原島(飛ばされた課長の後任)は、騒動の中心にいる八角の不穏な動きを探るうちに、やがて大企業が抱える大きな闇に直面することとなる・・・。

 

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及川光博の人の好い苦労人なキャラクターは、ドラマ『相棒』における神戸尊を彷彿とさせる出来で、安定感が凄まじい。その補佐役となる朝倉あきも、男だらけの同作にしっかりと華を添えている。何より、野村萬斎のあの仰々しいまでの浮世離れした演技は、開幕早々に「こんな人間がいるのかよ・・・」と不安を覗かせるものの、あれよあれよ、終わってみれば見事に「好き」なキャラクターとして完成していた。巧妙な演技力とそのプランの為せる技だろう。人間味が後から後から効いてくるのだ。

 

冒頭で「顔圧映画」と書いたが、まさにこの四文字に恥じない、「圧」たっぷりの俳優陣が名を連ねている。香川照之、片岡愛之助、春風亭昇太、鹿賀丈史、北大路欣也・・・。彼らが、ややオーバーすぎるまでの演技を披露し、それを一瞬たりとも取りこぼさないように、カメラが寄りに寄る。額ににじむ脂汗。まるで目の前に飛んで来そうな唾。男たちの、企業とビジネスに翻弄されながら我を通す現代型「果たし合い」は、胸やけレベルでお腹にたまる。

 

物語は、安定の池井戸潤作品といったところで、方向性としては前述の『空飛ぶタイヤ』に非常に近い。というか、何ならテーマはモロ被りとも言えてしまう。そんな同じ題材を、弱者の視点から見るか、強者の視点から見るか。ふたつの作品を見比べてみるのも面白いかもしれない。私は『空飛ぶタイヤ』の決着がちょっとあっけない印象だったので、『七つの会議』におけるクライマックスのロケーションや対決オーラむんむんの話運びは非常に面白く感じられた。

 

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サラリーマンの生き様というより、そんな人々が属する企業の「体質」に切り込む。「慣例」の悪循環。「前例」という呪い。組織で働いた経験がある人なら、大なり小なり直面したことがあるだろう、あの「いや~な感じ」。それをスクリーンで展開し、エンタメ上の敵を設定し、そいつらをぎゃふんと言わせるカタルシスを演出する。「企業エンタメ」という昨今流行りのこのジャンルにおいて、まさに教科書通りの、王道の出来だ。

 

福澤克雄監督は『祈りの幕が下りる時』でも重厚な群像劇を描いていたが、その手腕は今作でも存分に発揮されていた。細かな裏切りや伏線回収が積み重なった末の、男たちの血のにじむドラマ。観ていて思わず「うお~~~!!」と言葉にならない怒りを抱えてしまうあの感覚は、この手のジャンル特有の魅力と言えるだろう。とにかく芸達者な有名俳優のオンパレードなので、今一押しの邦画である。

 

ただ、タイトルにもある「七つの会議」の意味が少々分かり辛いのが気になった。会議のテロップはあったが、全部で七回だったっけな・・・。むしろ、スティーブン・R・コヴィーの「七つの習慣」をもじっているのかな、とも思ったり。ビジネス書とか、すぐ「七つの~」とか言い出すし、その辺りを揶揄しているのかな。

 

あと、こんなにもエンドロール中に誰も出ていかない映画は初めてだったかもしれない。観た人は分かると思いますが。

 

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