先日、セブンイレブンのセブンカフェ(コーヒー)について書いている記事が目に留まり、以下のようなブコメを残した。
コンビニコーヒーのお客さんは、どこからやって来たのだろうか? - 江川珈琲店のブログ
そこまでコーヒーを買う方じゃなかったけど、セブンのはあの価格にしては美味しすぎて、ある時一気にハマってしまった。「どこから来た」と同時に「新たに生まれた」層もあるかも。
2019/01/24 10:11
私はもう中毒と言っていいほどにセブンカフェのコーヒーが好きだ。仕事中も、休日も、セブンが視界に入る度に必ずと言っていいほどコーヒーを買おうか迷ってしまう。一日に数杯飲むこともざらだ。
しかし前掲のブコメのように、元はそこまでコーヒーフリークではなかった。学生時代までさかのぼるとコーヒーはむしろ苦手な方で、ブラックなんてもってのほかだった。なぜ大人はあんな苦い物を飲むのだろうか? しかし、営業マンとして数年働いていた時期に、客先で出されるコーヒーを飲まない訳にもいかず、気付いたらそれが好きになっていた。同時に、お客さんの目の前で砂糖やクレープを入れていそいそとかき混ぜるのもなんだか恥ずかしくて、果てにブラック一択に。
とはいえその時点では、まだ「好きな飲み物のひとつ」に過ぎない。それをワングレード押し上げたのは、間違いなくセブンのコーヒーであった。この量と、この美味しさが、この値段なんて、そんなことがあるかよ、と。出てきた当初に驚いて以来、頻繁に買うようになった。私のように、セブンカフェが入り口になってコーヒーの摂取量が増えた人は少なくないのではないか。
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前置きが長くなったが、先のブコメを残しながら以前買って積んでいた本を思い出し、一気に読んだ。朝日新書の『セブン-イレブン 金の法則 ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ』である。
副題の読みは、「かね」じゃなく「きん」。セブンのヒット商品『金のおむすび』にかけたタイトルだ。内容は、コンビニ記者である吉岡秀子氏が、実際のセブンの社員にインタビューし、それをドキュメント風にまとめたもの。これが実に面白く、セブン大好き人間である私は一気に読み上げてしまった。
「セブンはすごい」とは多くの人が認識するところだが、じゃあ具体的にどこがどうすごいのか、というのを商品開発にフォーカスして構成されている。私も大好きなセブンカフェのコーヒーが、過去の三度のコーヒー展開失敗を経た「四度目の正直」として、マシン開発から始まったこと。日本人にウケる味のリサーチから、一杯を作るまでの手法まで、チームで動き完成させたその経緯。まさに「プロジェクトX」的な、血と汗と涙の開発風景である。
全体を通してセブンの企業理念が何度も語られるが、面白いのは、同業他社の動き等々をあまり意識していないこと。あくまで、消費者が何を求めているか。ただ純粋にそこ一点に向けて、とにかく柔軟に対応していく。コンビニが単なる商店から実質インフラになっていく過程で、何が求められて、何が飽きられていくのか。徹底的な品質管理と泥臭い商品開発でもって、消費者の動きに振り落とされないよう、食らいついていく。
私も大好きなセブンカフェの開発背景に始まり、ロングセラーであるポテサラのじゃがいも加工工場、「セブンプレミアム」というプライベートブランドの誕生背景、一枚一枚を手洗いするカット野菜から、女性向けの化粧水に至るまで。そして、雑誌の取り置きもできる書籍の取り扱い。これも、「コンビニが『何でも屋』化していく」というよりは、「街の本屋が減っていく消費者のニーズに応える」という発想に基づいており、企業哲学の軸のブレなさが面白かった。
価格が「711円」という設定も小気味よく、サクっと読めた良い本でした。巻末には社長インタビューが収録されており、狙ったかのように本書のあちこちに散りばめられた社員の言葉を総括していく様が痛快。おすすめの一冊です。

セブン-イレブン 金の法則 ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ (朝日新書)
- 作者: 吉岡秀子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/01/12
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