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特撮監督界の仮面ライダーディケイド、坂本浩一監督の魅力(感想『映画監督 坂本浩一 全仕事』)

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2009年に『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』を映画館で観た時のショックは今でもよく覚えている。スクリーンを縦横無尽に飛び回りながらインスタントに光線技を放つウルトラマンたちは、確実に「観たことがなかったもの」だった。

そしてその翌年、2010年公開の『仮面ライダーW FOREVER AtoZ / 運命のガイアメモリ』は、それまでの平成ライダーらしからぬ画作りが満載の作品で、「仮面ライダーでこういうのも観られるのか」という驚きがあった。

 

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そうして、「坂本浩一」という名前を意識するようになった。

 

坂本監督はあれよあれよと国内の特撮作品に次々と関り、『仮面ライダーフォーゼ』や『獣電戦隊キョウリュウジャー』、『ウルトラマンジード』ではメイン監督として企画の立ち上げから参加。OV展開である『宇宙刑事 NEXT GENERATION』や『スペース・スクワッド』等も監督し、東映や円谷以外の映像作品にも積極的に参加されている。

私自身、勝手に「特撮監督界の仮面ライダーディケイド」と呼んでいるのだが、まさに「ここが〇〇の世界か・・・」ばりの見事な多世界横断っぷりである。直近10年の国内特撮界を語るにおいて、坂本監督の名前を欠かすことはできない。

 

というのも、先日株式会社カンゼンから『映画監督 坂本浩一 全仕事 ~ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊を手がける稀代の仕事師~』というインタビュー本が発売されたのだが、これがもう特撮ファンにとっては垂涎モノの名著でして。

 

映画監督 坂本浩一 全仕事 ~ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊を手がける稀代の仕事師~

 

「東映編」「円谷プロダクション編」、それ以外の作品をまとめた「エクストラコンテンツ編」の全3章で構成された本書は、坂本監督が関わった20を超える作品を総ナメしており、「どんな意図で撮ったのか」「その作品にどういう思いがあるのか」といった監督のスタンスを実質無限に楽しむことができる。

 

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合理的なスケジュール管理

 

本書を読破して最も印象に残ったのは、坂本監督の徹底的なスケジューリングスキルだ。

 

アメリカで『パワーレンジャー』のプロデューサーを務めていた坂本監督だが、同作は特殊なスケジューリングを求められる。というのも、『パワーレンジャー』は日本の「スーパー戦隊」の映像を継ぎ接ぎして作るため、使える映像と使えない映像を取捨選択し、それに近いロケ地を探し、逆算して俳優陣のドラマシーンを撮影する、というパズルが必須になってくる。

これを長年手掛けられた坂本監督は、いざ日本で特撮を撮るにあたって、そのスケジューリングのノウハウを輸入させた。海の向こうで培われた、短期間かつ予算内で撮影するためのパズルが、ウルトラマンや仮面ライダーの現場に持ち込まれたのである。

 

 今までのウルトラマンシリーズにはなかった画作りに挑戦したかったので、プロデューサーとの交渉から始めたんです。過去の経験から余分な予算をかけなくてもそれらを実行する事が可能だという確信がありました。

 オープン(セット)のカットは、同じロケーションでドラマパートの撮影をしながら同時進行で爆破などの準備をして、用意が出来次第ドラマパートの撮影を一時中断して撮影したり、複雑なカットはミニチュア特撮で撮るのではなくデジタル合成で背景を作って撮影時間を短縮したりなど、色々と実行した結果、パイロット版用に用意していただいたスケジュールを短縮する結果が出せました。その成果が認められ、信頼関係を築きながら新しい事への挑戦を徐々に認めていただきました。パワーレンジャーシリーズでプロデューサーを何年も務めていた経験が活かされましたね。

 

・株式会社カンゼン『映画監督 坂本浩一 全仕事 ~ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊を手がける稀代の仕事師~』P346(円谷プロダクション編『ウルトラマンギンガS』)

 

坂本監督は、『仮面ライダーW RETURNS』や『宇宙刑事 NEXT GENERATION』などで何度か2本同時撮影も手掛けており、その合理的なスケジューリングはプロダクション側からも歓迎されているのだろう。

素人目には異常なペースで撮影をこなしている印象があるが、この工夫をこらした計画的な撮影手法こそが、坂本監督の最大の武器なのかもしれない。

 

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自らを作った作品への飽くなきオマージュ

 

『映画監督 坂本浩一 全仕事』には、坂本監督が愛した作品が沢山登場する。ジャッキー・チェンに憧れてアクションを始めたというのは有名な話だが、その他にも、「この作品(展開)はあれの引用」といったネタバラシが多く、読んでいて非常に楽しかった。

 

例えば、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』の作劇は『仮面ライダーストロンガー』の「デルザー軍団変編」のオマージュ、『仮面ライダーゴースト』でアランがたこ焼きを食べながら戦うシーンはブルース・リーの『ドラゴン危機一髪』、『ウルトラマンジード』のクライマックスにおける世代を超えた決着の付け方は小山ゆう先生のボクシング漫画『がんばれ元気』をイメージして・・・ といった具合である。

 

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他にも、『銀河鉄道999』『機動戦士ガンダム』『死亡遊戯』『男たちの挽歌』『銀河漂流バイファム』など、出るわ出るわ・・・。読んでいて「あー、なるほど」「それは知らなかった!」という感嘆の声が何度も出ましたね。

 

坂本監督が、自身の血や肉を作った作品をオマージュしながら、それまでのウルトラマンや仮面ライダーになかった画を作っていく。元ネタを知らなくても、該当シリーズの映像としてはすこぶる新鮮に見える。

ウルトラマンの縦横無尽な戦い方や引きの絵でデジタル合成された背景を高速で移動する映像は、ともすれば巨大感を損なっているとも言え、好き嫌いが分かれるところだが、「それまでになかった映像を作る」という点では定評があると言えるだろう。

 

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映像から溢れ出る坂本イズム

 

私も『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』から約10年間坂本監督の映像を観続けてきたファンのひとりだが、例えクレジットを観ていなくとも、坂本監督回は一発で当てられる自信がある。それほどまでに、「坂本イズム」は濃厚だ。

 

アクションする俳優や女優がテカテカにオイルを塗り、近接格闘での打撃時にはベビーパウダーが舞い、やられ役はワイヤーで豪快に引っ張られながら画面を横移動していく。巨大特撮は煽りのカットで土煙を上げて、ウルトラマンの背後でサイズ感が麻痺する爆炎が上がる。仮面ライダーも、変身する前の素面でのアクションシーンが極端に増える。

 

前述のような好みの話はあれど、私はそのどれもがとても新鮮な10年間だったと感じている。繰り返すようだが、ウルトラマンや仮面ライダーで「こういう画」が観られるとは思ってもみなかったからだ。

今や良い意味で新鮮さは薄れ、もはや御家芸のように「よっ!坂本アクション!」というスタンスでワイヤーで吊られるヒーローを応援しているが、今後も定期的に坂本監督の作る濃厚な画を楽しんでいきたい、と思っている。

 

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ダラダラと長くなったけれど、つまりは、『映画監督 坂本浩一 全仕事』は買いの一冊ということです。

キャスティング秘話(誰は監督の推薦、誰はオーディション、など)も豊富なので、ライダーや戦隊の完全読本シリーズが好きな人は絶対楽しめると思います。注釈もものすごく丁寧に付いているので、情報量は総ページ数の1.5倍くらいかも。

 

にしても、約20億の資金が集まりながらもペンディングになってしまった坂本監督総指揮の韓国特撮作品、めちゃくちゃ観たかったですね・・・。

 

映画監督 坂本浩一 全仕事 ~ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊を手がける稀代の仕事師~

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