2018年春ドラマで一番楽しみにしていたのが、長澤まさみ主演の『コンフィデンスマンJP』だ。先日第1話が放送され、夫婦で鑑賞し、期待通りの面白さに大満足となった。
このドラマを語る上で、脚本を手掛ける古沢良太氏の名前を欠かすことはできない。
『キサラギ』『リーガル・ハイ』『デート〜恋とはどんなものかしら〜』で知られる古沢脚本の魅力はとにかくロジカルであること。伏線、布石、前振り、どんでん返し。「あー!あれがこれだったのか!」「それがここで活きてくるのか!」という展開が毎回楽しい。
また、ほのかに毒気が漂っているのも特徴である。組まれたパズルの上で踊る登場人物たちが、痛烈な社会風刺を発していたり、俗なパロディを披露したりする。その雑多な感じが良い意味での「ごちゃごちゃ感」を演出する。
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挙げた例でいくと、『キサラギ』では飽くなき「後だしジャンケン」で伏線(誤用)がテンドン化する面白さをまとめ上げ、『リーガル・ハイ』では世の中にはびこる慣例や欺瞞を時にコミカルに時に痛烈に批判し、『デート』ではある種現代的な「愛ではなく役割分担を目的としたカップル」のロジカルなやり取りを描いた。
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しかし近年では、そのロジカルさが裏目に出てしまう作品が多かったように思う。
2015年の『エイプリルフールズ』では嘘をテーマに群像劇を描いたが、「これがあれに繋がる」「ここがそこに影響する」というパズルを重視するあまり、それぞれのストーリーが薄味に仕上がってしまった感が拭えない。
昨年だと新垣結衣主演の『ミックス。』という卓球映画があったが、こちらも、いわゆる「どんでん返し」を目的とするあまり、観る側の感情が振り回されてしまう感覚があった。結果として登場人物がサイコパス化してしまったのも記憶に新しい。
そんな、古沢脚本のファンとして、近年の作品にあまり良い感想を持てずにいたところに始まったのが、『コンフィデンスマンJP』だ。
だから、冒頭では「2018年春ドラマで一番楽しみにしていた」と書いたものの、同時に、「2018年春ドラマで一番不安だった」のも本音である。
しかし、実際に観たところ、それは杞憂だった。おこがましい物言いだが、「これだ!これだよ古沢脚本!」という、氏のファンとして大納得の仕上がりになっていたのだ。
まず、「コンゲーム」という題材が素晴らしい。これが最大のポイントだ。
con game (confidence gameの略)信用詐欺。取り込み詐欺師。相手を信用させて詐欺をはたらくこと。また、策略により騙したり騙されたり、ゲームのように二転三転するストーリーのミステリーのジャンル。
ぶっちゃけて言ってしまえば、もはやこれは「開き直り」だ。
ロジカルに凝った構成で群像劇を描いたり、どんでん返しを目的としたスポ根映画を作ったり、ではなく、「ロジカルで」「どんでん返しがある」こと、それ自体を最初から主題にしてしまう。
これにより、「構成に凝りすぎたがゆえにドラマが薄味になる」とか、「あっと言わせる展開を仕込むあまりに登場人物や観客が振り回される」とか、そういう事象が原則として発生しなくなるのだ。
だって、「凝る」ことが最大の主題なのだから。
つまりはこの題材選択によって、古沢良太脚本の(近年感じていた)弱みがピンポイントで払拭され、強みだけが何倍にも活きるという、大正解間違いなしの結果を生み出している。
氏のファンとして、これはもう感謝しかない。ありがとうございます。古沢脚本にコンゲーム!炊き立ての白米にごはんですよ!ポテトチップスを食べた後のチョコレート!焼肉にビール!!
ちなみに、コンゲームを題材にしているということで、『スティング』や『オーシャンズ11』あたりがイメージソースとしてあるのかな、と。昨年だと『ローガン・ラッキー』もこの部類ですね。
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さて。長い前置きになったけども、本編(1話)の感想。(ネタバレを含みます)
全体的に、ドラマというより「ショー」に近い作りになっていたのが良かった。
長澤まさみが視聴者に向かけて語り掛ける導入部や、締めと予告のナレーションなどに顕著だが、これにより、少し舞台的な、全体的に「セット感」が漂うバランスに仕上がっており、劇中の荒唐無稽な嘘(仕掛け)に妙な説得力を持たせている。
『デッドプール』的な、もっと言うと手塚治虫的な「四次元の壁突破」は、作品内のリアリティバランスを効率よく下げてくれるので、多少無理な展開でもどこかスーッと飲み込めてしまえる。(もちろん、下手にやると逆効果だけど・・・)
第1話から相当「かます」作りで、空港ひとつをでっち上げるというあまりに荒唐無稽な騙し合いが繰り広げられるので、リアリティは低い方が良い。
もちろんこれは、「そんなの出来る訳ないだろ」「あまりに嘘すぎるだろ」という感想も生みだしてしまうのだけど、この手の作品は、「実際に現実として可能か否か」という線引きが重要なのではない。
「作品内のリアリティ基準に則り、いかにあの手この手で騙し合うか」がポイントなのだ。なので、究極、実現可能かという議論はナンセンスなのである。
経費を使いすぎて報酬が雀の涙だった、というオチで一応フォローが入っているものの、それ以前に、「リアリティを低く設定している」ことが本作の勝因だと思うのだ。
江口洋介の、あまりに「それっぽすぎる演技」が、リアリティの低さに良い意味で拍車をかける。長澤まさみの最高に薄っぺらい演技も(褒めてる)、東出昌大の軽すぎる演技も(褒めてる)、その全てが脚本の仕掛ける荒唐無稽さを全力で肯定していく。
「ああ、“これくらい” の感覚で楽しめばいいのね」。そう思わせれば、勝ちなのだ。
そういった割り切った作りで、古沢脚本の魅力をあらゆる観点で最大限活かすように調整された『コンフィデンスマンJP』は、氏のファンとして大満足なのである。
また、『古畑任三郎』的な「毎回大物ゲスト俳優と対決!」という味まで加わっており、隙がない。
1話の江口洋介、2話の吉瀬美智子に続き、3話が石黒賢、4話で佐野史郎、5話にはかたせ梨乃、6話に内村光良が、それぞれ対決する「ワル」を演じるというのだから、期待が高まる。こういう売り方も、すこぶる「ショー的」だ。
「ワル」を悪いやり方で懲らしめて、金を巻き上げる。スカっとする痛快さもありながら、ねずみ小僧のような「義賊モノ」に分類できるのも面白い。
1話の最後では、長澤まさみ演じるダー子の本当の目的が団子屋の報復であったオチも明かされ、それとない「人情モノ」っぽさがあるのも気が利いている。
コスプレ満載のシチュエーションコメディ模様も含め、これらがまさに、古沢脚本が得意とする「ごちゃごちゃ感」を形成していくのだ。
ドラマ『コンフィデンスマンJP』、楽しい約3ヶ月間が過ごせそうです。早く第2話が観たいぞ・・・!
▲Official髭男dismによる主題歌

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