ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

パトレン1号「朝加圭一郎」という概念、及びキャラクター造形の絶妙なバランスについて

FOLLOW ME 

怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー[メモ帳]ブロックメモ/パトレン1号

 

『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』におけるダブルレッドの片方、パトレン1号の朝加圭一郎が素晴らしい。

 

「う゛ご゛く゛な゛! 国゛際゛警゛察゛だ゛!」の叫び声が容易に脳内再生できるこの人物は、誰の目にも明らかな「銭形警部的なキャラクター」だ。

怪盗を追いかける正義の警察官で、昭和の匂いが漂って、茶色いロングコートを羽織って、眉毛が太くて、直情型の性格で、声がデカい。

ルパンレンジャーが現代風かつスタイリッシュなテイストでまとまっているのに対し、パトレンジャーの3人は従来の刑事ドラマのパターンを踏襲しているので、必然的にこういうキャラクターになるのだろう。

 

 

しかし、朝加圭一郎が面白いのは、そのキャラクター造形の細かなバランスにある。

いくらでも「堅物で馬鹿正直で正義を優先する熱血レッド」にできるところを、脚本・香村純子氏をはじめとする製作陣は、そうはしなかった。

 

例を挙げると、誰もがこのキャラクターの深みに気づいた第4話。お話のメインはパトレン3号の明神つかさだったが、最終的には朝加圭一郎がすべてを持っていってしまった。

「男勝りで姉御肌なつかさがぬいぐるみに頬ずりする趣味を持つ」ことを、朝加圭一郎という男は微塵も「弱み」だとは思わない。そういう同期、そういう同僚として、素直に受け入れている。(つかさ自身が周囲にそれを見せないようにしていた、というのがポイントが高い)

「警察官として職務中にぬいぐるみに心を奪われるなど!」とか、「お前にも可愛い面があるよな」とか、そういうことは言わない。というより、思ってすらいない。ここに朝加圭一郎という男の面白さがある。

 

つまりは、多くのフィクション作品で観てきた「直情型の熱血男」の属性を確かに持ちつつも、多様性を素で受け入れる懐の深さや、他者を無意識に尊敬し接する慎ましさというのを、この男は兼ね備えているのだ。泥臭くとも律儀。暑苦しくても柔軟。

 

スポンサーリンク

     

スポンサーリンク

 

 

 

「融通が利かない堅物」なキャラクターは王道だし、それはそれで警察戦隊のレッドとして間違いがない。ルパンレンジャーを正義の名の下に追い回す存在として物語を回すことができるし、「愉快が利かない」をコメディシーンに活かすこともできる。

 

しかし朝加圭一郎は、通常そういうキャラクターが持つ「融通の効かなさ」を、「不器用さ」とほのかな「鈍感さ」に置き換えている。

そのため、「頭が固いなコイツ!」とか「柔軟性に欠けるな!」などといった感想が浮かばず、あろうことか「そんなところも可愛いなコイツ!」に辿り着いてしまう。絶妙なバランスだ。

 

このため、尾行がびっくりするくらい下手なところも、男女交際に一見寛容ながらも「ふしだらな!」とか言っちゃうところも、氷を食べながら歩くメキシコ衣装の変人に職質をかけないのも、「朝加圭一郎らしさ」としてすべてが免罪され魅力に昇華されていく。

なにをやっても「な、なんて朝加圭一郎なんだ!」「朝加圭一郎すぎる!」という感想が湧いてくるほどに、キャラクター造形が絶妙なのだ。もはや「朝加圭一郎という服を着て歩く朝加圭一郎」としか言いようがない。

 

これは、『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』の物語そのものの組み立て方にもあるのかな、と。

 

戦う動機として、圧倒的にルパンレンジャー側に(ドラマ的な)利があるので、パトレンジャー側が物語の比重として弱くなる可能性がある。そのため警察側は、朝加圭一郎をはじめとするキャラクターの魅力で物語を引っ張る作りになっている。

ドラマで物語の縦軸を構築するルパンレンジャーと、キャラクターで物語の横軸に緩急をつけるパトレンジャー。このふたつの面白さが交互に描かれるので、毎週30分番組とは思えない充足感がある。

 

その「キャラクターで魅せるパトレンジャー側の代表格」としての朝加圭一郎は、典型的で記号的な面白さと、現代的で多様性のある柔軟性を、見事に兼ね備えているのだ。それでいて最終的には「愛すべきバカ」に収まるこの見事な調整っぷり。

 

すでに私も、「朝加圭一郎が観たい!」という視聴動機を十二分に自覚している。

 

 

想像してみよう。

いつも通う馴染みの洋食店の店員が、日々追い回していたルパンレンジャーの正体だと知った時の朝加圭一郎を。

 

人としての動揺と、警察官としての職務。この間で揺れる朝加圭一郎。

彼のポテンシャルは、おそらくここでピークに達するだろう。今からそれを楽しみに待ちたい。 

 

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー 戦隊ヒーローシリーズ パトレン1号

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー 戦隊ヒーローシリーズ パトレン1号