愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」(通称「アトロク」)にて、10月28日に放送された「細かすぎて伝わらない映画の苦手な場面特集」。これがもう本当に面白くて、ラジオクラウドで聴きながらゲラゲラと笑ってしまった。
映画監督・脚本家・スクリプトドクターの三宅隆太さんをお迎えして、タイトル通り「映画の苦手な場面」を語り合う内容。開幕早々に、月曜パートナーである熊崎風斗アナウンサーが「登場人物が自分の足の速さを過信するシーンが苦手(恋人を追いかけて空港などに向かう際にすぐ走るけれどタクシーや電車を利用した方が速いはず)」というネタをぶちこみ、一気に場が温まった印象。「細かすぎて伝わらない」はバラエティ用語で「あるある」と同義なので、そういう意味でも聴き応えのある特集だったなあ、と。
▼下記リンクより聴けます。
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番組内で挙げられた「細かすぎて伝わらない映画の苦手な場面」は、こんな感じ。
・カメラに血が飛んでくる演出
・冷蔵庫の内部からそれを開いた人を捉えるショット
・双眼鏡を覗いた際の周囲が暗くなる主観の演出
・なりすましがバレそうなシーン
・他人の自転車を勝手に使って始まる追跡シーン
・登場人物が落ち込んでバラードなBGMが鳴る演出
・新人ミュージシャンのデモを聴いた大物プロデューサーが本人の承諾もなしにレコーディングの準備を指示するくだり
・最後に「…」が出てくることによってその後に何かが起きそうだと察せてしまう字幕
・有名になった主人公が雑誌の表紙を飾る演出
・実在のアナウンサーが劇中のニュース番組に出演するくだり
色んな意味で「あるある」過ぎて笑いの連続だったのだが、これはもう本当に、人によってバラバラなんですよね。「分かる!分かるぞ!」となるものもあれば、「ちょっと自分にはよく分かりませんね・・・」というものも。「細かすぎて伝わらない」のだから、それでOKな企画趣旨ですけどね。
▼リスナーのツイートをまとめたTogetterを発見。ありがたい。
全体を通して、挙げられた例はざっくりと以下のふたつに分類されるのかな、と。
①映画に限らず、シンプルにその人が「苦手」と感じるもの
②映画(ひいては映像作品)固有の演出・技法、あるいはパターンに対する「苦手」(その演出を採用したことに対するdisを含む)
例えば①は、前述でいう「なりすましがバレそうなシーン」や、「他人の自転車を勝手に使って始まる追跡シーン」「新人ミュージシャンのデモを聴いた大物プロデューサーが本人の承諾もなしにレコーディングの準備を指示するくだり」など。映画に限らず、いわゆる共感性羞恥とリンクするものだったり、シンプルに他者に対して無礼で不遜な行為、あるいは不法行為を指す。「なんでそんな!」という小さな憤りが火種というか。私の場合は、同種の感情を日常生活で味わうことも多々ある。
一方の②は、映画・映像作品にありがちな演出を苦手とするもの。「シーン的なあるある」より「演出・技法あるある」に寄せた感じですね。「有名になった主人公が雑誌の表紙を飾る演出」や「双眼鏡を覗いた際の周囲が暗くなる主観の演出」など。
映像作品にはある程度の技法があって、「こういう意図のための演出です」ということを示すためのシーン、というのが多々存在する。「有名になった主人公が雑誌の表紙を飾る演出」なんてその最たるもので、一躍時の人となった主人公がキメキメのポーズで雑誌の表紙を飾っていたり、テレビ番組のゲストとして出演したりする。そういったカットがテンポよく挟まれることで、「はい、こんな感じで主人公は有名になりました!ご了承ください!」と、物語から語りかけられるのだ。(そして、往々にしてこのあと凋落する)
そういった「演出・技法あるある」は様々な映像作品で多用されるため、ある程度の数を観ている人ほど、「またこの演出か」「このパターンは見飽きた」といったように、dis寄りな感情が湧いてしまうのだろう。(「安易な演出パターンに頼っちゃうのか!」という思いもあるのかもしれない)
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ちなみに私の場合は、「画面に水滴がつく演出」が苦手ですね。先の「カメラに血が飛んでくる演出」とほぼ同じなんですけど、雨のシーンでよく出てくるので。
理由は、水滴がついた瞬間にカメラの存在を認識してしまうから。意図としては、雨や水しぶきの臨場感、目に水が入るあの感じを狙っていると思うのだけど、水滴がカメラに丸く残るようなことって、実際は無いんですよ(眼鏡を除く)。どうしても、「撮る」シチュエーションでしか起き得ない現象。その瞬間に、送り手と受け手の共犯関係で成り立っていた「神の視点」が一気に地に落ちてしまう感覚があって、スーッと冷めてしまう。
先の特集内でも宇多丸さんが触れていたけれど、「この映像は誰がどう撮っているのか問題」って結構根深いんですよね。一度気になりだすともう頭から離れなかったり。
でも、この「画面に水滴がつく演出」も、特撮作品だとあまり気にならなかったり。水場でのアクションシーンや、ミニチュアセットの一環で海や湖が出てくると発生するやつ。脳内で「特殊撮影という作りものを観ている」というスイッチがONになっているのだろうか。最初から虚構ベースで観ている場合は、そう気にならないのかもしれない。
また、「登場人物が犬や猫を助けて車に轢かれるシーン」も苦手ですね。これは②というより①寄りで、映画に限らず、アニメや漫画でも同じく苦手。出てくるたびに「あぁ~ またこれかぁ~~」と天を仰いでしまう。
どうして苦手なのか自分でもまだ咀嚼不足なのだけど、おそらく「ピンチのためのピンチ」感が強すぎるからかな、と。よく私はこのブログでも「サゲるためのサゲ展開が苦手」という感想を書くけれど、その同種なのかもしれない。シンプルに交通事故に遭う方がまだマシというか、そこに妙な説得力を与えたいのか、犬や猫を持ち出しちゃうのね、と。誰も悪くなく、登場人物の善性をアピールしながら、でも物語の起伏としてピンチを与えたい。うーむ。どこか「取って付けた」「インスタントな」感覚が拭えないからだろうか。
あと、交通事故でいくと、「誰かを押し出して代わりに轢かれる」のも苦手かもしれない。助けたい相手を押し出して、轢かれる人が車のライトにパーッと照らされて、そこで大きな音と共に暗転。観る度に、「いやいや!!一緒に倒れ込めよ!!」とツッコミを入れてしまうのだ。(実際は押し出すので精一杯なのかもしれないが、そういうことではなく)
そんなことを書いているうちに頭をよぎったのは、「刺される人をかばって刺される展開(類似:「斬られる人をかばって斬られる」「撃たれる人をかばって撃たれる」)」ですね。これもまあ、古今東西あるのだけど、正直毎回「はいはいこのパターンね」と目が死んでしまう。それこそ私が好む特撮ヒーロー番組で頻出するんですけどね。
まあ、これも前後の話運び次第かもしれない。「ああーッ!」と良いショックを与えてくれるものもあれば、「お決まりのこのパターンですね」と冷静になってしまう時もある。(「代わりにダメージを受ける」という行為を「罪滅ぼし」「贖罪」として設定する話運びが好きじゃないのかな?)
・・・などと、取り留めもない「苦手」トークでした。前述のリンクから実際の番組が聴けるので、まだの方は是非。
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