スーパー戦隊シリーズ第36作目にあたる『特命戦隊ゴーバスターズ』。前作『海賊戦隊ゴーカイジャー』がアニバーサリー戦隊としてド派手に暴れたのとは対照的に、過酷な運命を背負わされながらもストイックにミッションに挑む若者たちの日々が描かれた。
※当記事は引っ越し前のブログに掲載した内容を転載し、加筆修正を行ったものです。(初稿:2016/9/21)
本作の「面白い」ポイントは挙げればきりが無い。自然光を浴びまくるオープンセットでの巨大戦や、レザー仕様の隊員服とギラギラ光るサングラスを装着したスーツデザイン。無駄のない動きと佇まいが魅せるアクションに、巨大戦と等身大戦を同時並行するシナリオの凝り方。かと思いきや、直球で魅せるバディロイドとの友情物語など、本作の特徴はいくらでも語ることが出来る。
そのひとつとして挙げられるのが、第15話から本格登場する陣マサトというキャラクターだ。
ヒロムたちゴーバスターズの目的のひとつである「亜空間にて行方不明になった親族の救出」に大きく関わってくる彼は、その核となる謎をまといながら圧倒的なキャラクター性で物語を牽引していく。
「謎と目的の本質である亜空間からやってきた」という背景に留まらず、「司令官の同期」「エースパイロットであるヒロムより戦闘能力が高い」「本人もアバターであり自分が実社会に帰還することを目的としている」「年長者であったリュウジの先輩」、そして「最終的にヒロムたちのために自己犠牲で散る」といった顛末まで含めて、非常に濃いキャラクターである。
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そんな陣マサトが本格的に登場する回(Mission15「金の戦士と銀のバディ」)は金田治監督が担当しているが、陣とその相棒であるJがビートバスター&スタッグバスターに変身してからの一連の流れが、もう息を飲むほどに素晴らしいのだ。何が良いかって、挿入歌とカット割りによる演出である。
シーンをひとつずつ解説してみよう。等身大であるメタロイドと巨大なメガゾードの同時進撃に窮地に陥るゴーバスターズ。そこに颯爽と、陣マサトとJが登場する。「メガゾードの方いけよ!」と陣がこの場を引き受ける提案を出し、Jと「被るなよ」の鉄板やり取りを終えた後、ふたりそろっての変身を初披露。
Jのアーマーが陣さんにくっついていく流れも映像的に面白いが、見所(聴き所?)は変身完了直後に鳴り出す挿入歌『Boost Up! ビートバスター』だ。
作詞:藤林聖子&作曲・歌:高取ヒデアキという超絶お馴染みかつ鉄板な布陣によって披露されるこの挿入歌は、「オ・レ!」から始まる軽快なラテン調の楽曲。挿入歌が鳴りながら、ニックの「脱げるの?脱げるの?」のギャグシーンが消化され(ヒロムの冷静なツッコミが面白い)、お次はJの良い意味でのポンコツ具合を陣が面白がるシーンが挿入される。
彼がJを指して語る「ダメなところが面白い」という台詞に、リュウジが間違いなく自身が憧れた「天才なのに完璧を求めないエンジニア」陣マサト本人であることを確信するのだ。そのリュウジの回想シーンで、在りし日の陣さんが「完璧じゃつまらないだろ?」と語るそのタイミングぴったりに、挿入歌2番Aメロの「人もロボットも完璧じゃつまらない」という歌詞が流れるのだ。もう、びっくりするくらいに、ドンピシャである。
変身シーンで鳴り始めた楽曲の歌詞とシーンがシンクロするこのカットが意図されたものか偶然かは分からないが、私は何度観てもこのシーンで鳥肌が立ってしまう。挿入歌は進行し、ビートバスターとスタッグバスターが戦闘を繰り広げながら、ヒロムたち3人は彼らにここを任せてメガゾードの対応に回る判断を下す。
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続けて、2番サビに入るそのピッタリのタイミングでビート&スタッグバスターの戦闘に切り替わり、その後、黒木司令官の「バスターマシン、全機発進ッ!」の号令と共にバスターマシンに乗り込むゴーバスターズのカットに続いていく。
またもや「ここ!」というドンピシャのタイミングで挿入歌は間奏に突入し、更には転調からのギターソロ、そしておそらく挿入歌のボリュームそのものまでアップしている。ギターソロが鳴り響く曲の盛り上がりが、バスターマシンが次々と発進していく高揚感と見事に重なるのだ。
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そして、ラストのサビの「盛り上がりの前振り」として伴奏が少し薄くなるタイミングで、場面はビートバスターたちの戦闘にシーンに戻る。わらわらと出現するバグラー軍団をドライブレードでなぎ倒すビートバスター(ここの低滑空移動がかっこいい)。締めにブレードをバグラーに突き立て、そこでスパッと曲も終了。一転、今度はバスターマシンの戦闘にシーンが移行していく。
上では「意図されたものか偶然かは分からない」と書いたものの、これを書きながら改めて繰り返し鑑賞していると、やはりかなり計算された上での意図的なものにしか思えなくなってきた・・・。
随所で細かくボリュームの調整が行われており、戦闘シーンでは大きく、会話シーンに被る箇所では小さく、そしてボリュームを切り替えるタイミングに合わせてシーンも転換させている。原曲を不自然な感じではいじっていないので、おそらくこの挿入歌から逆算して組み立てたシーンなのだろう。(しかもこのMission15、なんと金田治監督の「初戦隊監督回」だから面白い!)
特撮ヒーロー作品における挿入歌は非常に大きな役割を持っており、それひとつで如何ようにも盛り上がるし、逆に「ただ流すだけなんて勿体なさすぎだろ・・・」「え、そこで切っちゃうの?」と感じてしまう時もある。その点、私が何年にも渡って「お熱」なこのMission15は、その「特撮ヒーロー番組における挿入歌使用」について、ひとつの決定版であり黄金パターンであると感じている。
曲調と歌詞をシナリオにリンクさせ、その上で曲の展開に沿ってシーンを切り替え、組み上げる。観れば観るほど(聴けば聴くほど)そのロジックを味わえる極上の演出。ぜひとも、一見&再見いただきたい。
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