とにかく楽しかったこの1年間。
『クウガ』からずっとリアルタイムで平成ライダーシリーズを観続けているが、『仮面ライダーエグゼイド』はこれまでの平成ライダーがやってきた「作り方」をハイブリッドに組み合わせたような魅力があり、平成も終わるこの時期に観るのに相応しい出来栄えだったと感じている。
・・・などと書くともう最終回を迎えてしまった雰囲気だが、これを書いている時点で残すところ4話。
そんなタイミングで公開されたのが、『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』だ。
副題が示す通り「本当のエンディング」な訳で、そうなるとやはり平成ライダーファンとしては妙にきな臭い匂いを嗅いでしまう。
先行最終回を謳いつつ最終的にループ構造に組み込んだ龍騎や、本編との完全パラレルで完結するファイズ、IFルートによる物語を提示したブレイドなど、同シリーズの劇場版には多種多様な「前例」が少なくない。
そんな中、「本当の完結は映画で!」と大々的に示すエグゼイドには、どのような仕掛けがあるのか。
それが、ファンの一番の関心だっただろう。
※以下、映画本編のネタバレがあります。
蓋を開けてみれば、それはルート分岐でも夢オチでもパラレルでもなく、疑いようのない「後日談」。
意外なところから情報が出てきたが、時系列的には本編最終回の1年後とのこと。
映画は、テレビ版の1年後の真のエンディングを描いた内容になっているので、「EXCITE」と曲の主人公が同じ方がいいと思ったんです。「EXCITE」で描いた主人公がいろんな人に出会って、彼らがいろんなことを経験して成長して、それぞれの思いを胸に自分の人生を彩っていく、それぞれの素晴らしい人生に旅立っていく。そうやってハッピーな大団円を迎える感じがエンディングにふさわしいだろうと思って作りました。
つまり、本編最終回から1年後、以下のようにエグゼイドの世界は変化している。
・永夢が最終的にドクターになる
・CRでは貴利矢が主任?になっている
・大我とニコはゲーム病専門のクリニックを経営している
・つまり、ゲーム病は根絶されていない
・パラドも永夢との協力体制を維持しながら生存している
・黎斗は衛生省によって幽閉されている
・黎斗のライフが映画開始時点で残り2になっている
・檀正宗の姿が見えず、作さんが社長に就任している
・ゲムデウスは一度撃破している
ということで、本日時点でのTVシリーズの進行具合から逆算すると、「ゲムデウスを倒す」「黎斗のライフが大幅に減る」「ゲーム病は根絶されない」「檀正宗(クロノス)は敗北の末に消滅?」などのプロセスが起こるはず、と言えるだろう。
しかしまあ、本作『トゥルー・エンディング』は、本当に綺麗な作りであった。
エグゼイドが推し進めてきた「ゲーム」と「医療」という一見相反する2つのテーマ。
これらを、VRという最新技術を取り込みながら、しっかり妥協のない手術シーンも描くことで、本映画内でもしっかり両立させている。
それでいて、敵となるハリケーンニンジャこと南雲影成を今回の「ゲスト患者」たる少女の父親にすることで、医療が未来を繋ぎ家族の絆を形づくる、という縦筋を設けることに成功している。
本作が面白いのは、患者である星まどかという少女の本当の願いが「自分が元気になり運動会を楽しむこと」ではなく「父親の望みが叶えられること」だった部分だ。
それが明かされる前の段階で、永夢が南雲を諭すシーンがあるからこそ、このミスリードが活きてくる。
「子どもの命を、子どもの笑顔を守るのは、僕たち大人の義務じゃないか!」。
大人が子供を守るべきだが、その子供はなんと大人のために自らをバーチャル世界に閉じ込める選択をした。(この辺りは、実際の「安楽死」「尊厳死」を連想させるものであり、もしかしたら意識を電脳的に維持できれば肉体は不要かも? というSF的な問いかけも内包しているのが面白い。)
南雲は最終的に子供と向き合い、また、子供も父親と向き合って、この物語の「医療」のテーマは完結する。
親から子・子から親への、互いが互いを想う円環構造は、「例え難病で全快が望めなくても、誰かと支え合っていくことが未来に繋がる」という普遍的なテーマを描いている。
南雲親子にとっての「トゥルー・エンディング」だったことも、言うまでもないだろう。
TV本編でも、イマジナリーフレンド等の難しい問題を「個性」と捉えて前を向くことを描いたエグゼイドだが、今回は子児脳腫瘍といったこれまた実際に全快が難しい病気を取り上げ、それを本当の意味で「治す」のは医療技術を超えた先にある、というテーマをしっかりと提示してみせた。
そして、だからこそ、その「誰かと支え合って未来を見る」ためには、医療技術が不可欠なのだ。
一方のゲーム要素については、クライマックスの巨大ゲムデウスとの戦闘シーンが印象的だ。
ゲムデウスが広げたバーチャルフィールドの中を、ムテキゲーマーが主観映像で自由に飛び回る。
まるで観ている我々がゲーム世界に飛び込んだような映像の連続で、まさにVR的な取り組みだったとも言える。
クリエイターゲーマーで戦う際に、現実世界の永夢をちゃんと映し、バーチャル世界と実世界が連動していることをしっかり描いたのも面白かった。
そして、永夢は自らの胸に「いくよ、パラド」と語りかけながら、ドクターとしての日々を送ることになる。
パラドという自らが生み出したウイルスを、治療もせず、拒絶もせず、受け入れて前に進む。
永夢の、時に利己的なまでの博愛精神が選んだ共存関係である。
鑑賞後に購入したパンフレットを読むと、今回の映画が真の後日談になる構想は、TVの最終回がしっかり決まる前に動き始めたとのこと。
ということは、TV本編のクライマックスには、「え? これちゃんとあのハッピーエンドな劇場版に繋がるの?」という不安を煽るようなギミックが仕込まれている余地がある。
劇場版の方にギミックがあるかと思いきや、そっちは予想の100倍綺麗なエンディングで、仕込みギミックのボールはTV本編に投げ返された。
公式からして「TV本編を観ると段々と感想が変わっていく」と煽っているが、果たして、エグゼイドは最後にどのような「遊び」を仕掛けてくるのか。
また、パンフレットにおける中澤監督のインタビューがとても興味を唆る書き方だったので、それを最後に紹介しておきたい。
映画を先に観るのもいいし、テレビが最終回を迎えた後に、もう一度観るのも面白い。高橋さんが、そんなホン(脚本)作りをしてくれています。(取材時点で)最終回はこれから僕が撮るんですが、高橋さんの上げてきたホンを読んで、天才だと思いました。期待していてほしいですね。
本記事も、TV本編が進むたびに少しずつ追記をしていけたらな、と思う。
<後日追記>
8月6日放送分と『トゥルー・エンディング』との関係性メモ
— 結騎 了 (@slinky_dog_s11) 2017年8月5日
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<追記終わり>
あと、ビルドの登場をエンドロールの後に持ってきたのは意欲的だったなあ、と。
エグゼイド本編を綺麗に描き切りたいという姿勢を感じる構成だった。
予告された『平成ジェネレーションズ ファイナル』も、楽しみですね。
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