ジゴワットレポート

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マクドナルドの真の魅力はハンバーガーにあらず。『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

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私は本当にマクドナルドが大好きだ。

 

おそらくほぼ確実に週に1回以上は食べているし、定期的に出てくる新種のハンバーガーも、ここ数年味見を欠かしたことはない。

未だに2012年のグランドキャニオンバーガーがどうにかして復活しないものかと祈る日々を送っている。

 

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引っ越し前のブログでもマックについてしばしば語っていたくらいに、重度のマクドナルドジャンキーである。

 

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・・・という前置きはほどほどに。

 

そんなマック中毒者な私が観ない訳にはいかない映画が公開されてしまったので、公開館数の少なさを物ともせずに行ってきました、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

 

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簡単に言えば「マクドナルド創世記の物語」というやつで、「マクドナルド兄弟が創り上げたマクドナルドのシステムと屋号を、途中から参入してきたレイ・クロックという男が最終的に全てかっさらってしまう」という、実際に起きた顛末を描いた映画である。

 

上映時間、わずか115分。

2時間に満たない尺の中で、「マクドナルド兄弟はいかに『マクドナルド』を創り上げたのか」から「その『マクドナルド』はどのように奪われたのか」までをテンポよく描く。

 

自分たちが創り上げた「高速給仕システム」の精度とメニューの美味しさを維持したいマクドナルド兄弟と、とにかくビジネスライクにチェーン化を推し進めコストダウンを常に念頭に置くレイ・クロック。

まさに「水と油」のように描かれる2人と1人が「出会ってしまった」、その運命的なストーリーにぐいぐい惹きこまれていく。

 

話が逸れるが、私はとっても「効率的に」するのが好きだ。

自分の仕事もとにかく段取りをするのが好きで、「アクシデントで段取りが破綻した場合の段取り」までを組み上げて、あとは仕事を回すだけ ・・・というやり方を好んでやる。

無駄なくスムーズに、かつ計画通りに事が運んだ時のあの爽快感に、完全に憑りつかれたタイプだと自負している。

 

そんな私にとって、マクドナルドの真の魅力は、ハンバーガーやポテトといった食事ではない。

真の魅力は、あの厨房だ。

これを読んでくださっている貴方は、マクドナルドの厨房をじっくり見たことがあるだろうか。

 

ハンバーガーを作るための「流し台」があり、その台の上には必要な具やソースが並んでいる。

横に動きながらハンバーガーを作り、最後に包み紙で封をして上下をひっくり返す(つまり一番最初に対応する包み紙を広げるところからハンバーガー作りがスタートする)のが最高で、そのまま、古いドラマで見たバーカウンターを滑るグラスのように、ハンバーガーがストックエリアに吸い込まれていくのだ。

そのエリアの上部には注文が集約された電子板があり、レジ担当者がチェックを行いながらハンバーガーをピックアップする。

 

ポテトまわりも面白く、あれは、「いかに隙間時間でポテトをケースに入れてストックを切らさずに保てるか」というタイムアタックな戦いだ。

飲み物も、客の注文を取り終えたレジ担当者が「次の客がクーポンを選んだりしている」その一瞬の隙をついてセット&ゴーを行う。

店員さんの胸のネームプレートには接客歴が蓄積されているが、そこが色鮮やかなベテラン店員の一挙手一投足は、本当に芸術品だ。

 

また、聞くところによると、ポテトやナゲットを揚げるための油の廃棄の方法に至るまで、かなり細かくマニュアル化されているらしい。

ついついゾクゾクしてしまう。

また、油を効率よく拭き取るあの専用ペーパーは単価が高いので持って帰る量は常識の範囲内でお願いしたいとか、ポテトが揚がった時の「テレレ!テレレ!」はアウフタクトからの八分音符でソミソの音だとか、マクドナルドについてはもう本当に一晩語りたいくらい興味が尽きない。

 

・・・話が逸れたが、要は、私が思うマクドナルドの真の魅力は、「病的なまでに効率性が追及された厨房システム&マニュアル」なのだ。

多国籍企業として蓄積されたノウハウが、近所のマクドナルドひとつひとつに活かされている。

まさに店舗自体が一種の芸術品であり、血と汗と脳汁の結晶とも言える。

「マックの厨房を一日ずっと写したDVD」を売って欲しいくらいだ。

 

そんな認識があったからこそ、本作『ファウンダー』には本当に引き込まれてしまった。

マクドナルド兄弟は、当時主流だった「客は車で店舗に行き、行き来するウェイトレスを介して車内でご飯を食べる(降りない)」というスタイルに革命を起こし、「効率よく作られたハンバーガーやポテトが」「短い待ち時間で給仕され」「皿もプレートも不要で包み紙を捨てるだけ」という方法論を確立させた。

 

劇中で、実際のテニスコートに厨房図を書き、店員を何度もエア調理させて効率的な導線を追求した・・・ というシーンがあったが、効率フェチかつマックジャンキーの私はもうそのシーンで泣きそうになってしまった。

なんて・・・ なんて美しいんだ・・・。

この、マクドナルド兄弟の病的なまでの効率フェチ具合、そしてそれにより確立されたシステムに、偶然知り合ったレイ・クロックが目を付けるのだ。

 

しかし、レイ・クロックが単なる悪役でないからこそ、この映画は面白い。

彼のせいでマクドナルド兄弟は『マクドナルド』の看板を売り渡すことになってしまうが、しかし、彼がいなければ確実に『マクドナルド』はここまで世界に広がらなかっただろう。

「メニュー板の隅にコカ・コーラのロゴさえ入れてしまえば、コカ・コーラ社がメニュー板の費用を負担してくれるのに!」。

レイが信じるビジネスライクな思考は、マクドナルド兄弟との亀裂を広げていく。

 

しかし、現在のマクドナルドはそういう「宣伝」「タイアップ」「コラボレーション」なくしては語れない位置にいる。

身近なところで言えばハッピーセットで、ディズニーキャラクターからジャンプアニメ、仮面ライダーにプリキュア、最近だとふなっしーに至るまで、他社とタイアップした販売を彼らは絶対に欠かさない。

また、長年盤石な体制だった「ポケモンカレンダー」が数年前に「妖怪ウォッチカレンダー」に変更になったりと、そのある種の「節操のなさ」「ビジネスライクな方法論」は、レイ・クロックが本作劇中でやってきたことと繋がっているようにも思える。

 

つまり、つまりだ。

現在のマクドナルドは、マクドナルド兄弟が確立させた「病的なまでの効率化システム」と、その後レイ・クロックが推し進めた「節操の無いビジネスライクな姿勢」、その2つが見事に融合した形で成立している。

それはもちろん、レイ・クロック自身がマクドナルドの「システム」に惚れ込んだ・・・ という前提があってこその結果だが、最終的にマクドナルド兄弟がどういう顛末を辿ったかを思うと、レイの狂気なまでの執念と仕事への意地には舌を巻く。

 

マクドナルド兄弟の「やり方」は間違っていないし、レイ・クロックの「やり方」も、私は間違っているとは思わない。

ビジネスは、突き詰めればその「やり方」同士の戦いでしかなく、この場合はレイに軍配が上がったのだ。

例え汚くても、仁義がそこに無くとも、時に「勝てば官軍」が許されてしまうからこそ面白い。

そんな男同士のプライドのぶつかり合い、裏をかき契約の抜け道を辿るゾクゾク感、そういった面白さが、現在のマクドナルドの繁栄という結果を前に倍速で跳ね上がっていく。

我々の近所にマクドナルドが当たり前のようにある、誰もが当たり前のように食べたことがある、その「当たり前」が出来上がるまでの奮闘録は、どうにも完全なる他人事には思えない。

 

マクドナルドより美味しい食事は、世の中に死ぬほど溢れている。

それでも私がマクドナルドに通い続けるのは、その味がソウルフードと化しているのは勿論のこと、あの完成されたシステムの様式美を味わうためにある。

だからこそ、「創始者」という意味の『ファウンダー』というこの作品は、私に深く刺さって仕方ない一作であった。

真の創始者は、果たして「どっち」なのだろうか。

 

ぜひ、多くの「マクドナルドを食べる人」に観て欲しいと願う。

 

 

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