ジゴワットレポート

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『怪獣保険』を大真面目に検証。怪獣に壊された家屋に火災保険からの保険金はおりるのか?

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その昔、損害保険の営業マンをやっていたので、それでいて特撮が好きということで、ゴジラウルトラマンを観ていると毎度思うのが「これって保険おりるのかな・・・」というやつ。

 

数日前から久々に初代『ウルトラマン』を1話から観ているのだけど、3話にてネロンガが豪快に火力発電所を破壊していて、ついつい「うわー、損害やべぇぞこれ」などとボヤいてしまったり。

まあ、そもそもが野暮なツッコミではあるのだけど、シミュレーションも兼ねて「もし怪獣が暴れ回る世界だったら損害保険はどう扱われているのか」について、営業マン時代に身に着けた知識を総動員して大真面目に考えてみたいと思う。

 

図解 損害保険システムの基礎知識

図解 損害保険システムの基礎知識

 

 

大前提として、損害保険(自動車保険や火災保険)には漏れなく「免責事由」というのが決められており、これに該当するものは支払われない決まりになっている。

 

例えば「わざと破損させるのはダメですよ」とか「酒に酔った運転時の事故はダメですよ」とか、契約時に配布される約款というものにこれでもかと細かい字で書かれている。

ということで一般の火災保険の「免責事由」を見てみると、怪獣災害に関係しそうなのはこの辺り。

 

第5条(保険金をお支払いしない場合)

当会社は、下表のいずれかに該当する事由によって生じた損害または下表のいずれかに該当する損害に対しては、保険金を支払いません。

 

(中略)

 

7.地震もしくは噴火またはこれらによる津波

 

住まいの保険 ご契約のしおり | カタログビュー

 

こんな感じで、火災保険は基本的に「天変地異では支払いません」というルールになっていて、別途保険料を払って地震保険を契約すれば、そのルールを無効化ことができる(=地震やそれによる津波等の発生時に支払えるようになる)、というシステムになっている。

だから地震保険単体の商品というのは一般向けには無くて、あくまで火災保険に上乗せで付けることができる、という整理。

 

ウルトラ怪獣 ビジュアルブック (ぴあMOOK)

 

ではここで問題なのは、怪獣が暴れて家屋を破壊するのは果たして「地震もしくは噴火またはこれらによる津波」に該当するのか否か。

 

言葉通り捉えるなら答えはNOであり、前述の「保険金をお支払いしない場合」には該当しないという結論になる。

ということで、この前項にある補償内容(保険金を支払う場合)の、「建物の外部からの物体の衝突等による損害」か「その他偶然な破損事故等による損害」あたりが適用され、支払われるのではないかな、と考えられる。

なので、通常の火災保険なら、怪獣災害への備えは大丈夫だ。

 

とはいえ、ウルトラマンゴジラの世界では割と当然のように怪獣の存在が認知されているパターンが多く、そのための防衛隊が国際的に組織されていたり、ゴジラ専門の対策本部が編成されていたりする。

つまり、怪獣が出現することが日常的に起こり得る災害のひとつとして捉えられている可能性が高い。

 

上で引用した約款はあくまで「怪獣がいない現実世界の話」なので、おそらくこの手の怪獣が認知済みの特撮作品の劇中では・・・

 

7.地震もしくは噴火、怪獣やそれに類する巨大生物による損害、またはこれらによる津波

 

・・・といった内容になっているのではないだろうか。

つまり、免責事由(保険金をお支払いしない場合)に「怪獣災害」が組み込まれていて、その上で「怪獣保険」がまるで地震保険のように存在している。

追加の保険料を払い、通常の火災保険に上乗せして契約する形になっているのではないかな、と。

 

 

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ただし、怪獣が特定の科学者によって人為的に操られているケースや、国家間の戦争兵器として用いられている場合等は、これに類しない。

破壊活動を目的としている場合は損害保険の必須支払要件である「偶然性」に欠けると判断されるだろうし、戦争や外国の武力行使はそもそもの免責事由に定められているからである。

補足として、「戦争」が一律でダメなので、宇宙人が攻めてきた場合も支払は難しいだろう。

 

よって、例えばゴジラが海から出てきて街を破壊した時に、通常の火災保険に上乗せして怪獣保険に加入していれば破壊された家屋に保険金は支払われる。

が、一方で、バルタン星人のように地球を侵略しようとした異星人によって家屋を破壊された場合は、「戦争」やそれに類するものと判断され、保険金はおりないものと思われる。(前述の約款の例のように、「戦争」の欄に「異星人による侵略等」といった文言が付け加えられていそう)

 

ゴジラウルトラマンの「あの世界」に辿り着くまでに、おそらく保険業界はかなりの四苦八苦を経験していくのだろう・・・。

 

怪獣保険がしっかり業界に根付くまでの流れはおよそ想像できる。

仮に怪獣保険があったとした場合、それに一番近いのは前述のとおり地震保険だが、これは大正や昭和に起きた震災で火災保険が役に立たなかったことを受けて国が法で定めて行ったものであり、おそらく怪獣災害も同様の流れを経ていくと思われる。

実在の「地震保険に関する法律」のように、「怪獣保険に関する法律」が定められるのだろう。

 

あ、でも、最初の引用のように怪獣災害は現状では想定されていないので、怪獣が出現したら保険会社は保険金を支払うしかなく、程なくして怪獣災害を「保険金をお支払いしない場合」に追記し「怪獣保険」を追加する商品改定が行われるのだろう。

それまでは保険金を吐き出し続けなければならず、保険会社は想定外の収支バランスに頭を抱えることになるのかな・・・。(上には「異星人からの侵略は保険対象外」と書いたけれど、これも事例が頻発するのなら、国の主導で何らかのケアがなされるかもしれない)

 

 

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では、怪獣保険が仮にあったとしたら、その保険料(掛け金)はいったいいくらになるのか。

 

損害保険は過去何年の間にどれくらい保険金請求があったか(災害が起きたか)を統計的に処理し、そこから保険料を設定している。

大雑把に言えば、めちゃくちゃ大きな地震が起きてしまえば後々保険料は上がるし、何百年も全く起きなければ安くなる。危険度が高いほど掛け金も高いという、至極当然のカラクリである。

 

とはいえ損害保険会社の持っている統計データは完全なブラックボックスなので、ネットで拾える数値でざっくりと当たりをつけてみたい。

 

www.tokiomarine-nichido.co.jp

 

例えば前述の東京海上地震保険は上のページで試算ができるが、東京都で木造建築の場合、1年間の保険料は3,260円。これを、火災保険にプラスして払うことになる。(割引制度は考えないものとする)

 

怪獣の全長などその規模にもよるが、人里離れた山奥や海底に出現し建築物に影響を与えないケースもある訳で、例えばここでは震度5以上の地震(とそれによる津波)を怪獣災害と仮定してみる。

 

www.tenki.jp

 

日本気象協会のデータでは日本における震度5以上の地震は過去6年間で118回。年間約20回という計算になる。つまり、「震度5以上の地震が年間20回ペースで発生する現状において東京都の木造建築だと年間3,260円の保険料」ということで、これを基に怪獣保険の保険料を計算する。

 

ウルトラマンの放送が1年間だったとして、年間で登場する怪獣は約50体(厳密には50回の災害、というカウント)。

年間20回の年間保険料が3,260円なので、50回なら8,150円だ。

 

これがゴジラ等の年に1回の映画だとすると、2ヵ所以上で怪獣がそれぞれ出現して最後に雌雄を決するゴジラVSシリーズをサンプルに累計年3回の災害発生として、こちらは年間490円。うーん、安すぎる・・・。

 

でも、持ち家を持っていたらウルトラマンの世界よりゴジラの世界に住んだ方が年間の出費が抑えられそう、ということが分かった。(ここまで計算しておいて今更だけど、怪獣が暴れたら震度5どころじゃない上に、保険料も災害頻度によって単純に倍化して良いものではないだろうな・・・

 

S.H.フィギュアーツ ウルトラマン ウルトラマン(Aタイプ) 約150mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

 

 

最後に、怪獣と戦うウルトラマンが壊してしまった家屋について考えていたのだけど、こちらは考えれば考えるほどに保険から遠のいていく・・・。

 

現実問題として「警官が犯人追跡の職務中に窓ガラスを割ってしまうケース」が最も近いのかもしれなくて、即時強制と賠償の法的ロジックを調べたりしていたけど、そもそもウルトラマンって警察官でも何でもないという。

作品にもよるけど、正式な提携や交渉などはなくて、彼らは彼らの善意によって(勝手に)人間社会を守り怪獣退治をしてくれる。つまり守ってくれる行為そのものもある種の怪獣災害と同じ側面があって、しかしそれは「偶然性」に欠けるという捉え方もできるから、もしかしたら保険金がおりないかもしれない。

 

「こっちは怪獣が出てきた時に踏み潰した家屋で、契約者は怪獣保険に加入していたので支払われます。しかしあっちはウルトラマンが怪獣を意図した方向に投げ飛ばした際に潰れたものですので、たとえ怪獣保険に加入していても偶然性を満たさないとして補償対象外です(ウルトラマンに求償することは出来ないので)」、なんてことになったら悲惨すぎる・・・。

 

まあ、そもそも「ウルトラマンの人格をどう定義するのか」「怪獣によってはこちらも自らの意思で破壊を行う場合がある」「巨大生物の巨大の定義ってどこから?」「緊急時に誰がその記録を正確につけるのか」といった根本的な問題が山積みなのだけど、ぜひその際は日本政府がウルトラ警備隊としっかり折衝を重ねて損害賠償に備えた法的ケアをしてくれることを期待したい・・・。(ちなみに、歴史上「宇宙人誘拐保険」というものは実際に存在し、売り上げを記録したらしい)

 

ウルトラマンも勝手に守ったら守ったで逆に攻め立てられる、そんな哀しい世界なのかもしれないですね。

「放っておいて!怪獣に自由に壊させて!保険がおりなくなる!」なんて声は、上げたくないなあ・・・。

 

※当記事は引っ越し前のブログに掲載した内容を転載したものです。(初稿:2016/2/16)

 

 

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