ジゴワットレポート

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映画『ジャスティス・リーグ』、それは聖典がエンタメ誌になるということ

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「ジャスティス・リーグ」オリジナル・サウンドトラック

 

マーベルとDCは例えるなら日本で言うジャンプとサンデーみたいなもので、『アベンジャーズ』がルフィとナルトとジョジョが共演する映画なら、『ジャスティス・リーグ』はコナンとマギと犬夜叉が共に戦う作品だよ、という、あまりにもざっくりでフワフワすぎる説明はもはや使い古されてきたそれである。

しかし、サンデーがジャンプに一歩劣るイメージがあるように、少なくとも今のアメコミ実写化ムーブメントにおいては、やはりDCよりマーベルがリードしていると言わざるを得ない。

 

元々アメコミ史的にはDCが絶対的開拓者とのことだが、この2010年代において前人未到の「実写映画ユニバース構造」に乗り出し、しかも結果を出しているマーベルは、やはり生ける伝説だと思い知らされる。

私も1作目の『アイアンマン』を当時劇場で観たが、そこから来年公開を控える『インフィニティー・ウォー』まで、また随分遠くまできたものだ・・・。

 

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かくして、そんなマーベル(MCU)に追いつけ・追い越せのDC(DCEU)の最新作、『ジャスティス・リーグ』。

 

各種SNSでも、み~んな、スーパーマンが復活することは当然のように分かっているのに一応気を遣って言及しないという紳士的配慮が炸裂した本作は、お馴染みのバットマンに、単独映画がついこの前公開されたワンダーウーマン、ドラマ版が先行したが別ユニバースで登場するフラッシュなど、豪華絢爛なメンバーが銀幕狭しと暴れまくる。

 

率直な感想として、面白かった。

キャラクターは生き生きとしているし、それぞれが抱えるドラマにも見応えがあったし、クスっとできるジョークも多く、何より「チームになることで心に迷いを持つ超人同士が居場所を獲得する」という落し所は、その名の通り人を超えた存在である彼らをグッと身近に感じられるアプローチだったと言えるだろう。

 

しかし、「面白かった」はありつつも、やはり「これでいいのか?」という感覚がどうしても拭えないのも確かだった。

 

ザック・スナイダー監督の降板は御身内の件があるからして詳しくは触れないが、その後の監督を務めたのはまさかのジョス・ウェドン。『アベンジャーズ』の監督がここにやってくるなんて、報道で知ってとても驚いたのを覚えている。

そして、追加撮影に破格の2,500万ドル、期間は2ヶ月、おまけに「もっと明るい作風に」という要請がスタジオからあったというではないか。

 

そういった背景を踏まえて観ると、やはりこれは映画単体の話ではなく、DC社のマネジメントというか、このコンテンツをどう持って行きたいかに疑問を抱かざるを得ない。

『ジャスティスの誕生』もスタジオ的には納得度が低い結果になったとのことだが、逆に、マーベルとは違うアプローチが光る作品だとは感じていた。

親しみやすいキャラクターから世界観を掘り下げていくマーベルに対し、圧倒的な超人が構築した世界観に観客を引きずり込むDC。後者が持つ一種の劇薬的な、むしろ「聖典」とでも言ってしまえる良い意味での「近寄りがたさ」「影の多い神々しさ」は、DCEU最大の売りでは無かったのか。

 

過去にも書いたことがあったと思うが、アメコミ映画のユニバース構想としてすでに確固たる地位を築いているマーベルのMCUに対し、DCEUはまた違った切り口で挑戦しているな、という印象がある。

 

MCUは、まずはキャラクターの魅力を押し出しつつ、そのヒーローが現実社会に本当にいたらどうなるのか、というアプローチ。

DUEUは、世界観や設定・ヒーロー登場により影響を受けた社会そのものを先に提示し、その中で進行するヒーローのドラマはどのようなものか、という感じだろうか。

 

MCUが近年のVFX大盛映画の文脈を受け継いで実写に溶け込むVFXを描くのに対し、DCEUはどちらかというと嘘を嘘のまま提示する(VFXが必然として『浮く』ことを外連味としてあえて活かす)印象があり、これはどちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、作風・絵作りの違いとしてとても面白いなあ、と。

だから、『ジャスティスの誕生』なんかは、いくつも「まさにアメコミのワンカットじゃないか」というシーンがあったり、そのライティングや止め画的なアプローチなど、またMCUとは違った魅力があると感じている。

 

jigowatt.hatenablog.com

 

「明るく作ろう」という要請をしながらジョス・ウェドン監督を連れてきたならば、万人が「おそらくこうなるだろう」と予測できる作風があって、そして、完成物はものの見事にそうなっているのである。そりゃあもう、自明の理ですよ。

 

確かにそれは「面白い」。ライムスター宇多丸氏が言うところの「交通整理の巧さ」「ウィットに富んだジョーク」はジョス・ウェドン監督がMCUで大いにそのスキルを証明してきたものであり、それをあろうことか同じジャンルであるアメコミヒーロー映画でやるのならば、どう考えても「これ」になるのだ。

だから、「面白い」。でも、やっぱり「知ってる味」なのだ。これで本当に良かったのだろうか。

 

そもそも、『ジャスティスの誕生』が満足いく結果にならなかったのは、「作風が暗かったから」がその原因だろうか。

「チームものとしてアウトローたちが家族みたいになる!」という『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を模倣したかのような『スーサイド・スクワッド』は、果たしてどれほど面白かったのか。

果てには、バットマンのベン・アフレックを交代するという報道も出始め、もはや「迷走」という二文字が顔を出し始めてはいないだろうか。

 

『ジャスティス・リーグ』、面白くて、各キャラクターの単独映画も観たいという気になったが、安易なMCUの後追いに感じられてしまった部分が、やはり私にはどうしても残念である。

「聖典」が気付いたら親しみやすい「エンタメ誌」に変わっていたかのような喪失感は、果たしてこの先どのDCEU作品が払拭してくれるのだろうか。

 

私の言う「聖典」の側面は、ザック・スナイダー監督の作風に頼り切ったものだったのだろうか。MCUはむしろ「エンタメ誌」を崇めたくなるレベルまで無限昇華していくターンに突入しているが、DCEUは本当にこのまま同じアプローチで攻めていくのだろうか。

とにかく、「迷走」が脳裏を過ぎりつつも、「期待」の二文字は未だ消えない状態である。

 

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