ジゴワットレポート

映画とか、特撮とか、その時感じたこととか。思いは言葉に。

挿入歌だいすきオタクがフルオーダーで「存在しない挿入歌」を制作した話

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皆さん、挿入歌って好きですか? 私は好きです。

 

特撮に限らず、アニメでもドラマでも映画でもゲームでも。主題歌やEDとは異なり、作中で流れる楽曲のことですね。一般的に注目を集めるのは言うまでもなく主題歌ですが、挿入歌って、こう・・・ もっと作品のコアに触れているパターン、あるじゃないですか。主題歌より後のタイミングで制作されることも多いので、よりキャラクターや話の展開を踏まえていたり。歌詞に仕掛けが施されていたり。主題歌が「鍋料理そのもの」だったら、挿入歌は「鍋の出汁」みたいな。(とても分かり辛い例え)

 

何かの作品にハマったらまずは挿入歌を聴き込むような挿入歌大好きオタクとして、以前より夢があったんですよ。そう、「好きな作品の挿入歌を自作してみたい」。それは夢。果てなきオタクの浪漫。全世界一億人のオタクが「気に入った楽曲を勝手に挿入歌扱いして好きな作品のMADを脳内制作し脳内上映する」といった経験をしているはずですが、思い切ってその臨界点を目指してみよう、と。

 

ということで、実際に作りました。正確には、作っていただきました。

 

楽曲制作会社に依頼し、ウン十万円をかけたフルオーダーメイド楽曲。2018年2月11日から2019年2月10日までテレビ朝日系列で放送された『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の、「存在しない挿入歌」こと「オリジナルイメージソング」、題して『Valuable Symmetry』。いわゆる『ルパパト』が好きすぎた限界オタクのなれの果てです。

 

 


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思い立ったのは2021年夏。思い立ったが吉日。

 

「オリジナルのイメージソングなんてものを作ってみたい」、が、「楽曲を制作する技術も環境も経験もセンスも無い」。「その昔少し音楽をやっていた経験から一丁前にこだわりがある」、が、「作曲なんて出来るはずもない」。そんな状況を打破する方法が、ひとつだけあるんですよ。たったひとつのシンプルな答え。

 

そう、金。やはり金なんですよ・・・。理想と現実の隙間を埋められるのは、いつだってお金。世の中、金が全てではないが、金があればまあまあ何とかなる。

 

ということで楽曲制作を請けてくれる会社をネットで探し、株式会社ジョーカーサウンズさんに行き当たる。

 

 

jokersounds.co.jp

 

 

こちらは「魔王魂」というフリー楽曲サイトが有名で、(あえてこういう表現を用いますが)、めちゃくちゃ「それっぽい」楽曲を沢山リリースされている。クオリティはガチに申し分なく、しかも無料。YouTube等の動画サイトでも使用できるので、聴いたことある人は多そう。

 

 

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  • 魔王魂 & 森田交一
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
シャイニングスター

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Burning Heart

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これは余談なのですが、ジョーカーサウンズさん、福岡の会社なんですよね。所在地は福岡の博多区月隈。個人的に福岡はとても思い入れのある土地なので、そういった(とても一方的な)縁も感じつつ、依頼プランを見てみることに・・・。

 

 

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出典:主題歌・歌もの制作プラン | 株式会社ジョーカーサウンズ

 

 

まあ、結論からいくとプレミアムプランなんですよ。

 

なんたって前述のとおり、技術や環境やセンスはないのに、自分なりのこだわりだけはある訳ですから・・・。イチからオリジナルで制作するのであれば、使用する楽器や曲構成から全てにこだわりたい。全人類が好きな「ラスサビでキーが上がる」だって絶対にやりたい。「作品の旨味が凝縮されたような挿入歌」を、ぜひ実現させてみたい。こちらのプレミアムプランには「無制限の無償修正(格安プランは修正が2回まで)」という悪魔的オプションがついているため、選択肢はこれしかなかったんです。そんな資金は一体どこから? 普通預金からです。

 

 

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー公式完全読本

 

 

依頼フォームから、「『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』という特撮番組のオリジナルイメージソングを作りたいんです」と赤裸々なメールを送り、担当者の方と繋がることができました。入金後、実際の作曲がスタート。ジョーカーサウンズのご担当Sさんが窓口になってくださり、作曲家さん、ボーカリストさん、ミックスをしてくださるスタジオさんと、全てを取り仕切ってくれる。窓口をひとつにしてくれたのがすごくやりやすかったです。

 

今回、やはり企画趣旨として作詞を自分でせねばならないことは明白だったので、それをSさんに伝えたところ、「作曲が先でそのメロディーに合わせた作詞を後でやりましょう」とのご説明が。なるほど確かに、作詞なんてやったことがないので、メロディーが先にあった方がどう考えてもやりやすそう。・・・ということで、前述の「こだわり」を余すことなく詰め込んだオーダーをメールでやり取りしていく。

 

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』略して『ルパパト』をご覧になったことがない人もいるかと思いますが、タイトル通り、快盗と警察というふたつの戦隊が一年間ずっと対立するお話なんですね。番組の主題歌はそのコンセプトを受けた対位法という技法で作曲されていて、快盗と警察それぞれ独立した主題歌が、メロディーが噛み合うようにひとつの楽曲に合体するというもの。さすがにそれをそのまま真似る訳にもいかないので、それぞれの戦隊の音楽性を拾い上げ、それらをミックスした楽曲を目指すことに。

 

具体的には、ルパンレンジャーがビッグバンドジャズ。トランペットを代表とするホーンセッションが多めで、身軽に裏拍を打っていくイメージ。ピアノが鳴ったりも良いですね。対するパトレンジャーはデジタルビート。ドラムも生ではなく打ち込みで、同じ戦隊でいくと『デカレンジャー』にも通ずるイメージ。いわゆる「シンセが効いている」やつ。そして、昭和デカなベタな旋律でのトランペットが印象深い。

 

・・・ということで、「デジタルビートの上で」「ビッグバンドジャズを躍らせて」「トランペットの鳴りを印象的に」、というオーダーに繋がっていく。また、同作の公式の主題歌や挿入歌もサンプルとして聴いていただきながら、音楽的なクセ、ジャジーなアプローチ、打ち込みのパターン、旋律のハードな手触りなどを、作曲家さんと共有していく。個人的な好みで、「手数を多く」「テクニカルな印象を持たせて」といったお願いも。もちろん、いわゆる「そのまんま」は許されないので、あくまでリスペクト、あくまでインスパイア、あくまでイメージといった線引きには気を付ける。

 

そうして仕上がったメロディーが、こちら。そうそう、これこれ。こういうのが聞きたかった・・・。作曲家さん、本当に素晴らしいです。ありがとうございます。(納品後に、実は作曲家さんもお子さんの影響で『ルパパト』をばっちり履修済みだったという驚愕の事実が判明するのだが、それはまた別の機会に・・・)

 

 

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さて、そこから作詞のお時間。人生初の作詞体験。ここで、何度書き直しても作詞という行為は一定のセルフ羞恥プレイだということが判明する。これが創作の恐さ。どこかで割り切って、エイヤー!で走るしかない。

 

作詞のコツなんてものは知らないので、好きな曲を改めて聴きながら、自分なりに方法論を確立させる。Aメロはやはり風景描写からの方が導入部として良いだろうか。サビの頭は発声しやすい音にした方がボーカリストさんが歌いやすいだろうか。同じ横文字でも英語とカタカナでは受け取り方が違うだろうか。そういったことを延々と悩みながら、最終的には渾身の「解釈」を詰め込む形に。ほら、挿入歌ってそういうものじゃないですか。直接的に「そう」は歌っていなくても、作品を知っている人には「そう」受け取れる。それが挿入歌の旨味ってもんじゃないですか。

 

歌詞にぎゅうぎゅうに詰め込んだ「解釈」をこの時点でいちいち説明するのは野暮なので、これはもう、実際に聴いていただきたいな、と。この歌詞、そして楽曲それ自体が、私の『ルパパト』への「解釈」の全てです。1万字かけて感想文を書くより、この4分強の方が濃いかも。

 

そんなこんなで作詞も無事に終わり、「仮歌を自分で歌って録って送る」というアルティメット羞恥プレイを経て、そのデータはボーカリストさんへ。『ルパパト』はどうしても男同士の関係性にフォーカスせざるを得ない物語なので、あえて女性ボーカリストさんをリクエスト。こちらもジョーカーサウンズさんが全て取り仕切ってくれます。

 

収録、からの「ここの歌い方はこうして欲しい」といったこちらのリクエストにも細かに対応していただき、微調整も終了。歌まで完成。最後にミックス作業に移行していく。最初にいただいた音源ではヒーローソングらしくベースが強めでもっとぐりぐり鳴っている感じだったのですが、むしろトランペットやピアノといった上物を前面に出して欲しいとお願い。この辺りの細かな「好み」を調整していただき、遂に完成を迎えました。

 

やったー!!これが!!存在しないけど(自分にとって)至高の挿入歌!!脳内監督、ぜひ42話で流してください!!!お願いします!!!

 

 


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▲ これがトランペットの細かい動きとベースの存在感に最後までこだわったサビ。

 

最後に手伝っていただいたのが、オフ会で知り合ってもうすぐ10年ほどの付き合いになる、オタクの友人の皆さん。「作品内容が分かっている人」であり、かつ、「企画趣旨として直接的な表現を避ける」の意図する所に理解がある人。貴重ですね・・・。パッケージデザインとして、タイトルや全体のカラーリング、プロジェクトのロゴを。動画として、歌詞のアニメーションや演出を。それぞれご作成いただきました。いやぁ、本当にありがたいです・・・。

 

そんなこんなで、これが「存在しない挿入歌」、これが「オリジナルイメージソング」。「楽曲を制作する」という創作活動を通して、これまでもう数えきれないほど味わったはずの『ルパパト』からまだまだ噛めば噛むだけ味が出てきて、本当に楽しい体験ができたな、と。「好きな作品」はまだまだ山ほどあるので、気力と資金が許せば、また新たにチャレンジしたいなと思う所存ですね。

 

これまでブログやTwitterに感想をアウトプットすることで作品への理解を深めてきましたが、こういった「深め方」もあるんだな、と。発見。

 

それでは聴いてください。『Valuable Symmetry』です。

 

 


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